期日・打ち合わせに本人が出る必要はあるか

若井亮

若井亮

テーマ:一般

弁護士に依頼したあと、多くの方が早い段階で気にされるのが「裁判所には毎回自分も行かなければいけないのか」という点です。平日の日中に何度も仕事を抜けられるか、相手と顔を合わせずに済むかは、生活に直結する問題です。

 民事の裁判については、代理人である弁護士が出席すれば、本人が毎回出席しなくても手続は進みます。ただし、これは「行かなくてよい」という一言で終わる話ではありません。手続の種類によって扱いが違いますし、途中には本人が出席しないと決められない場面もあるからです。

 この記事では、本人の出席が求められるのはどの場面か、そして裁判所に行かない期日を成立させているのは何かを、手続の種類ごとに整理します。なお、まだ弁護士に依頼しておらず、裁判所から届いた書類にご自身で対応する段階の話は、別の記事に譲ります。

「毎回出席しなければならない」という前提は、多くの場合当てはまらない


 民事訴訟で弁護士に依頼している場合、通常の期日に本人が出席しないことは珍しくありません。まず、その理由から整理します。

期日でやり取りされるものの多くは書面である


 民事訴訟の主張と証拠は、書面で提出するのが基本です。期日では、提出された書面を裁判所と双方の代理人が確認し、争点を整理して、次回までに何を出すかを決めます。時間にすれば数分で終わる期日も少なくありません。その場で新しい話が口頭で交わされ、結論が大きく動くという進み方は一般的ではないのです。

期日は平日の日中に指定される


 裁判所の期日は、平日の日中に開かれます。仕事や家事の中心となる時間帯に、月に一度前後のペースで何か月も続くことを考えると、本人が毎回出席する負担は小さくありません。代理人が出席して手続を進める仕組みは、この負担を引き受けるためのものでもあります。

代理人が出席していれば「欠席」にはならない


 ここは誤解が生まれやすいところです。訴訟で問題になる「欠席」とは、その当事者の側から誰も出席しない状態を指します。弁護士が代理人として出席していれば、本人が法廷にいなくても、その当事者は出席しているものとして扱われます。本人が来なかったことを理由に不利益な判断がされることはありません。

 言い換えると、本人の出席をめぐる話は、手続上の義務の問題というより、どの場面で本人の判断が要るかという問題だと言えます。

手続の種類によって、本人の出席の扱いは変わる


 「裁判」と一口に言っても、進み方はさまざまです。おおまかな扱いは次のとおりです。

手続・場面本人の出席の扱い背景にある考え方
民事訴訟の通常の期日代理人が出席すれば足りる主張と証拠は書面が中心で、期日はその確認の場
当事者尋問の期日本人が出席する本人が法廷で直接質問に答える手続そのもの
和解の話し合いの期日求められることがある条件を受け入れるかどうかを決めるのは本人
民事調停呼出しを受けた当事者は自ら出席するのが原則当事者どうしの話し合いを前提とする手続
家事調停・家事審判呼出しを受けた場合は出席が原則話し合いと事情の聴取が中心であるため
労働審判本人の出席を求められることが多い期日で委員会が当事者から直接事情を聴く運用
刑事裁判の公判被告人が出頭しなければ開廷できないのが原則一定の軽い事件などには例外の定めがある


訴訟と調停は考え方が違う


 訴訟は、書面で主張と証拠を出し合い、裁判所が判断する手続です。これに対して調停は、当事者の話し合いを裁判所が仲介する手続です。話し合いが中身である以上、本人がその場にいることが前提になります。調停の規則でも、呼出しを受けた当事者は自ら出頭するものとされ、代理人に出頭してもらえるのは、やむを得ない事由があるときと位置づけられています。

 家庭裁判所の調停や審判についても、裁判所は「原則として呼出しを受けた当事者本人が出席する」という説明をしています。弁護士に依頼していても、この前提は変わりません。正当な理由なく出席しない場合について過料の定めもありますが、実際にそこまで至る例はまれだとされています。

労働審判は期日の回数が限られている


 労働審判は、原則として三回以内の期日で結論に至る、期間の短い手続です。第一回の期日で委員会が争点を整理し、当事者から直接事情を聴く進め方が取られます。そのため、本人が出席して自分の言葉で答えられることが、手続の進行に影響します。規則上の出頭義務というより、限られた期日で事情を聴き取るという設計から生じる運用だと理解しておくとよいと思います。

刑事事件は考え方が異なる


 刑事裁判では、被告人が出頭しなければ開廷できないのが原則です。弁護人がついていても、被告人本人の出頭に代わるものではありません。一定の軽い事件について出頭を要しない扱いや、控訴審での取扱いなど例外の定めはありますが、基本の形は民事とは逆だと考えておいてください。

本人が出席することになる代表的な三つの場面


 民事訴訟に限って言えば、本人が裁判所に足を運ぶことになるのは、おおむね次の三つです。

  1. 本人が法廷で質問に答える尋問の期日
  2. 和解の条件を決める話し合いの期日
  3. 調停や労働審判など、話し合いを前提とする手続の期日


尋問は終盤に置かれる


 尋問は、書面のやり取りが一通り終わり、事実関係の食い違いが残っている場合に行われます。裁判の終盤に置かれるのが通常で、このときは本人が出席することになります。

 この期日の前は、弁護士との打ち合わせが集中する時期でもあります。何を聞かれるか、どう答えるかを一度で仕上げるのは難しく、複数回に分けて準備することも珍しくありません。なお、事実関係に争いがないまま和解で終わる事件も相当数あり、尋問まで進まずに終わることもあります。

和解は、その場で条件が動くことがある


 和解の話し合いでは、裁判所から具体的な条件が示されたり、想定していなかった提案が出たりします。代理人だけで出席していると、いったん持ち帰って本人に確認し、次の期日で回答することになります。本人がその場にいれば、条件の意味や裁判所の見方をその場で共有したうえで、返事の方向を決められます。裁判所から本人の出席を求められることがあるのも、この場面です。

調停は、本人が話すこと自体が手続の中身


 調停では、調停委員が双方から交互に事情を聴きます。相手方と同じ部屋で向かい合って話すわけではなく、待合室も別に用意されるのが通常です。弁護士は同席して説明を補い、あらかじめ書面を提出しておくといった形で関わります。

「出なくてよい」と「出ないほうがよい」は別の話


 法律上の義務として出席が求められない期日でも、弁護士の側から出席をお願いすることがあります。理由はいくつかあります。

条件がその場で動く期日


 先ほどの和解の話し合いのほか、事案の性質によっては、話し合いの対象が予定より広がることがあります。代理人が一人で判断できることには限りがあるため、本人が近くにいる状態で進めたほうが、結果的に早く決まることがあります。

経過を自分の目で見ておきたい場合


 結論の重みが大きい事件では、審理がどう進んだかを本人が見ておくこと自体に意味があります。書面での報告だけでは、裁判所の反応や話の温度までは伝わりにくいためです。

出席しても、発言する義務があるわけではない


 「出席したら何か話さなければならないのではないか」と心配される方がいますが、そうではありません。尋問のように本人が答える手続を除けば、発言するのは代理人です。出席は、聞いておくため、その場で相談できる状態にしておくためのものと考えて差し支えありません。

 また、本人が出席を希望する場合に、それが妨げられるわけでもありません。日程が合う期日は出席する、合わない期日は代理人に任せる、という選び方ができます。

裁判所に行かずに参加できる範囲は広がっている


 近年の法改正で、裁判所に実際に足を運ばなくても手続に参加できる場面が段階的に広がりました。現在の大まかな姿は次のとおりです。

場面裁判所に行かずに済ませられる方法留意点
争点整理の期日・和解の期日ウェブ会議または電話会議裁判所が相当と認めることが前提
口頭弁論の期日ウェブ会議音声だけの方法は想定されていない
家事調停の期日ウェブ会議または電話会議裁判所が事情を聴いたうえで判断する
離婚・離縁の調停や和解の成立ウェブ会議映像のある方法に限られ、電話では成立させられない
和解の成立示された和解条項案を書面で受諾する方法条項案をそのまま受け入れる場合に限られる


遠方や、相手と同じ場所にいたくない事情も考慮される


 裁判所は、遠方に住んでいて出向くことが難しい場合のほか、相手方と同じ空間にいると落ち着いて話せないという事情も、ウェブ会議を利用する理由として挙げています。こうした事情は、こちらから伝えなければ裁判所には分かりません。依頼している弁護士に早めに伝えておくと、期日の進め方を相談しやすくなります。

どの方法が使えるかは、期日の種類と裁判所の判断による


 いずれの方法も、当事者が希望すれば当然に使えるというものではなく、裁判所が事情を聴いたうえで判断します。弁護士の事務所からウェブで参加するという形が取られることもあります。実際にどうなるかは、担当の弁護士に確認するのが早道です。

出席が難しい事情は、先に伝えておくと調整の余地がある


 見落とされやすいのですが、次回の期日は、その期日の場で日程を調整して決まります。つまり、本人が出席していない場で決まっていきます。出席が必要になりそうな期日について、あらかじめ事情を伝えておくと、日程の候補を挙げる段階で考慮してもらえます。伝えておくとよいのは、次のような点です。

  • 仕事や家庭の事情で外しにくい曜日・時間帯
  • 遠方に住んでいる、移動に時間がかかるといった事情
  • 相手方と同じ場所にいることに不安がある
  • 体調や通院の都合で長時間の外出が難しい
  • 同席してほしい人がいる、または知られたくない事情がある


 言いにくいと感じる内容ほど、後から手続の途中で問題になりやすい部分です。理由を細かく説明する必要はなく、この曜日は難しい、この点は配慮してほしい、という形で伝われば足ります。

出席しない期日を成立させているのは、打ち合わせのほう


 本人が出席しない期日でも、手続は本人の意向にもとづいて進みます。それを支えているのが、期日と期日の間に行われる打ち合わせです。

打ち合わせで決めているのは「次の期日までに何を出すか」


 期日で確認される書面は、その前の打ち合わせを踏まえて作られています。事実関係の確認、資料の有無、相手の主張のどこを争うか、和解に応じる範囲はどこまでか。こうした点は、本人にしか答えられません。ここが決まらないまま期日を迎えると、その期日は実質的に何も進まないまま終わります。

 公的な法律相談の案内でも、期日と期日の間に代理人と十分な打ち合わせをしておくこと、すべてを一任するような依頼の仕方は避けたほうがよいことが説明されています。裁判所に行かない代わりに、打ち合わせのほうに時間を使う。それが、本人の出席が少なくても進む事件の実際の姿です。

打ち合わせが集中する時期がある


 打ち合わせの量は一定ではありません。手続を始める前後と、尋問の前は、確認することが多くなります。逆に、相手方の回答を待っている時期や、裁判所の判断を待っている時期は、やり取りが少なくなります。間隔が空いたからといって、手続が止まっているとは限りません。

打ち合わせの方法は来所だけとは限らない


 打ち合わせのやり方は事務所によって異なり、来所のほか、電話やオンラインで行われることもあります。連絡の手段や頻度をどう決めておくとよいかは、別の記事で詳しく扱っています。

出席しなかった期日の中身を知る方法


 出席しない期日が続くと、何が起きているのかが見えにくくなります。次の点を最初に決めておくと、見通しが持ちやすくなります。

期日ごとの報告の受け方を決めておく


 期日の後に、何がやり取りされ、次回までに何をするのかを知らせてもらう形を決めておくと、進み方が把握しやすくなります。書面で報告する事務所もあれば、電話やメールで伝える事務所もあります。

「特に何もなかった」と聞いたときの読み方


 書面を出し合って次回の日程を決めただけ、という期日は実際にあります。それは手続が滞っているという意味ではなく、争点整理の途中では通常のことです。気になる場合は、今どの段階にいて、次に何が決まるのかを確認しておくと、見通しがはっきりします。

よくある質問


判決の言渡しには行く必要がありますか


 民事訴訟の判決は、当事者が法廷にいない場合でも言い渡すことができるとされています。実際にも、代理人が結果を確認して依頼者に伝える形が通常です。もちろん、聞きに行きたい場合に出席してはいけないというものではありません。

出席する義務はないと言われましたが、出てもよいのでしょうか


 差し支えありません。当事者本人が期日に出席することは制限されていません。日程が合う期日だけ出席する、重要な期日だけ出席する、という選び方もできます。出席を考えている場合は、事前に弁護士に伝えておくと、当日の待ち合わせや進め方を決めておけます。

自分の代わりに家族に行ってもらうことはできますか


 民事訴訟で当事者に代わって手続を行えるのは、原則として弁護士です。家族が代理人として出席することは、通常はできません。調停では、やむを得ない事由があるときに代理人を出頭させることが認められていますが、これも当然に認められるものではなく、裁判所の判断によります。付き添いとして同行し、待合室で待つといった形であれば、多くの場合は問題になりません。

おわりに


 期日に本人が出るかどうかは、「毎回行くか、まったく行かないか」という二択ではありません。多くの期日は代理人だけで進み、そのうえで、本人が判断しなければ決まらない場面がいくつか訪れます。大切なのは、その場面がいつ来るのかを早い段階で共有しておくことです。

 仕事を休みにくい、遠方に住んでいる、相手と顔を合わせたくないといった事情も、伝えておけば調整できる余地があります。手続の種類によって扱いは異なりますので、ご自身の件がどの形で進むのか、そのなかで本人の出席が要る場面はいつかを、依頼している弁護士に確認しておくと、見通しが立てやすくなります。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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