15時の鮮度チェックが、売上と生産性と営業利益を大幅にアップさせる! スーパーマーケット重要戦略
あなたの会社は、POSデータを有効的に、そして、戦略的に活用しているでしょうか。
私が知る限り、中小のスーパーマーケットの現場において、POSデータを有効的に使っている会社は少ないように思います。
全くと言っていいほど、使っていない会社(部門)も多く存在します。
今回は、『POSデータの活用によって、生産性をアップさせる』ことについて、事例を交えながら解説していきます。
POSシステムの現場のメリット
POSは、point of salesの略で、販売時点情報管理と訳されています。
多くのメリットが存在するPOSシステムなのですが、その中でも現場が享受できるものとして、
1.レジ会計業務の効率化
2.販売情報の把握(活用)
の部分が大きいと言えます。
『レジ会計業務の効率化』については、近年セミセルフ・タイプのレジも出てきて、精算時間の短縮や、レジ担当者の作業軽減やストレス軽減が実現されています。
また、お客にとっても、レジ待ち時間の短縮などメリットも大きいと思います。
デメリットもないわけではありませんが、レジ担当者が、お客目線で現場のフォローを行うことが出来れば、売る側、買う側双方にメリットは大きいと言えます。
一方、『販売情報の把握』については、商品名・販売価格・個数・販売時間など、必要なデータを瞬時に収集ることができ、分析や改善のための仮説設定に、大きなヒントを与えてくれることになります。
また、売上管理だけでなく、実践的マーケティングにも大いに活用出来ます。
現場の観察とPOSデータの検証で、改善効果を最大化させる
POSシステム自体は、レジ精算業務の効率化などのハード的メリットと、単品別やカテゴリー(グループ)別の売り上げ情報管理などのソフト的メリットが有ります。
商品名・価格・数量・販売日時などの販売実績から「いつ・どの商品が・幾らで・幾つ売れたか」と言うようなことが分かります。
しかし、いくら素晴らしいソフトが入っているシステムでも、使われなければ、宝の持ち腐れです。
そこで、活用の方法について、弊社のクライアントの小型店の事例を交えながら解説していきます。
下の2枚の写真は、開店直前の刺身売場のものです。
定性データ(数字で表せれないもの)として、
・開店時に100%の品ぞろえができない(欠品が多い)
・盛り合わせを優先して陳列している
(単品の小造りや食べきりサイズ、短冊などが優先されていない)
・開店時の品揃え(品種)数が少ない
などが、見て取れます。
単純に、お客目線で考えれば、望ましい売場とは言い難い状態です。
このような場合、開店直後に来店したお客の不満は高くなり、当然のことながら、売上げは伸びにくいと言えます。
そこで、この売場の販売実績データ(ベストレポート)を、POSのストコン(store controller)から出力して確認してみました。
1月、2月のそれぞれ第1周の刺身のベストレポート(販売金額順)を出力して、それを、解りやすくするために、Excel(表計算ソフト)を使って加工し、下記の表を作成してみました。
表の左が1月・第1周、右が2月・第1週のものです。
売上高、販売点数、値引き点数、値引き高の実績数値から、値引き率(値引き対象数÷販売点数)、ロス率(ロス金額÷(売上高+値引き金額))を割り出しています。
【黄色】の塗りつぶし部分の商品は、ロス率が、20%前後以上ある物や、値引き率が50%を超えるものです。
【緑色】の部分の商品は、ロス率が20%以下から0%のもので、且つ、値引き率が比較的低いものです。
この表から、この期間には、刺身全体の値引きロス率が、20%をはるかに越して、それが常態化していることが確認できます。
また、上位の商品群がロスリーダーになっていて、粗利を低下させていることが確認できます。
計画(plan)⇒実行(do)⇒評価(check)⇒改善(act)
下記の表は、改善後のデータになります。
表の左の2018年2月23日から3月1日の1週間と、翌週の3月2日から3月8日の1週間では、データに大きな変化が表れていることを確認できます。
【黄色】の商品が減り、【緑色】の商品の数が増えています。
改善活動の流れとしては、
1.2ヶ月(下の表①、②の期間)の実績データを基に、
2.部門会議を開き(②の後)、
3.現状の写真とPOSデータを使って、問題点と課題設定を行い、
4.優先順位、加工数量など、実行内容を決め改善活動を行いました。
結果として、③から⑤の実績数値に変化することとなります。
1月程度の期間において、明らかにロス率の低下がみられました。
金額にして、週当たり15,000円から18,000円程度の値引きロス低減(粗利益改善)になっています。
仮に、15,000円として、年間52周で、トータル780,000円になります。
18,000円だと、936,000円の粗利益が改善されることになります。
再度、plan⇒do⇒check⇒actのサイクルを回す
大きな改善の成果が出てはいますが、まだゴールではありません。
表の【緑色】の各アイテムは、機会ロスを多く含んでいることが推測できます。
更に、これを、日別(曜日別)のベストレポートを検証することにより、各SKU(単品)の最終販売時間も分かります。
合わせて、日別・時間帯別に売場の実地調査を行えば、開店時や夕方(夜間)の欠品が具体的に確認できます。
【緑色】の部分の商品は、お客からの支持が高い商品群と言えます。
表の上位に、これらの商品が多いことから、それらの欠品を減らすことが出来れば、販売量を大幅に拡大出来る可能性が高まります。
このことから、
1.欠品商品の販売量拡大
2.値引きロスの削減
とが、相まって、相当な粗利益高の拡大が見込まれます。
※改善途中の売り場(単品盛、短冊からの品ぞろえ(作業指示)に変更)
『お客の目線』が改善効果を大きくする
業務改善を行う上で重要なことは、何といっても『お客の目線』です。
この店舗の刺身のカテゴリーのデータ(定性+定量)だけをみても、お客の不満が推測できます。
一部の魚種の刺身や短冊では、品切れ(欠品)が多く発生していて、そこに『お客の不満』があります。
同時に、販売側には、『売上と粗利益拡大のチャンス』が隠れているのです。
売り手側は、どうしても作業段取りが優先され、「こちらの都合」に陥りやすいものです。それを、『お客目線(要望)』を理解して行動することが出来れば、簡単に大きな利益に繋げることが出来ます。
例えば、上記事例で『お造り用生きはだまぐろ』は、値引きが0であることから、売り切れが多いことが分かります。
ですから、
・陳列量を増やすこと
・短冊のSKU(量(大・小)、部位、質など)を増やすこと
・『まぐろずくし』や『炙り』など、刺身の品ぞろえの幅(SKU)を増やすこと
・『寿司』なども含め、新たなアイテムを投入すること
など、人気商品(=重点商品)の品揃えを充実させて、「選ぶ楽しさ」がある売り場を作ることで、大幅な売り上げアップが期待できます。
プロモーションの部分でも、商品の持つ特性やこだわりを、POPや試食販売などによってお客に『価値情報』を伝えることは勿論。
メニュー提案や食べ方(使い方)提案などで、更に成果を拡大することが出来ます。
中型店の刺身売場の改善事例
次の事例も、弊社のクライアントの、中型店の刺身売場の事例です。
先述した、小型店の事例と同じやり方で、売場確認とPOSの実績データを基に、改善を行ったものです。
下の表は、改善前2週間のものですが、一目でわかることがあります。
それは、【黄色】と【緑色】の部分とに、ほぼ二分されていることです。
この場合、造り過ぎ(出し過ぎ)の商品(SKU)が多い反面、陳列数量が全く足りていない商品が多くあるということが判ります。
当然、機会ロス、商品ロス共に多くなり、利益の損出も大きいと言えます。
また、先述したように、「こちらの都合」での商品化を行い、「お客目線(要望)」を考えていない様子がうかがえます。
この店舗の改善手順としては、
1.2月の各週、3週分のPOSデータを取り
2.データの加工を行い、情報化(色分け)して
3.関係メンバーでミーティングを行い、
その後、改善活動を実行しました。
下記の表は、改善活動実施後の4週間の実績データです。
表を見ていただければ、全く様変わりしていることがお判りいただけると思います。
改善前に多かった、二桁以上の値引きロスを出している商品(SKU)が、ほぼ無くなっています。
7%代だった値引きロスが、4%代に低下しています。金額にして、50,000円程度(4週間)の低減を実現しています。
年間に換算して、約650,000円の粗利益の改善になります。
しかし、こちらの事例も、まだ【緑色】の部分のSKUに、売り切れが発生していることが判ります。
これらの欠品を無くす(売り切れを無くす)ことによって、大幅な売上げ拡大と粗利益拡大が期待できます。
その中でも例えば、
・ブロック(短冊)のSKU(大・小・炙りなど)を拡大する
・夕方(午後)から夜間にかけて、ブロックを小造りに媒体変更する
など行うことによって、粗利益の拡大は可能でしょう。
「お客目線」で、生産性を大幅にアップさせる!
上記二つの事例は、売上高、粗利益高の改善に止まるものではありません。
人時売上高や人時生産性が大幅に向上することになることを忘れてはいけません。
「造り過ぎ」や「出し過ぎ」は、多くの人時(MH)を無駄にすることになります。
また、このことにより、値引き作業や廃棄作業の作業工数が多くなり、そのための人時も多く発生することになります。
そうした人時ロスが低減できれば、その他の商品化や売り場づくりに時間を振り向けることが可能となります。
開店時100%の品揃えを実現することや、売場管理を充実させることに繋がり、売上アップも期待できます。
生産性をアップするための 『正しい仕組み』 をつくる
販売効率を上げたければ、
第一に、売場の観察を定時定例で行い、お客のニーズを読み取る行動をすることです。
「答えは売り場にある」のです。バックルームでは視えません。
第二に、POSデータを確認して、現時点の課題や問題点を炙り出すことです。
『定性』と『定量』で、観る力(検証力)を向上させる努力をすることが重要です。
第三に、読み取った課題に対して、的確に、そして、迅速に対応することです。
先ずは、「売れ筋(人気商品)を欠品させない」ことです。
そして、「造り過ぎ、出し過ぎ」をしないことです。
刺身売場を平面的ではなく、一品一品(SKU)を観察することです。
そして、
第四に、アイテム(SKU)、加工数(陳列数)、加工順などを、検証結果を勘案して加工指示書に作り上げ、それに従って商品化する仕組みを作ることです。
今回紹介した2つの事例は共に、値引きロスの改善と機会ロス改善、そして人時ロス改善だけを考えても、年間100万円以上の改善効果が期待できます。
しかも、これは、鮮魚部門の刺身売場だけのことです。
店舗内には、その他多くの売場が存在し、同じような改善(応用)が可能な売り場は多く存在しています。
現場で、売場を、商品を、そして、お客を、『深く・観察する癖』を付けましょう。
更に、リーダーは、部下の行動を、『観察する癖』を付けましょう。
これが、業務改善の基本です。
現場には、大きな利益が隠れています。
決して、「しんどいことをする」ことではありません。
お金もほとんどかかりません。
「やり方を変える」だけです。
それだけで、生産性は確実にアップします。
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