【問題解決】ビジネスで成果を上げる「仮説検証力」|ケースに学ぶ問題解決法 [問題解決力⑤]
目次
問題解決に取り組む際、
- 多くの時間と労力を費やしたにもかかわらず、期待した成果が得られなかったり、
- 同じ問題が繰り返し発生したりすることはありませんか?
その原因は、問題の表面的な部分だけを見て、根本原因を見逃していることにあるかもしれません。
ビジネスの現場で真の成果を出すためには、目の前の現象に惑わされず、その裏に隠された「本当の原因」を突き止める力が不可欠です。
知識と実践のギャップ:なぜ対策は「もぐら叩き」になってしまうのか?
その背景には、問題解決の最も重要なステップである「真因特定」の欠如があります。
私たちはつい、目の前の課題に飛びつきがちですが、根本原因を特定しないまま対策を講じても、それは一時的な「もぐら叩き」に過ぎません。
例えば、
- 「店舗にて新人Bが発注ミスをしてしまった」という問題が発生したとします。
- 表面的な原因として「Bさんが入力ミスに気づかなかった」という点に注目し、「Bさんにもっと注意するよう指導する」という対策を講じても、同じ問題は他の新人でも起こる可能性があります。
これは、根本原因が解決されていないため、「もぐら叩き」のような状態になってしまうのです。
では、どうすればこのギャップを埋め、より本質的な問題解決ができるようになるのでしょうか?
その鍵となるのが、「真因特定力」です。
「真因」とは?:根本原因を特定し、効果的な対策を導く力
「真因」とは、「本当の原因」という意味です。つまり、その課題や事象を引き起こすことになった根本となる原因のことです。
特に、以下の3つの要素を含む「原因」が真因である可能性が高いとされています。
- 対処療法(表面的)じゃないもの:もぐら叩きにならない、根本的な改善に繋がる原因。
- ループの大元:そこから派生した様々な課題の元になっている原因。
- インパクトが大きいもの:改善することで、大きな効果が見込める原因。
真因を特定するためには、以下の体系的な手順を踏むことが有効です。
真因特定のステップ:原因を構造化するロジカル思考
ステップ1:問題の「要素分解」(Whatツリー)
問題が発生したら、まずはその問題が何によって構成されているのかを分解します。「Whatツリー」とは、全体を「何で構成されているのか?」という視点で分解していくツリーのことです。
- 例:「会社の売上が減少している」という問題を分解
- 国内事業と海外事業に分解。
- 国内事業を法人向けと個人向けに分解。
- 個人向けをさらに、商品A,B,C,Dに分解。
このツリー化によって、「商品Dの売上が減少している」という、具体的に取り組むべき問題の発生箇所を特定できます。
ステップ2:原因を「深掘り」(Whyツリー)
問題の発生箇所が特定できたら、次にその原因を深掘りしていきます。「Whyツリー」とは、「なぜそれが起きているのか?」と繰り返し問いかけることで、問題の原因を明確にしていく手法です。
例:
- 「商品Dの売上減少」の原因を深掘り
- 「客単価が減っている」からか?
- 「顧客数が減っている」からか?→なぜ?→新規顧客が減っているから?リピート顧客が減っているから?
- なぜなぜ分析:この「なぜ?」を繰り返すことで、一般的に5回「なぜ?」を問いかけると、根本的な原因にたどり着くと言われています。
ステップ3:仮説設計(What→Why)と仮説検証
ステップ1と2で洗い出した「What(要素)」と「Why(原因)」を組み合わせることで、最も可能性の高い原因を「仮説」として設定します。
仮説設計:
- 「顧客数が減っている」(What)のは、「見込み客へのリーチ数が減っている」からではないか(Why)?
- 「受注率が下がっている」(What)のは、「商談数が減っている」からではないか(Why)?
- 設定した仮説が本当に正しいのか、定量・定性的に検証
- 「本当にそうか?」と問いかけ、事実情報に基づいて確かめることで、真因を特定
【演習】人材派遣会社の真因特定:離職率が高い問題
- 離職率のギャップ:理想15%に対し、現状28%(-13%のギャップ)
- 問題:離職率が高い
この問題に対し、「コミュニケーション」「内発的動機付け」「外発的動機付け」「営業(派遣先)体制」「採用・育成体制」といった視点で、原因を深掘りしてください。
【演習スペース】
- 第一階層(課題1)
- コミュニケーション
- 内発的動機付け
- 外発的動機付け
- 営業(派遣先)体制
- 採用・育成体制
- 第二階層(課題2)
- 第三階層(課題3)
まとめ:真因特定力で、迷わず、着実に問題解決を進める
問題解決は、闇雲に努力するだけでは成果に繋がりません。
特に、複雑な問題ほど、まず「真因」を特定するというステップが不可欠です。
真因特定力を高めることで、複雑な状況から最も可能性の高い根本原因を特定し、事実に基づいてその真偽を確かめることができます。これにより、的外れな「もぐら叩き」のような対策を避け、より効果的かつ効率的に問題解決を進めることが可能となるのです。
真因特定によって、問題の根本にある「ループの大元」や「インパクトが大きいもの」を明らかにし、それに対する対策を講じることで、持続的で大きな成果へと繋げることができます。
「なぜ?」という問いを繰り返し、原因を構造化する力を養い、ビジネスにおけるあらゆる課題に迷いなく、着実に取り組んでいきましょう。
【演習解答例<演習:人材派遣会社の真因特定>】
- 離職率のギャップ:理想15%に対し、現状28%(-13%のギャップ)
- 問題:離職率が高い (※「外発的動機付け」は省略)
第一階層(課題1)
- コミュニケーション
- 内発的動機付け
- 外発的動機付け
- 営業(派遣先)体制
- 採用・育成体制
第二階層(課題2)
1.コミュニケーション
- 社内(営業)とのコミュニケーション
- 社内(同僚)とのコミュニケーション
- 顧客(社外)とのコミュニケーション(派遣先との人間関係)が悪い
2.内発的動機付け
- 結果・プロセスの達成・特筆をしていない
- 適切な意見交換不足・裁量権を持っていない
- 仕事の適正が悪い・キャリアプランの有益性が低い
- 成長促進の機会が少ない・指導機会が少ない
4.営業(派遣先)体制
- 【先数】派遣先の不足が続いており、選択の余地がない
- 【選定】派遣先選定の基準に不満がある(説明不足)
- 【マッチング】把握力が弱く、適正配置ができていない
- 【タイミング】育成が中途半端な状態で派遣される・空いてしまう期間がある
5.採用・育成体制
- 採用基準が離職を加味した内容になっていない
- 採用時の説明内容が、現場と違う
- 成長意欲が高いのに、必要な育成体制が整っていない
第三階層(課題3)
- コミュニケーション
- コミュニケーションの外発的偏り
- コミュニケーション頻度が少ない
- コミュニケーション内容が悪い
真因特定の解答事例
このように要素分解を深掘りしていくと、特に
- 「営業(派遣先)体制」
- 「採用・育成体制」
が、複数の課題の「ループの大元」になっている可能性が高いことが見えてきます。
優先順位(短期・中期)
短期(即効性のある改善):第三階層にある「コミュニケーション頻度の少なさ」や「コミュニケーション内容の悪さ」といった、比較的改善しやすい部分から着手します。
また、派遣先選定における「説明不足」も早期に対応できる課題です。
中期(体系的な改善)
「派遣先選定の基準に不満がある」「把握力が弱く適正配置ができていない」といった営業体制の課題は、基準や仕組みの見直しが必要なため、中期的な取り組みとなります。
真因(長期的な根本改善)
「成長意欲が高いのに、必要な育成体制が整っていない」という課題は、離職の根本原因である可能性が高いです。
これは、内発的動機付けの不足や、スキル不足によるコミュニケーション不全など、多くの問題の元になっています。
この真因を特定し、育成体制の構築に取り組むことが、長期的な離職率改善に繋がります。
この原因が真因となる可能性が高い理由
- ループの大元:育成体制の不備が、派遣社員の成長実感の欠如、キャリアプランの不明確さ、結果的にコミュニケーション不足を引き起こし、離職に繋がっている可能性があります。
- インパクトが大きいもの:ここを改善し、体系的な育成プログラムを導入することで、派遣社員のエンゲージメント向上、定着率改善、ひいては顧客満足度向上という大きな成果に繋がる可能性があります。
- 対処療法じゃないもの:「給与を上げる」といった一時的な対策ではなく、成長をサポートする仕組みに働きかけるため、持続的な解決に繋がります。
このコラムは以下のような方におすすめです:
- 組織改善やマネジメント力強化に取り組む経営層・管理職の皆様
- 複雑な課題に対して構造的にアプローチしたい方
- チームで“成果が出る問題解決力”を育てたいリーダー層
弊社では、管理職育成・問題解決力向上・組織マネジメント支援を一貫してご提供しています。
貴社にあった“再現性のある課題解決支援”をお求めの際は、お気軽にご相談ください。
全社員で学ぶ問題解決スキル:エンゲージメント向上への道
これらの問題解決スキルは、研修を通じて体系的に学ぶことができます。
| 問題解決ステップ | 習得スキル一覧 |
|---|---|
| 考え方スキル | 提案思考、感情移入思考、集合天才思考 |
| 基礎能力スキル | 目標・ゴール思考、業務処理能力、共同業務力 |
| 現状把握スキル | 全体像把握力、定量情報収集・整理力、定性情報収集力 |
| 課題解決スキル | 仮説検証力、論理的思考力、コミュニケーション能力、問題(課題)解決力(メタ認知力) |
| 優先順位付け・提案スキル | 伝達力、プレゼンテーション力、ビジョン構築力 |
| 実行・実行改善スキル | リーダーシップ力、マネジメント力、実行・検証・改善(PDCA) |
これらのスキルを全社員が習得することで、各々が課題に主体的に向き合い、解決策を生み出すことができるようになります。
これは個人の成長に繋がり、仕事への主体性や達成感を高めることで、エンゲージメントの向上にも寄与します。
社員一人ひとりが「自分ごと」として問題解決に取り組むことで、組織全体のパフォーマンスが最大化され、高い成果を継続的に創出できる企業へと発展していくでしょう。
【会社案内・サービス概要資料】をすぐにご覧いただけます
当社の特徴や提供サービスをまとめた「会社案内・サービス概要資料」と「無料相談のご案内」をご用意しています。
「会社案内の資料」はフォーム入力なしで、すぐに内容をご確認いただけます。
ご検討中の企業様へ(1)|VCCの会社案内・サービス全体像ダウンロード
▼無料ダウンロードはこちら(フォーム入力なし)
「会社案内・5つのサービス」PDFを ”今すぐダウンロード” する
※ パスワード「 VCC2025 」を入力してください
ご検討中の企業様へ(2)|無料相談(予約制)のご案内
弊社(株式会社バリュー・コア・コンサルティング)では、以下5つのサービスを提供しております。
- 総合経営コンサルティング
- 勝ちパターン構築プログラム
- ワークショップ型 リアル研修プログラム
- ワークショップ型 eラーニング型 研修プログラム
- 講演・セミナー 開催
取材のご依頼や各種サービスに関するご相談・ご質問などに関し、『無料でご相談(オンライン)』をお受けしております。
以下フォームより、お気軽にお問い合わせください。
▼無料相談 予約URLはこちら
>無料相談(WEB)の日程調整をする
【First Step】前工程として必要な全社『問題解決』の手法を知りたい方はこちら
- 【問題解決①】問題解決で高めるエンゲージメント──“成果が出る”課題解決手法とは?
- 【問題解決】全社で成果を最大化! クリティカルシンキングで高める組織エンゲージメント [問題解決力②]
- 【問題解決】問題解決は「正確な現状把握」から!定量・定性の両面で真の課題を見つけ出す [問題解決力③]
- 【問題解決】問題解決の第一歩:全体把握力!実践ワーク&ケーススタディ集で学ぶロジカルシンキング [問題解決力④]
- 【問題解決】成果を左右する問題解決の本質:「本当にそう?」を突き詰める仮説検証力 [問題解決力⑤]
【First Step】前工程としての『マネジメント』手法を知りたい方はこちら
- 【実マネ① | 基本】管理職が育たないのはなぜ?マネージャー向け”人材育成5原則”
- 【実マネ② | 対策_絞込】部下が”やりきれない”…。「成果の出る"SCI"優先順位付け
- 【実マネ③ | 課題_特定】部下の“課題”が分からない…。課題特定3要素の導入ステップ
- 【実マネ④ | 目標_設定】目標設定がズレていませんか?“成果につながる“KPI設定3視点
- 【実マネ⑤ | 行動_やり切らせる】「やり切れない部下」を”最後までやりきらせる”行動管理
- 【実マネ⑥ | 成長_促進】部下育成で「なぜ学びが定着しないのか?」 “成長マネジメント
- 【実マネ⑦ | 案件_サポート】「同じ相談が繰り返される…」脱却!1on1で部下育成に効く案件管理
- 【実マネ⑧ | モチベーション】部下の“やる気が出ない”のは“視点のズレ”? モチベーション管理
- 【実マネ(統合) | PDCA】PDCAが回らない本当の理由とは?成果が出る“高速PDCA”の実践法
【First Step】前工程としての『リーダーシップ』手法を知りたい方はこちら
- 【リーダー① | 基本】“人望”ある管理職・経営層が実践するリーダーシップ4Eとは?
- 【リーダー② | エネルギー】管理職が持つべき「情熱」とは何か?エネルギー言語化6要素
- 【リーダー③ | エネルギー】熱意があるのに伝わらない。管理職が陥りやすい落とし穴と“内面3軸”
- 【リーダー④ | エナジャイズ】組織エネルギーを高める!優秀管理職のエナジャイズ仕組と育成法
- 【リーダー⑤ | エッジ】厳しい意思決定を恐れない:チームを動かす“エッジ”の実践フレームとは
- 【リーダー⑥ | エグゼキュート】「やり切る力」を成果に変える実践フレームと行動基準
- 【リーダー⑦ | 理念浸透】理念浸透しない組織は伸びない?“組織文化醸成”のステップ
- 【リーダー⑧ | スタンス】優秀管理者のスタンス・マインドとは?—4E+「経験学習×探求思考」実践法
- 【リーダー⑨ | エンゲージメント】生産性を変える──リーダーが取り組むべき仕組みと実践法








