パソコントラブルを解決したいのに検索しても同じ情報ばかり!必要なのは情報リテラシー
「アナログ人間」=「パソコンが苦手」は間違い
●ITサポートの現場では様々な相談や依頼に対応していますが、その際に「私はアナログ人間でパソコンは苦手なんです」と言われる方がとても多くおられます。このような話は意外に多く、これまでのサポートの経験でも現場では度々そのような話が出てきます。
●長年、特にそのことについてはあまり深く考えたことは無かったのですが、最近あることに気が付きました。
●これまで私はユーザーの「アナログ人間だからパソコンには弱いんですよ・・」という言葉に「はあ、そうですか・・」と自身でも何となくそういうものだと思って返事をしていました。
●でも最近気が付いたのは、実はアナログ人間だからパソコンが苦手というのはまったくの真逆で、パソコンが苦手な人のほとんどが実は「デジタル人間」なのではないかということ。
●「アナログ人間はパソコンが苦手」・・というのは大きな勘違いというか間違いだったのです。そしてパソコンが得意な人というのは実は強烈な「アナログ人間」だったということもわかりました。
●今回はアナログ人間は本当にパソコンが苦手なのか?ということについて述べてみたいと思います。
パソコンが苦手という人は二元論や固定観念が強い人が多い
●「アナログ人間はパソコンが苦手」というのが間違いだという根拠の一つとして「アナログ人間」を自称する多くのユーザーに「二元論」者や「固定観念が強い」方が多いという傾向があることです。
●要するに、物事を考えたり行動したりする際に普段から「善か悪か」とか「するかしないか」とか「上か下か」といった2つの要素で二者択一をするような判断をしがちなのです。このような考え方は「二元論」とも言えます。また、「きっとこうだ」とか「〇〇だから●●だ」といったような「決めつけ」をしがちなこともあります。これは「固定観念」あるいは「ステレオタイプ」といって良いでしょう。
●確かにそのような考え方ははっきりしていて明快で、さらに物事を短く簡単に説明できるという良い面があります。ですから、そういう人は一見するとパソコンもちゃっちゃと操作できそうな雰囲気なのですが、ところがどうしたことかこのような物の考え方をしている人の多くは自称「アナログ人間」で、しかもパソコンが苦手という人が圧倒的に多いのです。
●ここからはあくまでも私の経験や検証の結果ですが、このようになぜ二元論や固定観念で物を考える人はパソコンが苦手なのか考えてみました。
デジタルと二元論はすれ違いが起きる
●今では誰でも知っていると思いますが、パソコン内部のデータ処理には2進法が使われています。要するに0と1を使用して演算処理をします。これをデジタル処理と言います。
●コンピューターの操作系もほとんどがON、OFFで制御されます。入力の際にタップやクリックを「したかしないか」、「YESかNOか」など2進法的なデジタルな操作が必要です。
●それと、二元論での「上か下か」とか「するかしないか」などという物の考え方というのはデジタルに非常によく似ています。このような考え方は「デジタル思考」といって良いでしょう。
●そのような思考の人がパソコンを扱う際に操作と思考が合致している間は問題がありません。しかし、プログラム操作の際に「きっとこうだろう」と選択したものが合致しなかったり、期待した応答が返ってこなかったりすることがあります。
●また、時にはエラーが発生して警告が表示されることもあるでしょう。するとどうなるかというと、デジタル思考の人は途端に困惑してしまいます。場合によってはプチパニックになります。
●何せ、操作する側も思考がデジタルでしかも固定観念が強いですから、想定したYes、Noとか〇かX以外で返されてしまったり自分が思っているような反応が返ってこないと、その途端にその他の選択肢を失ってしまうことになるのです。そして一気に不安に陥ります。自分のコントロール下から外れてしまったと思いこんでしまいます。
●不安ですぐに周りの人やメーカー、サポート窓口にSOSを出すユーザーもいます。ですから、普段は竹を割ったような性格ではっきりしていて物怖じしないと思われている人が、意外とパソコン恐怖症になりがちです。
●要するに、デジタル思考とデジタルの操作というのはすれ違いが起きやすく、いったん起きてしまうとその時点で破綻を招きやすいのです。デジタル思考が強いほどデジタルの理解や操作が困難になるといえます。
●ところがデジタルに対してはデジタルな思考が必要だという固定観念があるので、自分がアナログ人間だからデジタルを制御できないのかもしれないと勝手に思い込みます。その時点でデジタル思考のデジタル人間は間違った自称「アナログ人間」を爆誕させてしまうわけです。
本当のアナログ人間とは
●本当のアナログ人間というのは、アナログ(連続体)思考ですから二元論にはない幅広い思考ができます。固定観念がすくなく、内容や周囲の状況から「行間を読む」ことができるし、もしかしたらここの操作は〇〇なのかもしれない・・と思考が柔軟に働きます。パソコンなども慌てず対処することが可能です。
●ですから、「自分はアナログ人間だ」と自称している人はよくよく自分のことを考えてみてください。本当のアナログ人間ならデジタルを網羅できるはずでパソコンは苦手ではないはずです。そうでないとしたらアナログ人間ではなく、実は「デジタル人間」だったんです。
●また、逆にパソコンが得意だから自分はデジタル人間かも?と間違っている人も再考してみましょう。意外とそのような人は音楽や文学、芸術などにも造詣が深く、強烈なアナログ人間の可能性があります。
●これは単にITの知識があるかないかとかリテラシーが優れているか、乏しいかという問題ではありません。その証拠に子供にパソコンを扱わせると短期間で操作できるようになります。子供は柔軟な発想で好奇心も旺盛です。失敗を恐れたり恥という概念も大人ほどありません。要するにIT機器の操作は知識があるとかないとか頭が良い、悪いということには関係がないということです。
●大人はパソコンができないことを自分の欠点や弱点とはしたくないと思っています。自分はデジタルに弱いだけでその他の事には長けている別の種類の人間だと理由付けして言い訳をしたいわけです。そこで、ここでも「デジタル」に対する「アナログ」というわけで「アナログ人間」というそれらしいネーミングを付けて恰好を付けようとするのです。ここにも二元論や固定観念の影響が根深く反映しています。
●要するに「アナログ人間」というのはデジタル思考の大人の自己肯定の産物で、自称アナログ人間というのは実はほとんどがデジタル人間なのです。
デジタルを制御するのはアナログ思考
●ITに必要なデジタル信号は最初からあるわけではなく、元はと言えばアナログ信号から生成されます。情報量は圧倒的にアナログのほうが大きくあまりに冗長すぎて扱いにくいため、データを処理しやすくするためにデジタルに変換して処理するわけです。デジタルというのは物事を簡単に処理するために考え出された論理的な仕組みにすぎません。
●デジタルと親和性の高い仕事や研究などでは当然デジタル思考が役に立ちます。ところがそれを自分の物の考え方や生活、人間関係にまで導入してしまうと一見便利に見えますが、柔軟性や包容力に欠けた物の考え方になってしまう可能性があります。そもそも人間はアナログな生きものですから、デジタル思考だけで話をしようとすれば当然様々なすれ違いが出てコミュニケーションは成り立ちません。
●またデジタル思考(二元論)の人が陥りやすいのは、ネットリテラシーが向上しないということです。なぜかというとネットの情報や画面の内容といった表面的なものだけを基準に考えてしまうからです。
●物事を正しく正確に判断するにはそれ相応の多角的、多面的な要素が必用です。デジタル思考は点情報の寄せ集めの為、短絡思考につながりやすく本質を見失いがちになります。文字数が限られるSNSでたびたび問題が発生することでもわかります。
●アナログ的思考ならネット情報の背景や矛盾などを網羅して考えることができます。アナログ思考はデジタルを内包しているだけでなく、アナログこそがデジタルを支配し制御できるのです。
●下の図は、デジタル的視点の欠陥とアナログ的視点の違いを表しています。
●自分を振り返って生活や人とのコミュニケーションで二元論で物を考えたり語っているとわかったら、すぐにでもアナログ思考に切り替えるようにしましょう。普段から、アナログ思考でいることでネットリテラシーの向上にもなり、正しい情報を読み取る力も付きます。また、ITリテラシーも向上しますのでこれからの新IT時代にも付いていけるようになるでしょう。