【問題解決】問題解決の第一歩:全体把握力!実践ワーク&ケーススタディ集で学ぶロジカルシンキング [問題解決力④]

弥左大志

弥左大志

テーマ:問題解決力

問題解決の第一歩:全体把握力で真の課題を見つける!

問題解決とは、複雑な状況を整理し、本質的な課題を捉え、的確に対応するプロセスです。
ビジネスの現場でも「課題解決力が大切」という認識は広がっていますが、いざ実践となると多くの人がこのような悩みに直面します。

  • 「何から着手すべきか分からない」
  • 「考えているうちに時間ばかり過ぎる」
  • 「結果として、部分最適の改善で終わってしまう」

このような現象は、「知識はあるが、実践できていない」という状態を示しています。
全体把握力

知識と実践のギャップ:なぜ問題解決は「絵に描いた餅」になるのか?

その背景には、「なんとなくの感覚」で課題を捉え、「思いつきベース」で打ち手を決めてしまうという“属人的マネジメント”の慣習が存在します。
その結果──

  • 本質的な課題を捉えきれず、表面的な対応に終始してしまう
  • 解決策の打ち手が思いつき頼みになり、再現性がない
  • メンバーに「考える力」が育たず、当事者意識も生まれない

では、どうすればこのギャップを埋め、より本質的な問題解決ができるようになるのでしょうか?
その鍵となるのが、「全体把握力」です。

「木を見て森も見る」:全体把握力で複雑な問題を整理する

「全体把握力」とは、物事を抽象化して捉え、必要な要素を大きなまとまりでざっくりと考える能力を指します。
これを言い換えれば、「何かを構成する要素を大きなまとまりでざっくりと考える方法」です。
複雑な問題に直面したとき、目の前の小さな事象ばかりに囚われてしまうと、問題の本質を見失いがちです。全体把握力を活用することで、以下のメリットが得られます。

  • 間違った課題の把握リスクを軽減 部分的な情報に惑わされず、問題全体の構造を理解できます。
  • 必要な要素の漏れをなくす 漠然とした事柄から、具体的な構成要素を網羅的に洗い出せます。
  • 本当に重要な項目を見逃さない 全体像を把握することで、最も影響力の大きいボトルネックや真因を特定しやすくなります。
  • 最適な現状把握を実現 漠然とした状況を整理し、問題解決に必要な情報を効率的に収集・整理できます。

ケーススタディで見る「全体把握力」の実践法(簡易ケース)

【簡易ケース】全体把握力の活用事例:就職活動の悩みを構造化する

例えば、「ある悩める就活生」のケースを考えてみましょう。

  • 「就活を始めたけど、悩み尽きなくて大変。」
  • 「自分のやりたい仕事の見つけ方が分からない」「ES(書類選考)が通らない」「焦りや不安に追われる」
  • 「面接に行っても、自分のアピールポイントが分からない」「内定をもらえない」
  • 「周りの就活生と比べてしまう」「就職活動にお金がかかるのが不安」「服装・髪型の正解が分からない」

全体把握力
このような漠然とした悩みを抱える就活生に対し、全体把握力を使ってアドバイスする場合、以下の視点から整理できます。

1.手順が間違っているかもしれない: 就職活動全体の「手順・行動量」に問題があるのではないか?

  • 準備段階:自己分析、業界研究・企業研究、3つの論点の整理(志望動機/自己PR/学生時代頑張ったこと)、ES作成、テスト対策。
  • 実践段階:インターン、OB訪問、リクルーター面談、本選考。

このように手順を分解することで、どこにつまずいているのかを具体的に特定しやすくなります。
全体把握力

2.行動量や行動の質が十分か?: 内定に向けた「行動量」や「行動の質」は十分か?

  1. 内定数を「エントリー数」から「面接通過数」まで分解して考えます:内定数 = エントリー数 × 書類通過数 × 面接数 × 面接通過数
  2. さらに、それぞれのステップには「通過率」という視点も加わり:内定数 = 母数 × 書類通過率 × 面接率 × 面接通過率とも分解できます

各ステップにおける「通過数」や「通過率」を分析することで、どのフェーズでボトルネックが発生しているのかを明確にし、そこに集中的に改善策を講じることができます。
全体把握力

ケーススタディで見る「全体把握力」の実践法(実務ケース)

【実務ケース】全体把握力のワークイメージ:構成要素の検討

では実際に、具体的な項目を「構成する要素」として分解するワークをイメージしてみましょう。
これは、複雑な事象をロジカルに整理し、現状把握の質を高めるために非常に有効です。

Q1. 以下の事項を、「構成する要素」で考えてください。

【ワーク】

  • 生産性
  • パフォーマンス(例:アポ取得)
  • モチベーション

全体把握力

【回答事例】

■生産性

  • 生産性 = アウトプット / インプット = 成果 / 時間(総工数)
  • または、 生産性 = (主体工数 / 総工数:稼働率) × (成果 / 主体工数:パフォーマンス)

生産性は、投下した資源(インプット)に対して得られた結果(アウトプット)の割合で測られます。
これをさらに分解すると、実際に業務に費やした時間(主体工数)の割合である「稼働率」と、その時間でどれだけの成果を出せたかという「パフォーマンス」に分けることができます。
全体把握力
■パフォーマンス(例:アポ取得)

  • プロセス系での分解例:アポ獲得 = 接客数 × アンケート受領数 × 課題ヒアリング数 × 50分面談数
  • アポ取得セールス系での分解例:アポ獲得 = コール数 × 通話率 × 提案率 × アポスピード

「アポ取得」という成果一つとっても、様々なプロセスや活動の積み重ねで成り立っています。このように分解することで、どのプロセスに課題があるのかを明確に特定しやすくなります。
全体把握力
■モチベーション

  1. 会社への信頼・共感
  2. 他者の存在
  3. 外発的動機付け
  4. 内発的動機付け

モチベーションは非常に複雑な要素ですが、このように「会社」「他者」「外発的要因」「内発的要因」といった大きな塊に分け、さらに具体的に分解することで、社員のモチベーションを向上させるための具体的な施策を検討しやすくなります。
全体把握力

Q2. 以下の事項を、「必要な要素」で考えてください。

【ワーク】

  • 意思決定時(何かを決める)
  • お客様との対話(セールス)時に必要な要素
  • お客様が意思決定をするための要素

全体把握力

【回答事例】

■意思決定時
意思決定のための要素(優先順位のSCI)

  • スピード:成果が早い
  • コスト:費用が少ない
  • インパクト:成果が大きい

何かを決定する際には、これらの要素を複合的に考慮し、最も効果的かつ効率的な選択肢を選ぶことが求められます。
全体把握力
■お客様との対話(セールス)時
セールス時に必要な要素(バーバル・ノンバーバル)

  • 内容:トーク内容(整理されているか、ロジカルか)
  • 聞き方:頷き方、姿勢、表情、目線など
  • 話し方:トーン(高低)、リズム(話すスピード、間)、大きさ、口調、口癖
  • 見た目:服装、髪型、姿勢、視線、動作、表情

顧客との対話は、単に情報を伝えるだけでなく、非言語情報も重要です。これらの要素を分解することで、営業スキルの課題を具体的に特定し、改善に繋げることができます。
全体把握力
(参考)その他にも、お客様との信頼関係を結ぶために必要な要素は、

  1. 誠実である(嘘を付かないと感じられる)
  2. 話しの筋が通っている(言っていることの辻褄が合っている)
  3. 共感できる(営業マンの考え方や信念を共感できる)

なども存在します。
全体把握力
■お客様の意思決定
顧客が意思決定をする2つの理由

  • ① 避けられる損失:このままだと、〇〇のような損失が発生してしまう…それを避けるために、〇〇の意思決定が必要…
  • ② 得られる利益:〇〇の意思決定をすることで、〇〇を得ることができる!〇〇によって、これくらいの利益が出る!

顧客が何かを購入したり、サービスを導入したりする際、大きく分けて「損失回避」と「利益獲得」という2つの動機があります。この視点を持つことで、顧客へのアプローチ方法を最適化できます。
全体把握力

まとめ:全体構造で見る力が、問題解決の起点となる

先程のような全体感を持つことで、今まで問題点(うまくいかない要因)と考えていたもの以外を捉えることが可能となります。
「木を見て森も見る」──これはリーダーも含め、従業員全員にとって欠かせない視点です。
構造で捉え、整理し、要素を的確に拾い上げる「全体把握力」があることで、

  • 課題は“全体の中の一部”として正しく位置づけられ
  • 改善は“局所ではなく組織全体”に波及する
  • メンバーも“当事者”として課題に関われる

結果として、個人の力ではなく、チーム全体で成果が出る仕組みが育ちます。

このコラムは以下のような方におすすめです:

  • 組織改善やマネジメント力強化に取り組む経営層・管理職の皆様
  • 複雑な課題に対して構造的にアプローチしたい方
  • チームで“成果が出る問題解決力”を育てたいリーダー層

弊社では、管理職育成・問題解決力向上・組織マネジメント支援を一貫してご提供しています。
貴社にあった“再現性のある課題解決支援”をお求めの際は、お気軽にご相談ください。

全社員で学ぶ問題解決スキル:エンゲージメント向上への道

これらの問題解決スキルは、研修を通じて体系的に学ぶことができます。

問題解決ステップ習得スキル一覧
考え方スキル提案思考、感情移入思考、集合天才思考
基礎能力スキル目標・ゴール思考、業務処理能力、共同業務力
現状把握スキル全体像把握力、定量情報収集・整理力、定性情報収集力
課題解決スキル仮説検証力、論理的思考力、コミュニケーション能力、問題(課題)解決力(メタ認知力)
優先順位付け・提案スキル伝達力、プレゼンテーション力、ビジョン構築力
実行・実行改善スキルリーダーシップ力、マネジメント力、実行・検証・改善(PDCA)

これらのスキルを全社員が習得することで、各々が課題に主体的に向き合い、解決策を生み出すことができるようになります。
問題解決
これは個人の成長に繋がり、仕事への主体性や達成感を高めることで、エンゲージメントの向上にも寄与します。
社員一人ひとりが「自分ごと」として問題解決に取り組むことで、組織全体のパフォーマンスが最大化され、高い成果を継続的に創出できる企業へと発展していくでしょう。

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弥左大志
専門家

弥左大志(経営コンサルタント)

株式会社バリュー・コア・コンサルティング

企業にあわせた「勝ちパターン」を見出し、誰でも再現できる仕組みを構築。研修を起点に、現場での実行までサポートします。120%以上の売り上げアップの実績を誇り、金融機関やファンド会社からの依頼も多数。

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