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目次
●飲み物をこぼした際の正しい対処法とは
前回コラムはこちら
対応その① パソコンをすぐ裏返しにする
●ノートパソコンに飲み物などをこぼしてしまったら、あわてず落ち着いてすばやく電源ボタンを押します。スリープするかシャットダウン終了操作が強制的に行われます。間髪入れずにパソコンを裏返しにします。パソコンを素早く裏返しにすることでパソコン内部(メイン基板)への液体の落下をまずは食い止めます。液晶画面はなるべく大きく開いてください。(※パソコンによっては完全にフラットにならない機種もあるので限界以上に無理に開かないように。)これができるかできないかがパソコンのその後の運命の分かれ道になります。
※裏返すのはあくまでもキーボード上など本体の上からこぼした場合の対処法です。テーブルにもこぼれてパソコン底部に滲入した場合はいきなり裏返してしまうと逆効果です。パソコンの下側(底面)にも液が回ってしまった場合は底面を良くふき取ってから裏返します。
●先にOSをシャットダウンしようとしてマウスでの終了操作を行っていると、液体がキーボードからメインボードへ落ちる方が早い場合があります。そうなるとパソコンはほとんどアウトになります。マウスでの終了操作は行わないことが水ぬれ緊急時の最大ポイント。そのために電源ボタンを押す操作でシャットダウン、または休止状態になるようにOSの"電源管理設定"で設定をしておくと、緊急時にボタン一つですぐにシャットダウン操作ができます。
●キーボードへの浸水からメイン基板へ液体が到達するまでわずか数秒、長くても数分です。まずそこで間に合うかどうかが鍵なのです。何十分、何時間も経ってから裏返しても明らかに遅すぎです。
※開いて裏返す。水平に開かないPCもあるので開きが止まったらそれ以上無理して開かないように。
対応その② 電源ケーブルを抜き、バッテリーを外す
●液体が基板に到達するかもしれませんので一刻も早く基板への通電を停止させる必要があります。裏返したらすぐにコンセントの電源コードを抜きます。パソコン側の電源コネクタを引き抜いても良いです。
●それからすぐにバッテリーパックを外します。普段バッテリーパックを外したことが無い場合、もたつくとそれだけ危険性が増します。いざという時のために日頃からバッテリの取外し方を練習しておくことが必要です。バッテリーを外さないと、電源コードを抜いただけでは内部の通電状態がなくならずショートが避けられないことがあります。電源コードを外すだけではトラブル回避になりません。
●この作業にかかる時間とパソコンへのダメージの可能性は正比例します。※バッテリーが内蔵式で外部から外せない構造になっているパソコンは無理に外そうとせず、余分な水分を良くふき取ってください。そしてすぐに専門家に診断をお願いしましょう。
●以前、実際に相談の電話であった事例です。
「パソコンにジュースがこぼれました!」と言われたので
「いつこぼしましたか?」と聞きました。そうすると
「10分くらいたったけど、キーボードは拭いたしパソコンはいまのところ動いているようです。ということは、このままで大丈夫ということですよね? あ、ちょっと待ってください、今画面が消えました。・・・こんどは何か焦げくさくなってきました・・」
と実況してきた人がいます。こうなってはすでに手遅れです。
電源コードを抜く
※バッテリーも素早く外す
対応その③ BIOS設定用内部電池を外す
●メインのバッテリーパックの他に基板上にはBIOS設定保持用のボタン電池が装着されています。電圧はあまり高くないのですがバッテリーパックを外してもBIOS用の電池から回路内に電圧が供給されていますので、液体で短絡したり腐食したりします。
●裏蓋を外してみてアクセスできるようであればすぐに内部電池も取り外してください。もし、うらぶたを外しても見当たらない、または裏側からはアクセスできない場合は無理に探して外さなくてもかまいません。しかし、すぐに専門家に診てもらいましょう。
●HDDやSSDも裏ブタを外すとアクセスができる場合があります。外せそうであれば、できれば外してしまったほうがいいでしょう。しかし、難しいと感じたら無理に外さないでください。コネクタなどを破損させるとデータが復旧できなくなることもあります。また、暗号化しているドライブはパソコンから外してしまうとデータにはアクセスできません。暗号化している場合は起動ドライブを外さずに水分を良くふき取ったあとで専門家へ相談しましょう。
※写真左下の丸いメッキのものが内蔵電池。
対応その④ 余分な水分をふき取り、乾かす
●裏返したまま、できる限り余分な水分は取り除いて下さい。かかった液量が少ない場合はサーキュレータ(できればブロワ)などでできるだけ乾かします。その際に本体を揺すったり動かしたりしないほうが良いです。パソコンを高温にさらすのは良くないのでドライヤは推奨できません。
●乾燥を促進させるためには気流が必要です。風通しの良い暖かい場所にしばらく置いておくと乾燥が速くなります。かといって冬場の場合、ファンヒーターやこたつの中、ストーブの前などで乾かすことは思わぬ高温に晒すことになったりしますのでお勧めできません。夏場の直射日光下も避けましょう。できればサーキュレーター、または扇風機で送風を続けると乾きが早くなります。早いとは言っても丸1日以上は必要でしょう。
●乾かす行為は決して無駄ではありません。乾かすのは無駄だとか意味がないといったような情報もネットにあるようですが、決してそんなことはありません。ふき取り切れない液が他の箇所へ移動したり染み渡ることを防止できます。相手はどんなところにでも入り込める「水分」です。できる限り被害の拡大を阻止する必要があります。
●また、使っているパソコンのキーボードがある程度の防滴性があるかもしれません。すぐに乾かす対応でノーダメージの場合もあります。
●キーボードが防滴でなかった場合は少量でも内部に浸み込むとキーボード部分は復旧不可能になっている可能性が高く、乾かして使えるようになることはまれです。仮に起動してもキーボード短絡の影響が起きることもありますので、すぐに専門家の手配をしたほうが良いでしょう。専門家がすぐに来れない場合は被害の拡大防止のためにもとにかくできる限り乾かします。
●明らかにかかった液量が少量でキーボードだけが被害にあっていることがご自身でも確認できる場合は、キーボードの交換修理だけで済む場合もあります。キーボードが簡単に取り外せるノートパソコンで自分でも外すことができれば、被害程度を確認できるかもしれません。
対応その⑤ 通電はせずに専門家に相談する
●外見で乾いたようなのでスイッチを入れてもいいのではないか?というだけの判断で通電してはいけません。水分は表向きには無くなったように見えているかもしれませんが、隙間などに浸入している事があります。
●液体には毛細管現象というものがあります。普通は重力に従って流れるはずの液体が、重力に逆らって密着した隙間からあちこちに染みて行くことがあります。想定外の部分に染み込んでいる場合もありますので外見だけの判断で通電は危険。
●自身で対処する場合、こぼして初期対処した翌日でも通電は早過ぎかもしれません。自分で分解して乾燥までできるスキルがある場合はもっと早く通電してもいいかもしれませんが、そうでない場合は無理に分解にチャレンジするのはあまりお勧めできません。
●基板に液がかかった場合はパターン(回路)に染み込む事があり、液によって腐食します。腐食は早ければ、数時間で酸化、黒変することもあり、助かるはずの基板もダメになります。特にバッテリー類が外せない機種は内部へのダメージ評価として「シュレーディンガーの猫」状態になっています。とにかく外観だけで絶対に判断しないこと。一刻も早く専門家に診断と対処してもらいましょう。
次回へつづく・・・
パソコンにコーヒーが!飲物こぼしの正しい対処法とは?3/3「その後どうなる?」