徹底した“高鮮度”を売ることで地域一番店になる!
スーパーの売上を上げるにはどうすればいいいか…。経営に携わる方は日々このことを頭で繰り返していることでしょう。方法はいくつかありますが、シンプルに売上を上げるのであれば客単価の向上を目指すため、1人当たりの買い上げ点数を上げる施策をとることです。具体的な施策や重要な指標について解説します。
目次
スーパーの売上を上げるには
競合店との競争に苦慮しているスーパーや、売上の低迷に悩んでいるスーパーは多いと思います。日々、さまざまな対策を練り、現状を打開するための施策を見つけ出そうとしていることでしょう。改善策などを構築する際、注意しなければならないのは、奇抜さだけを狙ったアイデアや、自店にそぐわない施策が魅力的に見えてしまうことです。
大切なのは基本的な事柄を固めることです。
売上を上げることに悩んでいる方は、まず、マーケティング上の正しい方法を原理原則として理解する必要があります。そこに売上アップを実現するポイントが潜んでいます。ここでは原理原則にもとづいた、確実に売上アップにつながる8つの施策をお伝えします。原理原則にもとづかない施策では、売上が上がらないばかりか、粗利益を大きく落としてしまう場合も少なくありません。
次の計算式をご覧下さい。
売上=客数×客単価
この計算式は多くの方がご存じでしょう。しかし、単にこの計算式を知っているだけでは、効果的な施策に結びつきません。この計算式がどのような要素を持つものかを把握することが大切です。
まず、「客単価」を見てみましょう。客単価は次の計算式になります。
客単価=買上点数×一品単価
2つの要素に分解することで、買上点数を上げること、また、一品単価を上げること、あるいは2つの要素を同時に向上させることが、客単価の上昇につながることが明確になります。
次に「客数」を分解してみましょう。下記の計算式になります。
客数=潜在顧客×集客率×通過率×視認率×立寄り率×買上率
計算式の個々の要素については以下に解説を加えていきますが、「客単価」を分解したものと合わせると次のようになります。
売上=潜在顧客×集客率×通過率×視認率×立寄り率×買上率×買上点数×一品単価
つまり、この計算式にある8つの要素を向上させることが売上アップのポイントになります。そして、大切なことはこの8つの要素のうち、どの要素を重点的に、あるいは優先的に取り組むかを考えることです。現在の店舗状況に応じて、どこに焦点をあてて改善していくかを検討することが大切です。
潜在顧客が誰かを知ること
潜在顧客は商勢圏内来店可能客と言ってもいいでしょう。マーケティング用語で言われるターゲット(想定顧客層)のことです。つまり、「うちのお店に来てくれる可能性のあるお客様」です。
スーパーマーケットは、地域のお客様が日々の食生活を維持するために買い物をするところですから、原則、商圏範囲は広くはありません。
一般的に食品スーパーの場合、都会では700m程度、地方では2km程度と言われています。この距離には、店舗に向かう道路状況や線路など、地理的要因や地域環境などさまざまなものが影響します。そのため、半径500m、1kmというように、単純にコンパスを使って割り出されるものでもありません。
しかし、商圏内の年齢別人口構成や、単身世帯と2人以上世帯の比率など基本的なところは、出店前に調査されているはずです。「潜在顧客=うちのお店に来てくれる可能性のあるお客様」は、その中にいることになります。潜在顧客に対しアプローチすることは、売上アップの重要なポイントです。
「潜在顧客=うちのお店に来てくれる可能性のあるお客様」をもう少し注意して見てみましょう。つまり「来てくれる可能性」があるにもかかわらず、「なぜ現在は来店してもらないか」ということです。
全国スーパーマーケット協会が公開している「2020年版スーパーマーケット白書」には、消費者がどのような理由で店舗を選択・利用したか、食品スーパー、総合スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストア、総合ディスカウントストアの業態別に調査が載っています。
それぞれ上位10項目が示されていますが
「便利な立地でアクセスがしやすい」
「駐車場があり、車で来店できる」
「電子マネー、キャッシュレス決済ができる」
など選択理由の多くは共通しています。
しかし、食品スーパーに固有のものがあり、それは
「生鮮食品の鮮度が高い」
「店内でお惣菜やお弁当を作っていておいしい」
という食品の質と味に関するものでした。
これは食品スーパーにとっての強みであり、潜在顧客へアプローチする際の優先項目となります。
ここで考えなければならないのは「食品の質と味」を単に情報として提供するのではなく、消費者にとって「価値ある情報」として提供するということです。潜在顧客を引きつける仕掛け、顧客のベネフィット(利益・お得感・良さ)を刺激する情報を発信する必要があります。
情報提供のツールとしては、チラシが最も効果的です。新聞購読世帯の減少にともない新聞の折り込みチラシは減少傾向にあります。
しかし、業界の新聞折り込みチラシ発行率は89.0%と高い数値を示していますし、Webやアプリを介したチラシは増加し、媒体は変化してもチラシ自体は情報提供ツールとして現在も求められていると言えます(「統計・データでみるスーパーマーケットより)。
集客率を上げるフロントエンドとバックエンド
次に、集客率について見ていきましょう。集客については立地や店舗設計も大きく関わりますが、ここでは潜在顧客に向けたアプローチと集客率の向上に絞って考えてみましょう。
商圏内のお客様のうち、実際に日々お店に来てくれる客数はどれくらいになっているのか。それが、集客率です。そして、上にあげたチラシ(その他販促活動全般)については、説明するまでもなく集客人数を上げるということが、その目的です。
ところが、これができていないスーパーが山ほどあります。
私が、お店のチラシを見て、
「この内容でお客さん来るの?」と聞くと、
「今回のチラシではダメですね」と答える店長。
私は、このような場面に何回となく立ち会っています。お客に来店を促すような、チラシの内容になっていないのです。「来店を促す」とは、決して価格だけではありません。楽しいイベント、面白い企画など、お客様がお店に「行ってみようかな」と行動を促す内容になっていることが重要です。お客様にとって「店に行く価値がある」と思わせる情報を提供することが大切なのです。
ここで知っておいてほしいことが、フロントエンドとバックエンドです。
フロントエンド(front-end)はプロセスの「最初の工程」を意味しますが、マーケティングでは集客のための商品やサービスをさします。新規顧客獲得のための値引き商品や特典などです。お客様に来店を促す動機付け、それがフロントエンドです。「損して得取れ」という昔からの教えがありますが、フロントエンドは、この「損して」の部分にあたるとも言えます。
フロントエンドと同じように重要なのが、バックエンドです。
バックエンド(back-end)は、フロントエンドの商品やサービスをお買い上げ頂いた後に販売する商品やサービスをさします。バックエンドの目的は利益の確保です。「損して得取れ」の「得取れ」にあたります。
フロントエンドとバックエンドには一貫した仕組みが必要です。来店してくれたお客様に、本当に喜んでもらえるような商品やサービスの提供をバックエンドに確実に用意しておくことが大切です。
ところで、いま、フロントエンドは「損して得取れ」の「損して」の部分にあたると言いましたが、採算を度外視することは経営の破綻を招きます。
例えば、集客のため目玉商品を企画し、「おひとり様1点限り!」とチラシで大きく謳ったとします。確かに一定の効果は期待できます。しかし、これだけでは低価格だけのハイエナの餌食になって、悲しい結末を迎えるだけです。原理原則を知らない会社は、これをやり続けています。だから、ジリ貧になって、時間の経過とともに経営が苦しくなっていくのです。
「1000円以上お買い上げのお客様、1点限り!」という条件をつけると良いでしょう。お店の平均客単価にもよりますが、いつも来てくれているお客なら、1000円は問題ない単価です。こうすることで特売品に使う全体的なコストを下げることができます。
通過率を上げるレイアウト配置
通過率とは、店舗内のある通路を来店客の何%が通ったかを定量化した数値です。この数値が高いほど多くの来店客が通過したということになります。売上アップを考える際は、通過率の高いところに売りたい商品を置くというのが基本的な戦略になります。
あるいは、売りたい商品が陳列された棚の前の通過率をいかに上げるか、という発想からマグネット売場などを設定し、その通路に誘導することが重要になります。いかに良い商品であっても、その通路の前をお客様が通らなければ商品を売ることはできません。
当然のことながら、店舗のレイアウトが重要になってきます。入口と出口(レジの位置)の位置設定や客(買い物)動線の長さなどが重要なポイントです。設計段階で繰り返し検討する必要があります。
買い物導線(特に主導線)の距離とマグネットの設定計画によって、営業上の結果が大きく変わってしまいます。当たり前のことですが、お客が売場を通過しなければ絶対に買上げにはつながりません。
視認率は買い物導線と主導線(通路)が肝
次に、視認率について見ていきましょう。ここで言う視認率は、売場をお客様に見てもらうことです。売場は、まず、お客様の目のとまることが重要です。つまり、視認率を上げ、立寄り率を上げるということです。いくら良い売り場を作っても、お客の目にとまらなければ、次の買い物ステップに進んでくれません。
そこで大切になるのが、売場の買い物導線と主導線(通路)のマグネットの設計、そして、そのマグネットの効果的な活用です。また、トップボードやのぼり、スポッターなどの設定は、視認率をアップする上で重要な販促ツールになります。
特にトップボードは視認性に優れ、お客様に分かりやすく売場と商品をアピールできるツールです。商品自体の訴求はもちろん、関連商品についても同時に訴求することができ、誘導効果を高めます。
立寄り率を上げるキャッチコピーのテクニック
立寄り率は、来店したお客様が店内を歩く過程で該当商品の売場に立寄る比率のことです。この立寄り率が高いほどお客様と商品との接点が増えることになります。
売場の演出力を高めて、無機質な売場ではなく、「楽しい売場」や「ダイナミックな売場」づくりが重要です。ビジュアルに訴えて、お客の「気を引く」のです。「えッ、なに?」と思わせるPOPのキャッチコピー(ヘッドライン)の技術は重要になります。そして、定番のアイル(通路)を分かりやすくするために用途関連で陳列することも重要です。
POPは「Point of purchase advertising」の略で「購買時点広告」と訳されます。しかし、POPは「サイレントセールスマン」とも言われます。POP本来の役割から言えば、こちらのほうが正鵠を得ていると言えるでしょう。
事例をご紹介しましょう。
スーパーに並ぶスイカの糖度は平均11度~12度と言われています。あるスーパーでスイカの糖度を測ったところ14度という数値が出ました。この時「最高記録14度!ついに出た今シーズン最高記録!○○産高糖度スイカ」といったキャッチコピーのPOPを売場に出したところ、結果はすぐに出ました。
このポップに足を止め、糖度14度のスイカを買い求めるお客が次々に現れました。しかもこの時、売価は20%アップさせていました。つまり、1枚のPOPで売価20%アップのスイカが飛ぶように売れたわけです。POPは優秀な「セールスマン」なのです。
もちろんPOPだけではなく、テーマを持った売場づくり、商品の陳列等々、検討すべきことはたくさんありますが、お客様の立寄り率の向上は売上に直結します。
買上率を上げるために考えるべきこと
買上率は、入店客数に対する購入者の割合のことです。入店客数が100人であり、そのうち10人が商品を買ったとすれば、「買上客数10人÷入店客数100人=買上率10%」ということになります。
より具体的に説明すると、買上率とは、立ち寄ったお客が商品を手に取って、買い物カゴに入れてくれる行動を捉えた指数ということになります。
お客様が商品を買う心理プロセスを表したものとして「AIDA」や「AIDMA」があります。
簡単に言えば、お客様は
「①Attention商品に注目し」
「②Interestその商品に興味を持ち」
「③Desireその商品を欲しいと思い」
「④Actionその商品を購入する」
ということです。
※「AIDMA」の「M」はMemory(商品を記憶する)ことを意味します。
そして、スーパーの現場で大事なことは、この購買心理のプロセスを一気に高めること、実際に売場で商品に目をとめてくれたお客に「いま買う決心」をさせることです。
そこで重要になるのが「お客様のベネフィット」、つまり、その商品を買うことによって得られる利益・お得感・良さなどを強くアピールすることです。マグネット(催事平台やゴンドラエンドなど)の売場づくりにおいては、この点を十分に理解しておく必要があります。
POPや試食販売、推奨販売においても、それが購買に至る強い動機付けになっているか、「お客様の背中を押してあげる」ものになっているかどうかが重要なポイントになります。
商品の陳列には、最もお客様の目につきやすく、商品を手に取りやすいゾーン「ゴールデンゾーン」があることはご存知でしょう。購入率が最も高いゾーンです。このゴールデンゾーンに価格も知名度も同等のAとB、2つの飲料を、Aは5フェイス、Bは2フェイスで陳列すると、A商品のほうが断然、売れます。
この例を分析すれば、A商品は5フェイスというボリューム感でお客様の目を引きます。次に、大量にあるということで、お客様に
「この商品は売れているのだろう」
「だから店も推しているのだろう」
「これだけあるということは、たくさんの人が購入しているのだろう」
「つまり安心して購入できる、いい商品だろう」
と連想させ、A商品を手に取らせることになります。
買上率を上げるためには、お客様が商品を購入する際の心理プロセスを把握し、さまざまな販促活動は、お客様の購買意欲を一気に高めるためにあることを十分に理解する必要があります。
買上点数を上げるには目立たせることが重要
売上についてのシンプルな計算式は「売上=客数×客単価」でした。そして、「客単価」は「買上点数×一品単価」に分解されます。ここでは、その「買上点数」について見ていきましょう。
買上点数は、言うまでもなく、お客様が購入した商品の点数です。買上点数を上げることが売上アップにつながります。
ここで重要になるのが、商品を単品としていかに売るか、どれだけ売るかだけではなく、「どのように使うか?」「こんな使い方がありますよ」というように、お客が使う(食べる)場面に焦点をあてた販促方法を考えることです。
関連陳列や使い方提案が大きな効果を生みます。これがクロスセルです。お客様が買おうとしている商品と関連する商品を提案し、「あと一品」を買ってもらうのです。
単品での販売の場合、どうしても商品の価値が「価格」だけになってしまいがちです。クロスセルは他商品と組み合わせることで、価格だけではない価値や意味を商品に持たせることができます。
クロスセルで大切なことは、お客様が「これはあった方が良い」と納得できる商品の提案、あるいは関連付けです。その関連性を印象づけ、目立たせることが買上点数の向上につながります。
一品単価を上げるには容量アップやグレードアップを
一品単価は、お客様1人の一品あたりの平均販売額です。一品単価が上がることは客単価の向上につながります。一品単価の向上については、値入(商品の販売価格)アップということも考えられますが、これにはリスクが伴い難易度が高いでしょう。
一品単価を上げる方法として「松竹梅方式」と呼ばれるものがあります。日本に昔からあり、寿司店などでおなじみの方式です。
「竹」を選ぶお客様が多いとしても、「松」を注文するお客様も一定の割合が見込まれます。もちろん「梅」の注文がある程度あったとしても、平均の単価は上がるというものです。顧客をよりグレードの高い商品へ誘導する「アップセル」方式です。
また、容量を増やすことも考えられるでしょう。○個以上お買い上げの方に特典をつける方法もありますし、1パックの容量を上げ、お得感を演出し、お客様に手に取ってもらうという方法も効果的です。
知恵を出し、一品単価の向上に取り組みましょう。その際、大切になるのはお客様にとってのベネフィット(利益・お得感・良さ)を刺激する工夫です。
やれていない要素を潰し改善を繰り返す
はじめにお話ししたように、売上は、
「売上=潜在顧客×集客率×通過率×視認率×立寄り率×買上率×買上点数×一品単価」
なのです。
この計算式にある8つの要素のうち、自分がこれまでやって来た販売活動の中で、やれていないところ、弱いところを確認してみましょう。掛け算ですから、弱いところをアップさせることができれば、効果は大きくなります。これまでやれていなかった要素を潰し、そして、強いところを確実にすることです。
その際、忘れてはならないのは次の4点です。
1.お客のベネフィット(利益・お得感・良さ)を高める・刺激する
2.新奇性(「楽しい売場」「ダイナミックな売場」)
3.好奇心を誘う(「えッ、何?」と思わせる)
4.手っ取り早い簡単便利な情報提供(納得性と分かりやすさ)
もちろん、こうしたことのベースには、
1.品揃え(欠品しない)
2.高鮮度(品質)
3.安全安心(整理、整頓、清潔、清掃、躾(習慣化))
4.接遇(おもてなし、身だしなみ)
この4原則ができていることが重要です。
そして、お客目線で、日々の業務改善によって、確実にそのレベルを上げることが大切です。選ばれるお店は、これらのことの出来栄えによって決まるのです。計画的な改善活動が、時間の経過とともに、集客という大きな成果につながってくるのです。
これからのスーパー求められるもの
スーパーマーケット以外で食品を扱う店舗が年々増加しています。ドラッグストアやディスカウントストアなどに脅威を感じている担当者は多いでしょう。また、コンビニエンスストアも、お弁当をはじめ惣菜や野菜などにも力を入れています。
以前は「競合」と言えば同じ業態の他スーパーでしたが、いまは状況が一変しています。シリアルや缶詰、飲料、米などもインターネットを介して購入する消費者が増えています。こうした競合に対して新たな施策を講じなければなりません。スーパーマーケットの強みとは何か、弱点は何か、強みを伸ばし、弱点を減らす施策は何かを真剣に考える必要があります。
しかし、その一方で考えなければならないことは、目先の効果だけに頼ってはいけないということです。より強力に新たな競合に対処するには「業務改善」による「生産性の向上」が欠かせません。これは、持続的に強い店であるためにぜひ必要なことです。
例えば、女性スタッフの活用もそのひとつです。「必要な人員」という程度にしか見ていない店舗が少なくありませんが、女性スタッフは店舗にとって重要な「資産」です。持っている意欲や力を十分に引き出していない店舗は危ういと言えるでしょう。もちろん男性スタッフも重要です。
つまり、女性、男性を問わず店舗にかかわる「人」の力を十分に発揮する仕組みが大切なのです。業務改善と生産性の向上は新しい競合に勝ち抜くための最重要課題です。
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