【男女トラブル】元恋人からの請求額が増え続けるときは?
結婚を前提に新居を借り、冷蔵庫や洗濯機、ベッドやダイニングテーブルを二人でそろえた後に婚約を解消することになった、というご相談は少なくありません。入籍や挙式の前であっても、新生活のための家具や家電はすでに部屋に運び込まれていることが多く、「誰がどれを持っていくのか」「自分が払った分は返ってくるのか」という問題が残ります。
この記事では、婚約を解消したときに新居の家具・家電をどう分けるのかについて、所有の考え方、二人で買った物の分け方、婚約破棄の責任との関係、引き取りの際に気をつけたい点を順に整理します。
本記事は2026年10月時点の法令と、裁判例の一般的な考え方をもとにしています。婚約が成立していたか、どちらに解消の原因があるかなど、個別の事情によって結論は変わりますので、目安としてお読みください。
婚約の解消では、離婚の「財産分与」はそのまま使えない
離婚の場合には、結婚してから夫婦が協力して築いた財産を分ける「財産分与」という仕組みがあり、家具や家電も対象になると考えられています。しかし、婚約は結婚の約束にとどまり、二人はまだ法律上の夫婦ではないため、財産分与の規定をそのまま使うことはできません。
そのため、婚約を解消したときの家具・家電の分け方は、基本的に「その物が誰のものか(所有権)」から考えることになります。誰が買ったのか、誰が代金を出したのか、贈られた物なのかによって、扱いが変わります。
なお、長く同居して夫婦同然の生活を送っていた場合には、内縁関係と評価され、財産分与の考え方が類推されることもあります。婚約と内縁の違いについては【男女トラブル】内縁・事実婚を解消するとき|法律上の夫婦と何が同じで、何が違うのかで解説しています。
家具・家電は「誰が代金を出したか」が出発点
新居のためにそろえた物は、購入の経緯によっておおむね次のように整理できます。
| 購入の形 | 基本的な考え方 | 確かめたい資料 |
|---|---|---|
| 一方が全額を支払った | 支払った人の物と考えるのが基本 | レシート、カード明細、通販の購入履歴 |
| 二人で代金を出し合った | 二人の共有。持分ははっきりしなければ等しいと推定される | 振込記録、割り勘のやり取り、家計の記録 |
| 相手への贈り物として買った | 贈られた側の物になるのが基本 | 贈ったときのメッセージや経緯 |
| 親などの援助で買った | 援助が誰に対するものだったかで変わる | 送金記録、援助を受けた経緯 |
一方が代金を支払った物
一人で代金を支払った物は、支払った人の物と考えるのが基本です。配送先や保証書の名前が相手になっていても、代金を出したのが自分であれば、自分の物だと主張できる余地があります。ただし、相手から「新生活のために贈ってもらった物だ」と言われると、贈与かどうかが争いになるため、購入時のやり取りが手がかりになります。
二人で代金を出し合った物
二人でお金を出し合って買った物は、二人の共有になります。持分は出した割合によると考えられますが、割合がはっきりしない場合には、持分は等しいものと推定されます(民法250条)。生活費用の共同口座から支払っていた物は、共有と見られやすいといえます。
贈り物として渡した物
誕生日や記念日の贈り物として渡した家具・家電は、原則として贈られた側の物になります。一方で、結婚することを前提に渡した物については、婚約が解消されたときに返還を求める余地があると考えられる場合もあります。結婚を前提に渡したお金の扱いは結婚を前提に渡したお金・結納金は返還請求できるかで取り上げています。
二人で買った物を分ける3つの方法
共有の物は、それぞれがいつでも分けるよう求めることができます(民法256条)。分け方には、主に次の3つがあります。
- 品目ごとに引き取り先を決める方法です。冷蔵庫は一方、洗濯機は他方というように現物で分けます。
- 一方がまとめて引き取り、相手の持分に見合う金額を支払う方法です。新居に住み続ける側が引き取る場合によく使われます。
- 買取業者などに売却し、得た代金を持分に応じて分ける方法です。どちらも引き取りを望まない場合に向いています。
ここで気をつけたいのは、金額の基準が購入時の価格ではなく、現在の価値になりやすいという点です。家具や家電は使い始めると価値が下がるため、「買ったときの半額を払ってほしい」と求めても、相手が応じないことがあります。買取査定の金額などを目安にすると、話し合いが進めやすくなります。
話し合いがまとまらないときは、裁判所に分割を求めることもできます(民法258条)。ただ、手続にかかる時間や費用に比べて対象となる物の価値が小さいことが多いため、交渉や調停でまとめることが多いと考えられます。同棲を解消する場面での分け方は【男女トラブル】同棲を解消するとき、家具・家電はどう分けるのか|共同で買ったものの扱いもあわせてご覧ください。
婚約破棄の責任と、家具・家電の費用の負担は分けて考える
物が誰のものかという問題とは別に、正当な理由なく婚約を破棄された場合には、破棄した側に対して慰謝料のほか、結婚の準備のために使ったお金の賠償を求められることがあります。式場のキャンセル料や新居の初期費用などが典型です。
ただし、家具・家電は婚約がなくなってもそのまま使い続けられる物であるため、購入代金がそのまま損害として認められることは多くありません。一方で、婚礼家具のように結婚生活のためにそろえ、ほかに使いにくい物については、購入額と売却額の差額や、購入代金の一部を損害として考慮した裁判例もあります。
また、どちらにも大きな落ち度がなく、話し合いで婚約を解消した場合には、二人で決めて支出した準備費用を、収入などを踏まえた割合で分担するという考え方がとられることがあります。収入に大きな差がなければ、折半とされた例もあります。
つまり、「婚約を破棄したのは相手だから、家具も家電もすべてこちらのもの」という結論にはなりにくく、所有の整理と、損害の整理を分けて組み立てることが大切です。婚約破棄の責任については婚約を一方的に破棄された|慰謝料を請求できるケース・できないケースと結婚をやめたい|婚約の解消で慰謝料を払わずに済む「正当な理由」とはで解説しています。
親の援助や結納金で買った場合
結納金や、親から受け取った結婚準備のための資金は、結婚することを前提に贈られたものと考えられることが多く、婚約が解消されれば返還を求められる場合があります。もっとも、解消の原因をつくった側からの返還請求は認められにくいという考え方もあり、経緯によって結論が分かれます。
援助を受けた資金で買った家具・家電も、その援助が本人に対するものだったのか、二人に対するものだったのかによって帰属が変わります。親が当事者として返還を求めてくることもあり、本人同士の物の分け方と、親との金銭の問題が絡み合いやすい場面です。親族から借りたお金の扱いは【男女トラブル】相手の家族から借りたお金|交際解消と同時に清算するで取り上げています。
新居に残った物を引き取るときに気をつけたいこと
婚約を解消した直後は感情的になりやすく、物の引き取りをめぐって新たなトラブルが生じることがあります。次の点に気をつけてください。
- 相手の同意なく、共有の家具・家電を売ったり捨てたりしないことが大切です。自分の持分を超えて処分すると、損害賠償を求められるおそれがあります。
- 相手が住んでいる部屋に、合鍵を使って無断で入り、物を持ち出すことは避けてください。自分が代金を出した物であっても、住居侵入などを疑われるおそれがあります。
- 「期限までに引き取らなければ処分する」と一方的に告げて捨てることも、後で争いになりやすい対応です。
- 引き取りの連絡は、日時・品目・方法など用件を絞って行います。回数が多かったり感情的な言葉が入ったりすると、清算のための連絡であっても、つきまといと受け取られるおそれがあります。
相手が勝手に売ってしまった場合については【男女トラブル】同棲中に相手が勝手に家具や家電を売った、連絡の取り方については【刑事事件】元交際相手に荷物やお金の清算で連絡したい|正当な用件でもストーカーと言われる場面で詳しく解説しています。新居が賃貸の場合の解約や退去費用は同棲解消の敷金・原状回復・退去費用は誰が払う?をご覧ください。
話し合いで分けるときの進め方
家具・家電を話し合いで分けるときは、次の順で整理すると、言い分の食い違いを減らしやすくなります。
- 新居にある家具・家電を一覧にし、品目ごとに購入時期と購入額を書き出します。
- 誰が代金を出したかを、レシートやカード明細、通販の購入履歴、保証書などで確かめます。
- どちらが引き取りたいかを、品目ごとに確認します。
- 二人で買った物は、買取査定などを参考に現在の価値の目安をつけ、引き取る側が支払う金額を決めます。
- 引き渡しの日時と方法、運搬にかかる費用をどちらが負担するかを決めます。
- 決めた内容を合意書にまとめ、ほかに請求し合わないことを確認する条項を入れます。
最後の条項は清算条項と呼ばれ、後から別の物や費用について蒸し返されることを防ぐ役割があります。詳しくは清算条項の意味|後から追加請求されないためにをご覧ください。相手と顔を合わせて話すことが難しい場合や、相手が話し合いに応じない場合には、弁護士が窓口になって進める方法もあります。【解決事例】相手と直接顔を合わせずに婚約を解消したい―弁護士介入で約1ヶ月半にて円満解決した事例や【男女トラブル】相手が話し合いに応じない|連絡が取れないまま清算する方法も参考になります。
よくあるご質問
自分が全額を払った家電を、相手が持って行ってしまいました
自分の物であれば、相手に返還を求めることができます。まずは品目と購入の記録を示し、返還か、代金に相当する金額の支払いを書面で求めるのが一般的です。相手が「贈ってもらった物だ」と主張することもあるため、購入時のやり取りを残しておくと役に立ちます。
相手が荷物を引き取りに来ないまま、退去日が迫っています
相手の物を勝手に捨てると、後で損害賠償を求められるおそれがあります。引き取りの期限と方法を書面で伝え、それでも応じない場合の保管や費用の負担をどうするかを、記録に残る形で確認しておくことが大切です。やり取りが難しい場合は、弁護士を通じて連絡する方法もあります。
相手から「家具代の半分を払ってほしい」と言われました
まず、その家具が二人の共有なのか、自分が代金を出した物なのかを確かめます。共有だとしても、基準になるのは購入時の価格ではなく現在の価値であることが多いといえます。婚約破棄の責任をめぐる請求が含まれているのかどうかも、あわせて整理する必要があります。
まとめ
婚約を解消したときの家具・家電は、離婚の財産分与ではなく、誰が代金を出したかという所有の考え方から整理し、二人で買った物は現在の価値を目安に分けるのが基本です。婚約破棄の責任の問題とは分けて考え、決めた内容は合意書に残しておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。相手と直接やり取りすることに負担を感じる場合は、【男女トラブル】弁護士が交際関係の解消時のトラブルに介入するサービス|金銭の清算・画像の削除・ストーカー・脅迫まで全国対応もご覧ください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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