日本がITに遅れたりデジタルが苦手なのはなぜ?その3つの理由

古賀竜一

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テーマ:専門家からの提言と考察

日本はITやデジタル技術について、他の先進国に比べて遅れを取っていると言われています。実際に今の日本のパソコンメーカーは風前の灯火で、デジタル庁の問題でもグダグダになっています。

なぜ日本がITに遅れたりデジタルが苦手なのか、これまでのITサポートの現場経験からその理由について考えてみました。

1.日本人は以心伝心(忖度)ができてしまう

●日本人は言葉や表情、雰囲気などから相手の意図や感情を察することが得意です。例えば、「水!」といっただけで「水が欲しいのですね」と理解してしまいます。このようなコミュニケーション能力は、日本独特の文化や風土に根ざしていて、様々な場面で非常に効率的に機能します。

●しかし、この以心伝心の文化がITやデジタルの普及において思わぬ影響を与えてしまうこともあります。例えば、海外では「Water」といっただけでは伝わりません。「I would like some water」と具体的に伝える必要があります。同様にデジタル操作というのは約束事が明確になっています。少しでも入力が間違っていたり命令が違うと伝わりません。

●要するに人間に忖度はしないのです。それだったら、人に頼んだ方が早い・・ということになってしまうでしょう。デジタル端末よりもこれまで通り人に依存してコミュニケーションを行おうとするようになります。そうなると操作方法も覚えないし、人がやってくれるのだからIT化なんていらないんじゃないか?と考えるようになってしまいます。

2.みんなが使っていないと使わない

●日本社会では、周りの人に合わせようとする傾向があります。新しい技術やツールを導入するにあたって、周囲の利用状況や受け入れ度合いを重視する傾向があります。例えば「iphone」の所有率が諸外国と比較して日本は非常に高いそうです。「iphone」は高価でお金持ちやインフルエンサーといった人たちが積極的に使用しています。

●そのため高価であってもステイタスシンボル化したりトレンドアイテム化することで市場シェアを形成しはじめます。これは、日本の集団主義的な文化や、前例主義、他者との調和を重んじる風土に根ざしていると言えるでしょう。

●他の先進国ではITの多様化が進み、様々な選択や試行錯誤が行われています。日本人は、自分だけが先に進んで新しい技術を使ったり人と違うものを使うことを避け、周りの人々と同じペースで進むことを好む傾向があります。そういうこともありデジタル技術の多様化が進まず、日本では浸透するにも時間がかかっていると言えるでしょう。

●その例としてIT現場でよくあるエピソードをお話ししましょう。システム導入の営業現場ではなかなか商談がまとまらないことがあります。しかし、ある言葉でそれが一転してしまうことがあります。その魔法の言葉は「もう他社さんには導入させていただいてます」です。それで契約が即決してしまうこともあります。新技術かどうか?とか、どのくらいメリットがあるのかという本質的なことは決定打にならず二の次になってしまうのです。要するに周りがどうなのかが重要で、みんなが使っているということが行動の動機となりえるのです。

3.ITに対して理解度が低く、劣後感、不信感がある

●先日、フラッシュメモリが消えてしまったというあるユーザーからの相談がありました。よくあるトラブルなので、フラッシュメモリの正しい使い方や保管方法などについて話していたところ、「そういう自慢話は必要ない」といわれてしまいました。人によっては「大変ためになる話でした」と言っていただくこともありますが、割合としてはアドバイスなどを嫌う傾向にあるユーザーが多いのです。

●アドバイスや原因の説明などを「自慢話」と捉えてしまうのはなぜでしょうか? そこにはITに対する劣後感や不信感が垣間見えています。確かに、ITを使いこなせないで失敗すると自分に嫌気がさしてくるのも理解できます。ですが、向上心がないところには発展がないばかりか同じ過ちを繰り返すことにもなります。以下のコラムで自分が本当にアナログ人間なのか確かめてみてください。


●それからITの仕事に対して、いまだに不労所得であるといった先入観を抱いている人も一定数います。その証拠が日本のIT産業にいまだにはびこる「人月商売」です。建設、土木などの人件費の計算と同じように行われ、給与水準も非常に低くなっています。先端の技術者に対しても「作業員」ととらえるのが日本式経営です。ですから、アドバイザーの立場で話し始めると、「現場作業員からお説教される覚えはない!」ということになるのです。

●また、ITは信用ならないといわれることもあります。その背景には、かつてのライブドア事件やWinny事件なども影響していると思われます。そのようなネガティブな面が払しょくしきれていない今の日本社会の実態が、ITに遅れる一因になっているといえるでしょう。AIに対しても警戒感を持つ割合が多く、すぐにはその傾向は変わらないでしょう。

●以上のような要因で日本はトラウマレベルの遅れをとることになってしまっていると思います。日本人独特の文化や風土は、ローカルノームとなってITやデジタル技術の普及や活用に大きく影響を与えていると言えます。しかし、今後はChatGPTのような自然言語による対話型AIの普及が進むと、ウィークポイントだった面が逆に作用してITの飛躍的な進歩につながる可能性も出てくると思います。

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古賀竜一(システムエンジニア)

九州インターワークス

ITのユーザーサポートの現場で実際に問題を解決しながら、ITの最新の状況とその問題点を追及している専門家です。多様で複雑になってきたITのことをユーザーにわかりやすく丁寧にお伝えします。

古賀竜一プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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