自己実現より「世代性」——日本人に合うキャリアの考え方
こんにちは。ホスピタリティコンサルタントの菅又蒼圭美です。
今回から、「若手が辞めない職場は『受け継ぐ』」の続きを、毎週1本ずつお届けします。1本目は、上に立つ方のお話です。
部下のほうが、仕事を知っていた。
客室乗務員として管理職になり、国際線も担当するようになった頃のことです。
そこは、部下のほうが仕事を知っている職場でした。管理職なのに、自分より部下のほうが詳しい。正直に言えば、負い目がありました。
ちょうどその頃、私はNHKの大河ドラマ『風林火山』を見ていました。甲斐国を舞台にした、武田信玄に仕える軍師・山本勘助の物語です。原作は井上靖先生です。私はもともと井上靖先生の大ファンでした。
主人公の山本勘助が、重臣の板垣信方から、「お前はお館様を欺いてはいないか?」と詰め寄られる場面があります。その時の山本勘助の返答が、このドラマ屈指の名場面です。
「自分にとって国とは人である。お館様であり、板垣様であり、諏訪の姫様である。人を思うとき、己の命を賭すことができるのです。」と涙ながらに語ります。私はこの場面が好きで何度も見返しました。
そして重臣の板垣信方が亡くなったあと、武田信玄が「人は城、人は石垣、人は堀」という言葉とともに、城を築かないと決める。ドラマでは、そう描かれていました。
それを見て、私はこう思えたのです。
管理職として、ただただ人を大切にすればいい。私にとっては、部下が城なんだ。
詳しくなるより、守る。
現場の知識や情報で、上司が部下より詳しくなるのは難しいことです。
では、部下が望んでいる上司の姿とは何でしょうか。圧倒的な技術や知識でお手本になることも、その一つです。けれど、まずは「この会社の中で、自分の立場が守られている」と部下が感じられること。そして何より大切なのは、お客様のために同じ方向を向き、お客様のために改善できることを一つずつ実現していく姿だと、私は思います。
以前のコラムでも書きましたが、ご主人の転勤で「仕事を辞めなければいけないかもしれない」と相談に来た部下がいました。客室乗務員の仕事がとても好きな方でした。私はさまざまな制度を調べ、いろいろな部署に掛け合いました。業務の範囲は狭くなったものの、その方は会社を辞めずに済みました。
(この話は、前の連載の最終回「何歳からでも、次の人へ渡せる」に書いています。 https://mbp-japan.com/yamanashi/greenforest/column/5238697/)
仕事の中身では、部下のほうが詳しかったかもしれません。けれど、部下の立場を守るために動くことなら、管理職の私にできました。
御社の管理職の方は、一人で抱えていませんか
新しく管理職になった方が、「部下より知らないこと」を気にして、一人で抱えこんではいないでしょうか。
上に立つ人が大切にしたい3つのこと
1. いちばん詳しい人でなくていい
現場の仕事は、現場にいる人のほうがよく知っています。それは当たり前のことです。管理職の仕事は、部下より詳しくなることではありません。部下の立場を守り、お客様のために同じ方向を向いて、改善を形にしていくことです。
2. 「教えてください」と言える上司のもとで、人は育つ
上司が知ったふりをすると、部下は本当のことを言いにくくなります。「教えてください」と言える上司には、部下は自分の知っていることを渡してくれます。受け継ぐことは、上から下へだけでなく、下から上へも起きるのです。
3. 人を城と思う職場に、人は残る
城は一度築けば、そこにあり続けます。でも人は、大切にされていないと感じれば去っていきます。若手が辞めない職場づくりは、仕組みより先に「ここでは自分が大切にされている」と感じてもらうことから始まると思います。
負い目は、入口だった
「部下のほうが仕事を知っている」。あの頃の私には負い目でした。けれど、それがあったからこそ、人を大切にするところから始めればいいと気づけたのだと思います。
管理職になったばかりの方の研修や、職場づくりのご相談もお受けしています。どうぞお気軽にお声がけください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
明日からできること
新しく管理職になった方に、「全部知っていなくていいですよ。部下に教えてもらってください」と、一言伝えてみてください。その一言で、肩の力が抜ける方がきっといます。


