【カスハラ対策】義務を果たしていなかったことは民事の責任を重くするのか
反社会的勢力に属する夫からの金銭要求に長年応じ続け、精神的にも追い詰められていた女性が、弁護士の介入によって夫との関係を解消できた事案をご紹介します。
ご相談の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 依頼者 | Aさん(女性・20代) |
| 相手方 | 夫Bさん(反社会的勢力に属する人物) |
| 状況 | 婚姻期間中、Bさんから繰り返し金銭を要求され、総額は1億円を超えていた。関係解消を望んでいたが、Bさんの言動への不安から決断できずにいた |
| 弁護士の対応 | Aさんの代理人としてBさんと交渉し、離婚に向けた協議を行った |
| 結果 | 離婚が成立し、Bさんとの関係を解消した |
ご相談に至るまでの経緯
Aさんは、いわゆる暴力団に属するBさんと婚姻関係にありました。
Bさんは定まった収入がない様子で、Aさんに対して継続的に金銭を要求していました。要求額は次第に大きくなり、Aさんは要求に応じるための資金を工面する中で、性風俗店での就労を含め、生活に大きな負担を抱えるようになっていきました。
離婚を含めた関係解消も考えたものの、Bさんの反応がどのようなものになるか分からないという不安から、なかなか決断に踏み切れずにいました。
結果として、AさんがBさんに渡した金額は1億円を超えるまでになりました。
長期にわたる就労と金銭要求の負担により、Aさんは次第に心身の負担を感じるようになっていきました。それでもBさんからの要求は変わらず続き、Aさんは関係の継続に限界を感じ、婚姻関係解消のため弊所にご相談いただきました。
弁護士の対応と解決への流れ
まず、AさんからBさんとの出会いから現在に至るまでの経緯を時系列で伺い、金銭を渡すに至った事情を確認しました。
Aさんによると、当初は関係を維持したいという思いから金銭を渡していたものの、次第に要求額が増え、言動や態度に厳しさが増すようになり、不安を感じながら応じるようになっていったとのことでした。BさんはAさんの行動を把握しようとする傾向があり、外出の際には報告を求められていたようです。
こうした状況が続く中で、Aさんは他者との関わりを持ちにくくなり、心理的な負担が積み重なっていったことがうかがえました。
Bさんの言動について客観的な証拠(LINEやメール、録音・録画など)が残っているか確認しましたが、そうした記録はなく、また、これまで警察への相談歴もないことが分かりました。
Aさんのご意向を確認したところ、これまで渡した金銭の回収は難しいと理解しており取り戻しは求めないこと、今後は金銭を渡したくないこと、そして何よりBさんとの関わりを断ちたいという思いが強いことが分かりました。
相談の最中にもBさんから頻繁に連絡が入っていたことから、弊所で対応をお引き受けすることとしました。
Aさんには、今後Bさんへ直接連絡をしないこと、また、今後のトラブルに備えて最寄りの警察署へ被害相談に行くことをお伝えしました。
その後、弊所からBさんへ連絡し、Aさんへの直接連絡を控えるよう申し入れるとともに、これまで渡した金銭の返還は求めないこと、一方で生活費としての要求にはこれ以上応じられないこと、Aさんが離婚を希望していることを伝えました。
Bさんは、夫婦である以上生活費を負担する義務があるとの主張を続け、当初は容易には受け入れられませんでした。
その後もBさんとのやり取りは続きましたが、法的な説明に対して納得が得られない状態が続きました。Bさんからは頻繁な連絡や強い口調での要求、事務所への直接来訪の要求、弁護士会への苦情申立てなど、対応に時間と労力を要するやり取りが重ねられました。
途中でBさんに代理人弁護士が就いたこともありましたが、その代理人も途中で辞任するに至りました。
弊所からは、要求には応じられないこと、納得がいかない場合は調停など法的手続を利用するようお伝えしました。その後Bさんから調停の申立てがありましたが、法的根拠に基づかない主張が続き、調停は不成立となりました。
その後も話し合いを重ねましたが進展が見られなかったため、弊所からは、裁判所の判断により義務が確認されれば検討するが、話し合いでの解決は困難であると判断している旨を伝え、対応を終了する意向を示しました。
しばらくして、Bさんから離婚に応じる意向が示されました。離婚条件についていくつかの要望がありましたが、いずれも受け入れず、金銭の支払いはできないこと、これまでの金銭についても返還を求めないことを伝えたうえで、離婚届の作成に至りました。
Aさんに離婚成立をご報告するとともに、今後のリスクに備え、弊所にも今後の連絡先を伝えずに転居されるようお勧めし、本件は終了となりました。
解決結果と弁護士のコメント
弊所では、反社会的勢力に属する人物が相手方となる民事事件も取り扱っております。
こうした事案では、通常の民事事件とは異なる配慮が必要となり、対応に時間を要することが少なくありません。
まず、刑事事件化する事情がすぐにはない場合でも、早い段階で警察に相談しておくことが望ましいといえます。
また、法的な理屈を説明しても、必ずしもスムーズに話が進むとは限らない点にも留意が必要です。本件のように請求を受ける立場であれば法的根拠に基づいて拒否するという対応が取れますが、こちらから請求を行う場合には、根拠や証拠が整っていても、相手方が任意に応じてくれるとは限りません。
加えて、資産の所在が把握しにくいケースも多く、強制執行による回収が難しい場合があります。
こうした事情から、反社会的勢力に属する人物との民事上のトラブルでは、権利の実現を目指しつつも、これ以上の負担を負わないことや、関係を解消すること自体を現実的な目標として位置づける必要がある場合があります。
これは相手方本人とのやり取りに限らず、相手方に代理人弁護士が就いた場合にも同様に当てはまります。過去には、代理人が就いたにもかかわらず、法的な観点からは進むはずの話が円滑に進まなかった例もありました。
反社会的勢力に属する人物との関わりを持つと、トラブルが生じた際に通常より対応の負担が大きくなる傾向があります。
そのため、関わりを持つ前に相手方の属性を把握しておくことが重要です。
既に関わりを持ってしまっている場合は、関係の解消ができないか検討することをお勧めします。
同種のトラブルでお悩みの方へ
反社会的勢力に属する相手からの金銭要求や関係解消でお悩みの場合、ご自身だけで対応を進めようとすると、思わぬリスクを伴うことがあります。まずは弁護士や警察に相談しながら、慎重に進めていくことをお勧めします。


