売上を“10倍”にする会議 スーパーの生産性を簡単にアップさせる1つの方法!
付加価値の提供と生産性アップ、人手不足、省力(人)化対策など、今、中小企業が抱える問題は山積。
それに対して、戦略が必要です。
その中でも即効性があり、且つ、中長期の視点に立って、効果が期待できるジョイントベンチャーです。その考え方と実行方法について、解説を致します。
今回の記事は、商人舎magazine 2017年05月号【「最低の投資で、最大の収益を叩き出す‼」戦略的マーケティング、『ジョイントベンチャー』のすすめ】
https://magazine.shoninsha.co.jp/magazine_content/m_serial201705/73128
をより具体的に、弊社クライアントの事例を交えながら解説して行きます。
ジョイントベンチャーの基本的な考えについては、商人舎magazine 2017年05月号を参考にしてください。
片田舎で、地域一番のスイーツ売り場を創る
スーパーマーケットの来店客の中で、圧倒的に多いのが女性客です。その女性客に人気なのがスイーツです。
しかし、スーパーマーケットのスイーツ売り場は、品揃え、品質共に、いまひとつパットしないのが現実です。
そこで、地域の菓子店などとのジョイントベンチャーを考えます。
下の写真は、手前の冷蔵ケースから奥へ向かう数台の平台、全てが地域のスイーツと焼き立てパンの売場になります。
地域のケーキ屋やベーカリーショップ。美味しい和菓子を作る主婦など。数十社(個人を含む)の商品が売場を埋めています。
固定客をはじめ、遠方から来たお客のお土産としても重宝され、人気を呼んでいます。
下の写真中央のPOPは、「生産者募集」用の告知POPになります。
当初は、店舗側から生産者に対して出店要請を直接お願いしましたが、その後、売場でも募集告知を行い、出店者の数を増やしていく計画です。
人気商品は、確実にお客の口コミを呼び、売り上げを伸ばしていきます。
また、プロモーションの効果測定や、商品開発を考えている生産者にとっては、新商品の試験販売の場所にもなり、地場産品の売場は、アンテナショップの役割も担っています。
仕入れ形態は、消化仕入れ(売上仕入れ)方式で、販売されたときに仕入れたとする取引形態です。
店頭に陳列している商品であっても、販売されるまではその所有権や保管責任は納入した生産者にあり、各商品の販売価格の決定についても原則生産者が有しています。
スーパーマーケット(店舗)側は、在庫リスクが無く、乱れた売場のメンテナンスは行いますが、原則保管責任も負担しないことになっています。
生産者側には、広告宣伝費や店舗設備費、販売員の人件費など、イニシャル、ランニング共に大幅なコスト削減が可能になります。
そして、何と言っても、スーパーマーケットの売場を活用するため、無店舗販売が可能となるメリットが有ります。
基本的に、製造販売であるため、原価率が低く、確実に粗利益を拡大することが出来ます。
スーパーマーケットの入店客という『資産』と、美味しいスイーツ(商品)という『資産』。互いの資産を持ち寄り、お客に対してサービスレベルを高めて、商品を提供していくのです。
下の写真は、地域のベーカリーの商品を陳列している売場です。長い間販売量を伸ばせず、苦労して経営していましたベーカリーが、スーパーマーケットで販売するようになってから、一挙に売り上げを伸ばし、経営も安定してきています。
その他にも、地域のお年寄りが作る草餅などは、大人気で製造が間に合わず、午前中に売り切れてしまうものも有ります。
この様なジョイントベンチャーは、過疎化の進む地方では、経済的にも貢献度が高く、地域経済活性化の一助となって来ています。
地場野菜売場の絶対的マーケティング力
スーパーマーケットにとって、絶対的競争力を持つのが、品揃え豊富な地場農産物や海産物の売場でしょう。
下の写真は地場野菜の売場です。
この売り場の売上は、青果部門全体の40%から50%程度を占めています。競合店に対して、鮮度や安心感など、差別化戦略を実現し、店舗の競争力に対する貢献度は、とても高いと言えます。
地場野菜の売場の仕入れ形態も、消化仕入れ(売上仕入れ)方式で、販売されたときに仕入れが発生します。
スーパーマーケット側の粗利益は、通常の設定レベルより低くなりますが、場所(売場)貸し状態で、オペレーションコストがほとんどかかりません。当然在庫リスクも有りません。
ですから、営業利益ベースでは、「ダントツに稼ぐ」売場となります。
このことは、ジョイントベンチャーのビジネス・モデルを正しく理解する必要が有ります。
スーパーマーケットの入店客という『資産』と採り立て高鮮度野菜(商品)という『資産』のジョイントベンチャーです。
スーパーマーケットの商品以外のメリットとして、商品の絞り込みによる在庫削減や管理費の削減、オペレーションコストの削減など、多くのメリットが有ります。
一方、生産者にとっても、包装資材や物流経費の削減に繋がっています。また、スーパーマーケットの支払いサイト(代金回収サイト)が短くなることにより、資金余力を生み、経営を安定させることにも貢献しています。
また、自分たちで商品化して、直接陳列することにより、各種の情報も収集して、「次に何を作るかべきか」というマーケティングの知恵を習得することにもつながって、更なる活性化を生んでいます。
スーパーマーケットと業務スーパーのジョイントベンチャー事例
次の事例は、本来競合する他業態との連携です。
下の写真は、スーパーマーケットの中に入っている業務スーパー(写真右手)のものです。
全国展開の業務スーパー・チェーンは、商品力が有り、低価格を実現しています。しかし、商圏が地方になると集客には苦労します。
そこで、スーパーマーケットと連携することで、集客力をアップすることが可能となります。
また、出店コストやレジなどの人件費などの低減にもなります。
スーパーマーケット側も、業務スーパーと同じく、集客力アップやコスト削減になり、
コスト競争力を高めることが出来るのです。
問題なのは、品揃えです。
スーパーマーケット側は、業務スーパーの品ぞろえや価格を優先し、そこで補えない生鮮品や日配品。少量パックのグロサリーやこだわり品などを中心に品揃えします。
そのことによって、お客から見た店舗全体の魅力度を向上させます。
結果的に、競合店との差別化戦略が実現して、競争力を高めていくことが出来るのです。
バイイングの見地からもメリットは大きいと言えます。
品ぞろえの幅を絞ることができるので、バイイングの時間も少なくて済みます。併せて、売場管理の時間も大幅に削減できることになります。
デメリットも理解する
ジョイントベンチャーの考え方を理解していれば、売上高は勿論、営業利益拡大の可能性も大きいと言えます。
とは言え、メリットの多いジョイントベンチャーですが、気を付けなければならないこと(リスク)もあることを理解する必要が有ります。
例えば、スイーツなどの加工食品は、小規模事業者が多いことから、加工場の衛生管理状況や原材料表示、アレルゲン表示などのコンプライアンスの順守。
青果物なども、農薬使用状況の問題など、健康や安全にかかわる問題もある程度把握しておく必要が有ります。
どちらにしても、目先の売上に捉われない、コンセプトを共有できて、信用できるパートナーとジョイントベンチャーを行うことが重要であることは確かです。
そのためにも、定期的な会社(生産現場)訪問などでコミュニケーションの機会を多く持つことも大事になってきます。
そのことが、お互いの成長と、お客のベネフィット(ご利益)を高めることに繋がるのですから。
コンセプトと戦略の理解
ジョイントベンチャーを行うことは、お互いの持っている強み(資産)を持ち寄り、ビジネスを発展させる方法です。
逆の言い方をすると、お互いの弱いところを補うことでもあります。このことは、ビジネスの発展には、とても重要なことです。
また、副次的には、人手不足にも貢献できるマーケティング戦略でもあると言えるのです。
一番重要なことは、お客の視点で活動して、お客のベネフィットの拡大を考えることです。
そのことに対して、お互いにアイデアを出し合い、より良い商品、サービスの提供に努力します。
現場で、時々ある事例ですが、青果部門の担当者が、地場野菜売場の商品と競争することが有ります。
具体的には、地場野菜の商品に対して、同じアイテムを仕入れて、低価格で販売することや、そもそも、その時季に地域で多く生産され、売場にも豊富に陳列されているのに、同じアイテムを仕入れて販売することなどの無駄な活動です。
お客は、ほとんどの場合、鮮度の良い地場野菜売場の商品を目当てに買い物をします。商品価値として、鮮度に勝るものは有りません。
鮮度の価値は、地場野菜売場に任せて、スーパーマーケット側は、地域に出回らない物や、味にこだわったものなどを中心に仕入れて、販売するのです。
そのことによって、お客から見た店舗の価値は、格段に向上することになります。
そのためにも、社内のコンセプトや戦略についてコミュニケーションを取り、全員が理解して、正しい、無駄のない行動を取る必要が有ります。
地域貢献とビジネスの発展
地域におけるスーパーマーケットの役割は大きいものが有ります。
食品を提供することは勿論。多くのパート社員の雇用。直接、間接的な納税。
そして、今回紹介しているような、地域の企業や個人とジョイントベンチャーを行うことが出来れば、地域産業の活性化にも大きく貢献することが出来ます。
ジョイントベンチャーの生産者は、スーパーマーケットが人手不足も深刻化する中にあって、作業分担の役割も果たしてくれることにもなります。
ジョイントベンチャーの生産者は、会社にとっても、バイヤーにとっても、良き協力者であり、互いに成長する仲間なのです。
最初は、スーパーマーケットに出品するのが億劫だったおばあちゃん(生産者)が、採り立ての野菜を納品し始めてから2週間後のことです。
自分の貯金通帳に、納品しているスーパーマーケットから入金がありました。
「うれしくて、友達に話しました・・・」とのことです。
決して大きな金額ではなかったのですが、おばあちゃんは、働くことの喜びとやる気を起こしてくれて、とても元気でいます。
そして、このおばあちゃんは、このスーパーマーケットの上得意でもあります。
戦略的提携・ジョイントベンチャーは、多くの可能性を持った、マーケティング戦略なのです。おばあちゃんの知恵も、タダで借りられるのです。