国際結婚・タイ
「国際結婚の夫婦、外国人夫婦の夫婦財産制を勉強しています」
国際結婚をしている夫婦や、日本に在住している外国人夫婦で、
夫婦財産制の相談を受けることがあります。
そもそも、夫婦財産制とは何か?を調べてみました。
日本人の夫婦で、「夫婦財産」とか「夫婦財産契約」は、聞かないです。
でも、民法755条以下で決められています。
755条 夫婦が結婚を締結する前に、その財産関係をどうするか?について、
特別の契約をしなかったときは、第二款で決めた取り扱い(法定財産制
⇒760条~)によって処理する
とあります。
しかし、日本では、夫婦財産契約はほとんど行われておらず、
夫婦の財産関係は、法定財産制によって解決されているらしいです。
ただ、日本に住んでいる外国人夫婦では、夫婦財産契約が交わされているようです。
では、日本に住んでいる外国人夫婦が夫婦財産契約を交わす場合、
どの国の法律が準拠になるのか?です。
日本の法律なのか、夫婦の国籍国の法律なのか、
夫婦の国籍がちがったらどの法律なのか、になりますから。
このような場合、日本では、国際私法と呼べる
「法の適用に関する通則法」(以下、通則法と書きます)に従います。
<夫婦財産制>、という条文があります。
通則法の第26条です。その第1項に、
「前条の規定は、夫婦財産制について準用する」
と記載されています。そうすると「前条とは何だ?」です。
前条とは、通則法の第25条です。それは
<婚姻の効力>の条文で以下のように記載されています。
「婚姻の効力は、夫婦の本国法が同一であるときは、その法により、
その法がない場合において夫婦の常居所地法が同一であるときはその法により、
そのいずれの法もないときは夫婦の最も密接な関係のある地の法による。」
です。
それを踏まえて、
<夫婦財産制>
通則法の第26条第1項は、
「前条の規定は(⇒<婚姻の効力>のこと)、夫婦財産制について準用する」
第2項
「前項(⇒第1項のこと)の規定にかかわらず、夫婦が、その署名した書面で日付を記載した
ものにより、次に掲げる方のうちいずれかの法によるべきかを定めたときは、
夫婦財産制は、その法による。この場合において、その定めは将来に向かってのみ
その効力を生ずる。
一 夫婦の一方が国籍を有する国の法律
二 夫婦の一方の常居所地法
三 不動産に関する夫婦財産制については、不動産の所在地法
第3項
前2項の規定により外国法を適用すべき夫婦財産制度は、日本においてされた法律行為
及び日本にある財産については、善意の第三者に対抗することはできない。
この場合において、その第三者との間の関係については、夫婦財産制は日本法による。
第4項
前項の規定に関わらず、第1項又は第2項の規定により適用すべき外国法に基づいて
された夫婦財産契約は、日本においてこれを登記したときは、第三者に対抗することが
できる。
となっています。
<反致>
第41条 当事者の本国法によるべき場合において、その国の方に従えば日本法によるべき
ときは、日本法による。ただし、第25条(第26条第1項及び第27条において、
準用する場合も含む。) 又は第32条の規定{→親子間の法律関係のこと}により
当事者の本国法によるべき場合は、この限りではない。
[日本の民法]
<夫婦財産契約をした場合の財産関係>
(夫婦の財産関係)
第755条 夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約をしなかったときは、
その 財産関係は、次款に定めるところによる。
(夫婦財産契約の対抗要件)
第756条 夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出までに
その登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。
第757条 削除
(夫婦の財産関係の変更の制限等)
第758条 夫婦の財産関係は、婚姻の届出後は、変更することができない。
2 夫婦の一方が、他の一方の財産を管理する場合において、管理が失当であったこ
とによってその財産を危うくしたときは、他の一方は、自らその管理をすること
を家庭裁判所に請求することができる。
3 共有財産については、前項の請求とともに、その分割を請求することができる。
(財産の管理者の変更及び共有財産の分割の対抗要件)
第759条 前条の規定又は第七百五十五条の契約の結果により、財産の管理者を変更し、
又は共有財産の分割をしたときは、その登記をしなければ、
これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することかできない。
<日本の民法の法定財産制>
(婚姻費用の分担)
第760条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、
婚姻から生ずる費用を分担する。
(日常の家事に関する債務の連帯責任)
第761条 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、
他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。
ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。
(夫婦間における財産の帰属)
第762条① 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、
その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
② 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、
その共有に属するものと推定する。
例えば、日本に住んでいる外国人夫婦の夫婦財産制の準拠法は、
同一の本国法、同一の常居所地法及び密接関連地法の順により、
更に、当事者が夫婦財産制の準拠法の選択することも認められています。
ただし、準拠法の選択については、その関連性の範囲内で一定の合理的な制約が
設けられていて、
一 夫婦の一方が国籍を有する国の法律
二 夫婦の一方の常居所地法
三 不動産に関する夫婦財産制については、不動産の所在地法
一ないし三の法律の中から選択し、選択をするときは、夫婦の書面により、
準拠法を定めておきます。
夫婦財産制の準拠法として、外国法が指定又は選択された場合ですが、
外国法の認める夫婦財産制に効力が、内国において認められる必要がありますが、
かと言って、無制限に認めることは、内国での取引に混乱を生ずる恐れもあります。
そこで、内国との取引の関係についてですが、外国法による夫婦財産契約を締結だけではなく、
外国法による法定財産制も対象になります。
そして、日本で行われた法律行為及び日本にある財産については、
第三者の善意、悪意を基準として調整し、
法定財産制を含めた外国法による夫婦財産制は、それと利害関係を有するに至った
第三者が、善意の場合には、これを対抗することはできないとしています。
ただ、外国の法律によって締結された夫婦財産契約は、日本においてこれを登記すれば、
第三者に対抗することができるとされています。
登記の無い場合においては、日本法による夫婦財産制に基づいてその利害関係を解決する
ことになるようです。
ですので、登記のある場合と無い場合によって、第三者との利害関係を調整することになります。
又、準拠法の選択については、不動産の場合を除いて、財産関係全体についての選択のみが
許されている、と解されています。
登記については、外国人の日本における住所地の法務局で、契約者である夫婦双方の申請により行います。
日本に在住している外国人夫婦で、夫がA国、妻がB国の場合、
夫婦財産制の準拠法は、
「夫婦の本国法が同一であるときは、その法により、
その法がない場合において夫婦の常居所地法が同一であるときはその法により、
そのいずれの法もないときは夫婦の最も密接な関係のある地の法による。」
なので、日本法が常居所地法になります。
ただし、一定の要件のもと当事者が準拠法を選択することを認めているので、
「一 夫婦の一方が国籍を有する国の法律
二 夫婦の一方の常居所地法
三 不動産に関する夫婦財産制については、不動産の所在地法」
A国の法律、B国の法律、不動産の所在地の法律が選択でき、
選択した法律が、準拠法になります(尚、この場合は、反致が成立しないです)。
続く
「永住者を目指そう!」
ここ数年、永住者を得るのが難しくなりました。
外国人の永住者許可のガイドライン
http://mbp-japan.com/tokyo/orimoto/column/1302564
外国人永住者の配偶者と実子、在留資格「永住者の配偶者等」
http://mbp-japan.com/tokyo/orimoto/column/1314952