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トラウマを抱えた引きこもり者たちは、自滅へと衝き動かされる

2021年9月17日

テーマ:解決のための視点

コラムカテゴリ:メンタル・カウンセリング

コラムキーワード: 引きこもり支援引きこもり 対策不登校支援

不登校児やひきこもり者たちが抱えているものにトラウマがあります。
トラウマとは、心の傷(傷ついた自尊心)と心の複雑骨折(生きる意味の喪失)です。
これらの傷は、安全や安心が守られていない環境、いわゆる「逆境」を生き抜いてきた
過程で負いました。
これにより、ストレス耐性の脆弱さや問題解決力の欠如、人間関係失調を招き、
それが生き辛さとなっているのです。
ですから、「学校に行かない、働かないからけしからん!」とか「困ったもんだ」では
なく、 トラウマの視点から問題行動の意味を捉えなおす必要があるのです。

ところが、「トラウマのケアまでは、当事者にとってつらいし、忘れたいのではないで
しょうか?」 という声も聞かれます。
さらには、「トラウマどうこうよりも、早く働いて(登校して)欲しいです」といった嘆き
も聞かれます。
忘れられたら、苦労はありません。
忘れられないから心的外傷(トラウマ)なんです。
傷口がふさがっていない状態で、その傷の痛みを感じないでいれますか?
苦悩を抱えたままでも、登校さえすれば、働きさえすれば、それでいいんですか?
とは言え、自立に必要な負荷さえも「嫌がるからさせない」と与えないでいて、どう現状
を改善していくつもりですか?

トラウマを乗り越えるためにも、トラウマに向き合うこと(痛み)は必要なのです。
登校させることも社会参加させることも当人たちにとっては、とても辛いことなのですよ。
何の負荷も与えたくないのなら、そのままにさせてあげる(一生のひきこもり)しかありま
せん。
ひきこもり者たちにとって、家庭が逆境になってしまった理由には、親自身の未解決の
トラウマがあったことも認識しておかれてください。
なぜその子に、その関わり方をしてしまったかに、親自身の抱えているトラウマの影響が
あるのです。

引きこもり者たちの本質的苦悩

ひきこもり(不登校)者たちの核にある苦悩、痛みとはなんでしょうか?
それは、自己存在の空虚感です。
自身の存在に意味を感じられないのです。
「いてはいけない」といった状況にまで至っているケースもあります。

こういった認識がどこから来たかというと、それはアタッチメント・トラウマといった
ものからです。
アタッチメントというのは、「愛着」のことです。
愛着とは、
〇乳幼児が特定の人と築く情緒的な関係
〇養育者と接することによって作られる
〇大人になった時、社会的な行動に深く関係する大切なもの
この愛着に関する傷(トラウマ)が、空虚感を招いているのです。
私はこれを〈乞い煩い〉と言っています。
ぬくもりを乞うている状態です。
愛情を貪るということで、ムサボリック・シンドロームとも表現しています。

この状態ですと、自己受容できず健全なアイデンティティが構築できません。
誤った自分らしさを覚え、それに相応しい誤った(生き辛い)行動をとってしまいます。
自分を周囲に認めてもらいたく、過剰に承認を求めたり、周囲の自分への評価に過敏に
なってしまいます。
ですが、自己認識は極めて否定的ですので、そうすると、周囲の目(評価)は矢のように
刺さり、人前に自分の身を晒すことができなくなるのです。

引きこもり現象の意味するもの

そうして、ひきこもり者は、耐えられない環境から「一時退散」と自室へ避難しました。
逃避が唯一の手立てとばかりに、そこに囚われていた状態です。
一人でいるときには、何かで気を紛らわせておかないと、空虚からの恐怖感で平常では
いられないので、ゲームやインターネットに心を占領させます。所謂中毒(依存)状態
です。
時間や頻度を自身で管理できれば問題ないのですが、就寝、起床といった基本的生活習慣
ですらコントロールできないでいる状態ですから、強迫的にそれを繰り返しています。

また、「自分なんか誰からも受け入れてもらえない」のような強迫観念もあります。
そして解決を妨げている最大の要因は、怖れを認めず、支援が必要な状態にあることを
認めない〈否認〉です。
独りよがりがこれまでを作ってきたことを覚り、無力であることを認め、降参することで、
解決の糸口が見えてくるのです。

家族(周囲)は、こうした背景を考慮し、はたらきかけをしていく必要があり、黙って見守
っていても長期化(重篤化)するだけですし、ましてや、「学校はどうするの?」「いつから
働くの?」と親自身の困り感を投げかけても、追いつめるだけです。

自滅的な生き方にあえぐ

ひきこもり者たちの生き方の基礎は、変化へのためらいです。
変化することを拒ます。
なぜかと言うと、変化というのは未知の世界ですね。
つまり、どうなるのか分からない。
より良くなる可能性ももちろんありますが、より悪くなる可能性だってあるわけです。
でも彼らはどうしても、うまくいかずより悪くなることを考えてしまうのです。
もう二度と、失敗して傷つきたくないのです。
ですから、失敗しない方法として、何も新たに取り組まないという生き方を選んでいる
のです。

昨日までと同じ過ごし方を今日も明日も繰り返します。
馴染みの行動であれば、安心できるのです。
自室の物も、位置を動かそうとしません。
位置が変われば、予期せぬことが起こるような気がしてしまうのです。
結果、ごみ箱のような部屋になってしまいます。

現実を見ることも避けるようになっていきます。
現実は変化しているからです。
「時よ止まれ」とばかりに現実を否認し、やがて思考停止状態になります。
考えれば、思い煩い憂鬱になるからです。

このような状態のわが子を「信じて見守る」といったような対応をしていれば
確実に長期化していくことは、お分かりでしょう。
周囲の声を聞かないというのも、自分に固執することで少しでも不安を減らしたいのです。
他者を信頼することができないでいます。
かといって、自分を信頼できているわけではなく、まだましという程度ですが。
自分に囚われるあまり、慢心になってしまい何事も素直に受け入れようとしません。

また、その慢心から自己を徹底的に貶めます。
「俺なんか誰も認めてくれない。なんの価値もない人間だ」と、もう一人の自分が根拠も
なく断定して、暴言をあびせます。
自己卑下という慢心です。

ストレス耐性や欲求不満耐性の脆弱さから、ちょっとした負荷に対しても過剰に反応したり
があります。
ストレスを攻撃と受け止め、反撃に出るのです。
心や体にかかる負荷は、自身を脅かすものと感じ、すべて排斥しようとかかるのです。
ドアや窓を閉め、カーテンを開けないのは、外からの音や視線を遮るためです。
ですから、終始不機嫌です。
そうなると、家族もあまり関わりたくなくなります。
「信じて見守る」と言うよりは、ほっときはじめるのです。

このような自滅的な生き方がさらなる長期化を招いてしまうのです。

この記事を書いたプロ

中光雅紀

ひきこもる人、その家族を再生へと導くプロ

中光雅紀(NPO法人地球家族エコロジー協会)

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