充電式バッテリーを内蔵したデバイスや機器の正しい使い方と寿命を延ばす5つの方法
いつも持ち運んでいるパソコンほどトラブルが多い
●最近ではビジネスだけでなく、日常生活でもパソコンやタブレットなどを持ち歩く習慣になっている人が増えています。
●私のこれまでのサポート事例では、室内で据え置きのまま使用しているノートパソコンと比べて、いつも持ち運んでいるものほど傷み易く、機械的故障やトラブルが多い傾向にあります。
●その理由は、やはり移動時に受ける振動や衝撃といったものが原因です。自分のパソコンはSSD搭載だから関係ない話だ・・と思いたいかもしれませんが、この問題はそれだけの問題にとどまらないところが「問題」なんです。ではなぜ、SSDのパソコンでも振動や衝撃がパソコンにとって問題なのか、サポート事例からも判明している事実を元に解説してみたいと思います。
1.振動、衝撃は思っている以上にダメージが大きい
●普段、持ち運びの際には多くの人は専用のケースやバッグなどに入れますので、多少の振動や衝撃からはある程度守ってくれます。しかし、扱い方によってはそれにも限界があります。
●自分ではやさしく置いたつもりでも、結構な衝撃になっている場合や、知らない間にどこかにぶつかって衝撃が加わってしまう場合があるのです。少し当てただけなのに何で壊れた?という破損の経験は誰にでもあると思います。力の加わり方や加わった場所にもよりますが、このような衝突による衝撃は自分で感じたものより意外とダメージ度は大きく、機械にとっては大変なことなのです。
●これを作用反作用という物理の法則で考えてみます。
●例えば、固く動かないコンクリート面に機器本体が落ちてぶつかったその瞬間、ぶつかる物(質量)の持つスピードというのはそこで一旦完全に「ゼロ」になります。つまり落ちる速度エネルギーはそこで一瞬でゼロになるわけですが、エネルギー保存の法則で速度エネルギーは瞬間に運動エネルギーとなって一旦硬いコンクリートに伝わります。
※コンクリート面に落とすと、速度エネルギーが運動エネルギーに代わってもほとんど跳ね返されるため返された衝撃エネルギーはそのまま本体が受けてしまう。
●しかしコンクリートは硬いので、動かないどころか変形もしないためそのエネルギーのほとんど全部がその瞬間に、反作用としてぶつかった本体が受けてしまうことになってしまいます。その結果としてエネルギーは本体の破損や変形という形になって相応の仕事量のエネルギーとして伝わってきてしまうのです。
※やわらかいものに落とすと速度エネルギーは変形させることで消費されて反作用で返ってくるエネルギーは小さくなるためダメージが少なくなる。
衝撃を受けることで発生するダメージには以下のものがあります
- 外装の破損、変形
- 外装の破損や衝撃によって内部回路や装置などが巻き込まれ破損。
- HDDの故障
などがあげられます。
振動によるダメージの実態
●また、振動は衝撃のダメージよりも少ないとのイメージからか、ぶつけたり落としたりすることよりも意識していないと思いますが、繰り返される振動ほど怖いものはありません。
●一度の衝撃よりも繰り返し与えられる振動のほうが、ダメージが大きくなる場合があるからです。これは、航空機事故などでよく出てくる「金属疲労」の話でも理解できると思います。
●繰り返す振動が及ぼすトラブルとしては以下のようなものがあります。
- ねじや接合部の緩み(液晶のヒンジなど)
- 基板マウント部の亀裂
- 磨耗や摩擦による変形、接触不良、断線など
以上のように繰り返し振動を受けることで、一度の強烈な衝撃と同等もしくはそれ以上の悪影響が機器に及ぶことがあります。ですから、一度もぶつけたこともない機器なのにひどく壊れた、いつのまにか壊れていた・・というミステリーな話があちこちで起きることがあるのです。
2.格納、保管方法に問題が有る
●コネクタ類やケーブル類、USBメモリなどの外付デバイスをPC本体に挿したままバッグやケースに格納して持ち運ぶという方は多いと思います。いちいち外すのは面倒というのはわかりますが、移動中の振動や荷重の集中などでバッグの中といえどもコネクタや端子などを痛めたり破損させたりすることがあります。
●電源コネクタやUSBケーブル、USBメモリ、USB無線子機、無線マウスアダプタなどの突起物は挿したままにせず取り外して保管、持運びをしてください。
※コネクタ類は必ず抜いて格納する
●また、バッグやケース内に充電器やマウスなどをパソコン本体と一緒に押し込んでしまうと、本体の一部に応力集中を与えることがあります。例えば、バッグの中でノートパソコンやタブレットの液晶モニタ画面にACアダプタの角が当たって衝撃や荷重が加わるとそこに応力が集中して画面が割れたり変形したりして傷めてしまいます。
●また、振動などで本体と接触している部分が磨耗し傷が入ったり、塗装がはがれる、凹んで変形したり亀裂が入ることもあります。
●特にバッグやケースが小さすぎるとギュウギュウに詰め込むことで無理をし、本体に思わぬ圧力がかかってしまいます。それに、ある程度格納スペースにクリアランスが無いと、衝撃を受けた際のダメージがダイレクトに本体へ伝わってしまいます。特にケース、バッグの素材が薄いと、この傾向に拍車がかかります。
●逆にケースやバッグが大きすぎても中で格納物が踊ってしまいシェイクされ、まるで地震体験装置のようになってしまうでしょう。これではバッグに入れた意味がありません。「キャリーバッグ」の選択がいい加減なこともトラブルの元です。
●ケースやバッグの大きさ、材質にも気を配ることでトラブル回避が可能になりますので、値段で決めたりせずに格安品に飛びつく前に熟考しましょう。
3.自分の手から離れる場合の危険性
●航空機に乗る際やまとめて荷物を宅配便に任せる場合など、パソコンを荷物として取り扱ってもらう際には、上記2つの項目全部が当てはまる事態が想定されます。
●自分の手から離れたものがどんな扱いを受けているかはあまり考えたくないのですが、少なくともある程度の過酷な扱いにも耐えられるような格納、保管、梱包方法を行っておくべきです。
●また、航空機の手荷物で持ち込んだ際に、後からやってきた乗客が天井収納に先に入れていたパソコンバッグへ上からぐいぐいと自分の手荷物を押し込んでくることがあります。
●こういうことにならないように、機器を持ち運ぶ際には自分の手から離れる場合の危険性も十分意識しておきましょう。