無料法律相談はどこで受けられるか|法テラス・弁護士会・自治体・事務所の違い

若井亮

若井亮

テーマ:一般

「無料」は同じでも、中身は同じではない


 無料で受けられる法律相談には、大きく分けて四つの入口があります。法テラス(日本司法支援センター)、弁護士会が運営する法律相談センター、市区町村などの自治体、そして法律事務所自身が行っている初回無料の相談です。

 同じ「無料」でも、その費用を誰が負担しているかが違います。法テラスは国の制度(民事法律扶助)、弁護士会は会の事業、自治体は住民向けの予算、法律事務所は自らの判断で相談料を設けていない、という形です。負担の仕組みが違えば、利用できる人の条件も、時間や回数の制限も、相談したあとにそのまま依頼できるかどうかも変わってきます。

 「どこが一番よいか」ではなく、「いまの自分の状況に合う入口はどれか」で選ぶほうが、結果として遠回りが少なくなります。

四つの窓口の違いを一覧で


窓口主な対象・条件時間と回数の目安そのまま依頼できるか
法テラス収入と資産が基準以下であることなど1回30分・同一問題につき3回まで契約している弁護士等への依頼と費用の立替制度を利用できる場合がある
弁護士会の相談センター収入の条件は原則なし。分野ごとに無料枠30分程度。無料は初回のみのことが多い担当した弁護士にそのまま依頼できる場合がある
自治体(区市町村)その自治体に在住・在勤・在学など30分程度。同じ内容は年度内1回など担当した弁護士には依頼できないとする自治体が多い
法律事務所事務所ごとの設定。分野を限っていることが多い初回30分から60分など依頼を前提に相談できる


 以下、それぞれの中身を見ていきます。

法テラスの無料法律相談


対象は収入と資産が基準以下の方


 法テラスの無料法律相談(民事法律扶助)は、経済的に余裕のない方を対象とした制度です。手取りの平均月収と、手元の現金・預貯金が一定の基準以下であることが条件になります。基準は家族の人数と、お住まいの地域によって変わります。

 東京都特別区や大阪市などにお住まいの場合、単身の方で月収200,200円・資産180万円以下、3人家族で月収299,200円・資産270万円以下が目安です。それ以外の地域では、単身182,000円、3人家族272,000円が収入の基準になります。同居の家族が1人増えるごとに、東京や大阪などの地域では33,000円、それ以外の地域では30,000円が加算されます。

 基準を少し超えている場合でも、家賃や住宅ローン、医療費、教育費などを負担している事情があれば、控除を受けて基準内に収まることがあります。家賃・住宅ローンの控除限度額は世帯人数ごとに定められており、東京都特別区にお住まいの場合はさらに高い限度額が適用されます。数字だけを見て諦めず、予約の際に事情を伝えて確認したほうがよい部分です。

1回30分、同一問題につき3回まで


 相談時間は1回30分、同じ問題については3回まで無料です。3回分をまとめて90分にすることはできません。回数の範囲内であれば、2回目に別の弁護士に相談することもできます。

 相談は原則として予約制です。法テラスの事務所のほか、法テラスと契約している弁護士・司法書士の事務所でも受けられます。地域によっては電話やオンラインでの相談、高齢や障がいなどで来所が難しい場合の出張相談を実施しているところもあります。

刑事事件はこの制度の対象外


 見落とされやすいのが、刑事事件に関する相談は対象外とされている点です。取り扱うのは民事・家事・行政に関する問題で、家族が逮捕された、警察から呼び出されたといった相談は、弁護士会の窓口や当番弁護士制度が入口になります。

 一方、DV・ストーカー・児童虐待の被害を受けている方については、別枠の「DV等被害者法律相談援助」があります。こちらは収入にかかわらず利用でき、処分可能な現金・預貯金の合計が300万円以下であれば無料、これを超える場合は相談料(相談時間60分未満5,500円、60分以上11,000円)を負担する仕組みです。被害の防止に必要な相談であれば、民事・刑事を問わず利用できます。

相談できることと、費用を立て替えてもらえることは別


 無料相談の要件と、弁護士費用の立替制度の要件は同じではありません。立替制度では、資力の基準に加えて「勝訴の見込みがないとはいえないこと」も要件になります。相談は受けられたけれども立替は利用できない、ということが起こり得るということです。

 依頼まで視野に入れているのであれば、無料相談の場で、立替制度を使えそうかどうか、使えない場合の費用はどうなるかまで聞いておくと、後の見通しが立てやすくなります。

弁護士会の法律相談センター


収入の条件はないが、無料の範囲は分野で決まる


 弁護士会が運営する法律相談センターは、収入や資産の条件がないことが特徴です。ただし一般的な法律相談は有料で、東京の相談センターでは30分5,500円(税込)、延長15分ごとに2,750円(税込)といった設定が一般的です。

 そのうえで、分野によって無料の枠が設けられています。たとえば東京の法律相談センターでは、借金(債務整理)の相談は初回30分の面接相談が無料とされ、労働相談についても労働者の側は初回30分無料としているセンターがあります。ほかに、犯罪被害、高齢者・障がい者、生活保護、外国人の方向けなど、テーマを限った窓口も設けられています。

電話で短時間の無料相談もある


 東京の三つの弁護士会が共同運営する相談センターでは、平日10時から16時に15分程度の電話無料相談(東京都内からの発信に限る)を、借金については月曜から土曜に10分程度の電話無料相談を受け付けています。どこに相談すべきかの見当をつける段階では、この短い電話が役に立つことがあります。

 全国から使える入口としては「ひまわりお悩み110番」(0570-783-110)があり、地域の弁護士会の相談センターにつながります。受付時間や取り扱う分野は弁護士会ごとに異なります。

刑事事件には当番弁護士という無料の入口がある


 逮捕された方は、無料で1回、弁護士を呼んで相談することができます。当番弁護士制度と呼ばれるもので、費用は弁護士会が負担します。本人が警察官・検察官・裁判官に「当番弁護士を呼んでください」と伝える方法のほか、ご家族が、逮捕された場所を管轄する弁護士会に電話して呼ぶこともできます。

 無料なのは初回の接見までで、その後も継続して弁護活動を頼む場合は、私選での依頼か、要件を満たせば被疑者国選の手続きに移ることになります。

自治体(区役所・市役所)の無料法律相談


身近である一方、制約は最も多い


 多くの区市町村が、住民向けに弁護士の無料相談を実施しています。予約さえ取れれば費用はかからず、場所も近いため、入口としては使いやすい窓口です。

 一方で、制約は四つのなかで最も多い傾向があります。ある区の案内には、次のような条件が明記されています。

  • 1回30分以内、1日3人(組)までで、事前の予約が必要
  • その区に在住・在勤・在学の個人が対象(区外の方は住んでいる自治体へ)
  • 同じ内容の相談は同一年度内に1回のみ
  • 匿名では相談できず、申込時に氏名・住所・電話番号・年齢を伝える
  • 録音は禁止で、30分を超える相談はできない
  • 調停や裁判で係争中の案件は受け付けない
  • 書類の作成や記載内容の点検、相手方との交渉は行わない
  • 取扱分野を指定して弁護士を選ぶことはできない


相談した弁護士にそのまま依頼はできないことが多い


 あまり知られていないのが、担当した弁護士の氏名や連絡先は原則として案内されず、その弁護士に交渉や書類作成を依頼することはできない、という運用です。自治体は特定の弁護士を紹介する立場にないためで、続きが必要になった場合は、別の窓口で改めて組み直すことになります。

 つまり自治体の相談は、いま起きていることが法律上どう位置づけられるか、次に何を検討すべきかの見当をつける場としては有効で、継続的な対応まで想定した場ではない、と考えておくとずれが生じにくくなります。運用は自治体ごとに違いますので、利用前に対象と回数の条件をご確認ください。

法律事務所の初回無料相談


何がどこまで無料かは事務所ごとに違う


 法律事務所の初回無料相談は、公的な制度ではなく、事務所が自らの判断で相談料を設けていないものです。そのため、無料の範囲も事務所によって異なります。よくあるのは次のような形です。

  • 取り扱う分野を限って無料としている(分野外は有料)
  • 初回のみ無料で、時間も30分や60分といった上限がある
  • 被害を受けた側は無料だが、請求された側は有料といった区分がある
  • 電話やオンラインは無料で、来所での相談は有料といった区分がある


 予約の際に「無料になるのはどの範囲か」「時間はどれくらいか」「2回目以降はどうなるか」を確認しておけば、当日の行き違いは避けられます。

依頼を前提に話ができる


 公的な窓口との一番の違いは、そのまま依頼につなげられる点です。相談を担当した弁護士が、費用の見積もり、見通し、手続きの選択肢まで続けて説明できます。相談した日に依頼を決める必要はありませんが、依頼した場合に誰が窓口になるのかが最初から見えていることは、期限が迫っている場面では小さくない違いになります。

 なお、相談料が無料であることは、その事務所が自分の問題に適しているかどうかとは別の話です。費用の有無だけでなく、その分野を扱っているか、連絡の方法や進め方が自分に合うかも、あわせて見ていただくのがよいと思います。

状況別・どの入口が向いているか


状況入口の候補
弁護士費用を払えるか不安がある法テラス(要件を満たすか予約時に確認)
分野が決まっていて、依頼まで考えているその分野を扱う法律事務所の初回無料相談
まず一般的な見当をつけたい自治体の無料相談、弁護士会の電話無料相談
借金や返済の問題弁護士会の債務整理相談(初回無料の枠)、法テラス
家族が逮捕された逮捕された場所の弁護士会(当番弁護士)、刑事事件を扱う事務所
DV・ストーカー・児童虐待の被害法テラスのDV等被害者法律相談援助、警察
交通事故加入している保険の弁護士費用特約、日弁連交通事故相談センター
契約や悪質商法のトラブル消費者ホットライン188、弁護士会の消費者相談
職場のトラブル労働局の総合労働相談コーナー、弁護士会の労働相談


見落とされやすい無料の入口


法テラスの情報提供(サポートダイヤル)


 資力の基準を満たさない場合でも、法テラス・サポートダイヤル(0570-078374/平日9時から21時、土曜9時から17時)は、どなたでも無料で利用できます。ただし、ここで行われるのは制度や相談窓口の案内であって、オペレーターが個別の法的判断を行うことはないと明示されています。どこに相談すればよいか分からない段階の入口、という位置づけです。

弁護士費用特約


 自動車保険や火災保険などに弁護士費用特約が付いていると、相談料や弁護士費用を保険でまかなえることがあります。法律相談費用は1事故につき1名あたり10万円を限度とする例が一般的で、弁護士費用は300万円を限度とするものが多く見られます。

 交通事故に限らず、日常生活の事故まで対象とする型や、痴漢・ストーカー・いじめなど人格権の侵害を対象に含む商品もあります。利用にあたっては保険会社への事前の連絡が必要とされていますので、まずは証券や約款を確認してみてください。

分野が決まっているときの専門窓口


 交通事故については日弁連交通事故相談センターの無料電話相談(0120-078-325)、契約や悪質商法については消費者ホットライン188、職場の問題については各都道府県労働局の総合労働相談コーナーが、いずれも無料の入口になります。相談したい分野がはっきりしている場合は、こうした専門窓口のほうが早く要点にたどり着けることがあります。

無料相談で得られるもの、得られにくいもの


 30分程度の相談で得られるのは、おおむね次のあたりです。

  • いま起きていることが、法律上どの問題として扱われるか
  • 急いで対応すべき期限があるかどうか
  • 取り得る手段と、それぞれのおおまかな流れ
  • 次にすべきこと、しないほうがよいこと


 反対に、得られにくいものもあります。証拠を精査したうえでの見通し、書面の詳細な検討、相手方との交渉方針の作り込みは、短時間では扱いきれないことが多いところです。その場で結論が出ないこともありますが、それは必ずしも不誠実さの表れではなく、確認すべき事実が残っているという意味であることも少なくありません。

 複数の窓口を回ると、回答が食い違うこともあります。前提として伝わった事実が違えば結論も変わるためで、どちらかが誤っているとは限りません。食い違ったときは、判断の分かれ目になった事実はどれかを聞いてみると、輪郭がはっきりします。

短い時間を使い切るための準備


 窓口がどこであっても、限られた時間の使い方は準備で変わります。最低限、次の三つがあると話が早くなります。

  1. 出来事を時間順に並べたA4一枚のメモ(日付・何があったか・だれが・証拠の有無)
  2. 届いた書面を封筒ごと。裁判所からの書類や回答期限のあるものが最優先です
  3. 聞きたいことを三つに絞ったメモ


 あわせて、自分がすでにしたこと(支払った、署名や押印をした、返信した、削除した)も伝えてください。取り消しや修正が難しくなっている部分がどこかを早く把握できるほど、残っている選択肢の話に時間を使えます。

 予約の電話では、次の4点を確認しておくとよいでしょう。

  • 無料になるのはどこまでか(時間・回数・分野)
  • 利用できる条件があるか(居住地や収入の要件など)
  • 相談したあと、そのまま依頼できるか
  • 持参したほうがよい書類はあるか


おわりに


 四つの窓口は、優劣ではなく役割が違います。費用の負担が難しいのであれば法テラス、分野を絞って公的な窓口を使いたいのであれば弁護士会、まず見当をつけたいのであれば自治体、依頼まで含めて相談したいのであれば法律事務所、というのがおおまかな目安です。一つに絞らなければならない決まりはなく、順に使っていくこともできます。

 期限が迫っているときは、最適な入口を探すことに時間をかけるより、いま予約が取れる窓口でまず見当をつけ、必要に応じて次の窓口に移るという進め方のほうが現実的です。

 なお、ここで挙げた条件・料金・受付時間は変更されることがあります。利用の前に、各窓口の最新の案内をご確認ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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