起業した相談者の現状を聞いて思ったこと

寺田淳

寺田淳

テーマ:起業・独立


【はじめに】

 大きな夢を持って起業・独立した方
会社員時代に果たせなかった夢の実現を目指して開業した方

 私への相談後、1年で成功の挨拶に来られた方もいれば
3年後に違う形で新たな仕事に就き、成功した方もいました。

 無論、その後音信不通になった方や
再び再就職で会社員となった方も少なくありませんでした。

 また起業後、軌道に乗ったという方の中にも
当初の仕事以外での成功、と言った現状に
いろいろな想いを抱えて日々を過ごす方もいらっしゃいました。

 今日は特に飲食で独立・開業した方の事例を中心に紹介したいと思います。

【結果オーライで今に至る?】

 5年前の相談者の事例です。
もともと営業職のサラリーマン生活を長年続け、
50歳を迎えて一念発起してコーヒー豆の販売店を始めたところ
評判が評判を呼び、今では店を拡張し喫茶コーナーを設けたのです。

 本人は土日も仕事が入り、
帰宅時間も不規則なサラリーマン生活から
定休が保証される小売店で夜は家族と過ごすという生活を目指したのですが、
周囲からのニーズと本人も欲が出たことで小売りとイートインの
二刀流に踏み切ったとのことで多忙になったものの
結果的には想定の収入を遥かに超える実績を得ました。

 加えて豆の購入者以外の新規の常連客がついたことで
思わぬ人脈を得ることにもつながり、事業拡大の為の資金融資も
新たな常連客となった銀行員の口利きでスムースに叶ったとのことでした。

 ただ当初の家族との団らんについては先延ばしを余儀なくされたようで
結果として満点と言う訳ではなかったようです。

 起業に踏み切った判断は間違っていなかった
 小売での収益も当初の予想通りに推移した
 ~ここまでは満足度100%だったようですが

 まさか店内に喫茶コーナーを新設するとは思ってもいなかった
 さらにこんなに早くに常連がつくとも思わなかった
 その分仕事量は増え、想像以上に多忙となった
 目指していた家族との団らんの時間がとれなくなった
 ~余裕のある第二の人生を家族と共にという目標は先送りになった
  この点だけは今も釈然とはしていない

 他人から見れば「贅沢な悩み」に見えるでしょうが、
当事者からすれば、結果オーライでの成功では手放しでは喜べないようでした。 

【いつの間にか主客転倒?】

 次の事例も似たようなケースでしたがさらに皮肉な結果となったものです。
この方はもともとの夢であったイタリアン系のバルを早期退職して開業しました。
在職中に調理師免許も取得済みで物件もじっくり吟味した末の満足する立地を確保、
気軽に食事が楽しめる庶民派の店としてオープンしたのです。

 その際、奥様の趣味であるお菓子作りを活かして
デザート系のメニューは奥様主導で決めていき二人三脚の運営となったのです。

 ですが現在は店は完全にスイーツ専門店となっていました!

 旦那さんの料理もそれなりに人気はあったそうですが、
開店して1年後には奥様のスイーツが店の話題の中心となってしまい
開店して1年半後に看板をバルからスイーツ専門店としたそうです。

 テイクアウトもイートインも絶好調で営業時間もバルの時代から
大幅に短縮(夜は19時半閉店とした為)したにもかかわらず
売上は想定を上回る好調ぶりを継続中だそうです。
~今では旦那さんがホールと洗い場担当だそうです

 個人的にどうしても気になったので
起業・独立の張本人である旦那さんにこっそりと聞いてみたところ、
「負け惜しみ満載ですが、今の気持ちはこうです」と話してくれました。

「そもそも私が事業を始めてなければ、妻のスイーツも世に出なかった。」
「結局、成功のきっかけは自分の決断であることは間違いない。」

 これもひとつの結果オーライとも言えますが、
当初の「夫唱婦随」から「婦唱夫随」となっているのは
より強烈な結果オーライと言えるのではないでしょうか?

【当初のターゲットユーザーは?】

 こういった成功事例もある中、
当然ながら真逆の事例もありました。

 開業当初、コアな顧客として捉えていた大学が移転してしまい
大幅に来店客が減少し新たなユーザー層を見出せないまま
廃業を余儀なくされたスポーツジム。

 もともと飲食の激戦地を承知の上で開店した中華料理店でしたが
予想以上の激戦にランチタイムに主力品の割引サービスを始めたり
無責任なユーザーの求めに安易に応じてしまい新規ラーメンの乱発で
常連が遠のく等の結果、僅か1年で閉店した事例。

 昼営業のみの喫茶・軽食の店舗を始めたものの
今一つ伸び悩んだ末に夜営業とアルコールの提供を始めた結果
夜が主体の営業スタイルになってしまい一部の固定客しか寄り付かない
どこにでもあるような居酒屋に変貌してしまい
思ったほどの実績も挙げられないまま惰性で営業しているといった事例等

 どの事例も当初の目論見が外れた後に迷走を始め、
その甲斐もなく成果に繋げる事が出来なかったのです。 
 

【終わりに】

 相談時の「夢」の実現、ではなかったものの
第二の仕事を軌道に乗せ第二の人生を歩み始めているケースは
起業の相談を受けた身としては我がことのように嬉しいものです。

 その反面、夢破れた結果のケースには私のアドバイスに
何か欠けていたものがあったのではと思わざるを得ません。

 ただ多くの場合、問題に遭遇した時に独断で
行動を決めてしまったケースが少なくなかったのは気になりました。

 なぜこうなる前に私でなくとも第三者に相談しなかったのですかと
尋ねた時「恥ずかしかった」「何とか出来ると思った」
といった答えが返ってきたのです。

 人生経験豊富な自分が今更他人に頼るなんてといった世間体か
見栄かわかりませんが、自分自身で選択肢を狭めていたことには
大きな課題があると思いました。
 
 私も会社員の時代に、もっと早期に上司や関係部署に相談や
助力を求めていれば傷口が浅かったものを自分だけで解決を図ろうと
徒労を繰り返した末に大問題に発展させたこと、自分もやらかしましたし
部下からこの手の相談を受けたこともありました。

 宮仕えでも独立・開業の場合でも
早めの問題の把握と早期解決を最優先とした相談や協力を求めること
全く同じことでした。

 今後も折を見て起業相談者のその後、現状について調べていき
成功の秘訣や条件等のヒントを彼らから吸収すると共に
二度目の相談を気楽に出来るような接し方をすることを強く意識した次第です。

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寺田淳
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寺田淳(行政書士)

寺田淳行政書士事務所

 起業・独立や転職、再就職を考えるシニア世代に対して、現時点での再就職市場の動向や起業する際の最低限の心構えを始め、私自身が体験した早期退職から資格起業に至るまでの経験やノウハウを紹介します。

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