「バックにはヤクザがいる」と言われた|自称への向き合い方
勤務先の代表者らから「会社に損害を与えた」として1500万円を請求され、対応に悩んでいたAさんのケースをご紹介します。証拠が乏しく警察でも対応が難しいとされた状況から、弁護士が窓口となって交渉を進め、請求の撤回と円満な退職を実現しました。
ご相談の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ご相談者 | Aさん(男性・20代) |
| お勤め先 | 不動産関連の会社 |
| 相手方 | 勤務先の代表者・役員ら |
| 請求された内容 | 仕事上のミスを理由とする1500万円の損害賠償請求 |
| ご依頼の内容 | 会社との対応窓口の一本化、退職に向けた交渉 |
| 解決結果 | 請求の撤回、円満な退職の実現 |
ご相談に至るまでの経緯
Aさんは新卒で不動産関連の会社に入社しました。社長を含め若い社員が多く、勢いのある組織で、業績も順調でした。
Aさんは営業を担当し、先輩の指導を受けながら経験を積んでいましたが、会社について知るにつれて不安を感じるようになりました。社長や役員が、いわゆる半グレと呼ばれる人物と親しく付き合っている様子を、少しずつ知るようになったためです。
ある時、Aさんは仕事上の失敗をしてしまいました。その際、社長や役員、先輩らから、会社に損害を与えたとして1500万円を支払うよう求められました。
1500万円という大金を持っていないAさんは対応に困りましたが、話し合いができる雰囲気ではなく、会社を辞めることも難しいと感じ、要求を受けた後も出勤を続けていました。
次第に心身への負担が大きくなっていったAさんの様子に、両親が気付きます。当初、Aさんは両親を巻き込みたくないと考え事実を伏せていましたが、一人で抱えることが難しいと判断し、会社で起きたことや1500万円を請求されていることを打ち明けました。
両親はすぐに警察へ相談することを提案し、3人で警察署に行きましたが、脅迫を受けたことや金銭を請求されていることについての証拠がなく、対応は難しいと言われてしまいました。
困った末にAさんの両親が当事務所を見つけ、相談にいらっしゃいました。
弁護士の対応と解決への流れ
まず、Aさんに会社で起きた仕事上の失敗について説明してもらいました。たしかにAさんの不手際によるものであり、会社に迷惑をかけた可能性がある点は否定できませんでした。
ただし、Aさんの行為によって実際に損害が発生したのかどうかは明らかでなく、仮に損害が発生していたとしても、1500万円という金額の根拠は示されていませんでした。そのため、まずは会社からの請求について、法的な理屈や損害額算定の根拠を確認していく方針としました。
Aさんは、もう会社に出勤したくないという意向を強く持っていたため、退職の意向を伝え、退職日までは有給休暇を消化することにしました。突然の欠勤で会社の業務に支障が出る可能性もあるため、必要最小限の引き継ぎには協力する旨も併せて説明しました。
Aさんとご両親は、自分たちで会社と話をするのは難しいと判断されたため、当事務所で対応を引き取ることになりました。
Aさんから依頼を受け会社に連絡すると、役員のBさんが窓口として対応しました。代理人に就いたことを伝えたうえで、Aさんが今後出勤する意向はないこと、必要な引き継ぎは弁護士を通じて可能な範囲で行うことを説明しました。
あわせて、会社から損害賠償を請求されているものの、法的な理屈や1500万円の算定根拠が判然としないため、請求内容を整理して書面で連絡するよう求めました。
Bさんは、自分は窓口だが、損害賠償請求については社長のCさんに確認する必要があるとし、Aさんが過去に起こしたトラブルについてCさん同席のもと説明したいので来社してほしいと申し入れてきました。
電話や書面でのやり取りでは話が進まない様子であったため、Bさんの求めに応じて会社へ出向くことにしました。会社では、大きな会議室にBさんやCさんのほか、複数の社員と思われる人物が同席していました。
その場で改めてAさんの退職の意向を伝え、あわせて1500万円の請求について説明を求めました。BさんやCさんからはAさんの失敗についての説明がありましたが、1500万円という金額を裏付ける説明はありませんでした。
そのため、1500万円の請求には応じられない旨を回答したうえで、Aさんが抜けることで会社の業務に支障が生じる可能性を踏まえ、当事務所を通じて必要な引き継ぎのやり取りをさせていただく旨を伝えました。
BさんやCさんは難色を示していましたが、最終的に1500万円の請求は撤回するとし、引き継ぎをしっかり行うことと、会社で知った情報や本件について口外しないことを条件として提示してきました。
その後、Aさんが退職するまでの間、当事務所が必要な業務引き継ぎの橋渡しを行い、会社の要望とAさんと会社との間の紛争を清算する内容を盛り込んだ合意書を取り交わしました。Aさんは無事に退職し、本件は終件となりました。
解決結果と弁護士のコメント
法的な根拠のない請求や、根拠があったとしても過大な請求を、威圧的な手段で通そうとする、いわゆる不当要求に関するご相談は、当事務所でも数多くお受けしてきました。
以前は不当要求をしてくる相手方にいわゆるヤクザが多く見られましたが、近年はヤクザそのものが相手方となるケースは減り、本件のように半グレや、半グレと付き合いがあるとみられる人物が相手方となるケースが増えています。
暴力団や準暴力団に所属する人物が相手方であれば、警察が把握していることも多く介入がスムーズに進む場合がありますが、相手方の属性が明確に把握できない場合には、民事事件として対応せざるを得ないこともあります。
警察に相談すると民事事件だから弁護士に相談するよう言われ、弁護士に相談すると警察に相談するよう言われてしまうといった、対応の間隙が生じることがあります。本件でも、証拠がないことを理由に警察の対応を求めることができませんでした。Aさんのご家族は他の法律事務所にも相談されたようですが、暴力団や半グレが関わる事件には対応していないと言われ、何かあれば警察に相談するよう案内されたとのことでした。
当事務所には、警察にも他の法律事務所にも対応してもらえなかったという方が多く相談にいらっしゃいます。刑事事件・民事事件といった枠組みにとらわれすぎず、相談者の方のニーズにどう応えるかという観点から対応を考えており、そのため、他の法律事務所ではあまり見かけない不当要求対応を多くお受けしてきました。
本件のように、会社から従業員が損害賠償を請求されるケースは少なくありません。本来、会社から従業員への損害賠償請求は、仮に損害の発生や金額を立証できたとしても、全額が認められるわけではなく、一定の制限がかかります。
しかし、会社側から圧力をかけられ、損害全額の賠償を余儀なくされたり、低い待遇での就労を強いられて会社を辞められずにいたりするケースが後を絶ちません。
法的な観点から順序立てて整理すれば、そもそも損害賠償義務があるのか、あるとしてもどこまでが適正な範囲かを検証していくことができます。過大な請求を受けてお困りの場合には、一人で悩まず、当事務所へお気軽にご相談ください。


