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寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(てらだあつし) / 行政書士

寺田淳行政書士事務所

コラム

「孤独死レポート」を読んで

2022年9月8日

テーマ:最近の話題から

コラムカテゴリ:くらし


【今日のポイント】

 おひとり様暮らしが長い方はどうしても考えてしまう「孤独死」

 おひとり様シニアが悩む三大リスク
今の住まいの空き家化リスク、認知症発症リスクと並ぶのが孤独死リスクです。

 今日は、「一般社団法人日本少額短期保険協会」「孤独死対策委員会」
によって作成された「2021年6月作成のレポート」を紹介します。

 リアルな孤独死の実態を知ることは、リスク回避の為の行動に繋がります。

【レポートの概要】

 このレポートにおける孤独死の定義は、以下の通りです。

「自宅内で死亡した事実が死後判明に至った一人暮らしの人」

 データ収集の期間は、2015年4月から2021年3月までの6年間となっています。
上記で紹介した対策委員会に所属する各社が「賃貸住居内における孤独死の実像」
を統計データで示した初の資料となってます。

【男女別の死亡人数と死亡時の年齢】

 男性が総計の約5,500人中の83,1%を占め圧倒的となっています。
死亡時の平均年齢は男性61,6才、女性60,7才であまり差はありませんでした。
65才未満の比率は 男性で約52%、女性も約52%でここでもあまり差はありません。

 ちなみに平均寿命は男性で81,41才、女性で87,45才でした。
(厚労省令和元年簡易生命表より)

 気になったのは、65才未満が共に過半数を超えている事実です。
これは「過半数は現役世代での孤独死」という意味と捉えていいでしょう。
私にとっては意外な事実でした。

 さらに詳しくみると、
60代が全体の約31%を占めて年齢別ではトップ、
これを男性に限れば、約34%、女性は約20%で、男性が多くなっています。

50代は全体の約19%で 男性は、約20%、女性が約14%
40代は全体の10%で 男性は9,8%、女性が11,8%
30代は全体の6,4%を占め、男性では6%、女性は9,5%
20代は全体の約4%、男性に限れば3,4%、女性は8,3%

 80代以上(男性7,4%、女性15,7%)で女性が大きく上回っているのは
男女の平均寿命の差からもある程度認識出来ましたが、
20代から40代と言った「現役世代」の年代で女性の比率が高いのは驚きの事実でした。
 
 これに対して男性の場合は、
年齢層が上がるにつれて孤独死の比率が増えるといった傾向が一貫しており、
男女の差がここまで顕著な事実は予想外のものでした。

【死因別人数と男女別死因の構成】

 死因に関しては圧倒的に「病死」が多く、
全体の約5,400名中の3,500名以上となっていました。
男女とも病死の比率は、60%を超えています。

 事故死は意外に少なく全体で約70名でした。
割合では1,3%、男女別では女性の方が多いですが大差はありません。

 死因不明を除けば、死因の第二位は、「自死」でした。
比率としては、全体の約11%を占めていました。

 ただ男女別の構成で見てみると、
男性8%に対し、女性は13%と女性の方が高くなっています。

 先の若い世代の女性の孤独死の比率が男性を上回っていたのは
ここにも一因があるのではと考えてしまいました。

 孤独死に占める自死の割合が約11%と紹介しましたが、
これは全国民のすべての死因における自死の割合が1,4%であることと比べると、
約10倍で相当高い傾向と言えるでしょう。

【発見までの日数】

 死後3日以内というのが全体の約40%でトップ。
以下4~14日が約30%、15~29日が14,5%、30~89日が14,5%、
90日以上というのも1,5%存在してます。

 これも男女別で比べてみると、
圧倒的な差が見られたのが3日以内での発見で、
男性は約38%でほぼ平均値に比べ、女性は50%と過半に達しているのです。

4~14日では男性29%、女性28%、
15~29日が男性約16%、女性が12%
30~89日は男性約15%、女性約9%
となっていました。

 総平均日数にしますと、
全体でも男女別でも17日で、2週間超という結果でした。

 あくまでも推測ですが、
女性が3日以内に発見されるということは
親族友人知人をはじめ、社会との接点が確保され、
定期的な連絡を取り合っていたことの証拠と思われます。

 詳細は省きますが、
賃貸暮らしでの孤独死の発見ということから
第一発見者が物件のオーナーや不動産管理会社の社員の構成比が高く、
親族と同等の構成比になっていました。

 親族が第一発見者の場合でも、
男性は約35%に対して、女性は約45%と10ポイントも上回っており、
親族との距離にも男女で差があることが認められます。

 ちなみに
「友人」に該当する友人や知人、会社関係といった人物が
第一発見者になった割合は僅かに14%でかなり低位になっていました。

 死亡者の年齢が原因と思われますが、
ケアワーカーや自治体スタッフ等の福祉関連では約18%で
友人を上回っていました。

【発見原因】

 3日以内の発見場合も、30日以上の場合でも、
発見のきっかけは「音信不通」でした。

 3日以内の場合は、
実に86%近くが連絡が絶たれたことで訪問したことになります。

 30日以上の場合でも、
約51%が音信不通を訝しんでの訪問でした。

 それでも発見までの平均日数では14日でした。

 逆に言えば、
日ごろ連絡を取り合う相手がいない場合はどうなるのか? 
ということになります。

 発見原因の第二位は、
残念ながら「異臭や部屋の異常」でした。

 異常とは水漏れや電気が終日点灯しているなどに加え、
虫の大量発生もここに含まれていました。

 発見までの平均日数は23日で、
音信不通より1週間以上も時間がかかっています。

 この場合3日以内の発見は、
僅かに9%で、30日以上の場合の28%と大きな差となっています。

 明瞭に具体的な異常ともいえる家賃滞納の場合、
これも3日以内は、2%ちょいで30日以上でようやく15%に達してます。

 平均日数は、28日で調査項目の中では最長日数でした。

 日本の国民性?なのでしょうか、
1か月程度の滞納ではあまり積極的な行動に出ない、
このことが却って発見の遅れとなってしまうのかもしれません。

 この他に周囲が気付きやすいものとしては
「郵便物の多量の滞留」がありますが、これは全体の9%に過ぎません。
発見までの平均日数は、23日で異臭や部屋の異常と同じでした。

 3日以内では約3%、30日以上でも約5%に過ぎず、
もともと交流がないのか、立ち入った行動に躊躇した結果なのか、
近隣との付き合いや交流の密度によっても大きな差になるのでしょう。

 レポートでは、
発見者が親族がトップという要因の一つに
3年にわたるコロナ禍を挙げていました。

 やはりこれまで疎遠であっても、
あのコロナ発生初期の衝撃を経て、定期連絡の習慣が生じ、
その結果短期の音信普通でも注意するようになったからではとありました。

 上記の推論は、
おひとり様世帯には無縁の話です。

 なのでより一層、親族以外に定期連絡=生存確認が出来る人間関係は
自助努力で用意しておきたいものです。

【死後に発生した費用】

1)残置物の処理
  平均で約24万円の費用が発生してます。
 支払われた保険金額は実際の損害額をやや下回るも、ほぼ同額が支払わてます。
 調査内での最大損害額は、実に約180万円、最少額は1,080円でした。
 支払われた保険金は99万円で、最大損害額の半分程度が最高額となっています。

2)原状回復費用
  平均損害額で、約39万円、
 平均保険金額は、約33万円でほぼカバー出来ています。
 最大損額額は、約150万で最小が5,400円と大きな差が生じています。
 支払われた保険金額も、最大で300万円、最小は同額の5,400円でした。


 仮の話になりますが、
残置物が大量で、かつ原状回復に高額な費用発生となれば
300万円以上の費用負担を後に遺すことになります。

 それに加えて周囲に手間と時間の負担も強いることになるのです。

【終わりに】

 このレポートでは、賃貸住まいの場合の内容となっています。

 これが例えば、
郊外の一戸建てに暮らすおひとり様であれば、
より外部からの発見には時間がかかるでしょう。

 水漏れしても周囲は気付きにくく、
異臭騒ぎも隣家との距離があれば即発覚とはいきません。
雨戸を閉めたままなら終日電気がつけっ放しでも外からはまずわかりません。

 家賃の滞納も存在しませんし、
強いて言えば郵便物や定期購読の新聞の滞留が最も目を引くものとなります。

 この場合でも
賃貸での発見までの平均日数が23日ですから、
一戸建てなら、さらに遅れる可能性は高いと思われます。

 今回は孤独死に関しての実態報告を基にしたコラムでした。

「死んだ後のことまで気にする気はない。」
「立つ鳥、後は構わず」

 こういった神経の持ち主を別にすれば
「死んでからも周囲に迷惑はかけたくない。」が
ごく一般的な感情ではないでしょうか?

 遺憾ながら、
孤独死はあくまでも本人よりは親族や周囲により迷惑をかける問題です。

 結果的に周囲に迷惑や負担をかけるにしても、
出来る限り最小限の範囲で、最低限の負担で済むようにするのは
結局は当事者自身の生前の心構えに委ねることになります。

 今回のテーマと少し離れますが、
冒頭で触れた「認知症リスク」に関しては、
周囲以上に本人自体に多大な影響を与えかねない課題です。

 孤独死への備えを検討しようにも、
症状によっては自身では何も出来なくなります。

 周囲が手を差し伸べようにも、勝手な行動(支援)は規制されてしまいます。
 
 おひとり様の場合は、特に心身健全な時に行動しなくてはいけないのです。

 認知症とそれ以前のMCIについては、後日改めて別稿で紹介したいと思います。

この記事を書いたプロ

寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(寺田淳行政書士事務所)

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