末摘花に使う漢方〜生薬の話「紅花」
今回は、『呉茱萸(ごしゅゆ)』という生薬を紹介します。呉茱萸はミカン科の落葉低木、ゴシュユ、ホンゴシュユの未成熟な果実です。黒っぽい色で、直径2~5mmの球形の小さい粒です。精油を含んでいて芳香があり、味はかなり辛みが強く苦みもあります。呉茱萸は胃腸や内臓を非常によく温める働きがあり、寒冷によって起こる頭痛、胃痛、腹痛を治し、血管の緊張を除き気鬱を治す作用もあります。上衝した気や熱を下行させ鬱を解き、血をスムーズにめぐらせます。胃を温め湿を除き、冷えから起こる胃のチャポチャポを改善します。交感神経作動作用、鎮痛作用、体温上昇作用も認められています。
呉茱萸を含む漢方には、呉茱萸湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、温経湯があります。呉茱萸は辛みがとても強い生薬ですので呉茱萸を含む漢方薬は味がまずく飲みづらいです。漢方は証が合っていると飲みやすく感じる事があり抵抗なく飲める方もいますが、これらはまずい漢方薬として有名です。
呉茱萸湯は、片頭痛、冷えからくる頭痛、頭痛に伴う吐き気によく使われます。胃が冷えると胃の水気が滞りチャポチャポと水が溜まります。その水気が上行して迫り嘔吐、上行する血気が頭上まで迫ると頭痛が起こります。また血気が身体をめぐらないので手足も冷えます。このような症状に呉茱萸を主薬とした呉茱萸湯がよく効きます。ただし、温めることによって治すものですので、炎症性の胃熱からくる吐き気には効果がありません。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯や温経湯は、月経痛や生理不順などの婦人病、不妊症でよく用いられます。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、自覚的にも他覚的にも冷えきった人に用い、冷えによるしもやけ、神経痛、頭痛や腹痛を改善します。メインの生薬は当帰で、細辛と組んで手足の厥寒を治し、桂枝と組んで瘀血を流動消散させ、芍薬と組んで抹消の血液循環不全を治します。さらに、当帰は呉茱萸と組んで裏寒による冷え、血行障害を治します。
温経湯は、ふる血を除き、新血を作る駆瘀血剤です。温経湯は12味と、生薬の数は多いです。当帰、呉茱萸を含み、やはり冷えや血行障害を治します。温経湯を用いる人は、上熱下寒の症状があり、下腹部は冷えて腹痛があるが手足はほてる、唇が乾燥するなどの症状がある場合が多いです。女性ホルモンの分泌、調整を行うとも言われ、アトピー性皮膚炎を治すのに用いる場合もあります。