解決実績・解決件数の数字はどこまで信用できるか
弁護士を探していると、事務所名で検索した先に口コミや星の数が並んでいることがあります。飲食店やホテルを選ぶときと同じ感覚で眺めてしまいがちですが、弁護士の口コミは、誰が書けるのか、書かれた側が何を言い返せるのかという点で、他の業種とかなり事情が違います。
この記事では、口コミ・レビューを「見ない」でも「そのまま信じる」でもなく、どの部分を判断材料に使い、どの部分は相談で確かめるかという線の引き方を整理します。
口コミから読み取れることと、読み取れないこと
最初に押さえておきたいのは、口コミが記録しているのは投稿者の体験であって、弁護士の仕事の法的な当否ではない、ということです。
依頼者は法律の専門家ではないため、提出した書面の組み立てが適切だったか、その主張を選んだ判断が妥当だったかを評価する材料を持っていません。逆に、連絡がどのくらいの頻度で来たか、説明が分かりやすかったか、費用の話が事前にあったかは、依頼者本人にしか分からない情報です。
| 口コミから比較的読み取りやすいこと | 口コミからは読み取りにくいこと |
|---|---|
| 連絡の頻度、折り返しの早さ | 方針の選択が適切だったか |
| 説明の分かりやすさ、質問への答え方 | 書面や交渉の内容の質 |
| 費用の説明が事前にあったか | 得られた結果が妥当な水準だったか |
| 受付や予約のやり取り | 他の弁護士なら違う結果になったか |
| 面談の雰囲気、話しやすさ | その分野の経験の量 |
つまり口コミは、進め方や相性の見当をつける材料としては役に立ちますが、実力や結果を測る物差しとしては、そもそもそういう作りになっていません。
弁護士の口コミが他の業種と違う4つの理由
①評価が結果に強く引っ張られる
紛争の結果は、相手方がどう出るか、証拠がどれだけ残っているか、法律がどう定めているかによって決まる部分が大きく、弁護士の働きだけで決まるものではありません。同じ弁護士が同じように動いても、事案が違えば結果は変わり、評価も分かれます。高い評価が並んでいることは、その事務所に来た事案の性質を反映している面もあります。
②相手方や、依頼に至らなかった人も投稿できる
法律事務には、ほとんどの場合相手方がいます。交渉で不利な立場に立たされた側から見れば、その弁護士は「手強い相手」であり、好意的な評価にはなりにくいでしょう。
また、相談したが依頼はしなかった人、利益相反のために受任できないと断られた人、見積りが合わなかった人も、事務所と接点を持ちます。低い評価が、その事務所に依頼した人の体験とは限らないという前提で読む必要があります。
③秘匿性の高い分野ほど口コミが出にくい
刑事事件、男女間のトラブル、家族の問題のように、依頼したこと自体を人に知られたくない分野では、解決に満足していても投稿は残りません。件数が少ないことは、取扱いが少ないことや質が低いことを意味しません。分野によって口コミの出やすさが違う、というだけのことです。
④比べる基準を持ちにくい
弁護士に依頼する経験は、多くの人にとって人生で数えるほどです。飲食店のように何十軒も比べた上での評価ではなく、他と比べようのない一度きりの体験に対する評価になります。星の数の意味づけが人によって大きくぶれるのは、そのためです。
口コミが少ない、見つからない事務所をどう考えるか
候補の事務所を検索しても、口コミが数件しかない、あるいは見当たらないことがあります。これを不安材料と受け取る必要は、必ずしもありません。
- 扱っている分野の性質上、依頼者が投稿しにくい
- 規模が小さく、そもそも母数が少ない
- 第三者のプラットフォームに事業者用のプロフィールを作っていない
- 依頼者に投稿を呼びかけていない
いずれの場合も、投稿の数は仕事の内容と直接には結び付きません。口コミが見つからないときは、代わりに事務所のサイトで所属弁護士会の表示、取扱分野の書き方、費用の記載を確認し、初回の相談で直接聞くという順番に切り替えれば足ります。
逆に、口コミの数が突出して多い場合も、それ自体が良し悪しを示すわけではありません。投稿を呼びかける運用をしている、取扱件数が多い、利用者の層が投稿に慣れているなど、数が増える理由はいくつもあります。
事務所の側は、事実関係で言い返せない
もう一つ、弁護士の口コミに特有の事情があります。書かれた側が反論しにくいという点です。
弁護士法23条は、弁護士がその職務上知り得た秘密を保持する義務を負うと定めています。弁護士職務基本規程23条も、正当な理由なく依頼者について職務上知り得た秘密を他に漏らし、または利用してはならないとしています。違反すれば懲戒の対象となり得るほか、刑法134条1項の秘密漏示罪として、6か月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金が定められています。
口コミに事実と異なることが書かれていたとしても、「その方は依頼者ではありません」「実際にはこういう経緯でした」と説明すること自体が、職務上知った情報を明かすことにつながりかねません。相談だけで終わった人についても、事情は同じです。
ここから導かれる読み方は2つです。1つは、返信がないこと、短い定型の返信しかないことは、投稿内容が事実であることを示すものではないということ。もう1つは、返信がある場合に、事案の中身に踏み込んでいないかを見る、ということです。窓口の案内や今後の対応方針にとどめた返信は、守秘義務の枠内での対応と読めます。
自然に書かれた口コミかどうかの手がかり
規制の対象になっているのは事業者の側
2023年10月1日から、いわゆるステルスマーケティングが景品表示法の規制対象になりました。事業者が自分で内容を決めた表示なのに、一般消費者から見てそれと判別できない形になっているものが、不当表示として扱われます。
ここで押さえておきたいのは、規制されるのは広告主である事業者であって、依頼を受けて投稿した人自身は対象外だという点です(消費者庁のQ&A)。つまり、投稿に「PR」「広告」といった表記が付いていないことは、その投稿が自然に書かれたことの証明にはなりません。表記を付ける責任は投稿者ではなく事業者の側にあるからです。
特典と引き換えの口コミはどう扱われるか
消費者庁のQ&Aは、割引やクーポンと引き換えに口コミの投稿を求めた場合について、投稿の内容を指示していなければ、通常は「事業者の表示」に当たらないという整理を示しています。一方で、「星5つを付けること」を条件にした場合は、事業者が表示の内容を決めていることになり、「事業者の表示」に当たるとしています。
実際に、星4つ以上の投稿を条件に費用を割り引いていた例(2024年6月)、星5つの投稿を条件に治療費の割引やギフトカードを提供していた例(2025年3月)で、いずれも措置命令が出ています。
利用者の側の読み方に落とすと、次のような並び方は、投稿の動機に何かが働いている可能性を考える手がかりになります。
- 高い評価が短い期間に集中している
- 文章の長さや言い回しがよく似た投稿が続いている
- 本文がなく星だけの投稿が多い
- 投稿者のアカウントに、その1件しか投稿履歴がない
ただし、これらはあくまで手がかりです。開業直後や、事務所が改めて感想の投稿を呼びかけた時期に投稿が集中することもあり、それ自体が不正を意味するわけではありません。
プラットフォームのルールは法規制より広い
Googleマップの投稿ポリシーは、投稿はその場所での実体験に基づくものでなければならないとした上で、金銭・割引・無料の商品などのインセンティブが誘因となった口コミを「評価の操作」として禁止し、削除の対象としています。過去または現在の雇用関係、契約関係、顧問関係、競合関係、家族関係など、利益相反に基づく投稿も禁止されています。事業者が肯定的な口コミだけを選んで募る行為、その場で書くよう求める行為も認められていません。
不審な投稿の動きが検出された場合には、削除を知らせるバナーが表示されたり、一定期間その場所への投稿ができなくなったりすることがあります。プロフィールにこうした表示が出ていないかも、確認できる材料の一つです。
なお、同ポリシーは個人情報の扱いについて、自分の氏名で開業している専門職(弁護士、医師などが例示されています)の氏名を投稿に含めることは認めています。担当弁護士の名前が書かれた口コミが残っているのは、ポリシー上そうなっているためです。
事務所サイトの「お客様の声」は、口コミとは別のもの
法律事務所のサイトに掲載されている「お客様の声」は、第三者のプラットフォームに集まる口コミとは性質が違います。掲載するかどうかを事務所の側が決められるからです。
この点について消費者庁のQ&Aは、寄せられた声を無作為に選んで引用する場合は事業者の表示に当たらないが、好意的な評価だけを選んで引用する場合や、良い点と悪い点のうち良い点だけを引用する場合は「事業者の表示」に当たるとしています。その場合、事業者の表示であることを明らかにしなければ不当表示になります。
弁護士の側にも別のルールがあります。日弁連の業務広告に関する規程は、依頼者を表示する広告には原則として書面等による同意を必要としています。指針は、実在の依頼者が関与していない文章を「お客様の声」として載せること、実際には回答していない相談を含めて「相談実績」と表示することを、事実に合致しない広告として挙げています。
整理すると、サイトの「お客様の声」は事務所が選んだ声、プラットフォームの口コミは選ばれていない代わりに書き手が偏っている声です。どちらか一方だけを見るより、両方に目を通して、食い違っている点を相談で聞く材料にするほうが実用的です。
ランキングや比較記事をどう位置づけるか
弁護士自身は、特定の弁護士や事務所と比較した広告をすることができません(業務広告に関する規程3条5号)。指針は「○○事務所より豊富なスタッフ」といった表現を違反例として挙げ、名称が書かれていなくても全体の表現から特定できると認められるときは同様だとしています。
その結果、弁護士どうしを横並びで比べる記事は、弁護士以外の第三者が作るという構造になります。読むときは、誰が作成したのか、どういう基準で順位を付けたのか、掲載順が広告掲載の有無で決まっていないかを確認しておくとよいでしょう。
なお、出版社などが発行する弁護士のランク付け記事に、原稿提供やアンケート回答といった形で協力することは、指針で禁止されています。ランキングに載っていないことが、経験の少なさを意味するわけではありません。
口コミの具体的な読み方
- 星の平均より本文を読む。件数が少ないほど、1件で平均は大きく動く
- いつの投稿かを見る。担当者も体制も年単位で変わる
- 自分と同じ立場・同じ分野の投稿かを確かめる
- 手続の名前、連絡の頻度、説明の有無といった具体的な事実が書かれているかを見る
- 極端な評価の両端より、中間の評価の本文を読む
- 同じ指摘が複数の投稿に繰り返し出ていないかを見る
- 不満の理由を種類ごとに仕分ける
最後の「仕分ける」が、実際にはいちばん効きます。低い評価が1件あることを理由に候補から外すのではなく、その不満が自分の判断に効く種類のものかどうかを見ます。
| 口コミに書かれた不満 | 自分の判断への効き方 | 見るべきポイント |
|---|---|---|
| 結果に納得できない | 効きにくい | 結果は相手方・証拠・法律に左右される |
| 費用が想定より高かった | 効く | 見積りの提示時期と費目の説明があったか |
| 連絡が来ない、説明が足りない | 効く | 同じ指摘が複数の投稿に出ているか |
| 受任を断られた、対応が冷たい | 部分的に効く | 受付の条件や取扱分野が自分と合うか |
| 事務所の場所や設備 | ほとんど効かない | 自分が通える範囲かどうかだけ |
口コミで決められない部分は、最初の相談で埋める
ここまで見てきたとおり、口コミで判断できるのは体験の部分に限られます。残りは相談の場で確かめることになります。最初の相談で聞いておくとよいのは、次の5点です。
- 今の段階での見通しと、そう考える根拠
- 費用の総額の目安と、費用が増えるのはどういう場合か
- 連絡の方法と頻度、窓口になるのは誰か
- 実際に担当するのはどの弁護士か
- 自分に不利な事情について、どう説明されるか
特に最後の1点は、口コミの本文にはまず出てきません。有利な見通しだけでなく、不利な材料とその影響まで説明があるかどうかは、その場でしか確かめられない情報です。
おわりに
口コミは、弁護士選びの入口を絞り込む道具としては便利です。連絡の取り方や説明の仕方が自分に合いそうかの見当は、ある程度つきます。
一方で、口コミには、書かれた側が事情を説明できない、相手方や依頼に至らなかった人も書ける、秘匿性の高い分野ほど残らない、といった構造上の偏りがあります。星の数を比べて順位を付けるための材料ではありません。
口コミで候補をいくつかに絞り、最後は実際に話してみて決める。この順番であれば、口コミは十分に役に立ちます。当事務所でも、初回の相談では、見通しと費用、連絡の方法、不利な事情の見方までお伝えしたうえで、依頼するかどうかを検討していただいています。迷っている段階でも、まずはご相談ください。


