パソコンの電源コードはコンセントに「つないだまま」でいいのか、それとも元から抜いたほうがいいのか?
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プラグが差込口に刺さらない!
最近、新しいノートパソコンや周辺機器にUSBメモリやケーブルを挿そうとすると、妙に硬くて力が必要な製品に出くわすことが増えてきました。USB-Aだけでなく、USB-Cでも同じような傾向があり、さらにHDMIのminiコネクタでもなかなか挿さらないものに先日遭遇しました。
まるで挿す方向を間違えているのではないか?と思うほどスムーズに入らず、片手で挿そうとするとデスクトップPC本体が押されて動いてしまうほどです。そういう場合は、もう片方の手で機器をしっかり押さえないと奥まで挿し込めないことすらあります。ケーブル1本挿すのに両手を使う必要があるというのも難儀なものです。
サポートの現場でも「USBが認識しない」「HDMIで映像が出てこない」という問い合わせがありますが、確認してみると差込口が硬いために奥まで刺さっておらず“半刺し”状態になっていたのが原因だった・・というケースは珍しくありません。
以前のデバイスでは、このような“硬い差込口”はそれほど多くなく、むしろ新品なのに「ちょっと緩いのでは?」と感じることが多かったような印象があります。このように近年、硬い差込コネクタが増えている背景に何があるのか考察してみましたが、いくつかの理由があることがわかりました。今回は「硬い差込口」について検証してみます。
従来の差込口(ポート)品質の問題と、近年の精度向上
従来のUSBやHDMI差込口部分の構成パーツ、いわゆる「ポート」の製造は、メーカーから発注を受けた専門の部品メーカーが担っています。そのようなメーカーは下請けで小規模な事業者も多く、製造プロセスや品質管理が行き届かなくて、製品精度が低い場合があります。もちろんコストダウンによるしわ寄せでそのような部品が製造、供給されていることもあるでしょう。そのようなものは検査では基準を満たしていても、出荷後、ユーザーの様々な利用環境によって接触不良や破損が発生するケースが一定数出てきてしまいます。
通販サイトのレビューに特定の製品で「接触が悪い」「買ってすぐ壊れた」といった声が散見されるのも、こうした背景を反映しています。
もう一つは、USB端子が充電用途として使われるようになったり、HDMIで4K、8Kなど高画質映像を高速伝送するようになったりして、ポートに求められる性能が年々高まっているという事情があります。接触不良は機能障害だけでなく、安全面のリスクにも直結するため、メーカー側も精度改善に力を入れるようになりました。
差込口の硬さは精度向上の“副作用”
こうした対策の結果、コネクタの精度や保持力は大きく改善し接触不良が起きにくく抜けにくくなりました。しかし高い精度を求めた副作用として、差込口とプラグの隙間(クリアランス)が極めて小さくなり、抜き差しの際の接触摩擦が増えることになりました。
そのため、従来よりも“しっかり挿さないと入らない”“強めに引かないと抜けない”ことになり、日常的に抜き差しする場面では扱いづらさを感じることが多くなったのです。
硬すぎることによる破損リスク
摩擦が増えたぶん、抜き差しには以前よりも強い力が必要になりました。そのおかげでUSBメモリや安価なケーブルでは、コネクタの樹脂外装とプラグの間の接合部分が弱いと、強く引いた際に外装だけが抜けてプラグと一体になっている内部基板がポートにそのまま残ってしまう、というまるでコントのようなトラブルも実際に多く起きています。
硬すぎるコネクタは、接触不良の防止という意味では有利ですが、頻繁に着脱する用途では逆に破損リスクが高まることもあり、扱いに注意が必要です。
抜き差ししづらくなる原因と軽減方法
ただでさえ硬い差込口に追い打ちをかけているのが、「プラグの劣化」です。長期間使用したケーブルやUSBメモリのプラグ金属部は、皮脂汚れや酸化膜が付着し、抜き差しの際の摩擦がさらに強くなるため破損の可能性が大きくなります。
そのような場合は、市販の接点復活剤を綿棒に少量つけてプラグの金属表面を軽く清掃します。接点復活材は汚れの除去の他に潤滑作用もありますから、挿抜の抵抗が改善することがあります。塗りすぎは様々な悪影響が出ることがあるので、必ず塗布後に軽く拭き取ることがポイントです。
※接点復活材は、ホームセンターで入手可能なものがある。
“硬い差込口”は緩いよりもメリットが大きい
差込口が硬いと何かと不便ですが、緩いとそれ以上の問題があります。例えば使用中にケーブルが勝手に抜けてしまったり、ケーブルに触れるたびにそれがコネクタ部分に伝わり接触不良が起きてデータ転送が途切れ途切れになるなど、トラブルの原因になります。
その点、多少硬めの差込口はコネクタが安定し、データ転送がスムーズに行われ安心感が高まります。抜き差しに手間がかかりますが、トラブルを防ぐという意味ではメリットの方が大きいと言えます。
筆者実績:http://www.kumin.ne.jp/kiw/#ss



