風俗嬢に貸したお金が返ってこない|個人間の債権回収の進め方
メンズエステを利用したところ、「セラピストに触れた」と因縁をつけられ、強面の男性が現れて高額な「違約金」や「示談金」を請求された——そんなメンズエステ美人局(つつもたせ)の被害が、各地で報告されています。
こうした被害の多くには、共通する「型」があります。手口をあらかじめ知っておくこと、そしてその場で絶対にサインしてはいけない書面があると理解しておくことが、被害を防ぎ、また被害を最小限にとどめるうえで非常に重要です。
この記事では、メンズエステ美人局の代表的な手口と、サインを求められても応じるべきでない書面について整理します。
メンズエステ美人局の手口5選
手口1:誓約書にサインさせ、セラピストが誘導する「王道型」
最も多いのがこの型です。施術前に「セラピストが嫌がる行為をしたら罰金○○万円」といった誓約書にサインさせておきながら、密室では、そのセラピスト自身が際どいサービスやお触りを持ちかけて誘導します。客が応じた瞬間、待機していた共謀者(店長・スタッフなど)が現場に駆けつけ、「規約違反だ」として違約金を請求する——という仕組みです。
「触ってはいけない」と縛っておきながら、裏ではセラピストに「触らせろ」と指示している点に、この手口の悪質さがあります。
手口2:「触った」と言いがかりをつける「でっち上げ型」
実際にはほとんど触れていない、あるいはごく軽微であっても、「わいせつ行為をされた」と言いがかりをつけ、恐喝の口実にする型です。密室での出来事で客観的な証拠が残りにくいことを逆手に取っています。
手口3:裏オプション・本番を誘導し、後から「無理やり」と主張する型
セラピストの側から裏オプションや本番をほのめかして誘い、応じさせたうえで、後日「無理やり本番を強要された」と主張する型です。近年は、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪をちらつかせ、「刑事事件にされたくなければ」と高額な示談金を求めるケースが問題になっています。
手口4:盗撮などをでっち上げる型
シャワーを浴びている隙などを突いて、「盗撮しただろう」と因縁をつけたり、逆に撮影を誘導しておいて「盗撮された」と騒いだりして、示談金を求める型です。
手口5:支払わせ方がエスカレートする型
手持ちが足りないと、ATMへ同行させて現金を引き出させる、その場でスマートフォンを操作させて消費者金融と契約させ借金を負わせる、換金性の高い貴金属などをカードで購入させる、といった形で支払いを迫る型です。報道では、車で数時間にわたり拘束したり、暴行を加えたりした悪質な事案も伝えられています。
これらは組織的に行われることが多く、報道では、施術前に「嫌がる行為をしたら罰金」といった誓約書にサインさせ、セラピストに性的サービスを持ちかけさせて、応じた客に高額な違約金を請求する——という手口で、経営者らが恐喝などの疑いで逮捕された事案が複数伝えられています。短期間に被害相談が百数十件寄せられたものもあります。
「触ったら罰金」という言いがかりの、法的な位置づけ
まず知っておいてほしいのは、脅して金銭を交付させる行為は、それ自体が恐喝罪(刑法249条、10年以下の拘禁刑)にあたる可能性がある犯罪だということです。「警察に通報する」「家族や会社にバラす」といった言葉で支払いを迫る行為は、その典型です。店が一方的に定めた「違約金」「罰金」に、言われるまま応じる義務があるとは限りません。
一方で、正確にお伝えしておくべき点もあります。仮に実際にセラピストの身体に触れてしまっていた場合、それが形式的には暴行罪や迷惑防止条例違反、不同意わいせつ罪に該当し得るのも事実です。加害者側は、この「客側の負い目」を熟知したうえで、「警察に行けばお前も捕まる」と脅してきます。
もっとも、明らかに美人局のスキームだと警察が理解すれば、客が被害者として扱われるケースも多くあります。自分に負い目がある場合や、美人局かどうかの確証が持てない場合こそ、独断で動く前に弁護士に相談することが有効です。
その場でサインしてはいけない書面
美人局の現場では、さまざまな書面へのサインを求められます。どんなに急かされても、その場で署名・押印・拇印をしないことが鉄則です。主な書面と、その危険性は次のとおりです。
誓約書(高額な違約金条項)
「セラピストに触れたら○○万円を支払う」といった内容です。サインをすると、店側は違約金請求の根拠にしようとします。ただし、一方的に定められた法外な違約金は、公序良俗に反するなどとして、当然に有効とは限らず、無効や減額を主張できる余地があります。特に、店側が触れるよう誘導していた場合はなおさらです。
示談書・和解書
「わいせつ行為を認め、○○万円を支払う」といった内容です。サインは、事実を認めたという証拠と、支払義務の両方を生じさせかねません。しかも、「今後一切請求しない」という清算条項がなければ、後から理由をつけて繰り返し請求されるおそれもあります。
念書・謝罪文
「私は○○をしました。申し訳ありません」といった書面は、自らの行為を認める自白の証拠として、刑事・民事の両面で不利に働きます。
借用書
その場で払えない金額を借用書にさせる型です。後日の取り立ての根拠を作られてしまいます。
なお、脅されて(強迫されて)、あるいはだまされてサインしてしまった書面については、後から取消しや無効を主張できる余地があります(民法上、強迫・詐欺による意思表示は取り消すことができ、公序良俗に反する契約は無効とされます)。ただし、それを主張するには争いになり、負担も生じます。だからこそ、最初からサインしないことが最善の防御です。
トラブルになったときの対処
- 身の安全を最優先に。囲まれている・帰してもらえない状況では、無理に抵抗せず、人目のある場所へ移動し、可能であれば110番通報する。
- その場で支払わない。ATMへ行かない。書面にサインしない。
- 免許証などの身分証を見せない・コピーさせない。個人情報を渡さない。
- やり取りを録音し、書面は写真に撮るなどして証拠を残す。「払わないと家族に言う」といった発言は、恐喝の有力な証拠になる。
- すでに支払ってしまった、サインしてしまった場合でも諦めず、早めに弁護士へ相談する。取消し・無効の主張や、被害回復の余地がある。
弁護士が窓口に入れば、相手との直接のやり取りを避けながら交渉を進められ、家族や職場に知られるリスクを抑えることもできます。
そもそも被害に遭わないために
- 利用前に、その店の口コミや被害を訴える情報がないかを確認する。
- 入店時に求められる誓約書は、内容をよく確認する。
- セラピストから誘われても、身体に触れない。
- 怪しいと感じる店は、そもそも利用しない。
まとめ
- メンズエステ美人局には、誓約書+誘導型、言いがかり型、本番誘導→不同意主張型、盗撮でっち上げ型、支払わせ方エスカレート型といった代表的な手口がある。
- 脅して金銭を求める行為は恐喝罪にあたり得る。店の「違約金」に言い値で応じる義務があるとは限らない。
- 誓約書・示談書・念書・借用書には、その場で絶対にサインしない。強迫・詐欺によるサインは後から取消しを主張できる余地があるが、争いになるため、最初からサインしないのが最善。
- 身の安全を最優先に離脱し、証拠を残して、早めに弁護士へ相談を。
若井綜合法律事務所は、メンズエステを含む風俗トラブルについて、お客様側の立場で、家族や職場に知られることなく、迅速かつ穏便に解決することを大切にしている法律事務所です。不当な要求に一人で対応する必要はありません。まずはお気軽にご相談ください。


