【問題解決】ビジネスで成果を上げる「仮説検証力」|ケースに学ぶ問題解決法 [問題解決力⑤]
目次
ビジネスにおける問題解決は、まるで複雑なパズルのようです。
ピースが多すぎたり、どこから手をつけていいか分からなかったりすると、時間ばかりが過ぎてしまい、結局解決に至らないことも少なくありません。
多くの人が問題解決の重要性は認識しているものの、いざ実践となると
- 「何から始めればいいか分からない」
- 「結局、部分的な改善で終わってしまう」
といった壁にぶつかることがあります。
知識と実践のギャップ:なぜ問題解決は「絵に描いた餅」になるのか?
その背景には、
- 「なんとなくの感覚」で課題を捉え、
- 「思いつきベース」で打ち手を決めてしまうという
“属人的マネジメント”の慣習が存在します。
これでは、本当に解決すべき問題を見落としたり、的外れな対策に貴重な時間や資源を費やしたりするリスクが高まります。
では、どうすればこのギャップを埋め、より本質的な問題解決ができるようになるのでしょうか?
その鍵となるのが、「現状把握力」です。
「あるべき姿」と「現状」のギャップを埋める現状把握力
現状把握力とは、あるべき姿(目標)と現状の間に存在するギャップを正確に捉え、真の問題を発見する能力を指します。これを実現するためには、以下の2つの視点が不可欠です。
定量把握(ファクトベース)
数値やデータに基づき、客観的に現状を捉えることです。売上、コスト、時間、エントリー数、通過率など、誰が見ても同じ認識ができる情報を収集します。
定性把握(インサイトベース)
数値では測れない、人々の感情や意見、雰囲気、組織風土など、背景にある要因を捉えることです。ヒアリングや観察を通じて、課題の根底にある真意を理解します。

この定量・定性の両面から現状を把握することで、漠然とした悩みを具体的な問題として抽出し、解決策を立てるための土台を築くことができます。
実践ステップ:定量把握から定性検証へ
問題解決を実践的に進めるには、
- まず定量データで全体像を把握し、
- そこから見えてきた課題に対して定性的な情報で仮説を検証していく、
という流れが効果的です。
ステップ1:まずは定量把握で現状を数値化する
<ケーススタディ:ある悩める就活生の声>

「就活を始めたけど、悩み尽きなくて大変。
ES(書類選考)は通らないし、面接に行ってもアピールポイントが分からない…。
そのうち内定を一つももらえなくなるんじゃないかと不安になってきて…」
- Q. このような悩みを抱える就活生にアドバイスをするため、まずはどのような現状把握(定量)をしますか?(目標と現状のギャップを考える)
【ワークスペース】
- 目標(あるべき姿):
- 現状(定量):
- 問題:
- 課題(想定される要因):
【参考①】生産性・仕事の仕方を構成する要素で定量把握を整理する
漠然とした「業務処理能力が上がらない」といった課題も、以下の要素に分解することで、定量的に整理できます。
生産性 = 稼働率 × パフォーマンス
- 稼働率 = 「主体工数」/「総工数」
- パフォーマンス = 「成果」/「主体工数」
*主体工数とは:直接的に成果に結びつく業務に費やす時間のことです。(例:営業であれば「顧客と話す時間」、経理であれば「経理業務をする時間」)
ステップ2:仮説検証時に定性把握で真因を深掘りする
定量的な把握で「どこに問題がありそうか」の仮説が立てられたら、次は定性的な情報でその仮説を検証し、真因を特定します。
<ケーススタディ:ある悩める社会人(事務)の声>

「リモートワークで同僚や上司に相談しづらいし、業務処理能力も上がらない。
これってモチベーションやセンスの問題なのかな…。
でも上司に相談しても本当に良いのか悩むし、以前『言っていることが分からない!』
と言われてから、相談することに抵抗がある…」
- Q. あなたがこの社会人の友人の場合、アドバイスをするために「まず、どのようなことを知りたいですか?」(定量・定性それぞれ解答ください)
(※解答例はページの下部にあります)
【参考②】定性把握のフレームワーク(1)
業務見直し(5M):
- 定量要素が多いもの:ムダ(不要な作業や待ち時間など)、ミス(誤った作業や不備回数など)
- 定性要素が多いもの:ムリ(負荷が過剰な作業や人員配置など)、ムラ(業務品質や作業速度のバラつきなど)、モレ(やるべき作業の抜け漏れなど)
【参考③】定性把握のフレームワーク(2)
仕事の仕方(6つのステップ):
- 指示受け(どのレベルで、どこまで、いつまで)
- ゴールブレイクダウン(どのようなゴール)
- タスクブレイクダウン(何をやるか)
- スケジューリング(いつやるか)
- コンセントレーション(実行)

これらのフレームワークを活用することで、現状把握時にヒアリングや観察の視点が定まり、数値だけでは見えない心理的な要因や組織的な課題を効率的に抽出できます。
まとめ:現状把握力で、迷わず、着実に問題解決を進める
問題解決は、闇雲に努力するだけでは成果に繋がりません。
特に、複雑な問題ほど、まず「現状を正確に把握する」というステップが不可欠です。
現状把握力を高めることで、複雑な状況を定量・定性の両面から整理し、どこに真の課題が潜んでいるのかを見極めることができるようになります。
これにより、的外れな努力を避け、より効果的かつ効率的に問題解決を進めることが可能となるのです。
「あるべき姿」と「現状」のギャップを正確に捉え、ビジネスにおけるあらゆる課題に迷いなく、着実に取り組んでいきましょう。
【ワーク解答例】
<ステップ1:ワーク解答例>
【定量現状把握】
- 目標(あるべき姿):〇〇業界の内定10件(+エントリー50件)
- 現状(定量):〇〇業界の内定2件(+エントリー50件)
- 問題:〇〇業界の内定が8件不足している
- 課題(想定される要因):**(次のステップ)**なぜ内定数が不足しているのか、その要因を探るために、ESの通過率、面接数、面接通過率などのデータをさらにヒアリングしていく必要がある。
<ステップ2:ワーク解答例>
【定量&定性現状把握】聞きたいこと(現状把握の質問例):
①定量:
- 具体的にどの業務に時間がかかっていますか?(生産性)
- 1日に何件の業務を処理していますか?(生産性)
- 残業時間は平均でどれくらいですか?(5M)
- 業務のムダ、ミスで悩んでいると感じる部分(回数)はありますか?(5M)
②定性:
- 業務の負荷が過剰だと感じることはありますか?(ムリ)
- 業務品質や作業速度にバラつきがあると感じることは?(ムラ)
- やるべき作業の抜け漏れが原因で問題が起きたことはありますか?(モレ)
- 上司からの指示は、内容や期待値をしっかり確認できていますか?(指示受け)
- 業務のゴールを明確にし、タスクに分解して取り組めていますか?(ゴールブレイクダウン、タスクブレイクダウン)
- タスクの優先順位付けや、いつやるかを決めるスケジュール管理はできていますか?(スケジューリング)
- 目の前の業務に集中できない要因はありますか?(コンセントレーション)
【補足】このように、定量的な情報と定性的な情報をバランスよくヒアリングすることで、漠然とした悩みの背景にある「真の課題」を浮き彫りにしていきます。
このコラムは以下のような方におすすめです:
- 組織改善やマネジメント力強化に取り組む経営層・管理職の皆様
- 複雑な課題に対して構造的にアプローチしたい方
- チームで“成果が出る問題解決力”を育てたいリーダー層
弊社では、管理職育成・問題解決力向上・組織マネジメント支援を一貫してご提供しています。
貴社にあった“再現性のある課題解決支援”をお求めの際は、お気軽にご相談ください。
全社員で学ぶ問題解決スキル:エンゲージメント向上への道
これらの問題解決スキルは、研修を通じて体系的に学ぶことができます。
| 問題解決ステップ | 習得スキル一覧 |
|---|---|
| 考え方スキル | 提案思考、感情移入思考、集合天才思考 |
| 基礎能力スキル | 目標・ゴール思考、業務処理能力、共同業務力 |
| 現状把握スキル | 全体像把握力、定量情報収集・整理力、定性情報収集力 |
| 課題解決スキル | 仮説検証力、論理的思考力、コミュニケーション能力、問題(課題)解決力(メタ認知力) |
| 優先順位付け・提案スキル | 伝達力、プレゼンテーション力、ビジョン構築力 |
| 実行・実行改善スキル | リーダーシップ力、マネジメント力、実行・検証・改善(PDCA) |
これらのスキルを全社員が習得することで、各々が課題に主体的に向き合い、解決策を生み出すことができるようになります。
これは個人の成長に繋がり、仕事への主体性や達成感を高めることで、エンゲージメントの向上にも寄与します。
社員一人ひとりが「自分ごと」として問題解決に取り組むことで、組織全体のパフォーマンスが最大化され、高い成果を継続的に創出できる企業へと発展していくでしょう。
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