福利厚生、いまの傾向は長期的ではなく短期的な視点?

神野沙樹

神野沙樹

テーマ:いきいき職場づくり(組織活性など)



福利厚生とは、「給料以外の報酬」のことを言います。
わかりやすく言うと、「働くことで得られる特典」のことです。

例えば、社員割引で勤めている会社の製品・商品を安く購入出来たり、結婚したときにお祝金をもらうのも「福利厚生」です。

今回は、福利厚生ってなに?という解説と、いまの傾向、会社も社員も満足できる福利厚生の取り入れ方のコツをお伝えします。


1.福利厚生には2つの種類がある


福利厚生と一口に行っても、2種類あることをご存知でしょうか?

1つは「法定福利」、もう1つは「法定外福利」と呼ばれます。

法定福利とは…
法律に定められた福利厚生のことで、社会保険の保険料を会社が一部上乗せして払っている、その「お金」のことを言います。

法定外福利とは…
会社独自に行う特典のことを指します。


法定外福利には様々なタイプがありますので、次で説明します。

2.会社独自の福利厚生ってどんなものがある?


法定外福利は、会社独自に行う特典のこと。
タイプ別に分けると、次のような内容があります。

(1)お金に関する特典
家賃補助制度、結婚祝い金、退職金制度、飲み会補助、研修受講料補助など

(2)休暇に関する特典
慶弔休暇やボランティア休暇などの特別休暇制度、バースデー休暇など

(3)場所や品物の特典
社員食堂、まかない食の提供、保養所などの運営、誕生日にケーキプレゼントなど

(4)サービス利用の特典
子連れ出勤制度やベビーシッター制度、出張健康体操など

(5)イベント・社内交流などの特典
社員旅行、忘年会、家族参観デーなど

それ以外にも「カフェテリアプラン」といって、福利厚生を提供する会社と提携して、色々なメニューから選べる福利厚生を取り入れている会社もあります。

3.いまの傾向は長期的から短期的?


これまで、日本企業では「終身雇用」といって、「長く働くこと」「定年まで勤めあげること」が前提の働き方が一般的でした。

ですから、福利厚生の面から言っても「長期的な視点の内容」が多くありました。

代表的な事例でいうと「退職金制度」です。

退職金制度は、長く勤めた人、定年まで勤めあげた人に、高い金額を支払う設計が一般的です。

しかし今は、転職をはじめ、兼業や副業といった働き方が増え始めています。

多くの場合、退職金制度は、「3年以上」や「5年以上」働かないともらえないという設定をしていますので、現在の考え方から言うと、「あまり魅力に感じない」ようになってきたというわけです。

4.いま、どんな福利厚生が魅力的なのか


「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」(独立行政法人労働政策研究・研修機構・2020年発表)の従業員調査の中で、
「特に必要性が高いもの」として挙げられたのは次のような内容です。

・人間ドック受診の補助
・慶弔休暇制度
・家賃補助や住宅手当の支給
・病気休暇制度(有給休暇以外)
・法律を上回る育児休業・介護休業


それ以外にも、治療と仕事の両立支援策や、メンタルヘルス対策など、健康にまつわる福利厚生の声も上がっています。

働いている方にとって、金銭補助は「無いよりあった方が良い」ですが、一過性に過ぎない節もあります。

せっかくであれば、社員の方にも喜んでいただくことで「この会社で働きたい」と思ってもらえる内容にしていかれたいのではないでしょうか。

どのような社員の方が多いかにもよりますが、例えば以下のような内容だと喜ばれているケースが多いです。

  • 女性が多く働く職場→法律を上回る育児休業や短時間制度
  • 家族のいる方が多く働く職場→家賃補助や住宅手当補助
  • 若い方が多く働く職場→スキルアップに対する補助、ボランティア休暇の導入


5.会社も社員も満足できる福利厚生の取り入れ方


社員の方も、そして会社にとっても「取り入れてよかった」と思える福利厚生を導入するにはどうすればよいでしょうか。

そのポイントは「会社主導で進めないこと」にあります。

会社さまが良かれと思って導入した福利厚生でも、社員の方がそれを望んでいなければ、せっかくの福利厚生の効果が薄れてしまいます。

そこで、社員の方に選んでもらうのです。

と言っても、やみくもに「福利厚生何が良い?」と聞いても、思い付きで言いたい放題のアイデアが出てくるでしょう。

そこで、会社さまが「これだったら取り入れても良い」と思う福利厚生を5つほどピックアップしておき、その中から選んでもらいます。

すると、社員の方にとっても「自分たちで選んだ」と思うこともできますし、会社としても「もともと会社が選んでいる内容」ですので、無理な内容にはなりません。

こうして、「意見を訊きながら導入した」というプロセスが、会社も社員も満足できる福利厚生になる秘訣です。

参考になれば幸いです!

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神野沙樹
専門家

神野沙樹(社会保険労務士)

株式会社Niesul(ニースル社労士事務所併設)

経営者様、社員のみなさん自身による「就業規則」や「評価制度」づくりをサポートする社会保険労務士。第三者の立場として「制度づくり+人づくり」を促し、真にイキイキとした職場づくりを提案します。

神野沙樹プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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