自然が同居人になる頃、人間も少し丸くなる。

鎌田千穂

鎌田千穂

テーマ:心のあり方のヒント

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田んぼの稲が、
少しずつ黄金色になり始めている。

昼間は、
まだまだ暑い。

「もう秋ですよ。」
と言われても、

「いや、気温が全然その気じゃない。」
という感じ。

ところが夕方になると、
山の端に太陽が隠れ始める。

その頃になると、
赤トンボが田んぼの上を飛び始める。

早いところでは、
8月下旬あたりで稲刈りも始まる。

品種によって、
こんなに早く稲刈りが始まることも知らなかった。

人間、
知らないことは山ほどある。

でも、
田んぼでトンボを追いかけていた記憶だけは、
なぜか残っている。

子どもの頃って、
トンボ一匹で一大イベントだった。

今なら、
「トンボが飛んでるね。」で終わる。

あの頃は、
「待てーーー!」だった。

夏の始まりと終わりには、ちゃんと出演者がいる

夏の始まりは蛍。
夏の終わりはトンボ。

自然って、
ちゃんと季節ごとに出演者を配置している。

しかも、
台本を渡されているわけでもないのに、
毎年ほぼ同じ頃に出てくる。

人間なんて、
「今年の夏、何した?」と聞かれて、

「……え?」
となることがある。

予定を立てた。
楽しみにしていた。
やりたいこともあった。

なのに、
気づいたら夏が終わりかけている。

記憶を探しても、
出てくるのは、

「暑かった。」

くらい。

自然はきっちり季節を進めているのに、
人間だけ、

今年の予定がどこかに蒸発。
とても揮発性が高すぎる。

( ̄▽ ̄;)

山里に住むと、虫との距離感が変わってくる

海が違い山里に住んでいた頃。

飛んでくる虫を見ては、
「ギャーーー!」

殺虫剤。

また虫。
「ギャーーー!」

殺虫剤。

また虫。
「もう勘弁してーーー!」

そりゃそう。

家の中に突然、
見たこともないサイズの虫が飛んできたら、

「こんにちは。」
とはならない。

人間の本能として、まず逃げる。

そして、
できれば誰かに処理を依頼する。

ところが、慣れとは恐ろしいもの。

虫に話しかけながら扉を開けて外に逃がす。
追いかけて駆除に走ることもする。

……私、何があった。

( ̄▽ ̄;)

あの頃、
「虫=敵」だったのに。

今では、
「そこにいたのね。」
くらいになる。

人間、
環境に慣れると変わる。

自然が「侵入者」から「同居人」に変わる

最初は、
虫が飛んでくるだけで事件。

でも、毎日一緒に暮らしていると、

鳥が鳴く。
虫が飛ぶ。
カエルが鳴く。

夜になると、
どこからともなく命の音がする。

朝も夜も、
何かが動いている。

そうなると、

「うるさい。」
「怖い。」
「気持ち悪い。」

だったものが、

「今日もいるね。」

に変わっていく。

たぶん、
自然が変わったんじゃない。

こっちの取扱説明書が変わった。

最初は、
自分の生活に入ってくるものを全部、
「邪魔。」と判断。

でも、
一緒にいる時間が長くなると、
「まあ、そういうものか。」になる。

これって、
人間関係も似ている。

最初は、
「なんでこの人、こうなんだろう。」

と思っていたのに、
しばらくすると、

「ああ、この人はこういう人だった。」になる。

好きになったわけでもない。
全部理解したわけでもない。

ただ、
いちいち驚かなくなった。

これ、けっこう大きい。

自然の中にいると、「自分が主役」という感覚が少し薄くなる

自然は、
こちらの都合なんて知らない。

眠っていても、
朝は来る。

忙しくても、
季節は変わる。

落ち込んでいても、
トンボは飛ぶ。

悩み事を抱えていても、
稲は黄金色になる。

こっちが、
「ちょっと待って。」

と言っても、
自然は待ってくれない。

だから、
自然の中にいると、

「まあ、私だけが世界の中心じゃないか。」

と少し思えてくる。

人間は、
悩み始めると、

世界中が自分の問題を中心に回っているような気になる。

返信が来ない。
嫌なことを言われた。
仕事で失敗した。
予定が狂った。

もう大変。

脳内では、緊急特番が始まる。

ところが外に出ると、
赤トンボが飛んでいる。

鳥が鳴いている。
風が吹いている。
稲が揺れている。

世界は、
何事もなかったように動いている。

……なんか、
こっちだけ大騒ぎしていたみたいになる。

( ̄▽ ̄;)

・・・とはいえ、私はまだ自然と完全には和解していない

ここまで書いておいてなんですが。

自然は好きです。
季節を感じるのも好きです。

虫たちの営みも、
命の音も、
いいなと思います。

今朝、虫に話しかけながら外へ逃がしている自分を見て、

「人間って、環境の中で少しずつ変わっていくんだな。」

と思った。

昔は、
祖母の家に行けば、
ムカデだの、
見たことのない虫だの、
普通にいた。

子どもの頃は、
それが怖かった。

でも、そこには普通に自然があった。
今は、そういう虫をほとんど見かけない場所で暮らしている。

だからなのか。

久しぶりに見たら、
たぶん私は昔より騒ぐ。

自然に慣れたというより、
自然から離れたことで、自然への耐性が落ちている。

人間、
便利になるほど、
野生を失っていく。

……とかなんとか言いながら。

アブ。
ブヨ。
スズメバチ。
巨大ムカデ。
毒蛇。

君たちは別。
そこはまだ同居人ではない。

できれば、
敷地外でお願いします。

自然と共存する。
素敵です。

自然を大切にする。
大事です。

命を尊重する。
もちろんです。

でも。
巨大ムカデを見た瞬間、

「自然の営みって素晴らしい。」

と言えるほど、
私は人間ができていません。

たぶん、

「ぎゃーーー!」

と言いながら逃げます。

そして、
誰かを呼びます。

虫を外に逃がしている私の横で、
ムカデだけは、

「それ、お願い。」になる。

……自然が同居人になるまでには、
まだ少し時間がかかりそうです。

昔は祖母の家にいた。
今は、ほとんど見かけない。

そう考えると、
私が自然に慣れたのではなく、自然のほうが遠くなったのかもしれない。

それでも、
たまに赤トンボが飛んでいるのを見ると、

「ああ、今年も来たな。」

と思う。

昔は、もっと身近に自然があった。

今は、たまに赤トンボを見て、

「自然っていいなぁ。」

なんて思っている。

人間、
自然から離れてから、
自然のありがたさに気づく。

……とか言いながら。
ムカデは別。

( ̄▽ ̄;)

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鎌田千穂
専門家

鎌田千穂(産業カウンセラー)

Chi-ho’s studio

組織課題を広い視野で捉え、主体性を持った思考と行動力、公私の均衡を図る自律型人材育成を行うこと。分析・統計による業務改善の解決策を示し、個人の悩みを解き放ち、企業の繁栄に繋げることが専門です。

鎌田千穂プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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