大人ピアノ指導法:教室宣伝法:「絶対知っておきたい事」

光畑浩美

光畑浩美

テーマ:講師の養成/大人ピアノ指導法

教室宣伝で大切なこと

―「紙」に書いて伝える力―


今回は、教室の宣伝法についてお伝えしたいと思います。

多くのピアノの先生方は、
幼い頃からピアノに親しみ、
演奏することに慣れ親しんでこられたことでしょう。

演奏が得意であることはもちろん、
指導についても、ご自身なりのノウハウを確立され、
長年にわたって経験を積んでいらっしゃる方が多いのではないかと思います。

一方で、「教室の宣伝は得意ですか」と伺うと、
少し苦手意識を持たれる先生方が少なくありません。


実際、音楽大学では演奏や指導について学ぶ機会はあっても、
「教室をどのように宣伝するか」まで
丁寧に教わることは、あまり多くないように思います。

また、カルチャーセンターや楽器店での講座であれば、
ある程度決まったフォーマットがあります。

たとえば、
「この枠内に写真を入れて、何文字以内で紹介文を提出してください」といった形で、
あらかじめ型が用意されていることも少なくありません。

そのため、
一から自分で“伝えるための案内”を作る経験がないまま、
活動を続けてこられた先生も多いのです。

ご自宅で教室をされている先生方は、
看板や簡単なチラシを用意されていることもあるでしょう。

しかし、実際には、場面ごとに適した案内を持っているケースは、
それほど多くありません。

らくらくピアノの場合は、
ご自宅教室、カルチャーセンター、楽器店に加え、
シニア大学、市民講座、地域サークル、各種団体、さらには子育て支援の場など

非常に幅広い場所で展開されています。

だからこそ、それぞれの場面を想定した「伝えるためのツール」が必要になるのです。



よく、「商品二割、宣伝八割」という言葉があります。

つまり、
良い商品やサービスを作ることに二割の力を使ったなら、
残りの八割はそれをきちんと伝え、

広く案内することに使わなければ、
仕事として成り立ちにくい、という考え方です。

では、ピアノの先生方はどうでしょうか。
多くの場合、二割どころか、
九割以上の力を演奏や指導そのものに注いでいらっしゃいます。

教える力を磨き
より良いレッスンを届けようと日々努力されている。

その姿勢は本当に素晴らしいものです。

けれども、その一方で、
宣伝や案内にかける力は一割にも満たないことがあります。

そうなると、せっかく素晴らしい内容を持っていても、
それが必要な方に届かず、
結果としてビジネスにつながりにくくなってしまいます。

いわば“宝の持ち腐れ”になってしまうのです。

ですから、
小さなことでもよいのです。

「このような教室です」
「このような方に向いています」
「このような形で参加できます」
そうしたことを丁寧に案内していくことが、
教室運営における大切な基本になります。

さて、ここでひとつ考えてみたいことがあります。

「メニューのない音楽教室は、何を用意していないことが多いでしょうか」

その答えの一つが、チラシです。

しかも、ただ何となく作ったチラシではなく、
「相手に応じたチラシ」が必要です。
この点はとても重要です。



さらに、
中高年の方々の特性として、
ぜひ知っておいていただきたいことがあります。

それは、
紙に書いていないと興味を失いやすいということです。

「紙に書いていないと忘れる」のではありません。
「紙に書いていないと、興味を失う」。

ここが非常に大切なポイントです。

以前、日本老年医学会認定老年病専門医であり、
岡山大学名誉教授でもいらっしゃる小川典夫先生にお会いした際、
このことを教えていただきました。

小川先生はとても温かく、やわらかな語り口の先生で、
全国から多くの患者さんが訪れておられました。

老人医療の専門家として、
たくさんの方に信頼されている先生です。

その小川先生が、こんなお話をしてくださいました。

「光畑さん、年配の方には、とにかく紙が基本ですよ。
紙に書いていないと、なかなか伝わらないんです」

たとえば、
患者さんに「お腹を冷やさないようにしてください」と伝えるとき、
先生は必ず小さなメモ用紙に、その一言を書かれるそうです。

さらに、「腹巻きをつけてください」「温かいお茶を飲んでください」など、
生活の中で気をつける具体的なことも書き添えられる。
そして、その紙を手渡されるのだそうです。

薬の説明や処方箋は別にあります。
けれども、先生がその場で書いてくださった一枚の紙には、
特別な説得力があります。

患者さんにとっては、
それがまるでお守りのように感じられる。

そこに先生の思いがのり、
「自分のために書いてくださった」という安心感につながるのです。

このお話は、らくらくピアノを展開していくうえで、
私にとって大きな基礎となりました。

実際、教室に来られる方の中には、
何年も前のチラシを大切に持って来てくださる方がいらっしゃいます。

「いつか行こうと思って、冷蔵庫に貼っていたんです」
「ずっと気になっていたのですが、ようやく来られました」
そんなふうにおっしゃりながら、古くなったチラシをまるで切符のように手にして来てくださるのです。

こちらがすっかり忘れてしまっている頃に、
その一枚の紙がご縁をつないでくれる。

チラシとは、それほど大切なものなのです。

ただし、ここで注意したいことがあります。

「チラシを作ればよい」というわけではありません。
教室を始める際、多くの先生がまず思いつくのは
ポスティングかもしれません。

ですが、私はあまりおすすめしていません。
知らないお宅を一軒一軒回ることには安全面の不安もありますし、
何より効果がそれほど高くないからです。

ポストの中には、
毎日たくさんのものが入ります。

広告もあれば、大切なお手紙もあります。
受け取る側は、それを見た瞬間に
「いるもの」「いらないもの」を瞬時に振り分けます。

広告だと感じたものは、内容をしっかり読まれる前に、
流し見されて終わってしまうことが多いのです。

新聞折込や有料の掲示なども、
同じことが起こりがちです。

どんなに素晴らしい内容であっても、
受け取る側の心が「学びたい」「知りたい」という状態に
なっていなければ、十分に届きません。



では、どのような方法が効果的なのでしょうか。

それは、関係性のある方から、
直接渡していただくことです。

たとえば、
生徒さんの保護者の方に
「もしおばあさまがご興味をお持ちでしたら、どうぞご案内ください」とお渡しする。

あるいは地域の団体の方に
「このような形でお役に立てることがあれば、ぜひお声がけください」と添えてお渡しする。

こうした形で手渡されたチラシは、
きちんと読んでいただける可能性が高くなります。

また、公民館や区民センターなどの掲示板も、
とても効果的です。

なぜなら、
そこに来られている方は、
もともと「何かを学びたい」「何か新しいことを始めたい」
という気持ちを持っているからです。

学びの場にいる方の目には、
掲示された情報がまっすぐ届きます。

ダンス講座の帰りに掲示板を見て、
「ピアノ」という文字が目に留まる。
そのとき、その方の心はすでに“学ぶモード”になっています。

だからこそ、案内が自然に届くのです。
私はこれを、いつも「共創の場」と考えています。

関係性があり、共感があり、
その中で新しいご縁が育っていく場所。

そうした場所にチラシを置くことは、
非常に大きな意味があります。

かつて「チラシばらまき作戦」という言葉が
話題になったことがありました。

けれども、
情報があふれる今の時代、
たくさん配れば届くという時代ではありません。

現代は、以前と比べて情報量が圧倒的に増えています。

街を見渡しても、テレビを見ても、SNSを開いても、
身の回りは宣伝であふれています。

人はそのすべてに反応していては疲れてしまうため、
ほとんどの情報を無意識に通り過ぎています。

その中で人の心が反応するのは、
自分に関係のあること、自分が興味を持っていることです。

たとえば「健康」や「痩せること」が気になっている方は、
自然とその言葉に目が向きます。

同じように、ピアノや音楽、生きがい、趣味、仲間づくりに関心のある方には、
それにふさわしい場所で、ふさわしい形で案内を届ける必要があるのです。

ですから、大切なのは、
やみくもに配ることではありません。

必要としている方がいそうな場所に、
必要な形で、きちんと紙で届けることです。

今回、ぜひ覚えておいていただきたい原則があります。
すべては紙であること。

そして、紙に書いていないと、
興味を失いやすいということ

この原則を知っているだけでも、
教室の伝え方は大きく変わってまいります。

素晴らしいレッスン内容を、
必要としている方へきちんと届けるために。


ぜひ、宣伝もまた大切な“教室づくり”の一つとして考えていただけたらと思います。

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光畑浩美
専門家

光畑浩美(大人ピアノ指導の専門家)

一般社団法人全日本らくらくピアノ®協会  株式会社PREMUSE

大人のピアノ初心者向け。特許庁登録「らくらくピアノ®︎」で憧れの曲を楽しく実現。オンライン講座や認定講師養成講座を展開。著書累計17万部超、Amazonや全国書店で販売中。

光畑浩美プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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