会社の会議:ファシリテーションでどう変わる?:共感マップ(聞く)
このコラムは、ビジネスパーソンの方々を対象として書いています。
このコラムは、コロナがもたらす変化を捉えた上で、「ファシリテーターを目指しファシリテーターになりませんか?」という内容です。なぜなら、ファシリテーターの必要性は今後益々増す、と私は考えているからです。
このコラムは次の3つの章で構成します。15分程度で読める内容です。
私は、ファシリテーションを核としたコンサルティング・サービスを営んでいる個人事業主です。屋号を BTFコンサルティングといいます。BTF は Business Transformation with Facilitation の頭文字をとりました。トランスフォーマーという映画をご存知の方がいらっしゃると思います。クルマがロボットに変身したり、ロボットがクルマに変身したりする映画です。トランスフォーメーション(transformation)とは変身させることです。ビジネス・トランスフォーメーションとはビジネスを変身させてしまうことです。ビジネス変革とも言われています。「ファシリテーションを活用してビジネス変革を実現して欲しい、そのためのお手伝いをしたい」と考え、この屋号にしました。
ファシリテーション。Facilitationという名詞です。「人と人が議論し合意形成をする。この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする。」これを実現するためにはどうしたら良いのかという課題を科学的に考え、試行錯誤を繰り返しながら作りあげられた手法、これがファシリテーションです。ファシリテーションをする人をファシリテーター(facilitator)と言います。
1. メディアが言っている今後の変化
この章では、メディアが語っている今後の変化をまとめます。
続く2章では、これらの変化から何が導き出されるのかについて考察します。
下記の各々のテーマについてまとめます。
- 雇用形態の変化:メンバーシップ型からジョブ型へ
- 会社業績の変化:雇用は大丈夫か?会社は大丈夫か?
- 働き方の変化:できるだけ対面を避ける vs できれば元に戻す
- 評価の変化:勤務時間から成果へ(チーム内の評価も大切)
- 心理的な変化:心理的な安心安全や信頼がいっそう重要になる
- 仕事の中身の変化:見直しが起こりビジネス変革が否応なしに起きる
1.1. 雇用形態の変化:メンバーシップ型からジョブ型へ
メンバーシップ型では、「就職」は「就社」を意味し、入社するとメンバーシップが与えられ、終身の雇用が保証され仕事内容や勤務地さらに配属や仕事時間キャリア設計も会社が決める、評価は年功序列で、給料は勤務時間による、というものです。テレワークに合わないと言われています。
高度経済成長時代がメンバーシップ型の会社社会に変えた。なぜかというと、その建て付けが会社にとって都合が良かったからなのでしょう。
雇用の安定、例えば終身雇用が守りきれなくなった VUCA の今、何がフェアか?と考えると、ジョブ型の方がフェアだ、という意見があります。メンバーシップ型で従業員を守り切れなくなったというのが本音なのでしょう。
そもそも、高度経済成長時代以前の日本は、職人社会だったという見方があります。
日本の働き方をみると、メンバーシップ型、終身雇用、年功序列という考え方は、1つの時代に過ぎなくて、長くは職人社会、技を持っている人がその技を活かして仕事をしていたということなのでしょう。
ジョブ型は、ジョブ・ディスクリプション(職務定義書)という文書で「何を実施してどういう成果を出すのか」を従業員と会社が合意するというものです。給料は仕事の難易度や成果や希少性など市場価値に基づきます。欧米型の働き方と言われています。
コロナ禍になり、日本でもジョブ型の雇用に舵を切った会社も出てきています。メンバーシップ型に比べてテレワークに合うと言われています。
高度経済成長時代以降、「就職」という言葉の実体は「就社」でした。就職は職に就くという本来の意味に変わるべきだという意見があります。就社はぶら下がりという問題を生む危険性があるという見方もあります。
他の職場でも戦える武器(スキル)を持っていれば、ジョブ形でも大丈夫。つまり、これからはスキルが大切になるということなのでしょう。
ここで、ジョブ型への移行に関する記事(事例)はたくさんあります。ここでは一例として、下の5つをリストします。
- 2020年10月20日の日経記事 『三菱重工が成果型評価 まず4万人対象 若手つなぎ留め』
- 2020年11月4日の日経記事 『三井住友海上、賞与の差 課長級で2倍 来年から一部ジョブ型』
- 2021年2月5日の日経記事 『シニアも成果主義 カシオ給与変動、明治安田は管理職に』
- 2022年1月28日の日経記事『共同体型の人事は変わるか 日立、全社員ジョブ型雇用に』
- 2022年3月8日の日経記事『損保ジャパン、専門職別にジョブ型導入 300人規模で』
1.2. 会社業績の変化:雇用は大丈夫か?会社は大丈夫か?
会社業績の悪化が言われています。会社そのものが立ち行かなくなる危険もあります。もちろん業種や職種にもよります。
1.3. 働き方の変化:できるだけ対面を避ける vs できれば元に戻す
コロナ禍に入った直後は、ここまでオンラインが増えると考えていた方は少なかったのではないでしょうか。
営業活動をオンラインで行う会社も増えました。3蜜を避けるという意識も定着しました。
新型コロナウイルス感染症の患者数が落ち着いてくると、できるだけ対面に戻したいという動きもあります。一方で、テレワークが定着し従業員の意識も変わり、テレワークとオフィスでの対面を合わせたハイブリッドな働き方を選んでいる会社もあります。テレワークなどリモート勤務100%としている会社もあります。
1.4. 評価の変化:勤務時間から成果へ(チーム内の評価も大切)
これは、メンバーシップ型からジョブ型への変化と密接に関係します。労働法制とも絡むようです。
同じような仕事をAさんがやると1日仕事。Bさんがやると半日で終わる。Bさんには追加で残りの半日分の仕事が割り当てられる。優秀な人に仕事が集中する。勤務時間での評価なので、AさんとBさんの働いた時間は同じ。評価もほぼ同じ。報酬もほぼ同じ。これが公平なのかどうか、議論が必要かもしれません。
成果での評価。通常仕事はチームで成し遂げるべき目標を決めて、チームで協働しますよね。個人の成果も大切でしょう。それ以上にチームの成果が重要です。
チームの成果に貢献した人がチームのメンバーから評価される。ここに価値を見出す方は多いと思います。直接の賃金には結びつかない場合もあるかもしれませんが、感謝や称賛・尊敬を得ることができます。従業員の観点で考えると、私は勤務時間で評価するよりも公平だと考えます。
1.5. 心理的な変化:心理的な安心安全や信頼がいっそう重要になる
不確実なコロナ禍こそ、人のつながりは絶対必要です。不安を持つ人が多いからです。会社に出社していれば、それほど意識しなくても、なんとなくできていた人のつながり。多くの人たちは、長年こうした環境で過ごしてきました。
テレワークの環境では、意識しないと人とのつながりを維持することはできません。心理的な安心安全は大切です。心理的な安心安全は意識しないと手に入りません。
これはテレワークであろうとなかろうと大切なことです。個々人がパフォーマンスを発揮するための土台と言って良いでしょう。
さらに、信頼も大切です。現状は「信頼貯金」があると言う人がいます。今後テレワークを継続する場合、テレワーク環境でいかに信頼を醸成するのかが課題でしょう。
1.6. 仕事の中身の変化:見直しが起こりビジネス変革が否応なしに起きる
会社業績が悪化する。これに対応するために、「本当に大切なもの」に集中するように変化すると言われています。「本当に大切なもの」以外にヒト・モノ・カネを注ぎ込む余裕はない、とも言えると思います。
業務が見直され、この流れからデジタル技術を活用したビジネス変革(DX、デジタル・トランスフォーメーション)が加速すると言われています。
2. 今後の変化から導き出されること
この章では、1章で説明した各々の変化から、何が導き出されるのかを考察します。
2.1. 雇用形態の変化:メンバーシップ型からジョブ型へ
コロナ禍以前は、勤務時間に応じて賃金を支払う仕組みが長く定着していました。時給という考え方ですね。
ところが、テレワークとなり、在宅で働く従業員を時間で管理するのは実質無理です。ITツールで従業員を監視しようとしても監視し切れません。そもそも監視する・監視されるという関係を作ることには、私は反対です。コロナ禍で特に大切な、心理的な安心安全や信頼の醸成にネガティブに働くからです。
会社に出社している人でも、サボろうと思えばできていたのですから、出社時刻と退社時刻から勤務時間を計算するというやり方は時代に合わなくなってきていたのではないでしょうか。何十年も前の工場勤務者ならばいざ知らず。ビジネスパーソンにとって大切なのは、クリエイティビティです。定型業務が主な人でも、常に変革・改革・改善は必要で、そのためにはクリエイティビティが必要です。何時間机に向かっているかということと、変革・改革・改善のアイデアを思いつくこととは関係がありません。
こうした課題を解決するため、職務定義書(ジョブディスクリプション)で社員の職務を文書化し明示して、その達成度合いなどをみるというのが「ジョブ型」雇用です。
ジョブ型になるということは、成果主義になるということです。
例えば、オンライン会議では発言しない人の存在は「無」になってしまいます。これを、余剰人員が炙り出されたという人もいます。それで良いのでしょうか?
もっと働きやすい場(新しい概念)が必要かもしれません。皆さんのオンライン会議にはファシリテーターが入っていますか?ファシリテーターは、場を設計し、意見やアイデアを引き出し、かみ合わせ、まとめます。ファシリテーターは、オンライン会議で発言しない傾向がある人からも、意見を引き出します。
個人の成果も大切ですが、チームの成果の方が大切です。ここでは、個々のパフォーマンスを引き出す能力が尊重されます。
自分たちの目標を達成するために、何をすべきかを自律的に考え行動する。目標に到達するために今日何をするのか、何時までに何を達成するのかをチームで考え行動する。こういった、チームで協働して目標に到達する、ということが大切なのです。
さて、ジョブ・デスクリプション(Job Description)。ネット検索すると、欧米では、どのようなものがジョブ・デスクリプションとされているのかがわかります。
一例として、下記のような項目が記述されたものです。(コレと決まったものはなく、会社によって異なりテンプレートがあります)
- 職務名
- 誰に報告するのか(氏名とメールアドレスなどの連絡先)
- 職務の簡潔な記述(3〜5行程度)
- その職務の責任(含:成し遂げるべき数値目標)
- その職務遂行に必要な要件(能力など)
(一例:"700+ job description templates")
ジョブ型は、自分のポータビリティを高めます。
何を言っているかというと、社内で部門異動の希望がある場合、今までの実績や経験をジョブ・ディスクリプションで相手部門に伝えることができます。社内で統一されたフォーマットで記述されているので、読みやすく訴求力があります。
また、転職する場合でも、ジョブ・ディスクリプションを元に経歴書や職務経歴書を書くことができます。
これは、VUCA で不確実な今こそ大切な要素だ、と私は思います。
2.2. 会社業績の変化:雇用は大丈夫か?会社は大丈夫か?
自分には、どんな影響が待ち構えているのだろう?とか、ワーク・ライフはどうなってしまうのだろう?などと不安になっている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、これはコロナ禍に特有なものではありません。
2011年10月14日の資料なので、ちょっと古いのですが、『会社は何歳まで生きるのか? 高校生のための金曜特別講座』という資料があります。当時、東京大学大学院総合文化研究科・教養学部准教授だった清水剛さんが高校生に説明した内容です。
清水さんは色々分析しておられます。私にもっとも刺さった文は『高校や大学を卒業して企業に就職することを考えてみよう。10年ぐらいしか企業の「盛り」の時期がないとすれば、人生設計には注意しなくてはいけない。』です。
人生100年と言われ始めている今、これからの自分の人生の長さと会社が存続する長さとを比べれば、自ずと会社に頼っているだけではリスクが高い、と言えると思います。
もちろん100年以上存続している会社も多いです。そのような会社は長い社史の中で変革を成し遂げているはずです。100年前と同じことをやっているという会社は少ないと思います。
スキルを身に付ける、「◯◯できる」能力を磨く、ということが大切になった、ということだと思います。これは、あなたの人生設計をする際の武器となり、また保険になるものだと思います。
コロナ禍の数年間で、キャリアを自分で決めることの重要性に気づいた人が多くなった 、と言えると思います。なりたい姿がある。だから、そのためにスキルを身につけ、そのスキルのレベルを上げることが重要だと気づいた。
まず、今の自分を振り返ることが大切だと思います。振り返るやり方は、私のコラム 『働き方:コロナ禍の今、コロナ後に備える:求められる人材になるために』 を参考にしていただけると思います。
その際、これから何年働く予定なのか、自分が狙う職種とか役割をいくつか考えることも大切なことだと思います。そして、狙う職種や役割を獲得するためのストーリー、どうやってその職種や役割を遂行する能力を身につけるのか、を考えることが大切だと思います。プランA、プランB、など複数のプランを持っておいた方が安心できると思います。
2.3. 働き方の変化:できるだけ対面を避ける vs できれば元に戻す
今、迅速にやるべき事は、半強制的にテレワークになった体験を振り返り、自分たちにとって働きやすくするためにはどうしたら良いのかを話し合い、試行する、さらに振り返る、このサイクルを回すことだと考えます。
テレワークの人が今現在いる組織であれば、google docsやslackなどのITツールを使ってアイデアを集め、短時間のオンライン会議でアイデアをまとめる、というやり方も良いでしょう。
半強制的に準備不足のままテレワークに入った状態をテレワークα(試行版)と呼ぶならば、今あなたの組織・チームのテレワークβ(正式版の候補)を創ってはいかがでしょう?
そして実際に試す、振り返る、こんなことを繰り返しながら、テレワーク1.0(最初の正式版)を創り上げることができるのだと思います。
すでにテレワーク1.0を創った組織もあるでしょう。テレワーク1.0ではなく、2.0を創ったという組織もあるでしょうね。半強制的なテレワークを始めてから数年経過しているのですから。
従来対面を基本としていた営業活動ですら、オンラインで行う会社が増えました。じっくり聞いて納得して購入できる、という今までになかった顧客体験をした、ということもあるのかもしれません。求められる営業スキルも変化してきています。
何がオンラインでできないのか?
今までやったことがないからできない、という短絡的な答えではなく、その業務の本質を見つめ直すことが鍵だろうと思います。オンラインでできない理由を洗い出し、どうしたら課題解決できるのかをチームのみんなで考えることが必要なのではないでしょうか?
セレンディピティ。
テレワークでは、偶然社内で会った人との雑談から生まれるアイデアがない、という話を聞きます。例えば、ベンディングマシンに飲み物を買いに行った時に、たまたま会った人との雑談からひらめくアイデア。
テレワークでは本当にセレンディピティができないのでしょうか。もし不可能ということならば、原則テレワークを選択した会社は、新しいものを生み出す力は弱まるのでしょうか。
私は、テレワークの環境でのセレンディピティを得る働き方を見つけ出して欲しいと願っている者です。原則テレワークにしている会社は、既に見つけているのではないかと思います。
会社によって、部門によって、従業員の方々の働き方は異なるので、会社や部門で(自分たちで)見つけるしかないのだろうと思います。
2.4. 評価の変化:勤務時間から成果へ(チーム内の評価も大切)
まず、チーム内の評価について書きます。
そもそも成果とは何でしょう?売り上げを上げること?利益を上げること?
最近では、顧客体験体験(CX)がフォーカスされています。顧客にどんな体験をお届けできるのか、どんな価値をお届けできるのか、ここにフォーカスがあたっています。
顧客が、価値があると認める、だからその価値ある体験をしたい。これを満足させることが求められます。社会的な価値も含まれるでしょう。
ゲームソフトを例にとってみましょう。そのソフトを持つことで体験すること、そこに価値を見出し、そのソフトが欲しくなる。場合によってはゲーム機も。
会社のすべてのチームはココに集中すべきだと考えます。
チームで協働して、より良い顧客体験を届けることに集中すべきです。顧客が体験する価値をデザインするとも言い換えられます。第一線の営業部門以外でも、創意工夫することで、貢献できるかもしれません。鍵は、チームで共に考えること、商品ではなく顧客が体験する価値に集中することです。
チームで達成された成果。その成果に貢献した個々のメンバーに対して、お互いに感謝や称賛・尊敬といった形でフィードバックをすることは重要です。メンバー同士で相互に感謝・称賛・尊敬するのです。
テレワークで、「仕事ができる人」の定義が変わったと感じた方がいらっしゃるのではないでしょうか?ハイコンテクストな人が駆逐され、ローコンテクストでないと仕事にならないです。ハイコンテクストとローコンテクストについては、『会社の会議:コロナ禍の会議をどうするべきか:非同期コミュニケーションを効果的に使いデジタル・オーバーロードを避けよう』 というコラムで説明しています。
また、ダラダラ話す、何を言っているのかイマイチ不明な人。リアルな会議室で対面であれば「何となく分かった気分」にさせることができたかもしれません。しかし、オンライン会議では嫌われます。
こんな人におススメのフレームワークがあります。PREPという、自分の考えを相手に分かりやすく伝えるものです。プレゼンテーションや説明で、論理的に説得力のある話の構成を考えるフレームワークです。
PREPは、Point(結論)、Reason(理由)、Example(具体例)、Point(結論)の4つの頭文字で、PREPの順に簡潔に話します。
例をあげます。
- 結論(Point):生産性を高めるためにアプリでの電子マニュアルを導入すべき。
- 理由(Reason):現状、紙媒体のマニュアルを使用しているが、メンテナンス不足による問題が起きている。また、作成および管理業務に人的コストがかかっている。
- 具体例(Example):飲食店の調理マニュアルは毎月新しいメニューに更新する必要があり、作成、印刷、配布が面倒。アプリなら低コストで短時間に更新・配信可。
- 結論(Point):電子データでマニュアルを管理できるのは便利。生産性を高めるためにアプリでの電子マニュアルを導入すべき。
2.5. 心理的な変化:心理的な安心安全や信頼がいっそう重要になる
この節で説明することは、2.4節のチーム内の感謝や称賛・尊敬とも関係がある内容です。
オンラインでも、人のつながりはキープできます。心理的な安心安全や信頼を醸成することは可能です。
私の体験を書きます。
私はグローバル・プロジェクトに携わっていました。数十名の海外の人たちと協働しました。日本人とは対面での仕事が多かったです。ほとんどの海外の人たちとは1回も対面であったことはありません。非対面の協働でした。たまにはオンライン会議で顔を見て議論することもありましたが、大抵は資料をリアルタイムで共有しながら(見ながら)の議論でした。例えば、プロジェクトの進捗確認や課題の洗い出し、課題解決のための議論。
1回も会ったこともない人たちとでも信頼を醸成し、協働することができました。海外の人たちだったので、ローコンテクストだったことは特筆すべきかもしれません。
誠実さと謙虚さが大切です。
人の話を聴く。わからないことは訊く。自分の主張を、論理立ててわかりやすく話す。理解してもらえたか否かを確認する。批判を受け入れる。等々です。
当たり前のことだとお考えの方がいらっしゃると思います。でも、この当たり前のことを実直に取り組んでいる人は多くありません。
アイツの喋りは拙いけど、言っていることは的を射ているようだから聴こう・理解しよう、と思ってもらえるまで、根気よく繰り返すことも大切だったと思います。
私は、オンラインの会議ではファシリテーターは必須だと考えている者です。オンライン会議をファシリテートできるファシリテーターがいたら、オンラインでも人とのつながり(信頼や心理的な安心安全)を醸成することはできます。
2.6. 仕事の中身の変化:見直しが起こりビジネス変革が否応なしに起きる
会社業績が悪化する。これに対応するために、「本当に大切なもの」に集中する。「本当に大切なもの」以外にヒト・モノ・カネを注ぎ込む余裕はない、とも言えます。
ホワイトカラーの多くが今までのビジネスのやり方、社内手続きを前提にした定型業務をこなしているのが現実だそうです。定型業務は自動化しやすい。RPA(Robotic Process Automation)や AI などのデジタル技術を使って、定型業務は人手を介さないものになり、人の介在は最小化されるでしょう。
そして、人間は「新しい価値を生み出す仕事」に向かうことが求められる、と私は考えます。変革の時が来た、と考えるべきだと思います。
マッキンゼーの ”The future of work in Japan”(ポスト・コロナにおける「New Normal」の
加速とその意味合い)という調査レポートがあります。
私は下記5点が重要な指摘だと思います。
- 日本は反復型のルーチンワークが占める時間が56%に達しており、そのうち67%が自動化できる可能性がある。
- 失われた20年の中、日本の産業は既存のプロセスを徹底的に磨くことで価値を生んできた。(日本は改善が得意ということなのでしょうが、今のコロナ禍では従前の改善(部分最適)では立ち行かない、ということだと私は思います)
- リアルを変える「手段」としてのデジタル変革(DX)であるという考え方をもって、そもそものビジネスのやり方や、現場での進め方といった実業の部分を変えないと、実際にビジネスで価値を生むことにならない(今こそデジタル技術を活用したビジネス変革によって全社規模の全体最適が求められている、ということだと私は思います)
- 「ビジネス・トランスレータ」という仕事の需要が急増する、と考えている(ビジネス・トランスレータ = 技術を活用し事業変革をリードする人材)
- 日本でビジネス・トランスレータは、2030年までに1100万〜1200万人規模で必要になる(ビジネス・トランスレータを含む自動化を推進する人が、1100万〜1200万人必要になる、ということ)
ビジネス・トランスレータ(Business Translator)について考察します。
ビジネス・トランスレータは、その会社の IT システム部と交渉する必要もあり、現場の業務を理解した上で、データアナリティクスなどビジネス側や IT 側とも議論ができる、まさに、トランスレータ(通訳者)だと定義されています。
大手のコンサルティング・ファームには、そういう人材が揃っているのかもしれません。
一方、業務プロセス一つとってみても、自社の内部の肝は外部の人にそう簡単に理解できるものではありません。そもそも、自社の業務の専門家が、自分の業務を外部の人にわかりやすく説明することができない、という場合もあります。SAP など業務ソフトに従った業務プロセスであれば少しニュアンスが違うかもしれませんが。ですから、デジタル技術を活用したビジネス変革は現場のオペレーションに理解がある人がやらないと、業務間のつなぎ込みなどが困難になる、と私は考えます。
さて、営業、マーケティング、経営企画、業務、IT 部門など、多くの部門を巻き込んでビジネス変革を実現するにはどうしたら良いのでしょうか?
これらのすべての人たちと対等に議論できる人・翻訳できる人は、スーパーマンとかワンダーウーマンのような人に私には思えてしまいます。言い換えると、多くの会社にそういう人はいない、と私は思います。
私は次のように考えます。
ひとりの人がビジネス・トランスレータの役割をやらなくてはいけないというのではなく、ビジネス・トランスレータという役割ができるチームが重要だと考えます。
具体的には、営業、マーケティング、経営企画、業務、IT など各部門の専門家を集め、ファシリテーターを入れ、ワークショップを開催して、これら専門家の人たちをチームとして機能するよう、チームビルディングし、協働を進めようというアイデアです。
私の経験を書きます。
大規模なビジネス変革の PMO(Project Management Office)の役割を担ったことがあります。変革後の姿はすでに提案されていました。そこで、専門家を集め AS IS(現状)と TO BE(変革後)の業務プロセスを見える化しながら、課題を洗い出しながら、対策を話し合うという活動を実施したことがあります。IT も関係するので、IT の専門家にも入ってもらいました。
最初はチームとして機能していませんでしたが、何回かワークショップを続けていく中で、チームとして機能するように変わっていきました。
変化した理由は、変革の全貌と各自への影響度合いを鳥瞰することができ、さらに問題がありそうなところはズームインして細かく見れるので、参加者に「自分のためになる・価値がある」と思ってもらえたことだと思います。専門家の人たちが、価値ある体験をできる場だ、と評価してくれれば、積極的かつ自律的な協働が実現します。単純なファシリテーションでは立ち行かないでしょうが、フレームワークとソフトスキルを活用したファシリテーションで対応できます。
ビジネス・トランスレータの役割を、各専門家どうしをつなげ活性化する触媒のような役割を果たすファシリテーターをチームに入れることで、ビジネス・トランスレータの役割をチームで担うことができると考えます。
3. 今ファシリテーターになろう
2章で述べたとおり、今ファシリテーターが注目されています。ファシリテーターが求められています。
NewsPicksの 『【完全図解】コロナ後の、雇用、仕事、給料はこう変わる』 という記事では、『オンライン会議・研修の切り盛りが重要スキルに』と始まり、『ファシリテーターの存在が重要になる』とし、『この役割は、組織上の肩書きや役職を問わず、誰でも務めることが出来る。だからこそ、リモートワーク時代の新たな重要スキルとなる。』とまとめています。
『誰でも務めることができる』は『組織上の肩書きや役職を問わず』に掛かっていると思います。ファシリテーションは「誰でもできる」ほど簡単なものではありません。誰でもできるのなら、そもそも敢えて言及する必要はないでしょうし。
ファシリテーションは、学び、そしてリアルな場で研鑽して、できるようになるものです。
なお、ファシリテーターが入る会議やワークショップの進め方については、下記のコラムを書いています。概要を理解していただけると思います。
- 会社の会議の進め方:場を作る:今理解すべき3つの視点
- 会社の会議の進め方:意見を引き出す:今理解すべき3つの視点
- 会社の会議の進め方:意見をかみ合わせる:今理解すべき3つの視点
- 会社の会議の進め方:意見をまとめる:今理解すべき3つの視点
ところで、『リモートワーク時代の新たな重要なスキルとなる』という指摘には全く同感です。
私の経験から言うと、ファシリテーターなしでオンラインの会議を成功させることはできません。
ここでの「オンライン会議」とは、オンラインで議論し意思決定し、さらに誰が何をいつまでに何の役割を持って実施するのかを合意形成し、そして今後どのように実施状況を追跡するのかを合意することです。単純な情報伝達の場ではありません。
もし、ファシリテーターなしでオンライン会議が成功したとしたら、それは偶然だと思います。多分再現性がないでしょう。つまり、次回も成功するかどうかは分からない、ということです。例えば、難しい課題を議論するオンライン会議を成功させることはむずかしいと思うのです。
さて、ファシリテーターになることを検討してみようかな、と思い始めている方。
1つの選択肢として、BTFコンサルティングを活用する、という方法があります。
BTFコンサルティングの活用方法は、下記2つのコラムで説明しています。
後者は、非対面でITツールを活用しながら行います。もしかしたら、ご使用体験のないツールがあるかもしれません。これはこれで楽しいかもしれませんよ。新しいものに好奇心を持つことは大切です。
私が伴走型でお手伝いします。ファシリテーターになりませんか?
リアルでもオンラインでも、「人と人とが集まり議論し合意形成する」という行為は無くならない、と私は思います。「人と人が議論し合意形成をする、この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする」ファシリテーターの必要性は今後益々増すと私は考えています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。