「形に心が伴っていく」——型から入るキャリア
こんにちは。ホスピタリティコンサルタントの菅又蒼圭美です。
前回は、「自己実現」とは少し違う、「世代性」というキャリアの考え方についてお話ししました。受け取ったものを、次の人へ渡していく。今回は連載の最終回です。それは何歳からでもできる、というお話をしたいと思います。
「早く相談すればよかった」
客室乗務員として管理職になってからのことです。
ある日、部下の一人が相談に来ました。ご主人の転勤が決まり、仕事を辞めなければいけないかもしれない、というのです。
客室乗務員の仕事がとても好きで、一生懸命に働いている方でした。なんとか続けられる道はないか。私はさまざまな制度を調べ、いろいろな部署に掛け合いました。
その結果、転勤先では業務の範囲が狭くなってしまったものの、会社を辞めずに済みました。
そのとき、その方から言われた言葉があります。
「自分一人で悩んでいないで、早く相談すればよかった」
今でも、管理職になってよかったと思える出来事です。
「もっと早く」と、「これからでも」
第3回で、地域の研修でお会いした80代の女性のお話をしました。その方は、研修のあとにこうもおっしゃっていました。
「今まで、たくさんの機会を失ってきたような気がします」
そして同時に、「これからの人生に希望が持てました」とも。
「もっと早く知っていれば」という気持ちは、誰にでもあると思います。けれど、80代の方が「これから」を語ってくださった姿に、私は大切なことを教わりました。道は、何歳になってもひらけるのです。
あなたには、「もう遅い」と、あきらめかけていることはありませんか。
どの段階でも、やり直すことができる
前回ご紹介した心理学者エリクソンは、人の一生をいくつかの段階に分けて考えました。それぞれの年代に、身につけておきたい課題があります。
けれど私が講座でいつもお伝えしているのは、その先です。もしある年代で身につけられなかったとしても、どの段階でも、やり直すことができる。
たとえば、就職氷河期と呼ばれた時代に社会に出た方々が、今、中年にさしかかっています。その頃のストレスや不満、自信を失った感覚を、今も引きずっている方もいらっしゃいます。
でも、何歳からでもやり直せます。そして私は、そのやり直しそのものが、次の世代への継承であり、貢献だと思っています。
何歳からでも渡せる、4つの理由
1、早いほうがいい。でも、遅すぎることはない
若いうちから「受け取って、渡す」ことを意識できれば、それに越したことはありません。けれど、気づいたときが、いちばん早いときです。
2、経験は、年齢とともに深まる
記憶力や処理の速さは年齢とともにゆるやかになりますが、経験にもとづく知恵や判断力は、年齢を重ねても伸び続けると言われています。長く働いてきた方ほど、渡せるものを、もうたくさん持っています。
3、やり直す姿が、そのまま次の人への贈りものになる
うまくいかなかった時期を経て、もう一度歩き出す。その姿を見た若い人は、「失敗しても大丈夫なんだ」と受け取ります。
4、一人で抱え込まなくていい
「早く相談すればよかった」という言葉のとおり、道は一人で探すより、誰かと一緒に探すほうが見つかります。自分一人で達成できるものは、本当は何一つありません。
この連載でお伝えしたかったこと
6回にわたって、私が受け取ってきたものをお話ししてきました。
客室乗務員時代の先輩から受け取った「常に笑顔で」。遠足のバスガイドさんから受け取った「私のまねをしてごらん」。型から入ると、心はあとからついてくること。今いる場所で、道を深めていくこと。そして、受け取ったものを次の世代へ渡していくこと。
受け取って、深めて、渡す。キャリアは、自分一人の物語ではなく、前の人から次の人へと続いていく物語の一部なのだと、私は思っています。
私にとって働く意味とは、働く人の尊厳を守り、それを次の世代に残していくことです。
現在、接遇・コミュニケーションの研修や、ベテランの方の技と心を若い世代へ渡していく職場づくり、キャリアのご相談をお受けしています。「もう遅いかも」と感じている方こそ、どうぞ一人で悩まず、お声がけください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
明日からできること
「もう遅い」と思って手放しかけていることを、一つ書き出してみてください。そして、その横に「今日からできる、いちばん小さな一歩」を書き添えてみてください。もし一人で決めきれなければ、身近な誰かに話してみる。それも、立派な一歩です。


