スーパーの生産性を高めるカギは「加工場」と「売場」2つの視点にある

新谷千里

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テーマ:スーパーマーケットの経営戦略

スーパーマーケットの特徴は、ドラッグストアやホームセンターとは異なり、「加工場」と「売場」という2つの機能を併せ持っている点にあります。
これは業態としての大きな強みである一方、弱みにもなりえます。
同時に経営と現場運営において、特別な視点が求められる部分でもあります。
また、加工場を持つことにより、スーパーマーケットの「人時売上高(売上高÷投入人時)」はドラッグストアなどの他業態に比べて低くなってしまいます。つまり、加工場の生産性が店舗全体の生産性に直結していることになります。

加工場の2つの役割:「効率追求型」と「価値創造型」

加工場の作業には、大きく分けて2つの方向性があります。
1. 効率追求型(人時売上高の最大化)
 → 最少人数で最大の処理量を出すことを目的とし、作業の単純化・標準化が求められます。
2. 価値創造型(粗利益率の向上)
 → 手間をかけて商品価値を高め、お客様の支持を得る方向です。例えば、カットフルーツや惣菜の手作り惣菜などが該当します。
この2つのバランスをどのように取るかは、店舗のターゲット顧客とポジショニングという営業戦略によって変わります。

工場と売場、生産性の考え方を分ける

スーパーマーケットにおける「生産性向上」を考える際、売場(販売現場)と加工場(製造現場)を分けて考えることが、改善の糸口を見つけるコツです。
加工場では以下のポイントが重要になります
・ 原材料をスピーディーに処理し、高い技術で付加価値をつけること
・プロモーション力で“選ばれる商品”をつくること
・マテハン機器の活用や作業訓練で効率を極限まで高めること
・ 在庫を最小限に抑え、バックヤードスペースの有効活用を図ること
・ 業務の一部を自社のプロセスセンターや外部委託でアウトソーシングすること
一方、売場の生産性は「売れる売場」をどれだけ少ない人数と時間で運営できるかがポイントです。
・品出しや補充の頻度と効率化(例:フェイシング管理の簡略化)
・売場レイアウトの最適化により作業導線を短くすること
・長い客導線の実現とマグネット売場を効果的に配置
・陳列ルールや什器の標準化による作業時間の短縮
・接客の質と量のバランスをとった効率的な人員配置
売場はお客様との接点であり、購買率を左右する最前線です。
だからこそ、ただ単に作業効率を上げるだけでなく、購買意欲を高める売場演出や商品訴求も同時に考える必要があります。
このように、加工場と売場では求められる生産性の視点が異なります。それぞれの役割に応じた改善策を講じることで、店舗全体の生産性を大きく、そして確実に引き上げることが可能になるのです。

差別化の要は「現場の改善力」

作業工程が複雑であることは、他業態との競争において不利に思えるかもしれません。しかし逆に言えば、複雑であるからこそ、改善努力によって店舗の独自性を生み出し、他店との差別化が可能になります。
つまり、スーパーマーケットは「現場力=競争力」なのです。
ただし、その前提として必要なのが、「ターゲティング」と「ポジショニング」の明確化です。
誰に、どんな価値を、どのように提供するのか。
この軸が曖昧なままだと、どれだけ現場改善を進めても、方向性が定まらず、効率も価値も中途半端になってしまいます。
結果として、生産性も利益も伸び悩むことになるでしょう。

店舗戦略は「全員参加」で育てるもの

どれほど優れた戦略を描いても、それを現場で形にしていくのは「人」です。
店長、チーフ、バイヤー、パート社員まで、全スタッフが戦略の目的と方向性を理解し、日々の業務の中で実践することが不可欠です。

戦略は本部や経営層だけが立てるものではありません。売場の改善や業績向上は、現場での一つひとつの小さな工夫と行動の積み重ねによって実現されます。
そのためには、戦略の背景や目的をスタッフ全員が“自分ごと”として捉えられるように伝えることが重要です。
そして、「現場の声」を吸い上げ、日常の業務と戦略をつなぐ橋渡し役として、店長やチーフのリーダーシップが重要になります。

また、戦略をただ上から落とすのではなく、現場が主体的に関わる“参加型の戦略運用”が求められます。
日々の作業者でもあり、お客でもあるパート社員からの意見など、小さなアイデアを歓迎し、改善提案が出しやすい風土をつくることで、戦略は現場で息づくものになります。

さらに、実行した取り組みは必ず振り返り、成果につながったことについては褒章する仕組みは重要です。また、どこに課題があったのかを共有する仕組みも必要です。

こうした「考えて、行動して、見直す」PDCAのサイクルを日常化することが、戦略を“机上の計画”から“現場の武器”へと変える鍵になります。

つまり、店舗戦略は一人でつくるものではありません。全員で理解し、全員で実行し、全員で育てるものなのです。

最後に問いかけます

あなたの店舗では、
①ターゲットは明確に定められているでしょうか?
②ポジショニングはスタッフ全員が理解しているでしょうか?
③加工場と売場、“店舗の生産性”を戦略的に捉えているでしょうか?


改善のチャンスは、現場のあちこちに眠っています。もう一度、立ち止まって自店を見つめ直してみましょう。




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新谷千里(経営コンサルタント)

有限会社サミットリテイリングセンター

100社以上の業績向上を実現した業務改善のプロ。売れてしまう実践的マーケティングとオペレーション改善とコスト削減。他では教えてくれない理論と実践で、競争の厳しい時代に確実に営業利益を向上させます。

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