判決に納得できない場合|控訴を検討する際の判断材料
女性用風俗を利用した後で、担当したセラピストや店側から「あのときの動画がある」「拡散されたくないなら」と持ちかけられている。そうしたご相談が寄せられます。
風俗トラブルの解説は、男性が客である前提で書かれたものがほとんどです。しかもその多くは、客が撮った側、つまり責任を問われる側として説明されています。女性が客である場面はちょうど裏返しで、撮られた側として相談に来られる方が目立ちます。立場は逆でも、金銭や関係の継続を求める側の運び方はよく似ています。
この記事では、撮影と拡散を材料に何かを求められている女性の方に向けて、いま何が起きているのかの整理と、この段階で選べる手を説明します。
この記事で扱う範囲
- 成人同士のやり取りを前提にしています。18歳未満の方が関係する場合は扱いが大きく変わるため、個別にご相談ください。
- 利用したこと自体の是非は問いません。責める前提では書いていません。
- すでに投稿されている場合の削除や発信者の特定は、別のコラムの範囲です。ここでは投稿される前の段階を中心にします。
- 金額の目安や刑の重さの数値は扱いません。個別の事情によって結論が変わるためです。
手口の骨格は、客の性別によって変わらない
金銭や関係の継続を求める側の運び方には、共通する形があります。弱みにあたるものを作るか見つける、それを持っていると相手に示す、短い期限と現金という形で答えを迫る、一度応じると次の要求が続く、という流れです。
男性が客の場面と女性が客の場面を並べると、入り口の事情は違うのに、途中から先はよく似た形になります。
| 項目 | 男性が客の場合に多い形 | 女性が客の場合に多い形 |
|---|---|---|
| 入り口 | 店のルール違反や無断の撮影を指摘される | サービス中の様子を撮られていたと告げられる |
| 握られているとされるもの | 行為があったという事実や店側の記録 | 画像や動画そのもの |
| 求められること | その場での現金の支払い | 金銭、関係の継続、利用の継続 |
| 添えられる言葉 | 警察に行く、家族や職場に連絡する | 拡散する、家族や職場に送る |
似ているのは運び方であって、法律上の立ち位置まで同じというわけではありません。次の章が、その違いにあたります。
違うのは「誰が撮ったのか」という一点
男性が客の場面では、撮ったのが客であることが多く、客は責任を問われる側に立ちます。これに対して、女性が客の場面で持ち込まれる相談は、撮られたのが自分の側という形です。この違いは、その後に選べる手を大きく変えます。
撮影を対象とする法律に、性別の限定はない
2023年7月13日に施行された性的姿態撮影等処罰法は、撮る側と撮られる側の性別を限定していません。同法が対象として挙げているのは、正当な理由がないのにひそかに撮る行為、同意しない意思を形成し、表明し、または全うすることが困難な状態にさせ、もしくはその状態に乗じて撮る行為、行為の性質が性的なものではないと誤信させ、もしくは特定の者以外の者が閲覧しないと誤信させて撮る行為などです。
「そのとき強く断らなかった」ことで結論が決まるわけではない
撮影の場面で強く拒まなかった、あるいは撮られていること自体は知っていた。そのことを理由に、相談をためらう方がいます。もっとも、条文は閲覧の範囲について誤信させて撮る形も並べています。どこまでを了解していたのかは、後から評価される事柄です。断らなかったという一点だけで、話が終わるわけではありません。
撮ることと、渡す・公然と示すことは別に評価される
同じ法律は、撮影によってできた記録を他人に提供する行為、不特定または多数の者に提供し、もしくは公然と陳列する行為、提供などの目的で保管する行為を、撮影とは別の行為として定めています。「持っているだけだ」と言われても、その先の行為はあらためて評価されます。
また同じ法律には、押収された物に記録された影像を消去するための手続も置かれています。記録の入った端末そのものを捜査機関が押さえられるかどうかが実際上の分かれ目になりやすいのは、このためです。
「拡散する」と告げること自体の評価
画像がまだ出回っていない段階でも、拡散をほのめかして相手を怖がらせる言動や、それを材料に金銭や行為を求める言動は、内容に応じて別の犯罪として評価されます。罪名の振り分けと、拡散前にとる初動の順序は、当事務所の別のコラムで扱っています。
ここで押さえておきたいのは、利用したことについての評価と、相手の脅しについての評価は、別々に行われるという点です。自分にも引け目があるという感覚は自然なものですが、それが相手の言動を正当化する理由にはなりません。
女性が客の場面で、相談が止まりやすい三つの事情
利用したこと自体を責められると思ってしまう
成人同士の利用について、客の側に罰則が定められているわけではありません。店が届出をしているかどうかも、客が何かの義務を負うかどうかを左右するものではありません。この点は、女性用風俗の利用にまつわるトラブルを扱った別のコラムで説明しています。
相手が店なのか、個人なのかが分からない
女性用風俗では、予約は店を通していても、当日以降のやり取りが個人の連絡先に移ることがあります。撮影が店の関与のもとで行われたのか、担当者が個人的に行ったのかによって、誰に何を求めるのかが変わります。店の規約は店と客との取り決めであって、担当者が個人的に撮った記録を正当化するものではありません。
「恋愛のつもりだった」と言われる
好意のある関係だったという説明と、撮影や公開について了解があったかどうかは、別の話です。関係の性質を持ち出されると反論しづらく感じますが、金銭の要求が繰り返されているかどうかは、外から見て取れる事情です。
求められているものが、お金とは限らない
女性が客の場面では、求められる中身が金銭にとどまらないことがあります。指名を続けること、店を通さずに会うこと、追加の利用や上位のコースへの変更など、関係や利用の継続という形をとる場合です。
こうした求め方は、現金をその場で要求される場合に比べて、脅されていると自覚しにくい面があります。もっとも、応じなければ画像が出回るかもしれない、という構図自体は変わりません。求められているものが金銭かどうかで、相手の言動の評価が決まるわけでもありません。
やめたいと言えない状態が続いているとき
関係を終わらせようとするたびに画像の話が出る、返信が遅れると連絡が増える。そうした状態が続いている場合は、いま何を求められているのかを一度書き出してみてください。要求の中身、告げられた期限、それを伝えられた日時を並べると、続いている出来事の輪郭がはっきりします。誰かに説明するときにも、この形が役に立ちます。
目標を二つに分けて考える
この段階でできることは、「これ以上材料を増やさない」ことと「すでにある記録に手を打つ」ことに分かれます。混ぜて考えると、どちらも中途半端になりがちです。
| 目標 | この段階でできること | 限界として知っておきたいこと |
|---|---|---|
| 材料を増やさない | 新たな画像や個人情報を渡さない。連絡の窓口をひとつにまとめる | やり取りを止めても、相手の手元にある記録は残る |
| ある記録に手を打つ | 記録の所在(端末、保存先、共有の有無)を確かめる道筋をつくる | 削除したという返事だけでは、控えの有無までは確かめられない |
| 脅し自体を止める | 警察や弁護士など、第三者を間に入れる | 相手の身元や連絡手段によって、進み方は変わる |
なお、脅しにあたるやり取りは、そのままの形で残しておいてください。読み返すのがつらくても、自分から消さないことが後で効いてきます。
すでに支払ってしまった場合
支払った後にご相談に来られる方も少なくありません。応じたことで話が終わるとは限らず、同じ材料を持ち出して再び連絡が来ることがあります。
返してもらう筋道はあるが、限界もある
脅されて渡したお金については、民法96条1項の強迫を理由とする取消しと不当利得の返還、あるいは不法行為に基づく損害賠償という筋道が考えられます。もっとも、相手の身元が分からない場合や、相手に資力がない場合には、回収まで進めないこともあります。後で取り戻せる前提で追加の支払いに応じるのは、避けたほうがよい判断です。
支払いの形は、後から効いてくる
現金を手渡しした場合、支払った事実そのものを示す資料が残りにくくなります。振込の記録、金額と期限を告げられたやり取り、受け渡しの前後の連絡は、後から経緯を説明する材料になります。
相談先の使い分け
- 身の危険が差し迫っていると感じるときは110番へ連絡してください。
- 緊急ではない相談は、警察相談専用電話「#9110」が窓口です。
- インターネット上のやり取りが絡む場合は、各都道府県警のサイバー犯罪相談窓口があります。
- 相手との交渉の窓口を引き受け、通知の送付や刑事手続の検討までまとめて進めるかどうかは、弁護士にご相談ください。
どこに相談するかを決めきれない段階でも、状況を言葉にしておくこと自体に意味があります。時間が経つほど、やり取りの記録が消えたり、相手の要求が積み上がったりしやすくなります。
よくあるご質問
自分から呼んだことは不利になりますか
利用したこと自体と、撮影や脅しの評価は別の問題です。呼んだ、支払った、という事情が、撮影について了解していたことの証明になるわけではありません。
相手の身元が分かりません
源氏名とアプリの連絡先しか分からないという相談は珍しくありません。店を通じた予約の記録、送金の履歴、待ち合わせの連絡など、手元に残っているものから確認していくことになります。分からないままでも、警察への相談や、以後のやり取りの止め方についての助言は受けられます。
店に連絡してもよいですか
店に伝えることで担当者からの連絡が止まる場合もあれば、店側が担当者をかばう対応を取ることもあります。伝える前に、何を求めるのか(記録の削除なのか、連絡の停止なのか)を決めておくと、やり取りが整理しやすくなります。
まとめ
- 弱みを作り、持っていると示し、期限を切って現金を求め、一度応じると続く。この運び方は、客の性別によって変わりません。
- 違うのは誰が撮ったのかという点で、撮られた側は被害を訴えられる立場にあります。
- 撮影を対象とする法律は、撮る側と撮られる側の性別を限定していません。閲覧の範囲を誤信させて撮る形も対象に挙げられています。
- 撮ること、渡すこと、公然と示すこと、保管することは、それぞれ別の行為として評価されます。
- 利用したことへの評価と、相手の脅しへの評価は別々に行われます。引け目が相手の言動を正当化するわけではありません。
- 目標は「材料を増やさない」ことと「すでにある記録に手を打つ」ことに分けて考えると整理しやすくなります。
- すでに支払っていても、そこで終わりではありません。返還を求める筋道はありますが、限界があることも知っておいてください。
当事務所では、風俗トラブルおよび男女間のトラブルについて、客側の立場からのご相談をお受けしています。撮影や拡散を材料に金銭や関係の継続を求められている場合、まだ何も起きていない段階でのご相談も可能です。
ご相談の内容が、ご家族や勤務先に事務所から伝わることはありません。どこまで話せるか決めきれない状態でも構いませんので、まずはお問い合わせください。


