心配していただけなのに、いつの間にかハンドルを握る

鎌田千穂

鎌田千穂

テーマ:心のあり方のヒント

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「大丈夫?」
最初は、ただの心配。

優しい。
ちゃんと気にかけてくれている。

ところが。

「仕事、大丈夫なの?」

「その会社、続けて大丈夫?」

「そんな働き方してたら身体壊すよ。」

「私だったら、そんな会社辞めるけど。」

……心配、どこ行った?
ただの煽り。

心配には、なぜかアクセルが付いている。

「こうしたほうがいいよ。」

「それはやめたほうがいい。」

「こっちのほうが絶対いいって。」

「あなたは、こうしたほうが幸せになれる。」

最初は助手席だったはず。

いつの間にか、
ウインカーを出している。

そのうち、
「次、右ね。」
とか言い始める。

いやいや。
あなたの車じゃない。

そして最終的には、

「あなたのためを思って言ってるの。」

と、ハンドルまで握る。

心配という名札を付けたまま。

「あなたのため」は、なかなか便利な言葉です。

この言葉を付けておけば、
かなり踏み込める。

「その仕事は辞めたほうがいい。」

「そんな人とは付き合わないほうがいい。」

「そんなことしてたら後悔するよ。」

「もっとこうしたほうがいい。」

本人が頼んでいなくても、
「あなたのためだから。」
で入っていける。

すごいですよね。
許可証みたいな顔をしている。

…本当に全部、
「相手のため」なんでしょうか。

相手が自分の思った通りに動けば、
こちらは安心する。

危ないことをしなければ、
こちらは心配しなくて済む。

失敗しなければ、
こちらもハラハラしなくて済む。

だったら、

もしかしてそれ、
相手を心配しているというより、
自分が安心したいだけじゃない?

人の人生になると、みんな急に運転がうまい。

「その道は危ない。」

「そっちは遠回り。」

「絶対こっちのほうがいい。」

「私なら、そんな選択しない。」

はい。
そうですか。
でも、あなたがその道を走るわけじゃない。

転ぶのも、
迷うのも、
引き返すのも、
その人です。

なのに、
他人の人生になると、
なぜか自分の運転技術に絶対の自信がある。

…自分の人生では散々道に迷ってるのに。

ここ、ちょっと面白いところです。

自分の車にはナビが必要なのに、
他人の車には、
なぜかGoogleマップ並みに詳しい。

そして、失敗すると「だから言ったでしょ」。

これも不思議。

「だから言ったでしょ。」

心配していた人が、
よく言います。

でも、その瞬間、
心配していた人ではなく、
予言者になっています。

「ほら、私が言った通りになった。」

……いや。
予言が当たったことを
喜んでいる場合じゃない。

本人、
いま困ってるんですよ。

「だから言ったでしょ」は、
心配の言葉に見えて、

ときどき、
自分の正しさの領収書になっています。


「私は正しかった。」
それを確認したいだけになってしまう。

失敗させたくない。でも、失敗まで取り上げない。

大切な相手なら、
そりゃ心配します。

子どもならなおさら。

家族でも、
友人でも、
部下でも。

傷ついてほしくない。
遠回りしてほしくない。

できれば、失敗しないで進んでほしい。

でも、その「失敗してほしくない」が強くなりすぎると、

今度は、
その人が自分で選ぶ権利まで、心配という名目で取り上げてしまう。

転ばないように、
ずっと手を引く。

迷わないように、
全部道を決める。

傷つかないように、
先回りして全部避ける。

それで何も起きなかったとしても、

その人は、

「自分で決めて進んだ」

という経験をしていないかもしれない。

「どうしたい?」は、意外と勇気がいる。

「こうしたほうがいいよ。」

と言うのは簡単です。

答えを持っているから。

でも、

「どうしたい?」

と聞く。

これは難しい。

相手が、

「分からない。」

と言ったら待たなきゃいけない。

自分とは違う答えを出したら、
受け入れなきゃいけない。

そして、
失敗したとしても、

「だから言ったのに。」

と勝ち誇れない。

だから、
つい口を出す。

つい答えを教える。
ついハンドルに手を伸ばす。

そして、
「心配だから。」と言う。

もちろん、
本当に心配なんでしょう。

でも、
心配していることと、
相手をコントロールしていいことは別です。


「心配」という優しい言葉。

いつの間にか、
相手の人生に口を出すための
免許証になってしまうことがある。

だから、

「大丈夫?」

と聞いたあと、

「どうしたい?」

と聞く。

そして、
答えが自分の望みと違っても、
一度、口を閉じる。

これが案外難しい。

人の人生のハンドルって、
握るより、

握らないほうが、よっぽど難しい。

……でも、
それができたとき。

「心配している私」から、
「信じて待てる私」に、
少し変われるのかもしれません。

人の人生まで、 24時間運転代行しなくていい。

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鎌田千穂
専門家

鎌田千穂(産業カウンセラー)

Chi-ho’s studio

組織課題を広い視野で捉え、主体性を持った思考と行動力、公私の均衡を図る自律型人材育成を行うこと。分析・統計による業務改善の解決策を示し、個人の悩みを解き放ち、企業の繁栄に繋げることが専門です。

鎌田千穂プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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