セカンドオピニオンの取り方|今の弁護士に伝えるべきか

若井亮

若井亮

テーマ:一般

弁護士に依頼したあとで、「この進め方でよいのだろうか」と気になることがあります。相手方の主張に押されているように見えるとき、説明を聞いても腑に落ちないとき、あるいは特に不満はないけれども大きな判断を控えているとき。そうした場面で別の弁護士に意見を求めることを、セカンドオピニオンと呼びます。

 このとき多くの方が立ち止まるのが、「今の弁護士に伝えたほうがよいのか」という点です。黙って行くのは気が引ける、かといって伝えれば関係が悪くなるかもしれない。この迷いのために、聞きに行くこと自体をやめてしまう方も少なくありません。

 この記事では、その迷いを「誰に、何を、どの順番で伝えるか」に分けて整理します。

セカンドオピニオンは「弁護士を替えるための手続」ではない


 セカンドオピニオンとは、すでに相談または依頼している事柄について、別の弁護士に意見を求めることをいいます。もともとは医療の場面で使われてきた言葉で、法律の分野でも同じ意味で使われるようになりました。

 誤解されやすいのですが、これは弁護士を替えるための手続ではありません。聞いた結果として「今の進め方で問題がなさそうだ」と分かることも、同じくらいよくある結末です。むしろ、替えるかどうかを決めるための材料を増やす場と考えたほうが、実際の使われ方に近いといえます。

確かめやすいこと、確かめにくいこと


 セカンドオピニオンには、向いている問いとそうでない問いがあります。ここを分けておくと、聞きに行ったあとの落差が小さくなります。

確かめたいこと向いているか理由
ほかにどんな進め方があるのか向いている同じ事実からでも、組み立て方は一つではないため
見通しをどのくらいの幅で考えるか向いている前提の置き方の違いが言葉になると、判断しやすくなるため
今の弁護士の対応が適切だったか向いていない外からは経過の全部が見えず、評価を下す立場でもないため
この先どういう結論になるか向いていない相手方の対応や裁判所の判断が関わるため


 三つ目と四つ目を目的にすると、時間を使ったわりに得られるものが少なくなりがちです。意見を求めるときは、一つ目と二つ目に寄せて質問を組み立てるほうが実りがあります。

「伝えるべきか」は、三つの別々の問いに分かれている


 「伝えるべきか」という一つの問いに見えて、実際には相手の違う三つの問いが混ざっています。混ざったままだと答えが出ないので、先に分けておきます。

誰に伝えるか伝える必要どう効くか
意見を聞く相手(二人目の弁護士)伝えたほうがよい伝えないと、受任を前提にした説明に終始しやすい
今依頼している弁護士(聞きに行く前)義務はない材料の集め方によっては、伝えたほうが早く進む
今依頼している弁護士(聞いたあと)内容によって変わる伝え方しだいで、話し合いにも言い争いにもなる


 このうち最初の一つは、ほぼ迷う必要がありません。判断が要るのは二つ目で、結果を大きく左右するのは三つ目です。以下、この順に見ていきます。

二人目の弁護士には、最初に「セカンドオピニオンです」と伝える


 これを伝えないと、相談は「もし当事務所が受けるとしたら、こう進めます」という説明になります。それはそれで有益ですが、今の方針を検討し直すという目的からは少しずれます。

 また、進行中の事件について意見だけを述べる相談を扱っていない事務所もあります。行ってから分かるより、予約の段階で確かめておくほうが無駄がありません。

予約のときに伝えておくとよいこと


  • すでに弁護士に依頼している事件について、意見を聞きたいということ
  • どの段階にあるか(交渉中か、調停・訴訟が始まっているか、次の期日がいつか)
  • 相手方の氏名や名称(利益相反の確認のために、予約の時点で尋ねられることがあります)
  • 持参できる資料の種類


 三つ目を尋ねられるのは、その事務所がすでに相手方から相談や依頼を受けていないかを確かめるためです。答えにくく感じるかもしれませんが、ここで確認しておかないと、あとから相談自体を続けられなくなることがあります。

今の弁護士に伝える義務はない


 結論からいえば、別の弁護士に意見を聞くことについて、今の弁護士の許可や了解を得なければならないという決まりはありません。誰に相談し誰に依頼するかを決めるのは依頼者であり、弁護士の側の職務上の取決めにも、依頼者が他の弁護士に依頼しようとするのを正当な理由なく妨げてはならない、という趣旨の定めがあります。

 また、二人目の弁護士には守秘義務があります。相談したという事実や内容が、そこから今の弁護士に伝わることは想定されていません。

 もっとも、「伝える義務がない」ということと「伝えないほうがよい」ということは別です。実際には、伝えたほうが早く進む場面がかなりあります。

伝えたほうが進みやすい場面、伝えずに聞いてよい場面


伝えたほうが進みやすい場面


  • 提出された書面や証拠の写しが手元になく、それがないと意見を出しにくいとき
  • 近いうちに方針の分かれ目(和解に応じるか、訴訟に進むか等)が控えているとき
  • 次の期日や回答期限が迫っていて、時間の余裕がないとき
  • 不満の中身が「説明が足りない」型で、聞き直すだけで解消する余地があるとき


 最後の一つは見落とされがちです。違和感の正体が「方針が違う」ではなく「なぜその方針なのかを聞いていない」であることは珍しくありません。その場合、外に意見を求める前に、今の弁護士に説明を求めるほうが早く片づきます。

伝えずに聞いてよい場面


  • 一般的な見通しや、ほかの選択肢の有無だけを確かめたいとき
  • 委任契約書や報告の記録など、手元の資料だけで話の前提が説明できるとき
  • 違和感がまだ言葉になっておらず、整理してから話したいとき


伝えることは、替える予告ではない


 「別の弁護士にも意見を聞こうと思っています」と伝えると、辞めるという意味に受け取られるのではないかと心配される方がいます。伝え方を工夫すれば、そうはなりにくいものです。たとえば「大きな判断の前なので、念のため別の見方も聞いておきたい」といった形にすると、方針への疑義ではなく、判断の慎重さの問題として受け取られやすくなります。

実際には「材料をどう集めるか」で決まることが多い


 二人目の弁護士が意見を述べられるかどうかは、渡せる材料の量にかかっています。そして材料の集め方によっては、今の弁護士に伝わることが避けられません。「伝えるべきか」は、多くの場合ここで決まります。

 材料は、おおむね三つの経路に分かれます。

  1. 手元にあるもの(委任契約書、費用の請求書、自分が渡した資料、弁護士から届いた報告や説明のメール)
  2. 今の弁護士から出してもらうもの(提出済みの書面、相手方から届いた書面、証拠として出したものの写し)
  3. 裁判所から取り寄せるもの(手続が始まっている場合の事件記録)


 二つ目を頼めば、理由を尋ねられるのが自然ですから、事実上伝えることになります。一方、三つ目は当事者本人としてできる場合があり、そのときは今の弁護士を経由しません。

手続の種類によって、本人が記録を取り寄せられるかが変わる


手続の段階本人が記録を取り寄せられるか補足
交渉のみ(裁判所の手続前)裁判所の記録は存在しない手元の書面とやり取りが材料になる
民事の訴訟当事者として閲覧や写しの請求ができる記録が電子化された事件では、オンラインでの取扱いも整備されています
家事の調停家庭裁判所の許可が必要とされている許可されない部分が出ることがあります
家事の審判当事者からの申立ては原則として許可される未成年者の利益等を理由とする例外があります
刑事(弁護人がついている)本人が自由に見られるわけではない弁護人がいる間は本人の閲覧が制限され、写しも取れない扱いです


 特に刑事事件では、記録の扱いが民事と大きく異なります。本人の手元に材料が乏しい状態で意見だけを求めても、答えられる範囲はどうしても限られます。この場合は、今の弁護人に説明を求めるほうが先になることが多いといえます。

二人目の弁護士に何を聞くか


 「この弁護士の対応はどうですか」という聞き方は、答えにくい質問です。前述のとおり、外から見えているのは経過の一部だけですし、他の弁護士の仕事ぶりを評価する場でもないからです。

 質問は、人ではなく進め方に向けると答えが返ってきやすくなります。

  • この段階で選べる進め方には、ほかにどのようなものがありますか
  • 今の進め方を続けた場合、次に決まるのはどの点ですか
  • この見通しは、どういう前提に立ったものですか
  • もし前提が変わるとしたら、どこが変わったときですか


あとから振り返る意見は、言いやすい立場から出ている


 もう一つ、心にとめておきたいことがあります。進行中に判断するのと、結果を見てから振り返るのとでは、条件が違います。あとから「こうしておけばよかった」と言うのは、その時点で判断するよりも容易です。

 二人目の意見が鋭く聞こえたときは、その分の差し引きをしておくと、比較が公平になります。逆に、今の方針と同じ意見が返ってきたときも、それは「何も得られなかった」という意味ではありません。方針が一つに絞られているという情報を得たことになります。

聞いたあと、今の弁護士にどう伝えるか


 ここが最も結果を分ける場面です。せっかく得た意見も、伝え方によっては話し合いではなく言い争いの材料になってしまいます。

そのままぶつけない


 「別の弁護士はこう言っていました」という形で持ち出すと、話が方針の中身から離れて、どちらの弁護士が正しいかという話に移りがちです。誰が言ったかを伏せる必要はありませんが、中身のほうを主語にすると、検討の話として進みやすくなります。

  • 「◯◯という進め方は、この事件では取りにくいのでしょうか」
  • 「今の見通しは、どのあたりを前提に置いたものでしょうか」
  • 「和解に応じる場合と、進めた場合とで、想定される幅を教えていただけますか」


説明を求めることは、方針の否定ではない


 弁護士の側の取決めでも、事件の経過や結果に影響する事柄については、依頼者に報告し、協議しながら進めることとされています。説明を求めること自体は、その枠組みの中にあります。

 説明を聞いたうえで、なお納得できない場合には、方針そのものを話し合うことになります。その段階では、どこが一致していてどこが一致していないのかを、具体的な言葉にしておくと話が進みます。

二人目が「意見は述べるが手続には入らない」と言うことがある


 弁護士の側の取決めには、他の弁護士が受任している事件に不当に介入してはならない、という定めもあります。これは依頼者が意見を聞くことを制限するものではありませんが、二人目の弁護士が、進行中の手続そのものには関わらないという立場を取ることはあります。

 そのため、意見は聞けても、書面を作ってもらったり、提出予定の書面に手を入れてもらったりできるとは限りません。何をどこまで頼めるのかは、相談の入口で確かめておくとよい点です。

替えることを考える場合に、先に確認しておくこと


 意見を聞いた結果、担当を替えることを検討する場合もあります。その場合、意見を聞くこととは別の検討が必要になります。

  • 費用が重なりやすいこと(すでに支払った着手金の扱いは、契約の内容によります)
  • 期限や期日は、こちらの事情では動かないこと
  • 引継ぎと、新しい弁護士が事件を把握するまでに時間がかかること
  • 預けている資料や預り金の清算をどうするか


 順序としては、二人目に依頼するかどうかを決める前に、今の委任関係をどう整理するかを先に確かめておくほうが混乱が少なくなります。同じ事件について二人の弁護士が並行して代理人となる形は、費用の面でも連絡の面でも負担が増えます。

刑事事件の場合


 刑事事件では、国選と私選で弁護人の決まり方が異なります。国選の場合は自分で選ぶ仕組みになっていないため、私選に切り替えるかどうかという別の判断が入ります。手続の進み方も速いので、時間の余裕をどう見るかが重要になります。

費用と回数の考え方


 セカンドオピニオンの相談は、有料で受け付けられているのが一般的です。初回無料をうたっている事務所でも、進行中の事件について意見だけを述べる相談が無料の範囲に含まれるかは、事務所ごとに異なります。予約時に確かめておくと行き違いがありません。

 なお、自動車保険などに付いている弁護士費用特約が使える場合もありますが、対象になるかは契約の内容によります。加入している保険会社に確かめるのが早道です。

 また、意見を聞く先を増やしていけば答えが定まる、というものでもありません。三人目、四人目と聞くうちに、前提の違う意見が並んで、かえって判断がつかなくなることもあります。同じ答えが返ってくるようになったとき、あるいは違いの正体が「自分がどうしたいか」の問題だと分かったときが、区切りをつける目安になります。

よくある質問


今の弁護士に知られてしまいますか


 二人目の弁護士から今の弁護士に連絡がいくことは、守秘義務がある以上、想定されていません。知られるとすれば、書面の写しを求めるなど、こちらから何かを依頼した場合です。

依頼中であることを理由に、相談を断られることはありますか


 依頼中であること自体を理由に断られることは、あまりありません。ただし、その事務所がすでに相手方から相談や依頼を受けている場合には、受けられないことになります。予約の段階で相手方の氏名を尋ねられるのは、この確認のためです。

どのタイミングで聞くのがよいですか


 方針の分かれ目に差しかかる前が、選択肢が最も多く残っている時期です。和解に応じるかどうか、訴訟に進むかどうかといった判断の直前ではなく、その判断が近づいてきた段階で動くと、落ち着いて比べられます。

おわりに


 セカンドオピニオンをめぐる「伝えるべきか」という問いは、三つに分けると答えが出しやすくなります。意見を聞く相手には伝える。今の弁護士に事前に伝えるかどうかは、材料の集め方から決める。そして聞いたあとは、誰が言ったかではなく中身を持ち帰る。

 別の意見を聞くことは、今の弁護士を疑う行為とは限りません。大きな判断の前に、選択肢と前提を自分の言葉で確かめておく作業です。その作業を経たうえで今の方針を続けると決めた場合も、それは何も変わらなかったのではなく、迷いの一つが片づいたということになります。

 当事務所でも、他の事務所に依頼中の方からのご相談を承っています。お困りのことがありましたら、進んでいる手続の段階と次の期日をお知らせのうえ、お気軽にご相談ください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

風俗・男女トラブルの不当要求から依頼者を守る弁護士

若井亮プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼