成長しているのにバラバラになる理由【コンサルの視点10】

経営者は、会社の未来について語ります。
目指す方向。
大切にしたい価値観。
社員への期待。
その言葉は、最初は新鮮に受け取られます。
ところが、時間が経つにつれて、だんだんと反応が薄くなっていくことがあります。
聞いてはいる。
理解もしている。
けれど、心は動いていない。
そんな状態です。
私はこれを、「空文化」と呼んでいます。
言葉がなくなるのではなく、
言葉の中身が空になってしまう状態です。
では、なぜそうなるのでしょうか。
最も多いのは、「繰り返されるだけ」になっているケースです。
どれだけ良い言葉でも、
同じ形で何度も聞かされると、人は慣れてしまいます。
そして慣れは、関心を薄めます。
言葉そのものが悪いのではなく、
新しい意味が加わらなくなることが問題なのです。
また、言葉と現実が結びついていない場合もあります。
例えば、
「挑戦しよう」と言っているのに失敗が許されない。
「お客様第一」と言っているのに数字ばかりが評価される。
こうした状態が続くと、人は言葉よりも行動を見るようになります。
そして次第に、
「あれは建前だ」
という受け取り方に変わっていきます。
さらに、経営者自身が言葉を使わなくなることもあります。
理念発表のときだけ話題になる。
年度方針のときだけ登場する。
それでは、組織の中で生きた言葉にはなりません。
本来、経営者の言葉は、
会議の中で。
判断の場面で。
日々の対話の中で。
何度も使われることで意味を持ちます。
では、どうすれば空文化を防げるのでしょうか。
答えは意外とシンプルです。
「言葉を使うこと」です。
新しいスローガンを作ることではありません。
既にある言葉を、実際の判断や行動に結びつけて使う。
「あの理念なら、今回はどう考えるか」
「この方針に照らすと、どちらを選ぶか」
そうした会話が増えるほど、言葉は生き返ります。
言葉は、掲げられているだけでは力を持ちません。
使われて初めて意味を持ちます。
そして、その意味が共有されていくことで、
やがて組織の文化になっていきます。
もし最近、理念や方針があまり話題に上らなくなっていると感じるなら、
それは言葉が空文化し始めているサインかもしれません。
新しい言葉を探す前に、
今ある言葉を、もう一度使ってみる。
そこから組織は、少しずつ変わり始めるのです。


