不倫相手の配偶者から慰謝料を請求された|減額・拒否できるケース

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

 ある日突然、交際していた相手の配偶者から「慰謝料を支払ってください」という通知が届く——。手元に示された金額を見て、「この金額をそのまま払わなければいけないのか」と不安になっている方は少なくありません。

 しかし、請求された金額は、あくまで請求する側が「支払ってほしい」と考えている希望額にすぎません。不倫(不貞行為)の事実があったとしても、請求された金額がそのまま確定するわけではなく、事情によっては支払い義務そのものを争えるケースや、金額を大きく減らせるケースがあります。

 大切なのは、自分の状況が「支払い義務そのものを争える(拒否できる)ケース」なのか、「義務は前提としつつ金額を下げる(減額できる)ケース」なのかを、まず切り分けて考えることです。この2つは法的な意味が異なり、取るべき対応も変わってきます。

 この記事では、不倫慰謝料の被請求案件を数多く扱ってきた弁護士が、

  • 不倫慰謝料の支払い義務がどのような仕組みで生じるのか
  • 支払いを拒否できる(義務を争える)6つのケース
  • 支払い義務を認めつつ減額できるケース
  • 請求されたときにやってはいけないNG対応と正しい初動

について、男女どちらの立場の方にも当てはまる形でわかりやすく解説します。

 なお、慰謝料を請求されてお困りの方は、この記事をお読みいただいたうえで、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談もあわせてご検討ください。

まず知っておきたい「拒否」と「減額」の違い

 不倫慰謝料への対応を考えるとき、多くの解説では「払わなくてよいケース」と「安くできるケース」がまとめて並べられがちです。しかし、この2つはまったく性質の異なる主張です。

  • 拒否(支払い義務を争う)……そもそも慰謝料を支払う法的義務が生じていない、あるいは請求できない状態にあると主張するもの。不貞行為の有無、故意・過失の有無、婚姻関係の破綻、時効などが問題になります。
  • 減額(金額を下げる)……支払い義務があること自体は前提にしつつ、請求額が適正な水準より高すぎるとして、妥当な金額まで引き下げるよう求めるもの。

 自分がどちらの土俵に立っているのかを見極めないまま交渉を始めると、本来は義務そのものを争えたのに減額交渉の話に乗ってしまう、逆に義務が明らかなのに全額拒否を貫いて交渉がこじれる、といったことが起こりがちです。まずは、この見取り図を頭に入れておきましょう。

不倫慰謝料の支払い義務が生じる仕組み

 なぜ、不倫相手の配偶者から自分が慰謝料を請求されるのか。その根拠から確認します。

 配偶者のある人が配偶者以外の第三者と性交渉(不貞行為)を持つと、「婚姻共同生活の平和の維持」という、法律上保護される利益を侵害したことになります。これは民法上の不法行為にあたり、損害を賠償する責任が生じます(民法709条・710条)。

 このとき、不倫をした配偶者と、その相手方は、**共同して他人の利益を侵害した「共同不法行為」**の関係に立ち、連帯して慰謝料を支払う義務を負うとされています(民法719条)。だからこそ、配偶者本人だけでなく、その不倫相手であるあなたに対しても慰謝料を請求できる、というわけです。

 重要なのは、この責任は「故意または過失」があって初めて生じるという点です。相手に配偶者がいることを知っていたか、あるいは知り得たのに不注意で知らなかった、という事情がなければ、責任そのものが問えません。ここが、後述する「拒否できるケース」の入口になります。

支払いを拒否できる(義務を争える)6つのケース

 以下のような事情がある場合には、支払い義務そのものを争える、あるいは請求が認められない可能性があります。ただし、いずれも「主張すれば当然に認められる」ものではなく、その事情を裏づける証拠や説明が必要です。

① 不貞行為(肉体関係)がない・証拠がない

 不倫慰謝料の根拠となるのは、あくまで性交渉またはこれに準じる行為があったことです。食事やデート、LINE・メールのやり取りだけでは、原則として不貞行為には該当しません。

 慰謝料請求の原因とされている事実について当事者の言い分が食い違う場合、請求する側が肉体関係の存在を客観的な証拠で示せなければ、不貞行為は認められにくくなります。「肉体関係はなかった」「証拠が不十分だ」という点は、支払いを争う出発点になり得ます。

 もっとも、直接的な性交そのものがなくても、それに準じる行為(性交類似行為)や、頻繁な宿泊などから親密な関係が推認されて請求が認められた裁判例もあります。「最後までしていないから大丈夫」と単純には言い切れない点には注意が必要です。

② 相手が既婚者だと知らず、知らないことに過失もなかった

 前述のとおり、慰謝料責任には故意・過失が必要です。相手が独身だと偽っていた、結婚指輪をしておらず生活の様子からも既婚とは分からなかった、SNS等でも独身としか読み取れなかった——といった事情があり、既婚であることを知らず、知らなかったことに落ち度もなかったと言えるなら、責任を負わない、または大きく軽減される可能性があります。

 ただし、「知らなかった」と述べるだけでは足りません。なぜ気づけなかったのか、その経緯を具体的に説明できることが重要です。実際の裁判例では、相手の説明を信じたというだけでは過失が否定されないケースもあり、判断はケースバイケースです。

③ 不貞行為の時点で、すでに婚姻関係が破綻していた

 不倫慰謝料が保護しているのは「婚姻共同生活の平和」です。裏を返せば、不貞行為の時点で夫婦の婚姻関係がすでに破綻していたのであれば、守られるべき平和がもはや存在しないため、請求は認められないと考えられています。

 この点について最高裁は、配偶者と第三者が肉体関係を持った場合でも、その当時、夫婦の婚姻関係がすでに破綻していたときは、特段の事情がない限り、第三者は他方配偶者に対して不法行為責任を負わない、と判断しています(最高裁平成8年3月26日判決)。

 もっとも、「破綻していた」と認められるハードルは高く、単なる不仲や一時的な別居では足りないのが実情です。長期間の別居や離婚調停の進行など、破綻を裏づける客観的な事実があるかどうかが問われます。破綻の立証責任は、原則として主張する側(請求された側)にあります。

④ 時効が完成している

 慰謝料は不法行為に基づく損害賠償請求権であるため、一定期間が経過すると時効によって消滅します。具体的には、被害者が損害および加害者を知った時から3年、または不貞行為の時から20年が経過すると、時効を主張できます(民法724条)。

 たとえば、不倫関係がかなり以前に終わっており、配偶者もその事実と相手を知ってから3年以上が経過している、といった場合には、時効による消滅を主張できる可能性があります。

⑤ 配偶者がすでに十分な慰謝料を受け取っている

 不倫をした配偶者とその相手方は、連帯して同じ損害を賠償する関係にあります。そのため、請求してきた配偶者が、すでに自分の配偶者(不倫をした本人)から適正な金額の慰謝料を受け取っている場合、同じ損害について重ねて支払う必要はありません。

 たとえば、客観的に妥当な慰謝料が200万円であるケースで、請求者がすでに配偶者本人から200万円を受け取っているのであれば、損害は填補されていると評価され、不倫相手への請求は認められないことになります。相手方がすでにいくら受け取っているのかは、交渉のうえで確認すべき重要なポイントです。

⑥ 離婚した場合に「離婚そのものの慰謝料」まで上乗せ請求された

 夫婦が離婚に至ったケースでは、不貞行為に対する慰謝料に加えて、「離婚に追い込まれたこと」自体の慰謝料まで不倫相手に請求されることがあります。しかし、この点について最高裁は、不貞行為の相手方(第三者)に対して離婚に伴う慰謝料を請求できるのは、その第三者が、夫婦を離婚させることを意図して婚姻関係に不当に干渉するなどして離婚のやむなきに至らせた、と評価すべき特段の事情がある場合に限られると判断しました(最高裁平成31年2月19日判決)。

 つまり、単に不貞行為があっただけでは、離婚という結果そのものの責任まで不倫相手に負わせることは原則としてできません。離婚を理由とする上乗せ分まで請求されている場合には、この判例が反論の根拠になり得ます。

支払い義務を認めつつ「減額」できるケース

 上記のような「義務を争える事情」がない場合でも、請求額が適正な水準を超えていれば、減額交渉の余地があります。

 まず前提として、不倫慰謝料の一般的な目安は、離婚に至った場合で150万〜300万円程度、離婚に至らなかった場合で数十万〜100万円程度とされています。ただし、これはあくまで幅のある目安であり、個別の事情によって上下します。相場と比べて明らかに高額な請求(たとえば数百万円を大きく超える金額など)がなされている場合は、減額を求める余地が大きいと考えられます。

 減額に有利に働きやすい主な事情としては、次のようなものが挙げられます。

  • 不貞行為の期間が短い・回数が少ない……関係が数週間〜数か月程度にとどまる場合など。
  • 自分が主導ではなかった……既婚者である相手側から積極的に関係を持ちかけられた場合など。逆に、自分から強く働きかけていた場合は増額方向に働きます。
  • 不貞以前から夫婦関係が円満でなかった……破綻とまでは言えなくても、夫婦関係が悪化していた事情があれば、考慮される場合があります。
  • 不倫関係を清算し、真摯に謝罪・反省している……関係をすでに解消し、再発防止の姿勢を示していること。
  • 支払い能力に見合った分割の提案……一括では難しくても、分割払いで誠実に対応する意向を示すこと。

 また、実務上のポイントとして「求償権」があります。仮に慰謝料を全額支払った場合でも、共同不法行為の関係にある不倫をした配偶者に対して、その負担分の返還を求めること(求償)ができます。一方で、示談交渉の中で相手方から「不倫をした配偶者には求償しないこと」を条件として求められる場合もあり、こうした条項の有無も含めて全体を見て判断する必要があります。

請求されたときにやってはいけないNG対応

 減額・拒否のいずれを目指すにしても、初動の対応を誤ると、かえって不利になったり、支払う金額が膨らんだりすることがあります。次の点には注意してください。

請求を無視・放置する

 感情的に対応したくない気持ちは自然なものですが、放置すると相手が態度を硬化させたり、交渉を経ずに訴訟に移行したりするおそれがあります。訴状が届いたにもかかわらず放置すると、こちらの言い分を主張しないまま相手の請求どおりの判決が出てしまう可能性もあります。

相手方に直接会って、その場で書面にサインする

 直接会うと、感情的になった相手から高圧的に迫られたり、長時間拘束されて内容を十分に確認しないまま不利な示談書に署名させられたりするリスクがあります。書面へのサインは、内容を精査してから行うべきものです。

不倫相手に連絡を取る・口裏合わせをしようとする

 相手方に発覚したり、証拠を残されたりして、かえって状況を悪化させることがあります。

証拠を削除・隠滅する

 後から不利に評価されるおそれがあるほか、事実関係の確認を難しくします。

感情的に「不倫などしていない」と嘘の反論をする

 事実に反する対応は、反省していないと受け取られ、減額交渉でも不利に働きやすくなります。

請求されたときの正しい初動

 まずは冷静に、請求内容を正確に把握することから始めます。具体的には、次の4点を確認しましょう。

  1. 相手は何を「不倫」と主張しているのか(どの事実を問題にしているのか)
  2. 自分に支払い義務が生じる事情があるのか(故意・過失、不貞行為の有無など)
  3. 請求されている金額は相場に照らして妥当か
  4. 回答期限はいつまでか

 そのうえで、自分の記憶や手元のやり取りを整理し、必要な資料を保全しておきます。最終的に支払いや示談に応じる場合には、後日の蒸し返しを防ぐため、示談書に「清算条項」(合意した内容以外に互いに何らの請求もしないことを確認する条項)を必ず入れておくことが重要です。分割払いを約束する場合には、公正証書の作成を検討する場面もあります。

弁護士に相談するメリット

 不倫慰謝料の交渉は、感情的な対立が起きやすく、当事者同士では冷静な話し合いが難しいことが少なくありません。弁護士に依頼することで、次のようなメリットがあります。

  • 交渉の窓口を一本化できる……相手方と直接やり取りする精神的負担から解放され、家族や職場に知られないよう配慮しながら進められます。
  • 支払い義務の有無や適正額を見極められる……争えるケースなのか、減額を目指すべきケースなのかを、証拠と裁判例をふまえて判断できます。
  • 不利な合意を避けられる……示談書の条項を精査し、後日のトラブルの芽を摘んだうえで合意できます。
  • 相手が弁護士を立てても対等に対応できる……相手方に代理人がついた時点で、こちらも同じ土俵で交渉する必要があります。

 当事務所でも、不倫相手の配偶者から高額な請求を受けた方について、事情を精査したうえで交渉を行い、当初の請求から大幅に減額したうえで分割払いで解決に至った事案などを扱っています。

まとめ

 不倫相手の配偶者から慰謝料を請求されても、示された金額をそのまま支払わなければならないわけではありません。まずは、自分の状況が「支払い義務そのものを争えるケース」なのか「金額を減額できるケース」なのかを切り分けることが出発点です。

 不貞行為や証拠の有無、既婚を知っていたかどうか、婚姻関係の破綻、時効、相手方がすでに受け取った金額——こうした事情によって、結論は大きく変わります。ひとりで判断せず、早い段階で弁護士に相談することで、適正な解決に近づくことができます。

 当事務所は、男女トラブル・不倫慰謝料の被請求案件を多数扱ってきた実績があります。全国どこからでも、年中無休・24時間、無料でご相談を受け付けておりますので、まずはお気軽にご連絡ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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