現場に薬物があった場合|同席していただけでも問われるか

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

風俗店を利用した場所に薬物があった、相手が持っていた、あるいは店に警察が入ったときにその場に居合わせた。こうした状況で「自分は同席していただけだ」と考えている方から、ご相談をいただくことがあります。

 結論から申し上げると、同じ空間にいたという事実だけで罪に問われるわけではありません。ただ、自分では「いただけ」と思っていることと、捜査機関から見たときの評価が同じになるとは限りません。分かれ目になるのは、その場にいたかどうかではなく、その薬物を自分がどう認識し、どう扱える立場にあったかという点です。

 この記事では、風俗の場面で薬物が出てきたときに何が問われるのかを順に整理します。なお、責任を軽く見せるための説明の仕方を扱うものではありません。事実と違う話をすることは、後の段階でかえって自分の立場を悪くします。

この記事で想定している場面

 薬物が関係する風俗トラブルとしてご相談をいただくのは、おおむね次のような場面です。

  • ホテルの客室や店の待合室に、薬物と思われるものが置かれていた。
  • 相手が持っていて、その場で使い始めた。
  • 「一緒にどうか」と勧められた、あるいは手渡された。
  • 店に警察が入ったときに、たまたまその場にいた。


 いずれも、自分から薬物を持ち込んだわけではないという点が共通しています。しかし、そこから先の評価は場面ごとに大きく分かれます。

「同席」という区分は法律の側にはない

 まず押さえておきたいのは、「同席していた」という状態そのものを取り出して罰する規定は用意されていないということです。法律が見ているのは、持っていたのか、使ったのか、渡したり受け取ったりしたのか、という個々の行為です。

 そのため、「その場にいたかどうか」を出発点にすると話がかみ合いません。考える順番は、次のように整理できます。

問われる行為要点となる問い風俗の場面で起きやすい形
持っていた存在を知っていたか、自由に扱える状態だったか客室や待合室に置かれていた
使った自分の意思で体に入れたか勧められて口にした、吸った
受け取った・渡した自分の手元に移ったか「持っておいて」と手渡された


 この三つはそれぞれ別に成立し得るもので、どれか一つに当てはまらなくても、残りの二つで問題になることがあります。

「持っていた」と評価されるのはどんな状態か


手に持っていなくても持っていたとされる

 法律でいう所持は、手に握っていることを指すものではありません。自分の支配が及ぶ範囲に置かれていれば、所持と評価されます。かばんの中でも、部屋のどこかでも同じです。自分の物である必要もなく、他人から預かっただけのものでも所持にあたります。

二人以上で「一緒に持っていた」とされる条件

 一つの薬物について、複数の人が同時に所持していたと評価されることがあります。ここで見られているのは、おおむね次の二つがそろっているかどうかです。

  1. その薬物がそこにあることを知っていたこと。
  2. 自分の判断で取り出したり、使ったり、処分したりできる状態にあったこと。


 逆に言えば、あることは知っていても、どこにしまわれているか知らされていない、鍵がかかっていて取り出せない、使うことを止められていたといった事情があるときは、二つ目が満たされない方向に働きます。単に同じ部屋にいたというだけでは、通常は二つ目に届きません。

 一方で、あらかじめ使うことを聞かされたうえでその場に加わり、その場で自由に使える状態に置かれていたときは、評価が変わってきます。誰かが全員分をまとめて用意し、費用を後で分ける話ができていた場合も同じです。

「知らなかった」はどこまで通るのか

 薬物の事件では、違法な薬物であるとはっきり分かっていた必要はないとされています。「違法な薬物かもしれない」という程度の受け止めがあれば足りると扱われるためです。

 そのため、実務で評価が割れやすいのは、中身を確かめずに預かった、運んだ、という場面です。「よく分からないが頼まれたので持っていた」という説明は、本人としては無関係を示すつもりでも、聞く側からは「疑いながら引き受けた」と読まれることがあります。預かっていた時間が数分であっても、その間に自分の判断で扱える状態にあったと見られれば、同じ枠組みで検討されます。

手渡された時点で立場が変わる

 その場で受け取るという行為は、持っていたこととは別に評価されます。お金を払っていなくても、使うつもりがなくても、受け取ったこと自体が独立して問われる仕組みになっています。

 断ったのに置いていかれた、押しつけられた、という場合もあります。このときに後から効いてくるのは、そのあと自分がどう行動したかです。手を触れないまま速やかにその場を離れたのか、持ち帰って自宅に置いたままにしたのかでは、意味が大きく違ってきます。

使っていなければ関係ないとは言えなくなっている


使うことも別に扱われる

 所持と使用は、別の行為として整理されています。そして大麻については、2024年12月から使用も処罰の対象になりました。それ以前に書かれた解説の中には、大麻は使っても罪にならないという前提のまま残っているものがありますので、古い情報には注意が必要です。

その場にいた人に尿の提出を求められることがある

 現場に薬物があった場合、居合わせた人に対して尿の提出を求める流れになることがあります。応じるかどうかは基本的に任意ですが、断ったからその場で話が終わるとは限りません。この点は手続の枠組みが別にありますので、別の記事で扱っています。

知らないうちに体に入っていた場合

 飲み物に入れられていた、その場に立ちこめていた煙を吸い込んだ、といった形で、自分の意思によらずに体内に入ることがあります。自分の意思で使ったといえない場合には、使用したことにはなりません。ただしこれは、後から思いついたように述べても受け入れられにくい主張です。心当たりがあるなら、いつ、どこで、どのような状況だったのかを、最初の段階から事実どおりに伝えておくことが大切です。

「合法」と言われて渡されたものはどうか

 風俗の場面では、はっきりとした違法薬物ではなく、「アロマ」「合法」といった名目で売られている液体や粉を勧められることがあります。こうしたものの中には、所持だけでなく、買うこと、受け取ること、使うことまでが法律で禁じられているものが含まれています

 該当するかどうかは、商品名や売り手の説明ではなく、含まれている成分が指定されているかどうかで決まります。「これは違法ではない」と言われて受け取ったとしても、それだけで安心できるものではありません。渡した相手が正しく理解しているとも限りません。

その場に警察が入ったとき


その場で扱いが決まる場合と、後日連絡が来る場合

 所持品の中から薬物が出てきた人は、その場で身柄を取られることがあります。一方で、居合わせただけの人については、その場では氏名と連絡先の確認にとどまり、後日あらためて連絡が来るという流れも珍しくありません。連絡がないまま時間が経つこともあります。

その場で求められること

 現場では、おおむね次のようなことを求められます。

  1. 氏名、住所、連絡先を答えること。
  2. 持ち物を見せること。
  3. 尿を提出すること。
  4. 警察署まで同行すること。
  5. 話した内容をまとめた書面に署名すること。


 これらのうち何が任意で何がそうでないかは、場面によって異なります。任意と強制の境目については別の記事で整理していますが、共通して言えるのは、その場で口にしたことが後の段階まで残るということです

何をどう話すかで自分の位置が決まる

 薬物が絡む場面で聞かれることは、突き詰めると四つに集約されます。誰の物か、いつからそこにあったか、自分は触れたか、自分は使ったか、の四点です。

 ここで気をつけたいのが、相手をかばうつもりの説明が、自分の立場を悪くする形で働くことがあるという点です。「自分たちのものだ」「一緒に買った」といった言い方は、その場では相手を守るつもりでも、自分にも自由に扱える立場があったことを認める材料として読まれます。

 反対に、その場をやり過ごすために「何も知らない」と言い切り、後から説明を変えると、変えたこと自体が信用を下げる材料になります。分からないことは分からないと述べ、はっきりしている部分だけを事実どおりに伝えるほうが、結果として自分を守ります。

風俗の場面に固有の事情


金銭の要求と結びつくことがある

 相手が薬物を持ち出したうえで、後から「警察に言われたくなければ」という形で金銭を求めてくることがあります。要求する側にも当然に責任が生じる場面ですが、こちらに後ろめたさがあると、応じてしまいがちです。一度支払うと、そこで終わらないことがほとんどです。

相談をためらう理由が、そのまま不利に働く

 利用していたこと自体を知られたくないという気持ちから、誰にも言えないまま時間が過ぎるという方が多くいらっしゃいます。しかし、こちらが動かない間にも、相手側の説明だけが積み上がっていくことがあります。自分にも落ち度があると感じている場合の相談の進め方については、別の記事で整理しています。

その場を離れたあと、落ち着いてやっておくこと


  1. 日時、場所、誰がいたかを、覚えているうちに書き出しておく。
  2. 自分が何を見て、何をして、何をしなかったかを、時系列に分けて整理する。
  3. その場で聞かれたこと、答えたこと、署名した書面の有無を、思い出せる範囲で残す。
  4. 相手や店とのやり取りの記録を、消さずにそのまま保存する。
  5. 連絡が来たときに備え、どこまでが自分の話で、どこからが他人の話かを区別しておく。
  6. 早い段階で弁護士に事実を伝え、見通しを確認する。


 記録を消したり、誰かと話を合わせたりすることは、いずれも後で説明がつかなくなる行為です。様子を見ること自体が適切な場面はありますが、なかったことにしようとする行動は、それとは別のものです

まとめ


  • 同じ場所にいたという事実だけで、罪に問われるわけではない。
  • 分かれ目は、薬物の存在を知っていたか、自分の判断で扱える状態だったかの二点にある。
  • 手に持っていなくても、支配の及ぶ範囲にあれば持っていたと評価されることがある。
  • 「違法な薬物かもしれない」という程度の受け止めがあれば足りるとされている。
  • 受け取ること、使うことは、持っていたこととは別に問われる。
  • 大麻については2024年12月から使用も処罰の対象になっており、古い解説には注意がいる。
  • 「アロマ」「合法」といった名目のものでも、所持や使用が禁じられているものがある。
  • その場で話した内容は後の段階まで残るため、事実と違う説明はかえって不利に働く。


 弁護士には守秘義務があります。相談した内容が家族や勤務先に伝わることはありませんので、事実関係が整理しきれていない段階でも、まずはそのままお話しください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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