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菊池浩史

「住まい×消費者×教育」のハイブリッドを目指す専門家

菊池浩史(きくちひろし)

住まいの消費者教育研究所

コラム

「住宅すごろく」も世につれ

2021年7月12日

テーマ:住まいの終活

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: まちづくり相続税空き家対策

平均寿命が延びることは高齢期の時間が長くなることを意味します。国土交通省(※)の資料によれば、定年後の時間(定年から亡くなるまでの時間)は、1924年生まれの世代は19年、1947年生まれの団塊世代は22年、1971年生まれの団塊ジュニア世代は28年と年々長期化しています(※)「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドラインの概要」国交省(2019))。

高齢期が長くなれば暮らし方にどのような変化をもたらすのでしょうか。一つは、世帯の高齢化と小規模化です。世帯主が65歳以上の高齢世帯は2040年には40%を占め、そのうち単独世帯が占める割合は23%(1990年)から39%(2040年)、夫婦のみ世帯が16%(1990年)から21%(2040年)と増加し、高齢者がいる世帯の約60%が単身又は夫婦二人暮らしです。もう一つが家族形態の変化です。非親族・非血縁関係の同居、LGBT,同性カップル、シェアハウスなど、同居する者の関係性が多様化しつつあります。

このような変化は高齢期の住まい選びや住まい方にも影響を与えています。 

戦後の高度成長期から昭和末期までの住み替えモデルは、郊外一戸建てで上がりの「住宅すごろく」と呼ばれていました。親元を離れ独身時代の下宿を振り出しに、新婚時代のアパート、子供が生まれて少し広めの賃貸マンションに引っ越し、少し余裕ができれば分譲マンションの購入、最後は分譲マンションを売却して郊外に庭付き一戸建てで上がり、というパターンが理想とされていました。それが今はどうでしょうか。郊外のニュータウンを中心に庭付き一戸建てには空き家が目立ち、一方で都心回帰の動きが出始め、郊外の戸建て住宅から利便性が高い都市部のマンションに移り住むケースが増えています。

世帯の高齢化と小規模化、家族の多様化などの影響が、新しい住宅すごろくを生みつつあります。時代は平成から令和に移り、これからの住宅すごろくは、従来型のような標準タイプがなくなり、代わりにプロセスと上がりの多様化が予測されます。高齢期になると郊外の庭付き一戸建は、維持管理の負担、交通利便性と生活利便性の不足、ウオーカビリティに欠けるなどの理由で、高齢者にとって住みやすいと言えなくなってきました。現在では下図のように複線化のすごろくに移行しています。もちろん日本では自宅が終の棲家という意識が未だ根強くあります。しかし自宅に住み続けるか、住み替えるかという二択ではない時代に入ったと言えます。

高齢期の住み替えパターン

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