大人ピアノ指導法:教室で大きく異なる「目的・金額設定」
中高年ソルフェージュの代表的な内容として、いよいよ三つ目となるのが**「リズム聴音」**です。
これは、
音楽の基礎を学ぶうえで、
非常に大切な教材です。
多くの方は、
らくらくピアノの楽譜をご覧になると、
ドレミが書いてあること、
そして何より“知っている曲”であることから、
なんとなくリズムがわかります。
たとえば、
あるフレーズを見て、
「ここは少し速い感じだな」と自然に理解されるのです。
けれども実際には、
音符そのものを見ているというより、
音名や曲の記憶を頼りに弾いていらっしゃる
ことが少なくありません。
そこでリズム聴音を導入すると、
生徒さんから
「先生、楽譜が見えてきました」
「ここ、“タタ”って書いてあるんですね」
「今日はいいことを学びました」
といった声が上がります。
“タタは少し速い”――そのことを知るだけで、
こんなにも感動してくださるのかと、
こちらが驚くほどです。
けれど、
その小さな発見こそが、学ぶ喜びにつながり、
生きる力につながっていく。
そう感じる場面に、
私は何度も立ち会ってきました。
講座において、
このリズム聴音は、
定期的に時間を取って取り組みたい大切なプログラムの一つです。
ここで主に使うリズムは、
全部で7種類あります。
大切なのは、
これらを少しずつ増やしていくのではなく、
最初から7種類を一度に提示することです。
「こういう種類があります」と、
黒板やホワイトボードに一気に並べて見せるのです。
たとえば、次のように示します。
1つ目は、「タン」。四分音符です。
2つ目は、「ウン」。四分休符です。
3つ目は、「タータ」。
4つ目は、「タタター」。
5つ目は、「タータタ」。
6つ目は、「タタータ」。
7つ目は、**「タタタタ」**です。
このときのポイントは、
カタカナよりも、ひらがなで示すことです。
中高年の方には、
ひらがなのほうがやわらかく受け取られ、
親しみやすい傾向があります。
ですから、
「タタ」ではなく「たーた」と書くなど、
やさしく伝わる工夫が効果的です。
また、6番目の「タタータ」は、
ほかのリズムと少し似て聞こえるため、
指導の際には注意が必要です。
らくらくピアノでは、
このリズムをより印象的に覚えていただくために、
**「ドドンパ」**という呼び方をしています。
「これはドドンパのリズムですよ」とお伝えすると、
生徒さんは「ああ、なるほど」と
すぐにリズムをつかまれます。
言葉の力は、本当に大きいものです。
まずは
1番から7番までを順番に、
声に出しながら確認していきます。
その際、手拍子の見せ方も大切です。
受講生の皆さまから見てわかりやすいように、
上下の動きで丁寧に示して差し上げると、
上品で見やすく、理解もしやすくなります。
その後、出題へ進みます。
レベル1は1小節の問題、
レベル2は2小節の問題と
いうように、少しずつ段階を上げていきます。
さらにレベルが上がると、
休符の「ウン」を入れた問題にも取り組みます。
ここで、
私たち指導者がぜひ知っておきたい
大切なことがあります。
それは、
**“自分が簡単だと思うものが、必ずしも受講生にとって簡単とは限らない”**と
いうことです。
たとえば、ピアノの先生方に
「この7つのリズムの中で、いちばん簡単なのはどれでしょう」と
お尋ねすると、
多くの方が「タン」や「ウン」と
答えられます。
見た目がシンプルだからです。
ところが、
実際に“聞いて書く”となると、
これが意外に難しいのです。
むしろ、
いちばんわかりやすいのは
**7番の「タタタタ」**です。
音がはっきり並んでいるので、
「あ、これは速い」と認識しやすく、
書き取りもしやすいのです。
その次に取り組みやすいのが、
「タタター」や「タータタ」といった、
音がまとまって感じられるリズムです。
反対に、難しいのは
3番の「タータ」です。
これが四分音符なのか、八分音符なのか、
聞き分けがつきにくいことがあるのです。
ですから、
問題を作る際には、
“見た目の単純さ”ではなく、
“受講生にとっての書きやすさ”を基準にすることが大切です。
また、出題の方法にも工夫が必要です。
本来であれば、
ピアノで低いドを使って「ドドドド…」と弾き、
聴き取って書いていただく方法もあります。
けれども、実際の講座では、
先生はお一人で進行していることがほとんどです。
受講生の皆さまがどこまで書けているのかを見ながら進めるには、
いちいちピアノのところへ戻っている余裕がありません。
そこで有効なのが、言葉でそのまま伝える方法です。
たとえば、
「タタタタ、タータタです」
「では、もう少し区切って言います。タタタタです。どうぞ」
というように、そのまま口で伝えてしまうのです。
すると生徒さんは、音符を見るのではなく、
「あ、ここに“タタタタ”って書いてある。これは7番ですね」
と、自分で結びつけられるようになります。
こうして、音・言葉・記号が少しずつ一致していくのです。
答え合わせの場面も、
とても大切です。
先生が黒板に黙々と答えを書くだけでは、
どうしても受け身の空気になってしまいます。
そうではなく、
「
最初のリズムは何でしたか?」
「タタタタでしたか?」
「そうです、その通りです」
と、まず皆さまに声を出していただき、
それを受けて先生が書く。
このやりとりが、
教室に参加感を生み、安心感を育てます。
間違えるかもしれないと思うと、
声はどうしても小さくなります。
不安そうに「上……」「下……」と答えられることもよくあります。
けれども、
そこで「そうですね」「はい、正解です」と
受け止めながら進めていくことで、
教室の空気はやわらかくなり、発言しやすくなっていきます。
先生が一方的に答えを書くのではなく、
皆さまの言葉を引き出しながら進めることが、
とても大切なのです。
この「まねっこリズム」、そして「高い・低い・同じ」、「リズム聴音」は、
何度お伝えしても足りないほど、
脳の活性化にとって非常に重要なプログラムです。
そして同時に、
受講生の皆さまが「また来たい」と感じ、
講座に継続して通ってくださる大きな理由の一つにもなっています。
もし講座が1時間半であれば、
前半の20分から30分ほどを、
こうした内容に充ててみてください。
毎回でなくてもかまいません。
けれど、定期的に取り入れることが大切です。
リズムがわかる。
楽譜が見えてくる。
自分でできたという実感が生まれる。
その積み重ねが、
音楽の喜びを育て、
人生の豊かさへとつながっていくのです。
ぜひ、皆さまの講座でも実践してみてくださいませ。


