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建築物の意匠の保護対象拡大

鈴木康介

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テーマ:意匠法

プロシード国際特許商標事務所の鈴木康介です。

4月1日から施行される意匠法は、意匠の定義が変わりました。

改正前の意匠法2条1項
 この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。第八条を除き、以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。

改正後の意匠法2条1項
 この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。第八条を除き、以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)、建築物(建築物の部分を含む。以下同じ。)の形状等又は画像(機器の操作のように供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。次条第二項、第三十七条第二項、第三十八条第7号及び第八号、第四十四条の三第二項第六号並びに第五十五条第二項第六号を除き、以下同じ。)であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。
 
つまり、意匠の対象が、「物品」だけから、「物品」「建築物」「画像」にまで拡大しました。

<建築物の定義>

意匠法上の建築物の意匠の定義は、以下の2つを満たすものになります。
1 土地の定着物であること
  土地は、平面、斜面などの地形を問いません。また、海底や、湖底などの水底も含まれます。
  また、定着物は、継続的に土地に固定されしようされるものです。

2 人工構造物であること(土木構造物を含む)
  構造物は、建築基準法の定義等における用語の意味よりも広く、建設される物体を指し、土木構造物を含見ます。例えば、商業用建築物や住宅や工場や競技場だけでなく、橋梁や煙突も含みます。
  通常の使用状態において、内部の形態が視認されるものについては、内部の形態も含みます。

<願書や図面>
 1 意匠に係る物品
  意匠に係る物品は、建築物の具体的な用途が明確になるものを記載する必要があります。
  例えば、住宅、オフィス、研究所、工場、ホテル、百貨店などです。
  また、様々な業種のテナントが入る大規模施設など、複合的な用途を持つ建築物は「複合建築物」と記載し、
  具体的な用途は「意匠に係る物品の説明」の欄において説明します。

 2 図面等
  現行の意匠法施行規則及び意匠審査基準に即して記載します。
  なお、建築図面に用いられる【東側立面図】、【西側立面図】、【南側立面図】、【北側立面図】、【屋根伏図】等の記載も許容されます。
  建築物の内部について意匠登録を受けようとする場合、当該部分の位置、大きさ、範囲がありふれたものであると出願人が考える場合は、建築物の外側の開示は不要となります。

<建築物の衣装の新規性の判断における類否判断上の留意点>
 1 判断主体
  需要者(取引者を含む)です。

 2 用途及び機能の類似性の判断
  対比する両意匠の使用の目的、使用の状態等に基づく用途及び機能に共通性があるか検討されます。

  例1 住宅、病院、レストラン、オフィスは、いずれも人がその内部に入り、一定時間を過ごすという点で用途及び機能が類似します。

  例2 建築物の意匠「住宅」と、物品の意匠「組立家屋」とは、人が居住する建物として、用途及び機能が類似します。

  例3 建築物の意匠「住宅」の居間について意匠登録を受けようとする部分とした意匠と、内装の意匠「住宅の居間の内装」は、用途及び機能が類似します。

  なお、建築物の意匠と内装の意匠との間でも、その用途及び機能に共通性があれば、両意匠の用途及び機能は類似と判断します。

 3 観察方法
  人の身体の大きさを大きく超えるものが多いため、類否判断のための意匠の観察にあたっては、グラウンドレベルからの肉眼による観察を基本としつつ、建築物の特性に応じて、建築物の一部に接近した視点で細部を観察するなど、一の視点に限定することなく、複数の視点から総合的に行います。

   例1 店舗用建築物は、路面に面した側の装飾面に比重を置いて観察します。

   例2 電波塔などタワー状の建築物は、四方均等に創作が行われることが多く、各面を同じ比重で観察します。

<類似する建築物の事例 (形態が類似し、用途及び機能が同一の例)>

建築物の意匠の新規性

類似事例1
類似事例1

類似事例2
類似事例2

類似事例3
類似事例3

類似事例4
類似事例4

建築物の意匠の創作非容易性

置き換え
置き換え

寄せ集め
寄せ集め

一部構成の単なる削除
削除

物品等の枠を超えた構成の利用・転用
転用

配置の変更
配置の変更

構成比率の変更
比率の変更

連続する単位の増減
単位の増減

今までの意匠の考え方をある程度流用できそうでよかったです。
 
今回は、下に参考にあげた「改訂意匠審査基準案の概要」に基づいて書きました。
また、図面も「改訂意匠審査基準案の概要」に記載のものです。

なお、意匠審査基準が決定すると内容が変わるかもしれません。

参考 改訂意匠審査基準案の概要

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鈴木康介(弁理士)

プロシード国際特許商標事務所

国際特許事務所での業務を通じて、実践的な知識とネットワークを培ってきました。また、中国人と国際結婚したため、現地の生活習慣などを経験を通じて理解しています。

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