猫舌について、なぜ、熱いモノを飲めないのか?

「疲れているのに、布団に入ると目がさえてしまう」
「夜中に何度も目が覚めて、朝までぐっすり眠れない」
「人の名前が出てこない、買い物に来て何を買うか忘れてしまう」
仕事に家事、子育てや親の介護。毎日フル回転で過ごしている40代・50代の女性から、こうしたお話をよくうかがいます。
眠れないことと、物忘れが増えること。別々の悩みのように感じますが、中医学(漢方)では、この二つはとても近いところでつながっていると考えます。
■ 5人に1人が眠りに悩んでいます
ある調査では、日本人の約5人に1人が「睡眠で休養が取れていない」「何らかの不眠がある」と答えているという結果が出ています。しかも、年齢を重ねるほどその割合は増えていきます。60歳以上では約3人に1人。20人に1人が、眠るために睡眠薬を使っているとされています。
つまり、眠れないのはあなただけの問題ではなく、年齢とともに誰にでも起こりうる変化です。まずはそこを知っておいていただきたいと思います。
■ 中医学では「心(しん)」が眠りをつかさどります
中医学には「心は神を蔵す」という言葉があります。ここでいう「神(しん)」とは精神や意識のこと。心は、精神活動の中枢と考えられているのです。
ですから、心が乱れると、こんな症状が出やすくなります。
・眠れない(不眠)
・不安感
・動悸
・健忘(物忘れ)
お気づきでしょうか。「眠れない」と「物忘れ」が、同じ心の乱れから並んで出てくるのです。眠りが浅い時期に物忘れが増えた気がする、という実感には、中医学的にも理由があるということになります。
眠りを深くする条件は、体を疲れさせることではなく、心を落ち着かせること(安神)。ここが出発点です。
■ 「元気そうに見える人」の不眠もあります
不眠というと、体力が落ちて弱っている方をイメージされるかもしれません。たしかに、気・血・陰(体液)が不足して眠れなくなる「虚証(きょしょう)」タイプは多く見られます。
けれども、もう一つ。心の安定を邪魔するものが体の中にあって眠れない「実証(じっしょう)」タイプもあるのです。こちらは、まわりから見ると意外なほど元気そうに見える方が少なくありません。
虚証は足りないものを補う。実証は邪魔をしているものを取り除いて、高ぶりを鎮める。同じ「眠れない」でも、進む方向が正反対になります。
◆ ストレスや緊張が引き金になっているとき
寝つきが悪い、興奮して眠れない。それに加えて、頭痛や頭が重い感じ、口の中が粘る、口が苦いといった症状をともなうことがあります。
こうした場合には、精神を安定させる働きをもつ柴胡加竜骨牡蛎湯や温胆湯などが用いられることがあります。
◆ 体に熱がこもっているとき
お肉や脂っこいもの、カロリーの高い食事が続くと、体の中に熱がこもり、その熱で神経が高ぶって眠れなくなることがあります。このタイプも、見た目はとても元気そうです。
眠れないだけでなく、イライラする、気持ちが落ち着かない、口内炎や吹き出物ができやすい、尿の色が濃い、ほてる。こうした熱のサインが見られるときには、熱を冷まして高ぶりを鎮める黄連解毒湯や竜胆瀉肝湯などが選ばれることがあります。
◆ 更年期は「虚」と「実」が入り混じります
40代後半から50代は、疲れやストレスが積み重なったところに体力的な変化が重なる時期。虚と実が混ざり合った、少し複雑な不眠が起こりやすくなります。
この場合は、どれか一つの漢方薬で、というより、それぞれを組み合わせて整えていくことになります。ご自身の判断で選ぶのが難しいのは、まさにこの部分です。
■ 物忘れの背景にあるもの――「腎」と「お血」と「痰」
認知症にはいくつかのタイプがあります。脳の血管が原因となる脳血管性のもの、そしてアルツハイマー型。脳血管性は多発性の脳梗塞が原因とされ、その多くは生活習慣が関わっているといわれます。予防の余地がある、ということでもあります。
そしてアルツハイマー型についても、近年は脳の血流低下が関わっていると指摘されるようになりました。中医学の目で見ると、どちらにも「お血(けつ)」=血の滞りが関係していると考えられます。
ただし、原因はそれだけではありません。中医学がもっとも重く見るのは「腎(じん)」です。加齢とともに腎の力が落ちる「腎虚」、そして気が足りない「気虚」。さらに、熱や「痰(たん)」の影響も加わります。
◆ 「痰」がじゃまをしているサイン
痰とは、体にたまった病理的な水分のこと。これが心の働きをじゃますると、次のような症状が出ることがあります。
・頑固な不眠
・うつうつとした気分
・独り言
・無表情
・突然泣き出す
・手足のしびれ、震え
こうした状態には、血のめぐりを改善する活血薬だけでは届きません。痰を取り除く化痰薬や、熱を冷ます清熱薬が必要になります。代表的なものに温胆湯、黄連解毒湯。熱と痰の両方に働きかけるものとして、牛黄清心丸や星火温胆湯(黄連温胆湯)などがあります。
ここまでお読みいただくとお分かりのとおり、脳に関わる不調は、血のめぐりだけの問題ではありません。体質、生活、そして性格まで、考え始めるときりがないほど複雑です。
■ だからこそ、一人ひとり答えが違います
同じ「眠れない」でも、足りないのか、余っているのか。同じ「物忘れ」でも、腎の衰えなのか、血の滞りなのか、痰の影響なのか。
その方の体質と暮らしに合わせて改善の道すじを組み立てていく。それが中医学の役割だと考えています。
まずは今日から、こんなことを意識してみてください。
・寝る前のスマートフォンを、少しだけ早く手放す
・夜の食事を、脂っこいものから軽いものへ
・眠れない夜を「気合いが足りない」と自分を責めない
そのうえで、なかなか改善しない、あるいはご自身がどのタイプなのか分からないというときは、どうぞご相談ください。青森市のくすりの厚生会では、お一人おひとりのお話をうかがいながら、体質に合った漢方薬と生活のととのえ方をご提案しています。
眠りが変わると、日中の頭のはたらきも、気持ちの余裕も変わってきます。ご自身のための時間を、後回しにしないでいただきたいと思います。
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※漢方薬名は中医学の考え方をご説明するために挙げたものです。体質や症状によって適するものは異なりますので、ご使用の際は専門家にご相談ください。持病のある方、お薬を服用中の方はとくにご注意ください。
有限会社くすりの厚生会 岩本益宏
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