事件が終わったときに受け取る書類一覧

若井亮

若井亮

テーマ:一般

依頼していた事件が終わると、弁護士から書類を渡されたり、裁判所から書面が届いたりします。ところが、その場では中身を確かめる余裕がなく、封筒に入れたまま何年も置いてしまう方は少なくありません。

 あとになって困りやすいのは、相手からの支払が止まったとき、登記や届出で書面を求められたとき、勤務先や公的機関に結果を説明する必要が生じたときです。ここでは、事件の終わり方ごとに何を受け取るのか、受け取った書類をどう扱えばよいのかを整理します。

「事件が終わった」といっても、区切りは一つではない


終わり方によって、中心になる書類が変わる


 まず押さえておきたいのは、終わり方によって手元に残る中心の書類が違うということです。

終わり方手続の区切り中心になる書類
交渉で示談・合意が成立した双方が合意書に署名押印した時点示談書・合意書の原本
裁判上の和解や調停が成立した合意の内容が調書に記載された時点和解調書・調停調書
判決が出て確定した不服申立ての期間が過ぎた時点判決書と、確定を示す書類
刑事事件で処分が決まった不起訴、略式命令、判決の確定など処分の結果を示す書面


手続の終わりと、支払の終わりはずれる


 分割払いの取り決めをした場合、書面ができた時点で手続としては区切りがついても、支払はその後何年も続きます。弁護士との委任契約は書面が整った段階で終了とする例が多く、その後の入金確認は依頼者側で行うという整理になっているのが通常です。どこまでを頼んでいたのかは、終了の連絡を受けたときに確かめておきたい点の一つです。

受け取る書類は、三つの出どころに分かれる


 書類の名前を一つずつ覚えるより、どこが作った書類なのかで分けて考えるほうが実用的です。出どころが違えば、足りないと気づいたときの相談先も、再び発行してもらえるかどうかも変わるからです。

  • 法律事務所が作るもの……報告や説明の書面、精算書、請求書と領収書など
  • 裁判所や検察庁など公的機関が作るもの……判決書、和解調書、調停調書、処分に関する書面など
  • 相手方との間で作るもの……示談書、合意書、公正証書など


 このうち、公的機関が作った書類には、後日あらためて交付を申請できるものがあります。相手方との間で作った書類は、原本をなくすと相手の協力なしには作り直せません。事務所が作った書類は、記録が残っていれば写しの再交付を頼める場合があります。同じ「見当たらない」でも、次にとる行動はそれぞれ違います。

法律事務所から受け取るもの


終了時に弁護士に求められていること


 弁護士職務基本規程は、委任が終わるときの取扱いについて二つの定めを置いています。44条は、委任の終了に当たり、事件処理の状況またはその結果について、必要に応じて法的な助言を付して依頼者に説明することを求めています。45条は、委任契約に従って金銭を清算したうえで、預り金と預り品を遅滞なく返還することを求めています。

 ここで知っておきたいのは、44条が求めているのは「説明」であって、報告書という形の書面を交付することまでは定められていないという点です。口頭やメールでの説明にとどまることもあります。書面の形で残しておきたい場合は、終了時に自分から希望を伝えるほうが行き違いが起きにくくなります。

事務所から出てくることが多い書類


  1. 事件の結果と経過をまとめた報告の書面
  2. 預り金・実費・報酬の精算書(計算書と呼ぶ事務所もあります)
  3. 報酬の請求書と、支払後の領収書
  4. 手続の中で作成・取得した書面の写し
  5. 依頼時に預けた資料の返却
  6. 委任契約書の控え(手元にない場合は写しを求めます)


 なお、途中で解任や辞任があって終わった場合の清算は、これとは考え方が異なります。中途で終了したときの費用の精算については、別の記事で扱っています。

精算書は、金額の大小より内訳を見る


 相手方から支払われたお金は、いったん事務所の預り金口座に入り、そこから報酬と実費を差し引いて依頼者に送金されるという流れをとることがあります。受任者は委任事務の処理に当たって受け取った金銭を委任者に引き渡すこととされており(民法646条1項)、事件が終われば清算して返すことになります。

  • 相手方から入金された金額と、その入金日
  • 差し引かれた報酬の額と、消費税の扱い
  • 実費の内訳(郵便料金、収入印紙、交通費、記録の取寄せ費用など)
  • 差引後の金額と、振込先・振込予定日


 金額そのものより、何がいくら差し引かれているのかを読み取れる形になっているかを見ておくと、後の疑問が減ります。領収書は、事業に関わる事件で申告に用いる場合など、後から必要になることがあります。手元に残しておくほうがよいでしょう。

裁判所から出る書類は、用途で組み合わせが変わる


正本・謄本・証明書は役割が違う


 判決書や調書には、正本、謄本、抄本という形があります。正本は、権限のある公務員が原本に基づいて作成し、原本と同じ効力を与えられた写しです。強制執行は、執行文が付けられた債務名義の正本に基づいて行われます(民事執行法25条本文)。内容を読み返すだけなら謄本で足りることもありますが、支払が止まったときに動くには別の書類が要る、ということです。

やりたいこと必要になりやすい書類補足
内容を保管し、後で読み返す判決書や調書の正本または謄本裁判所名と事件番号が読み取れるかを確認
支払われないときに強制執行する債務名義の正本、執行文、送達証明書事案により確定証明書を求められることがあります
判決に基づいて登記をする判決書の正本と確定証明書登記の内容により取扱いが異なります
離婚などの届出に使う調書の謄本提出先に必要な形式を確認します


 和解調書や調停調書は、確定判決と同じ効力をもつものとして扱われます(民事訴訟法267条、民事調停法16条)。「話し合いで終わったのだから紙は要らない」と考えず、支払が終わるまでは保管しておくことをおすすめします。

調書は、成立したその日に受け取れるとは限らない


 和解や調停が成立すると、その場で内容が読み上げられ、調書に記載されます。ただし、書面としての調書は後日作成されるのが通常で、成立した日にその場で持ち帰れるとは限りません。代理人が交付や送達を申請し、届いたものを依頼者に渡すという流れをとることが多くなります。

 そのため、成立から書面が手元に届くまでには間が空きます。いつ頃、どの形(正本か謄本か)で届くのかを終了時に聞いておくと、届かないときに気づきやすくなります。

2026年5月からの電子化で、受け取り方が変わりつつある


 民事裁判手続をデジタル化する改正民事訴訟法は、2026年5月21日に全面施行されました。判決書は電子的に作成され、届出をした当事者にはシステムを通じて送達される仕組みが設けられています。強制執行の申立てでも、債務名義が電子データで作成されている場合には、証明書を提出する代わりに、事件を特定するために必要な情報を提供することで提出を省略できる扱いが用意されています。

 もっとも、民事執行や家事事件などは、この時点ではオンライン申立ての対象外とされており、今後段階的に広がる予定です。手続の種類や時期によって、紙で受け取るのか、データとして扱うのかが分かれます。自分の事件がどちらになるのかは、終了時に代理人へ確認しておくとよいでしょう。

刑事事件が終わったとき


不起訴処分告知書は、請求しないと出ない


 刑事事件で不起訴となった場合、その結果を示す書面として不起訴処分告知書があります。検察官は、公訴を提起しない処分をしたときに被疑者から請求があれば、速やかにその旨を告げなければならないとされています(刑事訴訟法259条)。

 見落とされやすいのは、この書面は自動的に送られてくるものではないという点です。取得したい場合は、本人または弁護人から検察庁に交付を求めることになります。申請の様式は法令で定まっているわけではなく、検察庁によって取扱いが異なるため、事前に担当の検察官へ連絡してから手続に入るのが実務的です。

書かれている事項は多くない


 記載されるのは、被疑者の氏名、罪名、不起訴処分とした旨、処分の年月日、検察庁名といった事項で、不起訴とした理由までは書かれないのが通常です。勤務先などへの説明に使う場面はありますが、この一枚だけで説明が完結するとは限りません。

 なお、国選弁護人が付いていた事件で不起訴により釈放された場合、その時点で弁護人としての職務は終わるため、告知書はご自身で取得することになるのが一般的です。裁判まで進んだ場合に判決書の謄本を取得しておくかどうかも、終了時に相談しておきたい点です。

相手方との間で作った書類


 示談書や合意書は、通常は同じものを2通作り、双方が1通ずつ保管します。手元にあるのが原本か写しかは、署名押印が直接されているかどうかで見分けられます。公正証書にした場合は、公証役場に原本が保管され、当事者は正本や謄本を受け取ります。

 分割払いの取り決めがある場合は、支払が終わるまで、書面と入金記録の両方を残しておくことが役に立ちます。振込明細や通帳の記載は、後日「払った」「受け取っていない」という食い違いが生じたときの手がかりになります。

 合意書に口外を制限する条項が入っている場合は、書面の扱い方にも影響します。条項の設計そのものについては、別の記事で扱っています。

預けた資料は返ってくるのか


原本と写しでは扱いが違う


 依頼時に預けた契約書、領収書、診断書、通帳といった原本は、終了時に返却されるのが基本です。弁護士職務基本規程は、預り品を善良な管理者の注意をもって保管すること(39条)と、委任の終了に当たり預り金および預り品を遅滞なく返還すること(45条)を定めています。

 一方で、事務所側は写しやデータを控えとして残していることが多く、返却されるのは原本、事務所に残るのは控え、という形になります。返してもらう物が多い場合は、受け渡しの際に一覧を作っておくと、後で「渡したはずの書類が見当たらない」という行き違いを避けやすくなります。

事件記録がそのまま渡されるとは限らない


 弁護士が作成したメモ、内部の検討資料、他の関係者の情報が含まれる資料などは、事務所の記録として扱われます。事件記録の全部がそのまま依頼者に引き渡されるわけではないという点は、あらかじめ知っておくと期待とのずれが小さくなります。

 また、職務上の請求で取得した戸籍や住民票については、依頼者に返却せず事務所内で保管し、期間の経過後に廃棄するという運用をとる事務所もあります。手元に置いておきたい書類がある場合は、終了時に個別に希望を伝えておくとよいでしょう。

受け取った日に確認しておきたい5点


  1. 氏名・住所・会社名などの表記に誤りがないか
  2. 金額、支払期限、支払方法が取り決めどおりか
  3. 手元にあるのが原本か、写しか、正本か
  4. 次に自分がすべきこと(入金の確認、届出、登記など)があるか
  5. なくした場合に再発行を頼める書類かどうか


 誤記は、その場で気づけば訂正の手続をとれることがありますが、時間が経つほど手間が増えます。受け取った日のうちに目を通しておくことをおすすめします。

いつまで手元に置いておくか


弁護士側が長く保管している前提では考えない


 弁護士職務基本規程18条は、事件記録を保管または廃棄する際に、秘密やプライバシーに関する情報が漏れないよう注意することを定めています。もっとも、この条文が定めているのは取扱いの方法であって、保管期間の年数までは決められていません。実際には各事務所が内規で期間を定め、経過後に廃棄しています。事件終了から10年で廃棄する旨をあらかじめ公表している事務所もあります。

 何年か経ってから問い合わせても、記録が残っていないことはあり得ます。原本は自分で保管しておくという前提で考えるほうが安全です。

書類の種類手放すかどうかの目安
債務名義になる書類(判決書、和解調書、調停調書など)支払が完了するまでは保管
示談書・合意書支払完了後も一定期間は保管
精算書・領収書申告や経理の資料として使う可能性がある期間は保管
預けていた原本(契約書、診断書など)元の用途に応じて各自で管理


 一律の決まりがあるわけではありません。支払が続いているか、再び問題が起きる余地があるか、税務や届出で使う可能性があるかという観点で判断すると考えやすくなります。

足りない・届かない・なくしたとき


事務所に求めるとき


 精算がされない、結果の説明がないという場合は、口頭で待つより、期限と内容を示して書面やメールで求めるほうが記録が残ります。それでも動きがないときには、弁護士会に設けられた紛議調停という手続があります。詳しくは別の記事で扱っています。

裁判所の書類は自分でも申請できる


 判決書や調書の正本・謄本・抄本は、当事者であれば後日でも交付を申請できます。裁判所の案内によれば、交付の申請には用紙1枚につき150円分の収入印紙が必要とされています。強制執行の準備として送達を申請する場合は、当事者双方への送達申請であれば1回目に限り手数料はかからないとされています(郵便切手が必要な場合があります)。家庭裁判所でも、審判書や調停調書の正本・謄本、確定証明書などの交付申請が用意されています。

 刑事事件の記録についても、正当な理由があれば後日取得できる場合があります。手元にないからといって、そこで行き止まりになるとは限りません。

おわりに


 事件が終わった直後は、結果そのものに気持ちが向き、書類の確認は後回しになりがちです。ただ、後から必要になるのは、たいてい「あのとき受け取ったはずの一枚」です。

 受け取る書類を、事務所が作るもの、公的機関が作るもの、相手方との間で作るものの三つに分けて把握しておけば、足りないものに気づいたときに、どこへ何を求めればよいかが見えてきます。終了の連絡を受けたら、その場でこの三つを確認しておくことをおすすめします。手続の内容によって必要な書類は異なりますので、判断に迷う場合は、担当した弁護士に確認してみてください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

風俗・男女トラブルの不当要求から依頼者を守る弁護士

若井亮プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼