法律相談で弁護士から聞かれること|答えにくい質問への向き合い方

若井亮

若井亮

テーマ:一般

「弁護士に相談したら、どんなことを聞かれるのだろうか」。初めての法律相談を控えた方から、よく寄せられる疑問です。あわせて多いのが、「答えたくないことまで聞かれたらどうしよう」という不安です。

 法律相談では、相談者が一方的に話すのではなく、弁護士から次々と質問が出ます。中には、自分の落ち度や収入、家族のことなど、口にしにくい内容も含まれます。ただ、その質問には一つひとつ理由があり、理由が分かっていれば答え方も見えてきます。

 この記事では、法律相談で弁護士が何を聞くのか、なぜ聞くのかを整理したうえで、答えにくい質問にどう向き合えばよいかをまとめます。

弁護士はなぜ質問をするのか


相談時間の前半は「答える時間」になりやすい

 法律相談と聞くと、相談者が事情を説明し、弁護士がそれに答える場面を思い浮かべるかもしれません。実際には、相談時間の前半は、弁護士からの質問に答える時間になることが多くあります。

 弁護士は限られた時間の中で、何が起きたのかを事実として固めるそこにどの決まりが当てはまるかを考える期限と取りうる手段を確かめるという三つの作業を進めます。最初の作業が終わらないと、次に進めません。質問が続くのは、答えを出すための土台を組み立てているからです。

相談者が重要だと思う事実と、弁護士が確かめたい事実はずれることがある

 相談に来られた方が最も強く訴えたい出来事が、法律上の結論をあまり動かさないことがあります。逆に、本人が「たいしたことではない」と省略した一言や日付が、結論を分ける材料になることもあります。

 このずれがあるため、弁護士は細かい点を繰り返し尋ねます。話をさえぎられたように感じることがあるかもしれませんが、多くの場合は、相談者が気づいていない材料を探している場面です。

聞かれることは大きく六つに分けられる

 分野が違っても、質問の目的はおおむね次の六つに整理できます。

聞かれることの種類典型的な質問確かめていること
相談を受けられるかの確認お名前、相手方の氏名や会社名同じ事務所が相手方に関わっていないか
何が起きたかいつ、誰が、何をしたか出来事の順序と当事者の範囲
裏づけ書面ややり取りは残っているか主張を支える材料の有無
すでにした行動払ったか、署名したか、返信したかやり直しがきく段階かどうか
期限と進行状況書面が届いた日、返答の期限先に動かすべきものの特定
望んでいる結果どうなれば区切りがつくか取りうる手段の絞り込み


 自分の話がどの箱に入る質問なのかが分かると、答えやすくなります。

最初に確認される基本的な情報


氏名と連絡先

 多くの事務所では、予約の電話やフォームの段階で、氏名と連絡先を尋ねます。相談内容の記録を残し、後日の連絡に使うためです。相談の内容そのものに入る前の、事務的な確認と考えて差し支えありません。

相手方の氏名や会社名

 トラブルの相手がいる場合、相手方の氏名や勤務先、会社名を聞かれることがあります。同じ事務所がすでに相手方から相談を受けていたり、相手方の会社の顧問を務めていたりすると、その相談を受けられないためです。この確認は、相談者の側を守る仕組みでもあります。

 相手方の氏名が分からない場合は、分からないとそのまま伝えれば足ります。分かる範囲の情報(店舗名、部署、通称など)を伝えると、確認が進みます。

連絡方法の希望は、この段階で伝えられる

 「自宅に郵便物を送られると困る」「日中は電話に出られない」といった事情は、最初の連絡の段階で伝えておくことができます。後から言うより、事務所側も対応を組み立てやすくなります。

出来事の聞き取りで繰り返し確認されること


「いつ」が何度も聞かれる理由

 日付は、法律相談で最も多く確認される項目の一つです。請求できる期間には区切りがあり、届いた書面には返答の期限が定められていることもあります。いつ起きたかによって、使える手段が変わります。

 正確な日付が分からないときは、「去年の夏ごろ」「引っ越しの直前」といった言い方で構いません。手がかりになる記録(写真の撮影日時、通帳の記載、決済履歴など)があれば、後から絞り込めることもあります。

言われた言葉は、そのまま伝える

 「脅された」「侮辱された」という要約より、実際にどのような言葉が使われたかが重要になる場面があります。まとめずに、覚えている言い回しをそのまま伝えてください。表現の強さや言い方が、判断を左右することがあります。

見たこと、聞いたこと、推測を分ける

 自分が直接見聞きしたことと、誰かから聞いた話と、状況からの推測は、扱いが異なります。「本人から聞いた」「友人から聞いた」「たぶんそうだと思う」と添えて話すと、弁護士は材料を仕分けしやすくなります。推測を伝えてはいけないという意味ではなく、区別がついていればよいということです。

答えにくい質問の六つの型

 ここからが本題です。相談で口にしにくい質問には、いくつかの決まった型があります。

答えにくい質問聞かれる理由答え方の目安
自分の落ち度責任の範囲や金額に関わるため評価を加えず、起きたことだけを話す
収入や資産、支払える額制度の条件や算定、回収の見込みに関わるためおおよその額と、確かめられる資料の有無を伝える
家族構成や交際の経緯当事者の範囲と連絡の設計に関わるため関係と時期を、必要な範囲で伝える
すでに払った、署名したやり直せる段階かどうかが変わるため日付、相手、渡したものを具体的に伝える
どうしたいか取りうる手段が変わるため優先順位の高いものから二つか三つ挙げる
記憶があいまいなこと確かな事実と区別する必要があるため「覚えていない」とそのまま伝える


自分の落ち度に関する質問

 「あなたの側に非はなかったか」と問われると、責められているように感じるかもしれません。しかし弁護士は、道義的な評価を下すために聞いているわけではありません。責任は「あるかないか」の二択ではなく、程度と範囲の問題として扱われます。こちらの落ち度が金額や見通しをどれだけ左右するかを見積もるために、確認しています。

 答えるときは、「悪かったと思う」という評価ではなく、何をしたか、何をしなかったかという事実の形で伝えると、話が早く進みます。

お金に関する質問

 収入や貯蓄、支払える金額を聞かれ、抵抗を覚える方は少なくありません。この質問には、目的がいくつかあります。

  • 請求する金額や分割の条件を組み立てるため
  • 相手方から実際に回収できる見込みを考えるため
  • 公的な制度を使えるかどうかを判断するため
  • 費用の見通しを、無理のない形で説明するため


 たとえば法テラスの無料法律相談は、収入と資産が一定の基準以下の方を対象としており、予約の際に手取りの平均月収と、現金や預貯金の額を尋ねる運用になっています。なお、離婚のように配偶者が相手方となる事件では、本人の分だけで判断されるとされています。

 正確な金額をその場で言えないときは、おおよその額と、給与明細や通帳などで後から確かめられるかどうかを伝えれば足ります。

家族や交際関係に関する質問

 同居の有無、結婚や交際の経緯、子どもの有無などは、内容によっては話しにくいものです。これらは、誰が当事者になるのか、誰に連絡が行く可能性があるのか、どの手続が使えるのかを判断する材料になります。相続や離婚に限らず、金銭の問題でも関係してくることがあります。

 プライベートのすべてを話す必要はありません。相談している問題とつながる範囲で、関係と時期を伝えれば十分です。

すでにした行動に関する質問

 「お金を払いましたか」「書面に署名しましたか」「相手に返信しましたか」という質問は、答えにくさを感じやすい部分です。すでに動いてしまったことを打ち明けるのは、気が重いものだからです。

 ただ、この点は結論に大きく関わります。支払いや署名が済んでいる場合と、まだの場合とでは、取りうる手段が変わるためです。隠したまま方針を決めると、後から前提が崩れて、やり直しに時間と費用がかかることがあります。日付、相手、渡したものを具体的に伝えてください。

「どうしたいですか」という質問

 最も答えに詰まりやすいのが、この質問です。「どうしたいかが分かっていれば相談していない」と感じる方もいます。それは自然な反応です。

 この質問は、決意を確かめているのではなく、何を優先するかによって選ぶ手段が変わるために聞かれています。たとえば、金銭を取り戻すことを優先するのか、早く終わらせることを優先するのか、相手との関係を断つことを優先するのか、周囲に知られないことを優先するのかで、進め方は変わります。

 答えられないときは、「決めきれていない」と伝えたうえで、気になっている点を順番に並べてみてください。順位が二つか三つ挙がれば、弁護士は選択肢を絞れます。決めかねていること自体も、伝わっていれば材料になります。

記憶があいまいなことについての質問

 時間が経った出来事や、動揺していた場面のことは、思い出せないことがあります。ここで気をつけたいのは、「していない」と「覚えていない」は別だという点です。

 覚えていないことを「していない」と答えてしまうと、後から記録が出てきたときに、説明全体の信用が下がることがあります。逆に、実際にはしていないことを、押されて「したかもしれない」と答えてしまうのも避けたいところです。あいまいなものは、あいまいなまま伝えてください。「確かだ」「たぶん」「思い出せない」と添えるだけで、扱いが変わります。

答え方の五つの型

 答えにくい質問に共通する、伝え方の目安をまとめます。

  1. 事実と評価を分ける。「ひどい対応だった」ではなく「◯月◯日に、こう言われた」と話す
  2. 分からないことは、分からないと言う。推測で埋めない
  3. 順番にこだわらない。思い出した順に話しても、弁護士が並べ直す
  4. 言いたくないときは、言いたくないと伝える。そのうえで、答えないと何が分からなくなるかを聞いてみる
  5. 後から思い出したことは、早めに伝える。相談の途中でも、終わった後でもかまわない


 四つ目について補足します。答えたくない事情がある質問は、誰にでもあります。その場合、無理に作り話をするより、「そこは今は話したくない」と伝えるほうが安全です。弁護士は、その情報がないまま進めた場合にどこまで判断できるかを説明できます。話せる範囲だけで組み立てられることも、少なくありません。

言いにくいことを先に出すと、何が変わるか


相手方がすでに知っていることは少なくない

 自分にとって不利に見える事実は、相手方や関係者がすでに把握していることがあります。契約書、防犯カメラ、入退室の記録、自分が送ったメッセージなど、記録として残っているものは珍しくありません。こちらの説明とそれらが食い違うと、説明全体が疑わしく見えてしまうことがあります。

前提が変われば、方針も変わる

 方針を決めて動き出した後で新しい事実が出てくると、すでに出した書面や伝えた内容が足かせになります。早い段階で材料がそろっているほど、選び直しの負担は小さくなります。

秘密の扱い

 弁護士には、職務上知った秘密を守る義務があります。ただし、法律上は「正当な理由がある場合」という例外が定められており、何があっても外に出ないと言い切れる制度ではありません。家族や職場に知られたくない事情がある場合は、その点も含めて相談の場で伝えておくと、連絡方法などを調整できます。

正直に話せば有利になる、というわけではない

 不利な事実を伝えても、その事実が消えるわけではありません。話すことの意味は、結果が良くなることではなく、選べる手段が残っているうちに、その中でましなものを選べることにあります。ここは率直にお伝えしておきます。

弁護士が聞かないこと

 不安を減らすために、聞かれない側のことにも触れておきます。

  • なぜそんなことをしたのかと、道義的な評価を下すための質問はしません
  • 相談している問題とつながらない生活全般を、細かく尋ねることは通常ありません
  • 説教をするための時間は、相談の中に含まれていません


 ただし、見通しについては厳しい内容を告げられることがあります。難しいものを難しいと言わないまま進むと、時間と費用の負担だけが残るためです。厳しい説明は、相談者を責めているのとは別のことだと考えてください。理由が分からないときは、その場で理由を尋ねて差し支えありません。

分野によって聞かれやすいこと

 相談の種類ごとに、特に詳しく確認されやすい項目があります。おおよその目安として挙げます。

相談の種類特に詳しく聞かれやすいこと
お金の貸し借りや未払いいつ、いくら、どういう約束で渡したか。返済の状況
離婚や男女間の問題同居の状況、収入、子どもの有無、相手方との連絡の状況
相続亡くなった方との関係、相続人の人数、遺言の有無、財産の概要
職場の問題雇用契約や就業規則の内容、勤務時間の記録、退職の経緯
警察が関わる場面連絡が来た日、呼び出しの有無、これまでに何をどこまで話したか


 いずれも、答えを出すために必要な範囲で聞かれるものです。関係がなさそうに感じた質問は、「それはどうして必要なのですか」と聞き返しても構いません。

相談のあとで「言い忘れた」と気づいたら

 帰り道や翌日に、伝え忘れたことを思い出すのはよくあることです。その場合は、早めに連絡してください。追加で伝えたことによって不利な扱いを受ける仕組みはありません。むしろ、方針が固まる前に届いたほうが、修正の負担は小さくなります。

 二回目の相談を予定している場合は、冒頭で「前回言い忘れたことがあります」と切り出せば足ります。事前にメールなどで送っておくと、その分の時間を別の話に使えます。

おわりに

 法律相談で出される質問は、相談者を試すためのものではなく、答えの前提を固めるために組み立てられています。落ち度、お金、家族、すでにした行動といった答えにくい項目ほど、結論に効いてくる場面が多いというのが実際のところです。

 とはいえ、すべてを整理してから相談しなければならないわけではありません。分からないことは分からないまま、話したくないことは話したくないと伝えたうえで、答えられる部分から始めれば十分です。整えることに時間をかけているうちに期限が過ぎてしまうよりは、その状態のまま相談に向かうほうが、選べる道は多く残ります。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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