弁護士・司法書士・行政書士・警察・行政窓口|どこに相談すべきかの使い分け

若井亮

若井亮

テーマ:一般

「弁護士は費用が高そうだから、金額の小さい話は司法書士か行政書士に」「裁判にするほどではないから、まずは行政の窓口へ」。相談先を決めるとき、このように問題の大きさや費用の見込みで振り分けて考える方は少なくありません。

 ただ、弁護士・司法書士・行政書士は、それぞれ根拠となる法律が別にあり、法律上扱うことのできる仕事の範囲そのものが違います。金額の大小で選ぶという発想は、この違いと必ずしも重なりません。範囲の外にある依頼は、その資格者が引き受けたくても引き受けられませんし、無理に引き受ければ違法になることもあります。

 また、警察や行政の相談窓口は、そもそも士業に依頼するかどうかの手前にある受け皿です。使える場面と、そこでは動かない部分があります。

 この記事では、弁護士・司法書士・行政書士・警察・行政の相談窓口について、それぞれ何ができて何ができないのかを整理し、場面ごとの入口の目安をまとめます。どれかが優れているという話ではなく、目的の異なる制度をどう使い分けるか、という視点で読んでいただければと思います。

相談先は「深刻さ」ではなく「扱える範囲」で分かれる


金額や費用で選ぶという発想がずれやすい理由


 弁護士は、法律事務全般を扱うことができ、取り扱える事件の種類にも金額にも制限がありません。一方、司法書士と行政書士は、それぞれの法律で「これを業務とする」と定められた範囲の中で仕事をします。つまり、範囲は金額ではなく、業務の種類で線が引かれているということです。

 そのため、「小さな問題だから司法書士へ」と考えて相談に行っても、内容によっては最初から扱えないことがあります。逆に、単に不動産の名義を変えたいだけであれば、弁護士に依頼しなくても目的は果たせます。

振り分けの前に確かめたい3つの問い


  1. 争っている相手がいて、その相手と交渉したり、裁判所の手続に進んだりする必要があるか
  2. 書類の作成や役所への申請だけで、目的が果たせるか
  3. 起きていることが、犯罪にあたる可能性のある行為か


 1つ目に当てはまるなら弁護士(金額によっては認定司法書士)、2つ目なら司法書士や行政書士、3つ目なら警察が視野に入ります。複数に当てはまることもあり、その場合は同時に動かして差し支えありません。

5つの窓口でできること・できないこと


窓口主に扱うこと相手との交渉や裁判の代理
弁護士法律問題全般(民事・刑事・家事)制限なくできる
司法書士登記・供託、裁判所などに提出する書類の作成認定を受けた司法書士に限り、140万円以下の民事紛争について可能
行政書士官公署に提出する書類、契約書などの作成できない(争いのある案件は扱えない)
警察犯罪にあたる可能性のある行為しない(捜査や検挙が役割)
行政の相談窓口分野ごとの情報提供・助言・あっせん原則としてしない


 この表は大枠の整理です。以下で、それぞれの中身と、見落とされやすい限界を順に見ていきます。

弁護士|扱える範囲に制限がない


できること


 弁護士は、訴訟事件や非訟事件、行政庁に対する不服申立てに関する行為のほか、一般の法律事務を行うことを職務としています(弁護士法3条1項)。具体的には、法律相談、相手方との交渉、内容証明などの通知、調停・訴訟・保全手続の代理、刑事事件の弁護まで、扱える範囲に金額や裁判所の種類による制限がありません。

  • 相手方と直接交渉し、合意内容を書面にまとめる
  • 簡易裁判所・地方裁判所・家庭裁判所のいずれの手続でも代理人になれる
  • 途中で金額が膨らんでも、代理権を失うことがない
  • 民事と刑事が絡み合う事案を、一つの窓口で見通せる


弁護士でも動かない部分


 一方で、弁護士は捜査機関ではありません。相手を逮捕することも、捜査を始めることもできませんし、その場に駆けつけて実力で止める立場でもありません。危害が及びそうな場面では、警察と並行して動くことが現実的です。

 また、費用が発生する点も、他の窓口との違いです。費用の考え方については、別の記事で扱っています。

司法書士|登記が本来の業務、認定を受ければ紛争にも関われる


本来の業務


 司法書士の業務は、司法書士法3条1項に定められています。登記または供託に関する手続の代理、法務局に提出する書類の作成、法務局の長に対する登記・供託の審査請求の代理、裁判所や検察庁に提出する書類の作成、そしてこれらについての相談が、中心となる業務です。

 不動産の名義変更や会社の設立登記は、この範囲の代表例です。訴状や答弁書、支払督促の申立書といった書類を作成してもらい、手続自体は本人が進める、という関わり方もあります。

認定司法書士ができること


 法務大臣の認定を受けた司法書士(認定司法書士)は、上記に加えて、簡易裁判所での訴訟や和解、調停、少額訴訟債権執行などの手続の代理と、裁判外の和解の代理・相談を行うことができます。ただし対象は、紛争の目的の価額が140万円を超えないものに限られます(司法書士法3条1項6号・7号、裁判所法33条1項1号)。

見落とされやすい5つの限界


  • 140万円を超える事件については代理権がない
  • 相談の途中で140万円を超えることが判明した場合、相談や交渉を中止する必要があるとされている
  • 離婚や遺産分割など、家庭裁判所が扱う事件の代理はできない
  • 破産や個人再生など地方裁判所が扱う手続は、申立ての代理人にはなれず、書類作成という形での関与になる
  • 簡易裁判所の事件でも、地方裁判所に移送されたり控訴されたりすると代理権を失う


「140万円」の数え方


 この140万円をどう数えるかについては、最高裁の判断があります。最高裁平成28年6月27日判決(民集70巻5号1306頁)は、債務整理を依頼された認定司法書士について、対象となる個別の債権ごとの価額を基準とするという考え方を示しました。依頼者が最終的に得る経済的利益の額や、和解が成立して初めて分かるような数字ではなく、業務を行う時点で、相手方など第三者から見ても客観的かつ明確な基準によって決められるべきだ、という理由づけです。

 実務上は、この線引きが後から争いになることもあります。金額が140万円前後になりそうな案件では、依頼の前に代理権の範囲を確認しておくと行き違いが起きにくくなります。

行政書士|書類の作成と許認可が中心


できること


 行政書士は、官公署に提出する書類、権利義務または事実証明に関する書類を作成することを業務としています(行政書士法1条の2)。これに加えて、書類の提出手続の代理、契約書などを代理人として作成すること、作成できる書類についての相談に応じることが定められています(同法1条の3)。

  • 飲食店営業や建設業などの許認可の申請書類
  • 会社設立に必要な定款や議事録などの書類
  • 外国人の在留資格に関する申請書類
  • 争いのない場面での契約書、遺産分割協議書、示談書などの作成


 また、日本行政書士会連合会の研修を修了した特定行政書士は、許認可等に関する審査請求など、行政庁に対する不服申立ての手続を代理することができます(同法1条の3第1項3号・2項)。この点については、2025年に成立した改正行政書士法(令和7年法律第65号)が2026年1月1日に施行され、代理できる範囲が整理されています。

行政書士が扱えないこと


 行政書士は、法律事件についての代理人になることができません。したがって、相手方との示談交渉や裁判手続を行うことはできず、報酬を得て法律相談を受けることもできません。

 注意しておきたいのは、書類の作成であっても、当事者間に争いがある案件や、争いが生じ得る案件の書類作成には携われないとされている点です。たとえば、話し合いがついた内容を書面にする依頼はできても、「相手ともめているので交渉してほしい」という依頼はできません。相続や離婚の場面で、この区別が問題になることがあります。

警察|刑事の話として動く窓口


相談が向く場面


 暴力や脅し、押しかけ、つきまといなど、犯罪にあたる可能性のある行為が起きている場合は、警察が入口になります。急を要するときは110番、緊急ではないが相談したいときは、全国共通の警察相談専用電話「#9110」があります。発信地を管轄する警察本部などの相談窓口につながり、受付時間は各都道府県警察によって異なります。

警察では起きないこと


  • 支払う義務があるかどうかの民事上の判断はしない
  • 支払ってしまったお金を取り戻す手続はしない
  • 相手方との交渉を代わりに行うことはしない


 「民事不介入」という言葉が知られていますが、これは明文の規定があるわけではありません。脅迫や恐喝、強要、不退去、業務妨害にあたり得る行為があるのであれば、民事のトラブルに付随して起きたことであっても、警察に相談すること自体は妨げられません。伝え方としては、「請求が不当だ」という評価よりも、いつ・誰に・何をされたかを時系列で説明するほうが、話が進みやすい傾向があります。

 警察と弁護士のより詳しい役割分担については、別の記事で扱っています。

行政の相談窓口|分野ごとの入口


 費用をかけずに使える窓口も複数あります。多くは情報提供、助言、あっせんが中心で、強制的に相手を動かす力までは持っていませんが、最初の交通整理には役立ちます。

  • 消費者ホットライン「188」…事業者との契約や商品・サービスのトラブル。地域の消費生活センターなどにつながる
  • 総合労働相談コーナー(各都道府県労働局・労働基準監督署内)…解雇、賃金未払い、職場のハラスメントなど
  • 法務省「みんなの人権110番」(0570-003-110)…人権に関わる相談
  • 法テラス(日本司法支援センター)…制度や窓口の情報提供のほか、収入等が一定額以下などの要件を満たす場合の無料法律相談
  • 市区町村の無料法律相談…回数や時間に制限があることが多い


 なお、法テラスの無料法律相談は民事法律扶助の枠組みで行われるもので、刑事事件に関する相談は対象外とされています。また、消費生活センターは事業者との取引が対象で、個人同士のトラブルは範囲外となることがあります。

場面別・最初の入口の目安


よくある場面まず考えられる入口
不動産の名義変更(相続登記など)だけを済ませたい司法書士
遺産の分け方で相続人ともめている弁護士
離婚の条件が配偶者とまとまらない弁護士
合意した内容を書面に残したい(争いはない)行政書士・司法書士など
飲食店や建設業の営業許可を取りたい行政書士
許認可が認められず不服を申し立てたい特定行政書士・弁護士
貸したお金を返してもらえない(数十万円)弁護士・認定司法書士
借金を整理したい(1社あたり140万円を超える)弁護士
暴力や脅しを受けている警察(110番・#9110)と弁護士
購入した商品やサービスの契約トラブル消費生活センター(188)
残業代や解雇など職場の問題総合労働相談コーナー・弁護士


 この表はあくまで出発点です。同じ「相続」でも、登記だけで終わるのか、分け方で争いになるのかで入口が変わります。実際には、話を聞いてみて初めてどちらか分かることも珍しくありません。

迷ったときの3つの見分け方


1.争う相手がいるかどうか


 相手方がいて、その人と意見が食い違っているなら、交渉や裁判に進む可能性があります。この場合、代理人になれるのは弁護士(金額によっては認定司法書士)に限られます。逆に、相手と揉めておらず、役所や法務局に出す書類が要るだけであれば、司法書士や行政書士の範囲で足りることがあります。

2.金額が140万円を超える可能性があるかどうか


 今は140万円以下に見えても、遅延損害金や別の請求が加わって膨らむことがあります。途中で範囲を超えると、担当者を替えなければならず、時間も費用も余分にかかります。境界に近い案件では、最初から制限のない窓口を選ぶという判断もあります。

3.期限が動いているかどうか


 裁判所からの書類、支払督促、内容証明による催告などが届いている場合は、対応の期限が定まっていることがあります。この場合は、入口を検討するより先に、届いた書面を封筒ごと持って、期限に間に合う窓口に行くことが優先されます。

「その範囲で受けられますか」と聞いてよい


確認しておきたい3つの質問


  1. この内容は、そちらで最後まで扱える範囲に入りますか
  2. 途中で範囲を超えることになった場合、どうなりますか
  3. 代理人として交渉や裁判に出てもらえますか、それとも書類の作成までですか


 こうした質問は、失礼にはあたりません。むしろ、範囲の外だと分かった時点で別の窓口を案内してくれる事務所のほうが、結果として遠回りになりません。

資格のない代行をうたうサービスには注意


 「示談交渉を代行します」「トラブルの窓口になります」といったサービスの中には、資格の裏づけがないものがあります。弁護士または弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で法律事件に関する法律事務を取り扱うことは禁じられており、違反した場合の罰則も定められています(弁護士法72条、77条3号)。司法書士法や行政書士法にも、同様に業務の制限と罰則の規定があります(司法書士法73条・78条、行政書士法19条・21条)。

 依頼した側が処罰されるわけではありませんが、成立した合意の効力が後から問題になることもあり、結局やり直しになる場合があります。

入口を間違えたと感じたとき


 最初に選んだ窓口が合わなかったとしても、そこで終わりではありません。途中で相談先を変えることはできますし、複数の窓口を同時に使ってはいけないという決まりもありません。刑事の部分は警察、金銭の部分は弁護士、というように分けて進める形も取れます。

 また、弁護士と司法書士が同じ事務所に所属していたり、他士業と連携していたりする事務所もあります。どこに当たるか判断がつかない段階では、扱える範囲が最も広い窓口に一度相談し、そこから振り分けてもらうという進め方も現実的です。

まとめ


  • 弁護士・司法書士・行政書士は、金額ではなく業務の種類で扱える範囲が分かれている
  • 弁護士は範囲に制限がなく、認定司法書士は140万円以下の民事紛争、行政書士は争いのない書類の作成が中心
  • 警察は刑事の話として動き、支払義務の判断や金銭の回収、交渉の代行はしない
  • 行政の相談窓口は分野ごとの入口として使えるが、助言やあっせんが中心となる
  • 迷ったときは、争う相手がいるか、金額が140万円を超えそうか、期限が動いているかを確認する
  • 範囲に入るかどうかは、遠慮せず最初に確認してよい


 どこに相談するかを完全に決めてから動く必要はありません。判断がつかない段階でも、事実を時系列で書き出したメモと、届いている書面を用意しておけば、どの窓口でも話が早く進みます。行き先を決めること自体が難しいと感じる場合は、その状態のまま相談していただいてかまいません。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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