手切れ金を払って関係を終わらせる|口外禁止・清算条項付き合意書の作り方
交際関係を解消したにもかかわらず、相手が物件から退去せず、さらに引っ越し費用の負担まで求められる。こうしたトラブルは、同棲関係の解消の場面で少なくありません。今回は、Aさんからのご依頼により、退去と費用負担をめぐる交渉を弁護士が担った事案をご紹介します。
ご相談の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 依頼者 | Aさん(20代・女性) |
| 相手方 | 同棲していたBさん |
| ご相談のきっかけ | 交際関係の解消後もBさんが物件から退去せず、引っ越し費用等の負担を求められたこと |
| 弊所の対応 | 代理人としてBさんと交渉し、退去と請求内容の整理を実現 |
ご依頼に至るまでの経緯
Aさんは、自身が契約する物件でBさんと同棲していました。あるとき口論の末、BさんからAさんに対する暴行があり、Aさんは交際を続けることは難しいと考え、関係の解消と物件からの退去をBさんに申し入れました。
しかし、Bさんは私物を物件内に置いたまま退去を拒み、それどころか、退去してほしいのであれば引っ越し費用や新居の初期費用を負担するようAさんに求めてきました。
Aさんは暴行の件について警察にも相談していましたが、証拠が十分でなく刑事事件化は難しいとされ、今後のトラブルを避けるためBさんと直接連絡を取らないよう助言を受けていました。自分だけでBさんと話し合いを続けることは困難だと判断し、弊所にご相談にいらっしゃいました。
弁護士の対応と解決への流れ
Aさんから時系列で事情を伺ったところ、Bさんには新しい物件を借りる資力がなく、単純に転居先を確保させる方法は現実的でないことが分かりました。
また、Bさんの親が同棲していた物件の近くに住んでおり、暴行や関係解消の経緯についてもある程度把握していることが判明しました。そこで、双方の親を介する方法も検討しましたが、Aさんの意向を踏まえ、対応は当職が窓口として引き受けることにしました。
Bさんに連絡すると、当初は口論の経緯を一方的に説明してきましたが、内容はAさんから聞いていたものと相違なかったため、事情は理解しつつも暴行に及んだこと自体は問題であると伝えました。あわせて、Aさんが警察に相談していた事実も伝えたところ、Bさんは暴行の事実を否認しつつも、以降は落ち着いた態度で話ができるようになりました。
そのうえで、物件の契約者はAさんであり、Bさんの滞在が長引けばAさんに費用負担が生じ得ること、他方でBさんが求める引っ越し費用や新居の初期費用についてはAさんが支払うべき法的な根拠がないことを説明しました。あわせて、Bさんの実家が近くにあることを踏まえ、一度実家に戻るという解決案を提示しました。
Bさんは当初難色を示しましたが、方針を変えずに交渉を続けた結果、最終的に実家に戻ることを了承しました。なお、Bさんの自力での搬出では退去予定日に間に合わない見込みであったため、搬出費用のみAさん側で負担することとし、退去は無事に完了しました。
解決結果と弁護士のコメント
本件では、退去予定日までにBさんの退去を実現し、当初求められていた引っ越し費用や新居の初期費用の負担は回避することができました。結果として、Aさんが負担したのは搬出費用のみとなりました。
同棲関係の解消をめぐるトラブルは珍しくなく、退去や転居にかかる費用のほか、家賃や生活費の清算を求められるケースもあります。婚姻関係にある夫婦であっても費用負担の取り決めがないことはありますが、婚姻関係にない同棲では、こうした取り決め自体がされていないことが多く、誰が何を負担するのかが曖昧なまま感情的な対立が重なり、解決までに時間を要しやすい面があります。
また、物件を契約している当事者は、貸主から見て賃料や遅延損害金の請求を受け得る立場にあり、契約当事者でない同居人よりも事実上弱い立場に置かれることがあります。退去を留保することを示唆しながら金銭を求めてくるケースが見られるのも、こうした構造が背景にあると考えられます。
法的手続によって解決を図る方法もありますが、時間を要するあいだに金銭的な負担が増えていくおそれもあります。すべての事案に当てはまるわけではありませんが、一定の負担を受け入れてでも、話し合いによる早期解決を図ることにメリットがある場合もあると言えます。
同種のトラブルでお悩みの方へ
同棲関係の解消をめぐる物の処分や費用清算のトラブルは、当事者だけで話し合おうとすると感情的な対立から長期化しやすい傾向があります。相手方との直接のやり取りに不安を感じている場合や、請求されている金額に法的な根拠があるのか分からない場合は、早い段階で弁護士にご相談いただくことをおすすめします。


