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菊池浩史

「住まい×消費者×教育」のハイブリッドを目指す専門家

菊池浩史(きくちひろし)

住まいの消費者教育研究所

コラム

高齢者住宅の利用料金は、なぜ分かりづらい?

2021年6月21日

テーマ:住まいの終活

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: まちづくりリノベーション費用空き家対策

高齢者住宅の制度や内容が分かりにくい理由の一つに料金体系があります。賃貸住宅は入居時の敷金、礼金、月々の家賃や共益費、そして更新時の更新料が主なもので、それぞれの金額は明示されており、事前に負担額の把握がしやすいのに比べ、高齢者住宅には多くのタイプがあり、料金体系にも違ってきます。

介護付き有料老人ホームを例に利用料金を確認しましょう。パンフレットや重要事項説明書には、高齢者住宅により表現は異なったりしますがおおよそ、①入居一時金、②家賃、③管理費、④食費、⑤上乗せサービス費、⑤その他費用などの項目が表記されています。本稿では問題点を二つ指摘しておきます。

一つ目は、⑤その他費用について正しく理解できていないケースがあります。
その他費用に含まれるものの一つに、介護保険や医療保険の自己負担額があります。要介護度ごとの負担限度額から決まるもので、高齢者住宅による違いはありません。ただ分かりづらいのが、特定施設かそうでないかによる違いです。特定施設では要介護度に応じて負担額は定額ですが、特定施設でない場合は利用するサービスに応じて負担額が異なる区分支給限度額方式が採られます。つまり支給限度額の範囲内で受けるサービスが多くなればなるほど、自己負担額が増加する仕組みになっています。

他には介護保険の対象外になる生活支援サービスがその他費用に含まれます。生活支援サービスには有料と無料のサービスもあります。主に食事、排泄や入浴サービスなどの身体介助、家事サービス、同行や代行サービスなどです。同じ家事サービスでも、ある範囲までは無料で、それを超えれば有料というケースがあります。入居前には利用サービスが決まらないことが多いと思いますが、サービス一覧表などでしっかり比較することが必要です。

二つ目は、高齢者住宅相互で総負担額の比較がしづらいことです。
特に一時金の有無や償却期間などによって、正味の負担額の判別が難しくなります。
例えば、下表のような高齢者住宅があるとします。一時金の有無や項目によれば徴収しないものがあります。そこで一時金について償却期間に応じた月額の償却金額を求め、それに家賃等の月額支払い金額を加えます。そうすれば実質負担額が計算できます。時間軸で負担を考えるという発想です。その結果、B社の負担額が最も高く、反対にC社が低くなります。

月額利用料


このような負担金額については、重要事項説明書や入居契約書をよくよく見れば記載されている事項です。記載がないとか、曖昧な表現であれば要注意です。その場合は担当者に納得するまで確認することを怠ってはいけません。複雑に見える料金体系ですが、しっかり理解してから入居しなければ後悔することとなります。

一般の賃貸住宅に比べ高齢者住宅の検討では、「どのような費用が、いつ頃にどのくらい発生して、トータルでいくら要るの?」という不安が多いと思います。そうであれば、本コラムでは、そのあたりの情報収集についても取り上げる予定です。

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