大人ピアノ指導法:多くのピアノの先生が陥りやすい「6つの落とし穴」
体験会を終えたあとの一回目、二回目の個人レッスンは、本当に大切な段階です。
個人レッスンであるがゆえに、受講される方もきっと緊張していらっしゃることでしょう。
そして、私たち講師の側も、より慎重に進めていきたいと感じる時期ではないでしょうか。
皆さまにもご経験があるかと思いますが、学生時代、同じ教科であっても、担当の先生によってその教科が大好きになったり、反対に苦手意識を持ってしまったりすることがありましたよね。
ピアノも同じです。
ピアノそのものは好きでも、「あの先生のところへ行くと、なぜか少し苦手に感じる」「なんとなくしんどい」と思われてしまうのは、とてももったいないことです。
「この先生だからこそ通いたい」
そう感じていただくために、初期段階のレッスンでは、特に大切なポイントが二つあります。
一つ目は、腹八分のレッスンで進めること。
もう一つは、右脳タイプ・左脳タイプなど、相手のタイプに合わせてお話を進めること
です。
腹八分のレッスンが、次への楽しみを生む
初回、二回目のレッスンでは、受講される方の不安を取り除いて差し上げたいという思いから、つい説明が長くなったり、内容を盛り込みすぎてしまったりすることがあります。
また、「弾けた」と感じて帰っていただきたい一心で、演奏の内容までつい長くなってしまうこともあるでしょう。
これは、どの先生にも起こりうる自然なことだと思います。
けれども、ここで大切なのは、最初のレッスンはまだ“試食”の段階でもある、ということです。
お帰りになった時に「もう十分」「今日はたくさんやった」と感じてしまうと、その後しばらくはその内容について思い返すことが少なくなってしまいます。
「またレッスンの日が近づいたら考えよう」となってしまうのです。
そうすると、自然な口コミも生まれにくくなります。
なぜなら、人は自分がワクワクしていること、心が少し動いていることを、誰かに話したくなるからです。
そこで、あえて腹八分にとどめておくことが大切になります。
「もう少しやってみたかった」
「もう少しお話を聞きたかった」
そんな気持ちでお帰りいただけると、レッスンの余韻が残り、次回への楽しみにつながっていきます。
最初の個人レッスンは、“満腹”にすることよりも、“また味わいたい”と思っていただくこと。
それが継続への大きな力になります。
右脳タイプの方には、“感じられる魅力”を届ける
次に大切なのが、相手のタイプに合わせた伝え方です。
たとえば、右脳タイプの方は、理屈よりも感覚を大切にされる傾向があります。
このような方には、まず「楽しい」「素敵」「やってみたい」と感じていただくことがとても重要です。
そのための方法として、まずおすすめしたいのが、魅力的な曲を紹介することです。
相手の方が静かなタイプであれば、落ち着いた美しい曲を少し弾いて差し上げる。
「ピアノを弾くと、こんなふうな世界が広がりますよ」とお伝えするだけで、まるで小さな生演奏を聴くような喜びが生まれます。
反対に、少し明るく元気なタイプの方であれば、華やかさや勢いのある曲の冒頭をお聴かせするのも良いでしょう。
それだけで、ピアノそのものへの印象がぐっと魅力的になります。
また、全体像をイメージとして伝えることも大切です。
テキストを一緒にめくりながら、「最初はこのような内容から始まり、中ほどではこうなり、最後にはこのような曲が弾けるようになります」と、少しずつご紹介していくのです。
右脳タイプの方には、この“未来の姿が見えること”が大きな安心と希望になります。
「ここに通っていたら、いつか自分もこうなれるのだ」と感じていただけることは、とても強い力になります。
さらに、他の方のご様子や口コミを少しご紹介することも効果的です。
「他の教室ではこのように楽しんでいらっしゃる方がいますよ」
「年会報や通信の中でも、このような歩みをされている方が紹介されていますよ」
そのように、自分一人ではないことを伝えると、安心感が深まります。
右脳タイプの方には、目で見えるもの、耳で聴くもの、空間の雰囲気など、五感を通して感じられる要素がとても大切です。
写真や楽譜を見ていただくことも良いでしょうし、心地よい音楽や、落ち着いた空間づくりも助けになります。
個人レッスンだからこそ、そうした総合的な印象づくりが、継続につながっていくのです。
左脳タイプの方には、“納得できる説明”を添える
一方で、左脳タイプの方、つまり理論や仕組みを大切にされる方もいらっしゃいます。
特に男性には、この傾向が見られることもあるかもしれません。
そのような方には、感覚だけではなく、「なるほど」と納得できる説明を添えることが大切です。
まず有効なのは、らくらくピアノの強みや特徴をきちんとお伝えすることです。
たとえば、レッスン全体の考え方や学び方、グレードの仕組み、講師自身も継続的に学んでいることなど、全体像を整理してお話しすると安心されます。
また、従来のレッスンとの違いをお伝えすることも有効です。
一般的なピアノレッスンでは、習得までに時間がかかることもありますが、らくらくピアノでは「すぐに」「やさしく」「楽しみながら」弾ける工夫があること。
その違いを少し明確にお伝えすることで、理解が深まります。
さらに、脳活などの効果について触れることも大きな助けになります。
ピアノが脳に良い刺激をもたらすことは、多くの方が関心を持たれるテーマです。
らくらくピアノの出版物や資料の中にも、そのような内容に触れているものがありますので、そうした文字資料を活用しながらお話しされるとよいでしょう。
左脳タイプの方にとっては、“文字で確認できること”や“理論立てて理解できること”が安心感につながります。
ですから、資料を用いながら丁寧にご説明することが、継続の後押しになります。
一人ひとりに合わせることで、レッスンはもっと深まる
個人レッスンは、ただ「弾けました」「では次へ進みましょう」というやり取りだけではありません。
その方がどのようなタイプで、どのような伝え方なら心に届くのかを見極めながら進めることで、レッスンの意味はより深く、豊かなものになっていきます。
右脳タイプなのかしら。
左脳タイプなのかしら。
そんなふうに少し意識しながら向き合うだけでも、先生の言葉がけやレッスンの組み立ては大きく変わってきます。
そしてその違いが、「ここに通いたい」「この先生に習いたい」という信頼へとつながっていくのです。
最初の個人レッスンは、技術を教える時間であると同時に、これから続いていくご縁の土台を築く時間でもあります。
ぜひ、腹八分の心地よさと、その方に合った伝え方を大切にしながら、あたたかなレッスンづくりにお役立ていただければと思います。


