パソコンの電源コードはコンセントに「つないだまま」でいいのか、それとも元から抜いたほうがいいのか?
目次
ACアダプタの異常や故障は修理よりも交換を推奨
●掃除機や扇風機など、コンセントから100Vの交流電源がそのまま使える一般家電製品とは違って、IT機器の多くは直流電源で動作する弱電製品です。ノートパソコンは大体15~20Vの直流を電源としているものが多いのでコンセントの交流100Vはそのままでは使えません。ですから、IT機器類にはその機器専用の電源変換器、いわゆる"ACアダプタ"が付属されています。
●あの見た目が黒く四角い箱状のものの正体が変換器です。その四角い箱の中でコンセントの交流100Vを直流電源に変換します。ACアダプタは一見どれも同じもののように見えますが、同じメーカー、同じシリーズであっても機種によってコネクタ形状や対応電圧、電流は様々で一様ではありません。
●このACアダプタは持ち運びや移動などで落としたりぶつけたりで長年使用している間に配線が傷んだり切れかかったりすることも多くサポート事例でもよくトラブル相談があります。また、静置していても劣化などで故障することもまれにあります。
●よく相談がある事例は、飼っている犬がケーブルを噛んだために配線がむき出しになったというケースです。そんな場合、特に動作に支障がなかったり電圧が正常でも素人修理でビニールテープを巻いておしまい・・という補修はお勧めではありません。外から見えない部分で配線の傷みが大きかったりすると、ショートしたりして思わぬトラブルの原因になります。
切れかかったDC側(直流側)配線
●そんな場合、修理を依頼される場合もあるのですが、ACアダプタは修理代より新たに購入したほうがほとんどの場合安くなります。それ以外にも、場合よっては危険が伴う電源部位の修理は安全性の観点からも避けたほうが現実的なのです。修理というのは、元の強度や耐久性などを再現できない場合があります。ですからACアダプタの故障では多くが「交換」となるわけですが、これも意外とハードルが高い問題になっています。
●機器に付属している純正のACアダプタが交換修理などで必要になった際、メーカーではすでに部品保有年数が過ぎていたりすることがあります。そうなると純正品の入手には困難を極める場合があります。その機種専用のものですから、ロットが少ない機種は「レアもの」になってしまうのでさらに入手は難しくなります。
何も考えず「動くなら問題ない」という流用のしかたは危険
●そこで、家で余っている同じメーカーの違う機種のパソコン用ACアダプタや、身近な別の機器のACアダプタを外して拝借して使えないだろうか?ということで相談をされることもあります。確かにコネクタ形状が偶然合っていて機器に接続ができれば解決する問題のような気もするかもしれません。しかし、実はそんな簡単な問題ではないのです。
●ノートパソコンに限らず、弱電の精密機器は設計上必要な電圧、容量など「定格」が厳格に決まっていて、その機器に付属している専用のACアダプタを必ず使用しなければいけません。ところが、コネクタ形状が偶然合って、しかも電源が入り機器が動き出すことがあります。
●とりあえず異常は見当たらないし動くなら問題ないのでは?ということになって「これはラッキー!」とそのまま流用したくなると思います。ところが電圧やアンペア数が違うものだった場合は無理くりに動いている状態になってしまいます。すぐに影響がなくてもそれはやがて大きなトラブルになることもあります。となればそんなのはラッキーでも何でもありません。動く=正常という根拠のない素人判断は危険です。
必ずその機器専用のACアダプタを使用する
●ACアダプタ関係で以前あった実例です。あるユーザーさんが事務所の配線整理をしていた際の話です。周辺機器などのつなぎ直しなどをしていて、よく確かめずに間違って他のACアダプタコネクタを差し込んでしまったそうです。そうしたらバチッと火花や音が出てそれっきり外付けHDDが動かなくなった・・というトラブル相談がありました。
●コネクターだけが合っていてもだめなのはそういうことが起きる可能性があるからです。このような場合、過電流や過電圧で機器の電源部基板などが焼けてダメになっていることがあります。機器のメイン基板にまで損傷が及んでいると修理が不能になることもあります。
●このように、目に見えてすぐにはっきりと合わない事がわかる場合はまだ良いですが(わかった時点ですでに手遅れなので「良い」とは言えませんが)、違う電源を差し込んでダメージが出るまで時間がかかる場合や目には見えない形で無理が進行して、後日トラブルが起きる事があります。
●電圧や容量が違うACアダプタの使用は、機器の異常動作の原因やACアダプタと機器側双方への過負荷やダメージにつながり、場合によっては発煙や焼損に及ぶ場合もあります。そこまで至らなくても、変なにおいがしてきたり、ACアダプタ、または機器が異常に熱くなり樹脂部分が変形したりすることもあります。
●ACアダプタには安全のため保護回路が内蔵されていますのでいきなり爆発したり燃えたりすることはありませんが、配線やコネクタが傷んでいる場合は過負荷に耐えきれない可能性があり大変危険です。
●弱電機器類は、必ずその機器専用の純正ACアダプタを使用することが基本です。取扱説明書には最初のほうに注意書きが記載されているはずです。また、純正以外のものを使用した場合メーカーからは一切の保証を得られなくなります。
※様々な種類のACアダプタ。 どれも同じではない。
※コネクタ形状が同じでも使えるとは限らない。
どうしても使いたい機器がある場合どうしたらいいのか
●どうしても使いたい機器があるけれどもACアダプタが無くなった、故障した・・という場合は、その機器の仕様を良く確かめた上で互換を保障したサードパーティ製などの代替製品を購入する方法があります。また、中古の同型品をネットなどから購入すれば安心して使うことが可能です。
●ノートPCなら、下記のような互換品が販売されています。
●互換ACアダプタを販売している周辺機器メーカー
バッファロー BUFFALO
https://www.buffalo.jp/product/child_category/laptop-adapter.html
エレコム ELECOM
https://www.elecom.co.jp/category/cat_cable-ac-adapter/?category=client-personal
適合検索
https://www2.elecom.co.jp/cable/ac-adapter/serch.asp
サンワサプライ
https://direct.sanwa.co.jp/contents/sp/tapfunc/acadapter/
●事情通ならば、他社製品のものでもOEM製品の場合基本的に同じものであることを理解していたりしますので、純正にこだわらず上手くそのようなものをネットなどで見つけて、自己責任の下使っている人もいます。
※電圧や容量など規格を確かめる。OEM品なら互換性が見込める場合がある。
●しかし、それでも見つからない場合は、電圧と容量表記が同じものを探してきて代用する手もないわけではないですが、パソコン同士の互換なら良くても、その他の機器には通用しません。
●余程の事情通か専門的知識を持っていなければ数値だけの合致で互換判断することはお勧めできません。電圧と容量表示が同じだからといっても全く別の製品のACアダプタですから無条件にOKという事はなく、実際に使って何が起きるかわかりません。
同じ電圧、電流値表示でも仕組みが違うものがある
●ACアダプタには、安定化電源(スイッチング)と非安定化(トランス型)があり、それぞれ仕組みが違いますから同じような仕様でも使えるとは限りません。ノートパソコン用ACアダプタはスイッチング電源です。電圧と電流値が同じ表記だからと言ってほかの非安定化電源を投入することはトラブルを招きます。
●ACアダプタ内部に安定化回路を持ったものは機器側には安定化回路がありません。逆にACアダプタがトランス型で安定化回路を持たず、機器側に組み込まれているものもあります。そのACアダプタ同士は電圧と電流の値が同じであっても、仕組みが違いますから互換性はありません。非安定化のアダプタは実際に供給される電圧は表記よりもかなり高いため安定化電源投入を前提で作られている機器には高過ぎます。
●また、安定化回路を持たない機器とACアダプタの組み合わせ同士で使用してしまうと負荷変動などで電源として正流(正しい流れ)ではないため機器側に異常が出てしまいます。そのため、メーカーではその機器付属の専用のものを使うように注意しているのです。同じメーカーの製品であっても製品毎にその仕様は違います。余程の事情通でなければ流用は冒険でしかありません。
※機器とACアダプタの標準的な組合せ
※やってはいけない組合せ
●「Better to ask the way than go astray.」という英語の格言があります。(直訳:道に迷うよりも道を尋ねたほうがいい。)ACアダプタの互換性について大丈夫かそうでないか判断が難しい場合は、やはりその道の専門家に尋ねることが得策です。
九州インターワークス 注目のページ
「パソコンの安定化対策」
http://www.kumin.ne.jp/kiw/antei.htm