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寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(てらだあつし) / 行政書士

寺田淳行政書士事務所

コラム

60代、クルマについて語る

2019年7月25日 公開 / 2021年3月2日更新

テーマ:新橋事務所日記

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 退職 手続き


【今日のポイント】

 高齢者による自動車事故のニュースが相次いでいます。
たまたまここ2カ月の間に高校や大学時代の友人たち、前の会社の同輩、諸先輩と全て60代のメンバーと会う機会が続いた中で、「60代になって、クルマとどう付き合っているか?」について語り合いました。

 今日のコラムは身内話の延長となりますが、もしかすると自分も同じ経験がという方もいらっしゃるのではと思って、あえて記事にしてみました。

 

【クルマと決別?】

 いきなりですが、既に「車を手放した」というケースを採り上げますが、さすがにまだ免許返納者は皆無でした。 どういう事情から長年の「相棒」と決別したのでしょうか?

 まず出てきたのは、定年退職し、年金生活に入った中で生活費の見直しを図り、今後の生活の優先順位を考えてみて、クルマが無くても生活に支障が出ない(=交通網が発達し、インフラも充実している)ことから「手離すことを」決断したそうです。

 次に出てきたのは、維持管理などの費用面の問題ではなく、外的要因=引っ越し先に駐車場が確保出来なかったというものです。このケースも定年退職後に郊外の一戸建てを処分し、都内の駅近のマンションへ転居した方でしたが、近隣に駐車場自体が無いような立地だったため、保有を断念したそうです。

 健康面から手離した例もありました、病気やケガというのではなく、健康増進のため、または医者からの推奨で毎日続けられそうな適度な運動として自転車を選択した為、クルマを使わなくなり、将来再使用することもないだろうと判断したそうです。

 それぞれ手離すに至った理由は様々ですが、結局は「そこまで執着する対象」では無くなっていたから、というのが本音の様でした。

【気になる事例 その1】

 次に、現役でクルマを運転しているメンバーを中心に、最近になって初めて体験した「今までにない変化」の有無について話を進めました。  その中から、やや気になった症状を以下に紹介します。

・カーステレオ、エアコン等の操作を「度忘れした」
 今迄当たり前のようにブラインドタッチで操作してきたカーステレオの操作やエアコンの温度調整などが運転中についに思い出せず、危険を感じていったん車を停車させて試行錯誤の末に「思い出して」ようやくFMが聴けた、エアコンの温度調整が出来た。  
 似たような話で、トリップメーターのリセットが出来なかった、時計の時刻合わせがマニュアル見ないと出来なかったケースもありました。

 いずれもまだ60代半ば、私より3,4歳年上の方で、話した後に拙いと思ったのか(?)ここ数か月いろいろあって運転していなかったから度忘れしただけ、と釈明を始めました(笑)
 私は昨年来のひざの故障でほぼ1年間運転出来ませんでしたが、このような「症状」は発症していません。 この症状は1回だけだったのか、その後も形を変えて発症していたかは聞きそびれました。

・大型量販店の駐車場などで車を停めた場所が分からなくなった。
 探し出すまでにかなりの時間を要したというケースです。 郊外型のだだっ広い青空駐車場でも建物に併設されている立体駐車場の場合でも同様で、ここのはずと思い込んでいた場所にクルマがなく、茫然としたというケースです。

 恥ずかしながらこれは私も経験あります。 記憶に鮮明なのは初めて出向いた商業施設の立体駐車場の時で、後から考えれば単純に停めた階を間違えただけの話だったのですが、本人にはその自覚がなく、絶対にこの階に停めた!とそのフロアを二周してもなお自分の間違いを認めず、クルマ探しに無駄な時間を費やしたという苦い記憶があります。

 ある先輩の経験では、偶然店内で旧知の知人と遭遇し、喫茶店でしばらく過ごした後に駐車場に向かったのですが、その時には完全に駐車位置の記憶が抜けていたそうです。 この先輩もしきりに「度忘れ」「初めての経験」を強調していました(苦笑)

【気になる事例 その2】

 さらに話が進んだ中で、笑い事では済まないのではという体験談が出てきました。

・右折左折時にウインカーを出し忘れる、出そうとしたが手をハンドルから離せなかった(そのため結果的に出さないまま曲がった)
 当然パワステのハンドルですから片手で十分コントロールは出来るはずですし、通常ならば自然に右手でハンドル、左手でウインカー操作が出来ていたのですが・・・

・スーパーの駐車場等不慣れな駐車場で、駐車スペースの枠内にバックでまっすぐに停められなくなった。
 これも行きつけでない店舗、不慣れな駐車場だから苦労するという話でしたが、なかには自宅の駐車スペースでもまっすぐに停められない(または何度か切り返しをして枠内に収まった)ケースが3回に1回なんだという笑えないケースもありました。

・前方を走行するクルマとの車間距離が一定の距離に保てなくなった。
 渋滞やのろのろ運転時、高速道路を走行中の時だけというものでもなく、一般道を通常速度で走行中の場合でも起こったことだそうです。中には前方を走行するクルマが不規則な速度で走行していた為かもしれませんが、どうも車間距離の感覚が低下しているのではと思われます。

 さすがに(まだ60代だから?)アクセルとブレーキを踏み間違えたとか、急ハンドル、急発進、急ブレーキ等で冷や汗をかいた、頭が真っ白になったというシビアな体験談はありませんでしたが、長きにわたって手足のごとく扱ってきたクルマが扱いにくい存在になりつつあるという事実が見えてきました。

【気になる事例 その3】

 最後にクルマを持つ根幹の部分について話を進めた時に出てきたのが以下の事例です。

・ドライブに前ほど行きたくなくなった。
 これも私自身思い当たる節があるケースです。 私の場合ほぼ行ける圏内の行楽地や史跡などを制覇したからと言い聞かせてます、どこかに行こうかと思っても即座にルートや沿線の名所旧跡、お土産、地元グルメなどが脳裏に浮かんでしまうのです。その時点でドライブに出たいという気持ちの大部分が萎えてます。 新鮮味がない、好奇心が沸かないドライブほどつまらないものはありませんから・・・

・運転に興味が無くなった
 これは家庭のある方が多かったです、家族と出かけるときの必須アイテムだったのが、子は独立し、妻は自分の趣味の仲間と出かけるため、一人で運転は味気なくなったためというものです。 
 もうひとつは冒頭の事例とは逆に引っ越し先に駐車場もあり依然として所有はしているものの、交通の便がいい場所の為、あえて車で出かける必要性がなくなったからというものでした。

 ごく少数ですが、昨今の悲惨な自動車事故の記事を見て、急に運転することが怖くなった、何故自分で運転してまでという消極的な考えに至ったことから運転自体を避ける様になったという事例もありました。
 

・車のメンテが面倒になった
 50代までは真冬でも週1回は洗車していた、車内は常に整理整頓し、休日には自分でオイルチェックや空気圧チェック、点火プラグの清掃等を楽しんでやってきたものだったが、ここ最近はやる気にならない、全てディーラー任せになった。 極端な例では窓の泥汚れも、ボンネットに鳥の糞がついていても気にならなくなってきたというケースもありました・・・ 

 このケースは、いささか気になりました。 

 よく耳にするのは、独身時代と違い家庭を持ってからはクルマへの「投資」は後回しにせざるを得なくなり、自身も多趣味になったりであまりクルマを「着飾る」ことに執着しなくなったというケースです。

 若い頃はやれタイヤを履き替えなくては、ホイールを取り換えなくては、純正カーステレオのままでは恥ずかしい等々、様々な理由(中身は見栄と世間体だけですが)から少ない手取りの給与からローン代金を工面して嬉々として購入していました。今から見れば一種のはしかみたいなものだったと思います。 こういった情熱も結婚や出産、マイホーム購入といった人生の流れの中で次第に醒めていくのはごく普通の傾向と言えるものでした。

 とはいえ、クルマ本来の性能を維持させるためには最低限のメンテナンスは欠かせません、いざという時に動かなくては車を持っている意味がないからです。 メンテ自体に関心がなくなるというのに、何故未だに所有しているのかと首を傾げざるを得ません。

【60代で車を持つ意味は?】

 話を続ける中で、途中からクルマ所有者に対し、なぜ所有しているかの問いかけも出てきました。

 さすがに投資目的とか節税対策等という理由は皆無で、未だに「走り屋を続けている」という現役を自称するメンバーや、「ボケ防止」の訓練の為に運転しているとか、純粋に「クルママニア」で「所有することに意味がある」という回答がありました。 ただ多くの場合、本音としては「今、手離す理由がないから」というのがひとつの大きな理由でした。

 もう一つの理由は、「自分の存在価値」を証明するものだからというものでした。

 60歳を迎え現役を退き、肩書や役職を失くした中でクルマを保有し運転するという「現役感」は捨て難いと言うものでした。この点については最近の相談者からも増えてきている案件で、高齢の親が免許返納に応じてくれない、というものと通じるものがあると思います。

 ちなみに私は、東日本大震災以降は「一時避難場所」としてクルマを位置付けています。雨風を凌げることは言うまでもありませんが、他にも冷暖房完備、外部からの情報入手も可能ですし、最低限のプライバシーも守られます。 蛇足ですが、ガソリンは常に満タン、週1,2回はエンジンをかけてバッテリーの放電防止も心がけて、「最低限の機能発揮」の維持に努めています。


【MCIとの関係】

 最期は毎晩のようにドライブしていた若かりし日の想い出話や武勇伝で〆ましたが、後日、職務の関係から「MCI~経度認知障害」の兆候となる症状を調べたところ、ここに挙げてきたクルマの運転や所有に関する各事例は年齢に関係なく立派なMCIの前兆だそうです!

 上記で採り上げたような事例(車内装備の操作不備、車体コントロール力の劣化、運転の意欲減退等)以外にもいろいろな症状がその兆候として紹介されていますが、4~5項目が常時該当する場合、専門医による検査を推奨とありました!

 まだ60代、ではなく既に60代、クルマに加えて自身のメンテナンスが不可欠な段階に入ったということを強く意識すると共に、広く外部に向けて注意喚起をしなくてはと思いました。 

 特に、きっかけとなった諸先輩にこの事実をどう伝えたものか・・・?

 一人づつにメールするのも手間ですし、時間がかかります。 一気に全員に同時に伝えるには、このコラムで取り上げることが最も手っ取り早い(おかげさまで全員コラム読者だったので)と思い、今回このような記事にしました。

この記事を書いたプロ

寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(寺田淳行政書士事務所)

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