徹底した“高鮮度”を売ることで地域一番店になる!
私の記事のタイトルは、「お客と社員に支持される生産性向上策」です。
これは、お客がウキウキ、ワクワクするような商品やサービスをお届けすること、
そして、現場で働く従業員がイキイキと、元気に働くことを意味しています。
このことを前提に、今回より、売り上げ、粗利益、そして、営業利益の向上について、原理原則と、実行事例を交えて具体的にお伝えしていきたいと思います。
私は、「売ることよりも先に、売れることを考えよ」ということをクライアントに常々言っています。
これは、お客に無理して売り込むのではなく、お客のためになるものを、お客が納得して、自然に買っていく(売れていく)状態を創ることを意味します。
「良いマーケティングは、セールスを不要にする」とドラッカーは、言いました。
お客が買いたくなる。買わない理由を無くす。というように、お客の心理を読み解く力、お客が気付いていない何かを教える。
そして、それを実行に移すことで、お客の支持を得て、売上、そして粗利益の拡大へと繋げていくのです。
それが、無駄が少なく、最も効率的で生産性を高めることに繋がります。
マーケティングには、数え切れないほどの手法がありますが、
先に、外すことのできない原理原則の部分について、解説していきたいと思います。
売り上げを上げる、『たった3つの方法』
どのようなビジネスにも例外なく共通する、売り上げを上げるための方法があります。
それが、以下の3つです。
(1)お客様の数 ⇒ (購買)客数を増やす
(2)一回当たりの取引単価 ⇒ ( 〃 )単価 〃
(3)来店頻度(リピート回数)⇒ ( 〃 )頻度 〃
売上高=客数×客単価、ということで、(1)と(2)を解っている人は多いと思います。
しかし、意外と出てこないのが(3)です。
繰り返しになりますが、中長期的に継続して商売をするうえで、そして、顧客と信頼関係で繋がり、顧客生涯価値(Life Time Value)を拡大する上で、絶対に外せない数値です。
簡単に算数の説明をすると、
売上高=購買客数×購買単価×購買頻度、となります。
仮に、店舗の一ヶ月の実績(前年同月比)が、
(1)購買客数 110%
(2)購買単価100%
(3)購買頻度100%
である場合、店舗の売上高前年対比は、110%になります。
同じように、
(1)購買客数 110%
(2)購買単価110%
(3)購買頻度110%
である場合、店舗の売上高前年対比は、なんと132%になるのです。
ビジネスの根幹は、この各数値で積み上がっています。
客数アップ、単価アップ、来店頻度アップ・・・何に集中するか?
小手先のノウハウに左右されない為に、このことを理解して、行動原理として生かしていくことが重要です。
売り上げを上げる、「たった3つの方法」は、マーケティングの原理原則なのです。
では現実的に、あなたの店は、これらの上記3つのうちで、どれをアップさせる努力すれば良いのでしょうか。
「売り上げを上げたい・・・」という声は、よく耳にします。
しかし、「今、これをやっています」という、具体的な声は、あまり聞こえてきません。
客数なのか。単価なのか。来店頻度なのか。
競合状況や商圏特性など、店舗の置かれている条件によっても、努力すべき内容は変わってきます。
まず既存店に関しては、客単価を優先して見ることをおすすめしたいと思います。
以下に、私のクライアントの事例を具体的に紹介します。
1年で、トマトの売上を3倍にした事例
コンサルティング開始後、14ヶ月目に、トマトの売上を3倍にした、クライアントがいます。
トマトの売上高は、野菜部門の売上高の10%程度を占め、年間売上のダントツ1位です。最も高い時には、15%程度に達することもあります。
弊社のクライアントが叩き出した実績。それを実現したマーケティング手法を簡単にご説明します。
平成26年、7月の実績(前年同月比)が、金額ベース 182.1%、数量ベース 141.1%
平成28年、7月の実績( 〃 )が、金額ベース 166.9%、数量ベース 181.3%
と、なりました。
【図表1】
ですから、平成26年の7月の売上高に対して、平成28年、7月の実績は、実に、303.9%と言うことになります。(図表1参照)
野菜部門全体の売上高も、120%前後(同期比)で推移しています。
ちなみに、この戦術は、「客単価アップ」に大きく貢献し、中長期的には、「来店頻度アップ」に繋がることであると言えます。
なぜトマトなのか? ・・・営業戦略を理解する
先ほど申し上げたとおり、トマトの売上高は、野菜部門の10%程度を占め、高い付きでは、15%前後なることもあります。
特に、春先から秋にかけては、伸びが大きくなります。
販売側からは、売上高、粗利益高の上から、重要管理アイテムと言うことになります。
また、
売上が高いということは、お客の支持が高いと言うことでもなります。
特に、トマトはリコピンなどの体に良い栄養素を多く含み、「トマトが赤くなると、医者が青くなる」と言われるように、世界的にも高く支持されている野菜です。
お客の支持の高いものを売り、店も売上を伸ばす。正しい、無理のないWin-Winの関係です。
マーケティング的に、最高の関係なのです。
そして、販売戦略上も、サラダやパスタ、煮物料理と応用範囲が広いトマトは、サラダ関連の野菜や調味料など、お店全体での関連購買が大いに期待できる重要な野菜なのです。
結果として、客単価もアップすることが期待できます。
【図表2】
上記の表を見て、算数が少し得意な人はピンとくると思いますが、売上高構成比の高いアイテムの売上をアップさせれば、そのアイテムだけに留まらず、カテゴリー全体の売上を大きく押し上げます。(図表2参照)
ちなみに、トマトの売上高が野菜の10%を占めているとして、それが150%の伸びになると、野菜全体の売上は、105%になるのです。(図表3参照)
【図表3】
巷では、大して売上貢献のないものを『重点商品』に設定して、販売に力を入れている店舗も見かけますが、売上アップを狙うという意味では、ハッキリ言って的外れです。部門に対する中長期の売上貢献は少ないと言えます。
原理原則を学べば、意外に簡単に売上は上がる
このように、売上の伸びも大きいのですが、それ以上に大きいのが粗利益額の伸びです。
部門(カテゴリー)全体の粗利益を拡大できれば、営業利益も拡大するのですが、競合店対策として、他の商品を値下げして販売することも可能となります。
私は、クライアントには、基本的に目先の売り上げを追うことはさせません、
安易な小手先の手法は、一時的な効果しか期待できませんし、下手をすれば、粗利益率を落としてしまうことや、作業工数だけが増えて、投入人時数を増やし、生産性を低下させてしまうことも少なくありません。要注意です。
このトマトの場合の売り上げの伸びは、短期的なものではありません。
上記事例の通り、確実に顧客の支持を得て、月単位、年単位と、中長期的に業績を向上させるのです。
確実に結果を出す、『売場づくりの4P』
特に原理原則として覚えて、活用していただきたいのが、『売り場づくりの4P』です。
売り場づくりの4Pとは、
1.商品(製品)または、企画テーマ(Product)・・・ 何を売るか?
2.展開場所(Place)・・・・・・・・・・どこで売るのか?
3.販促活動(Promotion)・・・・・・・・どのように売るのか?
4.価格(Price)・・・・・・・・・・・・いくらで売るのか?
のことです。
これを、科学的に、そして、顧客心理を深く考えて、原則安売りをしないで実行していくのです。
【売場づくりの4P】
1.商品(製品)または、企画テーマ(Product)は、
その時季の重点商品や重点企画ということになります。
※重要ポイントは、品揃えの充実と欠品をさせないことです。
2.展開場所(Place)は、
店舗レイアウト上、通過率の高い場所(マグネット)になります。
※重要ポイントは、視認率と通過率の高い場所(マグネット)で売場を展開するということ
になります。
3.販促活動(Promotion)は、
結果を最大化するために、あらゆるマーケティングの手法を使うことになります。
特に、営業マンとしてのPOP、有人試食販売は、有効性の高いものになります。
※重要ポイントは、商品の持つUSP(Unique Selling Proposition:独自の売り、強み)
をPOPや、販売者や生産者の直接的な説明で打ち出すこと。
また、同時に機能的な価値以外に、楽しい、面白い、感動などという情緒的価値を打ち
出すことです。
4.の価格(Price)は、
絶対価格ではなく、相対価格を考えて、各商品の持つ価値をPOPや試食販売などで、お客に
情報を伝えて、付加価値を付けて販売していきます。
そうすることで、値入れを適正に設定することができ、確実に、粗利益は拡大していきます。
私のクライアントは、その基本、原理原則を忠実にやってもらっています。
目先の売り上げを追う小手先のノウハウ(know-how)は、一時的なものでしかありません。
ノウホハイ(know-why:なぜ、どのように・・・)をしっかり理解していれば、応用を効かせられます。
そして、長期的に効果を継続的に出すことができるのです。
どうでしょうか、「売り上げを上げるたった3つの方法」。
数字の遊びではないことを、ご理解いただけたでしょうか。
重点アイテム(企画)への応用
トマトの事例は、他の各カテゴリーの売り上げ上位のアイテムに応用できます。
やり方としては、各カテゴリーの中で、期間で売上高の高いもの、出来るだけトップの商品群を『重点商品』に設定して、取り組む方が、生産性の意味からも効果的でしょう。
例えば、鶏肉のもも肉、牛・豚の細切れ、ミンチ肉・・・。
鮮魚のあさり、寿司、刺身・・・。
塩干の鮭、塩さば、ちりめん雑魚・・・。
惣菜の鶏の唐揚げ、ポテトサラダなど・・・。
地域特性や店舗コンセプトなどもありますが、月間のベストレポートを確認し、上述のライフサイクル表を作成すると、非常に解りやすく、ポイントが絞れて来ます。
私が言う、『原理原則』とは、この基本を学び、応用を利かすと言うことなのです。
繰り返しになりますが、小手先のやり方(ノウハウ(know-how))ではなく、なぜそれをするのか(ノウホワイ(know-why))を正しく理解して行動していれば、ノウハウのアイデアは、幾らでも出てきます。
今回の記事は、「客単価アップ」を中心に解説しました。
次回は、「客数アップ」について解説を加えたいと思います。