深夜・逮捕直後の緊急対応|今すぐ動くべき初動と連絡先

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

 風俗トラブルが表面化するのは、多くの場合が深夜から早朝にかけてです。店の営業時間帯そのものが夜であり、その場で警察が呼ばれれば現行犯逮捕という形になることもあります。

 ところが深夜は、法律事務所も、法テラスも、弁護士会の窓口職員も動いていない時間帯です。一方で捜査の手続は時計どおりに進み、夜が明ければ取調べが始まります。「相談先が閉まっているのに、手続だけが先に進む」——これが深夜という時間帯の難しさです。

 この記事では、深夜に逮捕された(あるいは家族が逮捕されたと連絡を受けた)場面を想定し、その数時間で何ができるのか、どの窓口が動いていてどこが朝まで動かないのかを整理します。性風俗を利用していた方が客側の立場で直面しやすい論点にも触れます。

1. 深夜に「動いている窓口」と「朝まで動かない窓口」

 まず、時間帯ごとの現実を把握しておくと、無駄な電話をかけ続けずに済みます。

窓口深夜の状況
110番24時間。身の危険がある、暴力を受けているといった場面はここが最優先
留置されている警察署の担当官24時間。本人からの弁護人選任の申出を弁護士会へ取り次ぐ役割を担う
弁護士会の当番弁護士受付電話番号自体は24時間受け付けている会が多いものの、職員が直接応対するのは平日の日中が中心で、時間外は留守番電話になる会が少なくない
法テラス・サポートダイヤル平日9時〜21時、土曜9時〜17時(祝日・年末年始を除く)。深夜は電話がつながらない。メールでの問い合わせは24時間受付
#9110(警察相談専用電話)平日の日中が中心で、受付時間は都道府県警により異なる
一般の法律事務所夜間・休日の電話対応の有無は事務所ごとに異なる。問い合わせフォームの送信自体は24時間可能

 つまり深夜にできることの多くは、**「その場で解決すること」ではなく「朝いちばんに動き出すための手続を、いま踏んでおくこと」**です。留守番電話への吹き込みも、フォームの送信も、それ自体が翌朝の初動を数時間早めます。

2. 逮捕された本人が、深夜のうちにできること

「当番弁護士を呼んでください」と伝える

 当番弁護士制度は、各地の弁護士会が運営している制度で、逮捕された人が無料で1回、弁護士を呼んで相談できるというものです。日本弁護士連合会は、本人が依頼する場合は警察官・検察官・裁判官に「当番弁護士を呼んでください」と伝えるよう案内しています。年齢は問われません。

 ここで押さえておきたいのが、当番弁護士と国選弁護人は別の制度だという点です。被疑者国選弁護制度の対象は勾留された被疑者であり、逮捕されてから勾留されるまでの段階は対象外とされています。栃木県弁護士会は、「国選弁護は勾留されてから」と言われても気にする必要はなく、当番弁護士ははっきりと申し出てほしい旨を案内しています。深夜に逮捕された直後は、まさにこの「勾留前」の時間帯にあたります。

弁護士会を指定して、私選弁護人の選任を申し出る

 逮捕されると、警察官から犯罪事実の要旨と弁護人を選任できる旨が告げられます(刑事訴訟法203条1項)。このとき、弁護士・弁護士法人・弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる旨とその申出先も教示されることになっています(同条3項)。

 この申出は、留置されている状態でも、留置業務管理者を通じて行うことができます(同法209条・78条2項)。実務上は、留置担当官が電話やファクシミリで弁護士会に取り次ぐ運用が案内されています。申出を受けた弁護士会は、弁護人となろうとする者を速やかに紹介しなければならないとされています(同法31条の2第2項)。ただし、紹介できる弁護士がいない場合や、紹介された弁護士が受任できない場合もあります。

 手元にスマートフォンがなくても、外部に電話をかけられなくても、弁護士へつながる経路が制度として用意されているということです。深夜に自力で連絡手段を確保しようと焦るより、この経路を確実に使うほうが現実的です。

名前を挙げたい事務所があるなら、その場で伝える

 以前に相談したことのある事務所や、家族に依頼してほしい弁護士がいる場合は、事務所名を伝えておくと取次ぎがスムーズになります。連絡先が思い出せないときは、事務所名と所在地だけでも伝えておくと手がかりになります。

深夜のうちに、話しすぎない

 取調べで作成された供述調書は、読み聞かせや閲覧を求めることができ、内容に誤りがあれば増減変更を申し立てることができます。また、署名押印は拒むことができます(刑事訴訟法198条4項・5項)。

 深夜は判断力が落ちますし、「早く帰りたい」という気持ちが先に立ちがちです。しかし、いったん署名押印した調書を後から覆すのは容易ではありません。記憶があいまいな部分は、あいまいなまま「覚えていない」と伝えるほうが安全です。取調べ時の対応については別のコラムで詳しく扱っています。

3. 家族・知人が深夜に連絡を受けたときにできること

逮捕された場所の弁護士会へ電話する

 当番弁護士の派遣は、本人だけでなく家族からも依頼できます。連絡先は、逮捕された場所を管轄する弁護士会です。日弁連のサイトに全国の当番弁護士連絡先一覧が掲載されています。

 東京都内の警察に逮捕された場合、東京には複数の弁護士会がありますが、当番弁護士の窓口は一本化されており、**東京弁護士会 刑事弁護センター(03-3580-0082)**が受付を担っています。同会の案内によれば、この番号は弁護士派遣依頼の受付専用で法律相談はできず、初回の面会費用は無料です。他の道府県の警察に逮捕された場合は、その道府県の弁護士会へ問い合わせることになります。

 時間外で留守番電話になっても、吹き込んでおくこと自体に意味があります。日弁連は、休日等には担当の弁護士が留守番電話を確認して接見に向かう運用があること、休日明けの接見になる場合もあることを説明しています。伝える内容として案内されているのは、おおむね次の項目です。

  • 申込者の氏名・連絡先
  • 逮捕された方の氏名・生年月日
  • 罪名
  • 留置されている警察署名
  • 逮捕(勾留)された日
  • 通訳の要否

 情報が不明・不正確だと弁護士を派遣できないことがある、と案内している弁護士会もあります。警察からの連絡を受けた際に、署名と担当者名、罪名をメモしておくと、この電話が格段にスムーズになります。

 なお、深夜に依頼したからといって、その夜のうちに接見が実現するとは限りません。接見の時間が翌日以降になる運用も現にあります。「今すぐ会って助言してほしい」という事情が強い場合には、夜間・休日に対応している法律事務所への私選での依頼を並行して検討する、という選択肢もあります。

家族は、本人と連絡が取れなくても弁護人を選任できる

 本人の法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族および兄弟姉妹は、独立して弁護人を選任することができます(刑事訴訟法30条2項)。本人と話ができない深夜であっても、家族の判断で弁護士に依頼することは可能だということです。

 また、身体拘束を受けている被疑者は、弁護人だけでなく「弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者」とも、立会人なしで接見できます(同法39条1項)。つまり、正式な選任手続が完了する前であっても、家族が依頼した弁護士は接見に行くことができます。

深夜に警察署へ駆けつけても、本人には会えないのが原則

 これは知らないと徒労になりやすい点です。逮捕された段階で立会人なく接見できるのは、上記のとおり弁護人や弁護人となろうとする者に限られます。家族の面会や差入れは、勾留後に、立会いや時間の制限を受けたうえで認められるのが通常であり、受付時間も限られています。深夜に署へ向かうより、弁護士会や事務所への連絡を優先するほうが実質的です。

勾留されると通知が届く

 勾留された場合、弁護人がいるときは弁護人に通知されます。弁護人がいないときは、本人が指定する家族等1人に通知されることになっています(刑事訴訟法79条、被疑者勾留については同法207条1項で準用)。

 逆にいえば、逮捕された段階では、警察が家族へ連絡しなければならないという定めはありません。実務上は本人の希望等を踏まえて連絡されることもありますが、連絡が来ないまま時間が過ぎることもあります。深夜に「連絡が取れない」という状態が続く場合、まず問い合わせるべきは弁護士会です。

4. なぜ「最初の72時間」が重要なのか

 深夜の数時間にこだわる理由は、その後のスケジュールが法律で決まっているからです。

  1. 逮捕後、48時間以内に検察官へ送致するか釈放するかが判断される(刑事訴訟法203条1項)
  2. 送致を受けた検察官は、24時間以内に勾留を請求するか釈放するかを判断する
  3. 裁判官が勾留質問を行い、勾留するかどうかを決める
  4. 勾留は原則10日、さらに10日以内の延長があり得る

 逮捕から起訴・不起訴の判断までの身体拘束は、長ければ20日を超え、逮捕段階と合わせて20日超に及ぶこともあります。会社を長期間休むことになれば、勤務先に知られる引き金にもなります。

 そして、勾留を避けるための主張は、勾留が決まった後より、勾留請求や勾留質問の前に届けるほうが手を打ちやすいという構造があります。深夜に逮捕された場合、この最初の判断までに残された時間は実質1日〜2日程度です。夜のうちに依頼のルートを開いておくことには、そういう意味があります。

 ただし、早く動けば釈放されるという性質のものではありません。判断するのは検察官であり裁判官です。早期に動く意味は「結果が良くなること」ではなく、**「選択肢が残っているうちに選べること」**にあります。

5. 深夜だからこそ避けたい行動

 判断力が落ちている時間帯に取りがちで、後から響きやすい行動を挙げます。

  • スマートフォンのデータやメッセージ履歴を消す——復元される場合がありますし、削除した事実が逃亡・罪証隠滅のおそれの評価で不利に働くおそれがあります。自分に不利に見える記録ほど、残しておくのが原則です
  • 相手方やお店に直接連絡して謝罪する——謝罪の言葉が事実を認めた証拠として扱われることがあります。連絡は捜査機関経由や代理人経由で行うのが基本です
  • その場で示談書・誓約書にサインする、金銭を支払う——書面の効力や支払義務の有無は、後から個別に検討すべき問題です。深夜に即断する必要はありません
  • SNSに投稿する、知人に広く相談する——拡散の起点になります
  • その場から立ち去る、着信を拒否する——後の手続で不利に評価されるおそれがあります
  • 「早く帰りたいから」と、事実と違うことを認める——調書化されると、後から覆すのは容易ではありません

6. 風俗トラブル特有の、深夜の論点

店の「今ここで解決しよう」という圧力と、刑事手続は別の話

 深夜、店側から「今払えば警察を呼ばない」「今サインすれば終わりにする」と迫られる場面があります。しかし、金銭の支払いや書面へのサインは民事の問題であり、刑事手続がそれで終わるとは限りません。とりわけ不同意わいせつ罪・不同意性交等罪は2017年の法改正で非親告罪となっており、告訴の取下げや示談が自動的に不起訴に結び付くわけではありません。

 また、勤務先や家族に知らせることをほのめかしながら金銭を要求する態様であれば、それ自体が脅迫罪(刑法222条)や恐喝罪(同249条)の問題になり得ます。この点は別のコラムで詳しく扱っています。

店に支払っても、相手本人との関係は別に残る

 店に支払った金銭は、あくまで店との間の清算です。相手の方本人との示談が成立したことにはなりません。深夜に「これで全部終わり」と言われても、そのまま受け取らないほうが安全です。

翌朝の出勤連絡ができない

 深夜に身体拘束されると、翌朝の欠勤連絡ができません。無断欠勤が続くことが、勤務先に事情を知られる典型的な入口になります。弁護士が接見した際に、勤務先への連絡の方法や伝え方を相談することができます。私生活上の行為と懲戒処分の関係については、別のコラムで整理しています。

7. 夜が明けてからやること

  • 弁護士会や事務所へ、留守番電話・フォーム送信に加えて改めて電話を入れる
  • 記憶が新しいうちに、A4用紙1枚程度で時系列メモを作る(確かなこと/あいまいなことを分けて書く)
  • レシート、予約履歴、メッセージ、着信履歴などを消さずに保存する
  • 勤務先の休みの取り方を、可能であれば弁護士に相談したうえで決める
  • 費用や依頼の範囲を、受任前に確認する

8. いま逮捕されていない方へ——事前にできる備え

 深夜のトラブルで最も困るのは、スマートフォンが手元にない、あるいは押収されていて、連絡先を調べられないという状況です。次の2点だけでも紙に控えて財布に入れておくと、いざというときの選択肢が変わります。

  • 逮捕された場所の弁護士会(東京の警察であれば東京弁護士会 刑事弁護センター 03-3580-0082)
  • 相談したことのある法律事務所の名称・電話番号

 また、深夜に連絡を取れる相手をあらかじめ決めておくことも、現実的な備えになります。

まとめ

 深夜の逮捕直後にできることは限られています。その場で結論が出ることはほとんどありません。それでも、

  • 本人は「当番弁護士を呼んでください」と伝え、弁護士会を指定した選任の申出をする
  • 家族は逮捕された場所の弁護士会へ電話し、留守番電話でも必要事項を吹き込む
  • 深夜のうちに支払わない、サインしない、データを消さない、直接連絡しない

 ——この3点を押さえておくだけで、夜が明けてからの選択肢は確実に広がります。当番弁護士の初回面会は無料です。まずは弁護士の話を聞いてから、その先を依頼するかどうかを決めれば足ります。

なお、若井綜合法律事務所では365日24時間相談を受け付けております。
深夜や早朝の緊急事態にも対応できる場合があります。
お気軽にご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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